特許法

サントリーがノンアルコールビールの製法の特許侵害を主張してアサヒのドライゼロの製造販売差止めを求めた訴訟の控訴審で和解が成立

富士フィルム、化粧品成分の配合技術に関する特許を侵害されたとして、DHCを提訴 仮処分の申立てをしたものの結論が出ていないために本訴に踏み切ったとされる

特許侵害をめぐる事件でやや興味深い点が含まれている事象が見受けられましたので取り上げます。

富士フイルム、DHC提訴「化粧品で特許侵害」 : 経済 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2015年08月17日 20時09分

富士フイルムは17日、通信販売大手ディーエイチシー(DHC)の化粧品「DHCアスタキサンチンシリーズ」のジェルとローションが特許権を侵害しているとして、製造・販売の差し止めと損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。

(略)

 この問題で富士フイルムは昨年9月、DHCにこれらの商品の製造・販売の差し止めを求める仮処分を申し立てたが、決着していない。

興味深い点は、仮処分の申立てをしたものの決着がついておらず、今日に至り本訴提起に至ったという経緯であるとのことです。

裁判所からは、本案訴訟で審理をしないとはっきりしないために仮処分を止めるというような判断がされ、仮処分事件の当事者に提訴が促されたのではないかと想像されるところです。

裁判所から事実上の促しを受けて、手続きが発展することも現実にはままあるので同様ではないかと想像されるところですが、報道ではそこまでは言及はされていないので憶測に過ぎません。ただ、昨年9月の仮処分申し立てということを考えると、かなり時間が経過しており、難しい案件であることだけはうかがわれるところです。

 

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東京地裁、職務発明規程について策定及び改定について従業員と協議をしておらず、対価と支払方法について具体的に定めている部分の従業員に対する開示がなく、対価の額の算定について発明者の意見聴取が予定されていない内容である場合に、当該規定に依拠して対価を支払うことは不合理と判断

昨年の裁判例でいまさらですが、重要な点を含んでおりますので取り上げます。

職務発明については裁判が何件も起こされたのちに法改正が行われて、現在更なる法改正が検討されていますが、現在は社内で発明規定を持ってそこで対価を定めており、それに基づいて対価を支払うことは不合理でなければその規定通りの対価を支払えばよいという内容になっています。

この職務発明の規定については就業規則の不利益変更の法理も参考にしつつ、微妙に表現が異なっていることから、その違いに意味を持って解釈されるべきと考えられているところでしたが、特許法35条改正後に職務発明規定に基づく支払が合理的かという点から問題となった初の事例と思われる裁判例が出ておりましたので取り上げます。

第35条(職務発明)

(略)

3 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、若しくは使用者等のため専用実施権を設定したとき、又は契約、勤務規則その他の定めにより職務発明について使用者等のため仮専用実施権を設定した場合において、第三十四条の二第二項の規定により専用実施権が設定されたものとみなされたときは、相当の対価の支払を受ける権利を有する。
4 契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであつてはならない。
5 前項の対価についての定めがない場合又はその定めたところにより対価を支払うことが同項の規定により不合理と認められる場合には、第三項の対価の額は、その発明により使用者等が受けるべき利益の額、その発明に関連して使用者等が行う負担、貢献及び従業者等の処遇その他の事情を考慮して定めなければならない。

本件の被告である会社は野村證券です。

本件の発明の内容等は省略しますが、本件では改正後の特許法35条に基づいて職務発明規定を改定していました。

その内容は、「発明又は考案に関する規程」で報奨金を支払いと定めており、報奨金の内容は「報奨金に関する定め」で定めておりその内容は下図のようなものでした。

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しかし、本件では、この規程に従って支払うことは許されないという主張がなされて、特許法35条3項4項の問題となったものです。

東京地裁は、判断基準として上記の特許法35条4項を指摘したうえで、野村證券におけるこれらの規程について以下のような事情を指摘しています。

① 被告は,被告発明規程の策定及び改定につき,原告と個別に協議していないことはもとより,他の従業員らと協議を行ったこともうかがわれないし(上記(1)ア),② 被告において対価の額,支払方法等について具体的に定めているのは被告発明規程2(「報奨金に関する定め」のこと)であるが,これは原告を含む従業員らに開示されておらず(同イ),③ 対価の額の算定に当たって発明者から意見聴取することも予定されていない(同ウ)というのである。

 さらに,④ その他の事情についてみるに,まず,対価の支払に係る手続の面で,被告において上記①~③に代わるような手段を確保していることは,本件の証拠上,何らうかがわれない。

以上のように指摘して、本件の規定に基づいて対価を支払うことは合理的とは言えないと判断しています。

上記判断のポイントは、手続きについての検討に注目しているというところであり、規定の内容自体の合理性ではないという点だと思われます。

就業規則の変更に関する判例法理やその後条文化された労働契約法の条文の定め方との違いからもこのような検討の違いは導かれるものと思われます。

実務的には、職務発明規程の整備における社内手続きの進め方と、その後の周知の仕方、具体的な適用場面における不服申し立ての手続き整備などが重要ということになりましょう。

現在法改正が検討されていることから、本裁判例の意義は限定的になると思われますが、改正後の特許法35条に関連する裁判例として重要な意義を持つものと思われます。

なお、規定に基づく対価の支払いが合理的とは言えないとされた場合には、35条5項に基づいて対価が支払われることになり、本件も続いてこの規定に基づく対価の検討に移っています。しかし本件においては、最終的な発明対価の請求は棄却されています。それは、本件発明に基づいて、野村證券に利益が発生していないという事実認定に基づくものであり、そもそも論的な結末に終わっている模様です。

裁判例情報

東京地方裁判所平成26年10月30日判決 平成25(ワ)6158  職務発明対価請求事件

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