懲戒

日本相撲協会、セクハラをしたとされる式守伊之助を三場所出場停止の懲戒処分

大相撲の立行司・式守伊之助のセクハラ騒動ですが、日本相撲協会からの処分が決定されまして、労働法的観点からコメントをしようと思います。

式守伊之助、夏場所後辞職へ…無報酬で自宅謹慎 : スポーツ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)2018年01月13日 19時16分

 日本相撲協会は13日、両国国技館で臨時理事会を開き、泥酔して若手行司へセクハラ行為を働いた立行司の第40代・式守伊之助(58)(宮城野部屋)を、3場所出場停止の懲戒処分とするとともに、前日提出された辞職願を処分が明ける5月の夏場所後に受理することを決めた。

 この間、無報酬で自宅謹慎を命じ、土俵外での業務も行えない。伊之助は今後、土俵には上がらず協会を去る。

 発表によると、伊之助は沖縄県宜野湾市で冬巡業が開催された昨年12月16日夜、泥酔し、10代の若手行司に複数回キスをするなどの不適切な行為を行った。若手行司に被害届を出す考えはなく、今後も行司を務める意向だという。

(略)

 

1 同性間におけるセクハラ

まず、セクハラの概念についてですが、近時、均等法から委任を受けて定められている「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」が改定され同性に対する行為もセクハラとして、明記されました。

今回、後輩の行司に対する性的な行為であることから男性同士ということになりますが、これはまさにセクハラに当たるものであるということを改めて確認させてくれる事案となっているわけです。

2 出場停止処分後の退職の扱いについて

懲戒処分は当該労働者が在職中しか行うことができません。今回、辞職願という合意退職の形をとっていたため、日本相撲協会が受理するまでは退職が有効にならないため、処分を先にしてから退職とすることが可能になったわけです。逆に言うと、辞職願ではなく辞職届であった場合には、2週間経過後に一方提起に辞めることができてしまいますので、出場停止処分は一部期間については空振りということになってしまうということもありえたわけでした。今回は最後についても協会と調整の上で行っていると思われますのでそのような事態は生じようもなかったわけですが、教科書的な理屈だけでいくと、そのような場面であったわけです。

退職しかねないような重大な不祥事の場合、処分と退職のどちらが早いかのようなことは往々にして起きてくるところですので、今回のような机上の検討ばかりではないのが実態でもあります。

最高裁、職場におけるセクハラ行為で警告や注意を受けることなく懲戒したのを無効とは言えないと判断 懲戒を受けたことを理由とする人事上の降格事由も有効と判断

セクハラについての処分が争われて最高裁判例が出ましたので取り上げます。

かなり程度のひどいセクハラ態様であることから事例判断の側面が強く感じられますが、人事労務に関する非常に重要な判示が行われており、その点に注目して取り上げます。

最高裁判所第一小法廷平成27年2月26日判決 平成26(受)1310 懲戒処分無効確認等請求事件

すでに報道で明らかになっていますが、大阪市にある有名な水族館である海遊館の管理職の社員2名が派遣の女性従業員に1年以上にわたって執拗なセクハラ行為を行い、当該派遣労働者は派遣元を退職してしまいました。

運営会社である第三セクターである株式会社海遊館(上告人)は、セクハラ防止を重要課題と位置付けていたことから、本件で問題となったセクハラ行為より以前にセクハラを禁止する文書を出しており、様々な取り組みを行っていました。

退職した被害従業員からの申告によりセクハラの事実を把握した上告人は、セクハラをした社員(被上告人)を懲戒処分とし、出勤停止としました。

このときの就業規則の規定の適用関係は、禁止行為として定められていた「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」と懲戒事由としての「就業規則に違反したこと」であり、懲戒の種類は行為の軽重によって、戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇が定められていました。

上告人は上から二番目の重さの懲戒をしたということになります。

また、上告人は、職能等級制度を採用している模様ですが、その中の人事権としての降格の事由に懲戒処分を受けたときという定めがあったことから、上告人は被上告人を降格させたものです。

これによって当然、賃金の減少を招いたわけですが、被上告人から懲戒処分の無効確認請求訴訟が提起されました。

原審は、請求を認めて、懲戒処分を無効としました。

その判断の骨子は以下の通りになります。

  • 被害者から明確な拒否をされていないことから許されていると誤信していたこと
  • 事前に警告や注意等を受けていなかったこと

セクハラは客観的に判断されるものであり、受け手によって左右されるのは妥当ではないことは一般化してきていますので、セクハラに当たらないといっているのではなく誤診していたのでやむないという情状事由としての捉え方をしているとはしても妥当とは受け取れませんが、二点目には相当な重みがあります。

確かに懲戒の有効性判断においては、注意や指導をしてもそれでもなお懲戒事由該当行為をしたことという補充性の原則のようなものを求める考え方がありますので、その点に考慮をして重すぎると大阪高裁は判断したことになります。

しかし、最高裁はこの点について、以下のようにいきなり懲戒することを許容しました。

原審は,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして,これらも被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,上告人の管理職である被上告人らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上記(1)のような上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや,本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており,従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において,上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば,被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。

上記のとおり、注意する機会がなかったということとと、さんざん取組をしていたので、具体的注意を待たずに知っていて当然という二点から根拠づけています。したがって会社が重要な方針として周知を図っていることで注意の機会が期待できないような場合にはいきなりの懲戒処分も許容されることがあるということになりましょう。

また、この件では、出勤停止の後に降格されていることから、二重処罰のようになり、その点から降格が無効と考える余地がありそうですが、この点についても最高裁は以下のように述べて有効としています。

本件資格等級制度規程は,社員の心身の故障や職務遂行能力の著しい不足といった当該等級に係る適格性の欠如の徴表となる事由と並んで,社員が懲戒処分を受けたことを独立の降格事由として定めているところ,その趣旨は,社員が企業秩序や職場規律を害する非違行為につき懲戒処分を受けたことに伴い,上記の秩序や規律の保持それ自体のための降格を認めるところにあるものと解され,現に非違行為の事実が存在し懲戒処分が有効である限り,その定めは合理性を有するものということができる。

判示から見る限りでは、上告人は職能等級制度をとっている模様ですので、懲戒処分を受けたことが職務遂行能力の欠如を意味するのかは若干疑問の余地はないではないところがあります。もっとも、懲戒されるような行為をすることは職場秩序まで含めて考えると職務遂行能力を欠いているといえないわけでもないように思えますので、そのような趣旨から最高裁は人事権としての降格事由を有効としています。

この降格についての判断は、重要な判断であり、職能等級制度について人事権の裁量の範囲を画する意味で本件を超えて通用する判示であるように思われます。

大変ひどい態様のセクハラであり、事案限りでも解決を図る必要は極めて高い件ではありますが、判示の内容はそれに限定するものではないことから実務に大変大きな示唆を与えるものではないかと思われます。

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群馬大学、研究者に対するパワハラで教授を懲戒解雇

パワハラに関する懲戒処分の事例がまた報道に出ましたので取り上げます。

群馬大:パワハラで40代教授を解雇 – 毎日新聞 毎日新聞 2014年11月20日 21時17分

群馬大は20日、部下の教員5人にパワーハラスメントや暴言を繰り返したとして、大学院医学系研究科の40代の男性教授を懲戒解雇したと発表した。

大学によると、教授は2012年1月〜13年8月、同じ研究室の助教や講師の男性4人と女性1人に対し、退職や休日出勤を強要したり、長時間にわたり叱責、侮辱したりしたとしている。女性に対し、「結婚は三角、出産はバツ」との趣旨の発言もあったという。5人のうち2人が退職した。

 教授は大学の調査に対し女性蔑視発言を認めたが、他の行為については「指導の範囲内」と説明したという。大学側は教授を諭旨解雇とすることを決め、退職願を書くよう勧告したが、本人が拒否したため20日付で懲戒解雇とした。

(略)

いわゆる研究室に入ってきた研究員に対するパワハラということで、相手が大学院生など学生の立場であったとしたらアカハラになるところだと思われます。

他社の報道によると、当の教授は、

この教授は「ずっと一人で研究してきた。(部下に)どう接したらいいか分からない」と指導法の悩みを周囲に漏らしていたという。

とのことで、教授がこのような乱暴な言動に及んでしまったことの原因が伺われるところです。

群馬大学は、当初、諭旨解雇にしようとしたところですが、拒否したため懲戒解雇としたとなっています。諭旨解雇は、法的に正確な定義があるわけではありませんが、一般的には期限を定めて退職届の提出を促し、提出がされない場合には懲戒解雇とするものです。

そのため懲戒解雇よりは一段前の懲戒処分ということになりますが、懲戒解雇してしまった場合には、懲戒解雇としての有効性の問題になるため、実のところ、懲戒解雇相当の事案ではない場合にはできないのが実情と思われます。