高年齢者雇用安定法

最高裁、長澤運輸事件で弁論を開く。判決は6月1日

定年再雇用で仕事が変わらず賃金が下がったのを、労働契約法20条違反と主張したいわゆる長澤運輸事件の上告審で、20日、弁論が開かれ、判決は6月1日と指定されました。

最高裁:再雇用賃下げ、初判断へ 原告「正社員と同じ仕事」 – 毎日新聞 2018年4月21日

仕事内容は同じなのに定年後の再雇用で賃金を減らされたのは違法だとして、横浜市の運送会社「長沢運輸」で働く契約社員の運転手3人が正社員との賃金差額を支払うよう同社に求めた訴訟の上告審弁論が20日、最高裁第2小法廷(山本庸幸(つねゆき)裁判長)であった。運転手側は逆転敗訴した2審判決の破棄を求め、会社側は維持を求めて結審した。判決は6月1日に言い渡される。

(略)

労働契約法20条にある有期雇用の不合理な労働条件の禁止に条文に関する事件なのですが、いわゆる正規と非正規の違いではなく、定年再雇用の労働条件の問題であるところが、特徴的な事件となっています。正規と非正規の違いのケースであるハマキョウレックス事件もこれに続いて最高裁で弁論が開かれることから、近い論点の事件について統一的に判断をするものと思われます。

 

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北海道ガス、定年を65歳へ延長すると同時に60歳超の賃金を従前の3分の1程度から7割程度にまで引き下げ幅を圧縮 人件費の急増を抑制するため現役世代の賃金を5%程度引き下げへ

高年齢者雇用安定法への対応は、いったん退職して継続雇用制度を導入したのが多数を占めていますが、人手不足を背景に定年の延長を導入する実例も増えてきています。

そのような中、定年を延長する代わりに、人件費の急増を抑制するため現役世代の人件費を引き下げるというかなりドラスティックな措置を北海道ガスがとることが明らかになりました。

北海道ガス、60歳超の賃金上げ 定年65歳に延長  :日本経済新聞 2016/4/16 10:27

北海道ガスは7月、65歳まで働き続けることを前提とした賃金に移行する。平均的な社員の賃金水準は従来、60歳を超えると3分の1程度まで下がっていたが、7割程度まで引き上げる。少子高齢化の加速による若年層の減少に対応する。一方で、総賃金の急増を避けるため、40~60歳の賃金水準は5%程度抑える苦肉の策をとる。

(略)

 

北海道ガス株式会社:お知らせ一覧/65歳定年制の導入について

上記プレスリリースでは、賃金制度の内容のうち引下げには触れられていません。

これまで60歳以上は定年再雇用制度で、賃金はそれまでの3分の1ほどになっていた模様ですが、定年延長でそれまでの7割程度とするとされており、そのためにかなりの人件費の増加が見込まれる模様です。

そこで現役世代のうち40歳以上の賃金を5%程度引き下げるという不利益変更がなされる模様です。

 

報道によると組合との話し合いの中で、導入が決定したものとされていますので、現役世代の労働者にとってはかなりの不利益ではありますが、合理性は手続きの面からそれなりに補強はされているといえるのかもしれませんが、未曽有の内容であり、評価は難しい感じがします。

また、そもそも定年延長となると、一度定年を挟んでいないのでなぜ給与を7割まで下げていいのかが問題となりそうです。昨今、同一賃金同一労働に注目が集まっていることを考えるとなおさら微妙な点があります。

その点については、役職定年になり、いわゆる一般社員に戻るような運用をとることが前提とされているようなことが報道で言及されており、業務内容の質的な変化もあるならばこの点も正当化は可能であろうと思われるところです。

いずれにせよ、かなりドラスティックな内容であり、丁寧に導入がされた様子から変に問題として顕在化することはないのだと思いますが、法的には色々な論点を含む制度変更だと思われます。

コープさっぽろ、パートの定年を65歳に延長することや正社員は介護などでの離職後5年以内なら同じ職ぐうで復職を認める人事制度を導入

人材不足が強まってきていることから、人材確保の観点から様々な人事制度の導入が試みられていますが、その一例として興味深いものが報道されましたので取り上げます。

コープさっぽろ、パート定年65歳まで延長  :日本経済新聞 2015/11/5 10:50 日本経済新聞 電子版

コープさっぽろは2016年度、高齢化社会に対応した新しい人事制度を導入する。パート・アルバイトの定年を現在の60歳から65歳に延長。親の介護などで退職せざるを得ない正社員については、5年以内なら同じ処遇で復職できるようにする。流通業で人手不足の問題が深刻になるなか、高齢化社会の進行に合わせて人事制度を見直し、優秀な人材の流出を防ぐ。

(略)

報道によると柱は①パートの定年を60歳から65歳にすることと、②介護等の理由で離職した正社員は5年以内ならものと処遇で復職を認めるというものです。

(1)定年の延長

定年を65歳にするという点ですが、定年という言い方をしているのだとすると期間の定めのないパート社員なのかと思いますが、従来から希望があれば68歳まで雇用延長をしていたとのことです。

しかし、賃金体系は安いものに変わるとのことで、業務内容も軽作業中心となっているとのことでした。

これは別にパート社員についてのものではなく、高年齢者雇用安定法によって要請される無期社員に対する継続雇用措置の内容として適切な内容であると評価されます。

高年齢者雇用安定法による継続雇用の場合には労働条件は自由に設定できますが、業務内容もそれに合わせたものになることが要請されるのは当然のこととされています。

このような高年齢者雇用安定法による継続雇用義務が、正社員の継続雇用以外にも適用されるのかは、実は別論なのですが、それはさておき、その趣旨を汲んだ人事制度を導入していたところ、さらに進めて、定年を延長し、賃金体系はそのままにして業務内容もそのままにするというところに意味があるわけです。

(2)5年以内の復職

二つ目の特徴である復職の制度は類例がそれほどあるわけではなく、大変注目される仕組みと思われます。

復職とはいうものの法的には再度採用するということでしょうから中途採用ということになるかと思われますが、報道から読み取れる限りでは、希望があれば自動で復職を認めることになりかねず、募集のプロセスがなくなってしまいかねないようにも読みとれました。この点については詳細が分からないので何とも言えないのですが、大変意欲的であると同時に、若干、人事上はリスクにもなりうるように思われます。

 

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東京信用金庫、職員の定年後の再雇用の年齢制限を撤廃

改正高年齢者雇用安定法による65歳までの雇用義務については、再雇用の形で応じた企業が大半ですが、再雇用についても人件費の増大を避けるためや年齢構成の適正化の観点から、有期雇用、嘱託として業務内容も制限的にする例などが大半でスタートしました。

その後、人材確保の観点から、法律上要請される最低限を超える積極的な内容に改める例が出てきていますが、その例に東京信用金庫が加わりました。

東京信用金庫、65歳以降も雇用継続へ-年齢制限撤廃、経験・知識を若手に伝える:日刊工業新聞 2015年09月11日

東京信用金庫(東京都豊島区、半澤進理事長、03・3984・9111)は65歳以降も職員の雇用を継続する方針を決めた。現行では60歳の定年時に雇用した職員は65歳で契約期間が終了する仕組みだが、年齢制限を撤廃する。業界内では珍しいという。人口減少社会に突入する中、シニア層を積極的に活用することで現場で経験や知識を若手に円滑に伝える体制を整える。
 現在、東京信用金庫の60歳以上の再雇用職員は80人程度で、全職員の1割超に相当する。本人の希望を聞き取り、健康で職場に貢献できると会社が判断した場合、雇用延長する。人数に制限は決めていないという。
 同金庫では、14年に再雇用職員を部長や支店長など上級管理職に起用する「上級ライン管理職コース」を導入していた。今回、幅広いシニア層が活躍できる場を設けることで、会社全体の底上げにつなげる。

 

東京信用金庫の定年後再雇用の仕組みの詳細は不明なのですが、上記の報道から行くと、有期雇用で65歳を期限としている模様ですが、それを制限なしに更新をするということである模様です。

すると契約期間が5年を超える事態が生じるように思われますので無期転換が気になりますが、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法で認められた厚生労働大臣の認定で適用除外になりますので、これを活用することでリスクを回避することはできることにはなります。

しかし、無期転換制度の適用除外がされても、雇止め法理などの適用がある有期雇用の原則に戻るだけですので、雇用期間の設定について完全に自由にできるかは不明なところがあります。

高齢者の雇用であるというところは最大の考慮要素になるとは思われますが、いつでも自由に雇用調整ができるかというとそうではない可能性には注意が必要であるといえるでしょう。

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すかいらーく、定年後の再雇用制度を改めて定年を65歳へ延長 非正規雇用についても60歳以降もそれ以前と同様の賃金体系を維持することで待遇を改善へ

高年齢者雇用安定法によって義務付けられた65歳まで何らかの形で賃金を支払う雇用をする義務は、大半の企業において定年後の再雇用制度が採用されましたが、人手不足を背景に変容が見られるようになってきました。

外食大手のすかいらーくは、定年後再雇用の仕組みを採用していたところ、これを改め、定年を65歳へ延長し、65歳以降70歳まで再雇用の仕組みとすることで、シニア労働力の確保を図ることが明らかになりました。

 

すかいらーく、定年65歳に 人手不足でベテラン活用 – 47NEWS(よんななニュース) 2015/08/18 18:48

ファミリーレストランの「ガスト」などを展開する外食大手すかいらーくは18日、ことし10月に定年を現在の60歳から65歳に引き上げる方針を決めた。若年層の採用競争の激化で人手確保が難しくなっているため、接客や調理の技術を持つベテラン社員を活用する。

 正社員(6月末時点で約4400人)だけではなく、パートやアルバイト(同約7万9千人)も対象とする。8月に入り労働組合と大筋で合意しており、9月に正式決定する。新制度は10月1日に導入する予定。

 給与などの待遇は原則として60歳までと同じにする方向だ。

 

上記報道からは判然とはしませんが、日経の報道によると、今回の制度変更は、正社員の定年延長と非正規雇用の待遇改善の二種類の内容からなっている模様です。

正社員については定年を65歳に延長して、65歳以降70歳までを再雇用として、65歳までは60歳までの給与などと原則同じとするとのことです。

定年再雇用は一般的に待遇は仕事量、役割に応じたものになるために引き下げられがちになります。ここを改め、待遇を引き上げるというよりは従前と同じに活躍してもらおうということになると思われます。

また、非正規雇用の場合には、60歳までとそれ以降では賃金体系が異なっているとのことであり、60歳以降では賃下げになることが多かったと報道では言及されています。その内容の詳細は不明ですが、60歳以上も待遇をそれ以前と同様にして人材の確保を図るということと思われます。

人材確保のための待遇改善を図るだけだと人件費の増大になるだけになってしまいますが、役割を拡大してもらおうということならば、労使双方にとって意味のあるものになりますので、注目されます。もっとも、高齢労働者に従前と同じに活躍してもらうのは、現場労働ではなかなか大変なので、意図するように効果を上げるには、関係者の努力が要りそうです。

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