労働契約法

東京信用金庫、職員の定年後の再雇用の年齢制限を撤廃

改正高年齢者雇用安定法による65歳までの雇用義務については、再雇用の形で応じた企業が大半ですが、再雇用についても人件費の増大を避けるためや年齢構成の適正化の観点から、有期雇用、嘱託として業務内容も制限的にする例などが大半でスタートしました。

その後、人材確保の観点から、法律上要請される最低限を超える積極的な内容に改める例が出てきていますが、その例に東京信用金庫が加わりました。

東京信用金庫、65歳以降も雇用継続へ-年齢制限撤廃、経験・知識を若手に伝える:日刊工業新聞 2015年09月11日

東京信用金庫(東京都豊島区、半澤進理事長、03・3984・9111)は65歳以降も職員の雇用を継続する方針を決めた。現行では60歳の定年時に雇用した職員は65歳で契約期間が終了する仕組みだが、年齢制限を撤廃する。業界内では珍しいという。人口減少社会に突入する中、シニア層を積極的に活用することで現場で経験や知識を若手に円滑に伝える体制を整える。
 現在、東京信用金庫の60歳以上の再雇用職員は80人程度で、全職員の1割超に相当する。本人の希望を聞き取り、健康で職場に貢献できると会社が判断した場合、雇用延長する。人数に制限は決めていないという。
 同金庫では、14年に再雇用職員を部長や支店長など上級管理職に起用する「上級ライン管理職コース」を導入していた。今回、幅広いシニア層が活躍できる場を設けることで、会社全体の底上げにつなげる。

 

東京信用金庫の定年後再雇用の仕組みの詳細は不明なのですが、上記の報道から行くと、有期雇用で65歳を期限としている模様ですが、それを制限なしに更新をするということである模様です。

すると契約期間が5年を超える事態が生じるように思われますので無期転換が気になりますが、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法で認められた厚生労働大臣の認定で適用除外になりますので、これを活用することでリスクを回避することはできることにはなります。

しかし、無期転換制度の適用除外がされても、雇止め法理などの適用がある有期雇用の原則に戻るだけですので、雇用期間の設定について完全に自由にできるかは不明なところがあります。

高齢者の雇用であるというところは最大の考慮要素になるとは思われますが、いつでも自由に雇用調整ができるかというとそうではない可能性には注意が必要であるといえるでしょう。

 にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村

 

最高裁、職場におけるセクハラ行為で警告や注意を受けることなく懲戒したのを無効とは言えないと判断 懲戒を受けたことを理由とする人事上の降格事由も有効と判断

セクハラについての処分が争われて最高裁判例が出ましたので取り上げます。

かなり程度のひどいセクハラ態様であることから事例判断の側面が強く感じられますが、人事労務に関する非常に重要な判示が行われており、その点に注目して取り上げます。

最高裁判所第一小法廷平成27年2月26日判決 平成26(受)1310 懲戒処分無効確認等請求事件

すでに報道で明らかになっていますが、大阪市にある有名な水族館である海遊館の管理職の社員2名が派遣の女性従業員に1年以上にわたって執拗なセクハラ行為を行い、当該派遣労働者は派遣元を退職してしまいました。

運営会社である第三セクターである株式会社海遊館(上告人)は、セクハラ防止を重要課題と位置付けていたことから、本件で問題となったセクハラ行為より以前にセクハラを禁止する文書を出しており、様々な取り組みを行っていました。

退職した被害従業員からの申告によりセクハラの事実を把握した上告人は、セクハラをした社員(被上告人)を懲戒処分とし、出勤停止としました。

このときの就業規則の規定の適用関係は、禁止行為として定められていた「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」と懲戒事由としての「就業規則に違反したこと」であり、懲戒の種類は行為の軽重によって、戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇が定められていました。

上告人は上から二番目の重さの懲戒をしたということになります。

また、上告人は、職能等級制度を採用している模様ですが、その中の人事権としての降格の事由に懲戒処分を受けたときという定めがあったことから、上告人は被上告人を降格させたものです。

これによって当然、賃金の減少を招いたわけですが、被上告人から懲戒処分の無効確認請求訴訟が提起されました。

原審は、請求を認めて、懲戒処分を無効としました。

その判断の骨子は以下の通りになります。

  • 被害者から明確な拒否をされていないことから許されていると誤信していたこと
  • 事前に警告や注意等を受けていなかったこと

セクハラは客観的に判断されるものであり、受け手によって左右されるのは妥当ではないことは一般化してきていますので、セクハラに当たらないといっているのではなく誤診していたのでやむないという情状事由としての捉え方をしているとはしても妥当とは受け取れませんが、二点目には相当な重みがあります。

確かに懲戒の有効性判断においては、注意や指導をしてもそれでもなお懲戒事由該当行為をしたことという補充性の原則のようなものを求める考え方がありますので、その点に考慮をして重すぎると大阪高裁は判断したことになります。

しかし、最高裁はこの点について、以下のようにいきなり懲戒することを許容しました。

原審は,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして,これらも被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,上告人の管理職である被上告人らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上記(1)のような上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや,本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており,従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において,上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば,被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。

上記のとおり、注意する機会がなかったということとと、さんざん取組をしていたので、具体的注意を待たずに知っていて当然という二点から根拠づけています。したがって会社が重要な方針として周知を図っていることで注意の機会が期待できないような場合にはいきなりの懲戒処分も許容されることがあるということになりましょう。

また、この件では、出勤停止の後に降格されていることから、二重処罰のようになり、その点から降格が無効と考える余地がありそうですが、この点についても最高裁は以下のように述べて有効としています。

本件資格等級制度規程は,社員の心身の故障や職務遂行能力の著しい不足といった当該等級に係る適格性の欠如の徴表となる事由と並んで,社員が懲戒処分を受けたことを独立の降格事由として定めているところ,その趣旨は,社員が企業秩序や職場規律を害する非違行為につき懲戒処分を受けたことに伴い,上記の秩序や規律の保持それ自体のための降格を認めるところにあるものと解され,現に非違行為の事実が存在し懲戒処分が有効である限り,その定めは合理性を有するものということができる。

判示から見る限りでは、上告人は職能等級制度をとっている模様ですので、懲戒処分を受けたことが職務遂行能力の欠如を意味するのかは若干疑問の余地はないではないところがあります。もっとも、懲戒されるような行為をすることは職場秩序まで含めて考えると職務遂行能力を欠いているといえないわけでもないように思えますので、そのような趣旨から最高裁は人事権としての降格事由を有効としています。

この降格についての判断は、重要な判断であり、職能等級制度について人事権の裁量の範囲を画する意味で本件を超えて通用する判示であるように思われます。

大変ひどい態様のセクハラであり、事案限りでも解決を図る必要は極めて高い件ではありますが、判示の内容はそれに限定するものではないことから実務に大変大きな示唆を与えるものではないかと思われます。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村

大阪高裁、阪神バスの障害のある運転手が配慮したシフトを打ち切られたため、新シフトで働く義務がないことの確認を求めた訴訟の控訴審で和解が成立

このブログでは取り上げるのを失念しておりましたが、阪神バスの障害のある運転手が、障害に配慮したシフトを打ち切られたことから、新しいシフトで働く義務がないことの確認請求訴訟を提起して、第一審で新シフトが公序良俗に反するとして請求が認められた事件の控訴審で和解が成立したことが明らかになりました。

報道によると会社が配慮を続けるということを内容とする和解である模様です。

この件では訴訟に先立って、仮処分も申立てられており、勤務ごとの時間を14時間あけることも認められていましたが、第一審判決ではその内容は命じられませんでした。確認請求訴訟なのである意味当たり前ですが、仮処分でシフト作成についても介入があったという点できわめて衝撃的な事態であったわけですが、配慮をするという内容で終わった模様です。

もっとも、本件は阪神電鉄が分社化して阪神バスが誕生した際に、勤務作成上の配慮がなされなくなったというものであり、経緯からして合理性が難しかった点が伺われる事案だったというところも作用しているように思われます。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村

日本テレビ、アナウンサーの内定取消をめぐる訴訟で和解 アナウンサー部配属予定の内定者に戻すという内容であり、4月入社の見込み

ミス東洋英和で日本テレビにアナウンサーとして内定していた大学4年生の女性が、クラブでのアルバイト経験を申告していなかったことを理由に内定を取り消されたところ同社を相手取って訴訟提起していた事件で、8日、和解が成立したことが明らかになりました。

日テレ女性アナ内定取り消し訴訟和解 4月入社へ  :日本経済新聞 2015/1/8 20:42

日本テレビのアナウンサー採用が内定した後、東京・銀座のクラブでのアルバイト経験を理由に内定を取り消されたとして大学4年の笹崎里菜さん(22)が地位確認を求めた訴訟は8日、東京地裁で和解が成立した。日テレが笹崎さんを「アナウンス部に配属予定の内定者」に戻すとの内容で、4月に入社する。

(略)

日本テレビが内定取り消しの理由としてアナウンサーとしての清廉性などとしたため、クラブでホステスとしてのアルバイトに対する見方などが話題となってしまいましたが、そこから離れて内定をめぐる教科書的な法的整理をまとめておこうと思います。

内定とは、やや意外に思われるかもしれませんが、判例によるとすでに労働契約が成立しているとされています。

正確には、将来の日付である入社日を開始日とする始期がついており、内定事由に書かれている事由が生じたら解約できる解約留保権もついている労働契約が成立しているとしています。

そのため、内定取消の問題は、内定事由に書かれている取消事由に該当するかという問題になるので、日本テレビがどのような内定取消事由を示していたのかが第一義的には問題となります。

しかし、実際には内定取消事由は広めに書いているものですし、バスケット条項も入っているのが普通です。したがって清廉性がバスケット条項などに照らして該当するのかという問題になりますが、判例は内定取消事由そのままではなく社会通念上許容されるものに限定しますので、その意味では、清廉性とホステスとしてのアルバイト経験、そしてそれを申告していなかったことの当否が問題となったのは結論としては裁判所の判断とそれほど異なるものではなかったと思われます。

もっとも、内定取消を争った場合で無効と判断された場合の効果も損害賠償とすることで一般的な理解がありますし、上記のような理解では内定の地位は比較的強いものといえそうですが、世の実態としては内定取消の事態はかなり労働者にとって厳しいものであることが多いと思われます。

そういう意味では、かなり異例な結論になった一件ということができましょう。

ちなみに興味深いのは和解に含まれている文言である「アナウンサー部の配属予定」ということですが、文言の用い方からも、これは職種限定契約であることを示すものではなく、最初の配属部署を明示しているに過ぎないと思われます。

本件からは離れますが、求人において担当してもらう職務を示すことはよくありますが、裁判例的にはそれでもって職種限定契約であると解釈することには極めて制限的です。本件も当然そのような労働契約であるものと思われます。

にほんブログ村 経営ブログ 法務・知財へ
にほんブログ村

青山学院大・高等部・中等部等の教職員の一部が、一時金の減額を違法として差額を請求して、学校法人青山学院を提訴

青山学院大などを運営して著名な学校法人青山学院が、賞与に当たる一時金を例年よりも減額して支給したところ、教職員の一部がこれを違法として差額を請求して東京地裁に提訴したことが明らかになりました。

青山学院:教職員2割が提訴 「一方的に一時金減額」 – 毎日新聞 2014年12月25日 07時30分

学校法人「青山学院」(東京都渋谷区)の教職員285人が、一方的な一時金の規定廃止によって支給額を減額されたとして、学院を相手取り、規定との差額にあたる総額約5000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしたことが分かった。原告には大学教授らも名を連ね、学院が設置する大学や高等部、中等部などの教職員全体の2割に達するという。

 訴状などによると、教職員の一時金は1953年以降、就業規則で定める規定に基づいた額が支給されていた。しかし学院側は2013年7月、「財務状況が非常に厳しい。取り崩し可能な資金にも余裕がない」などとして、規定の削除と一時金の減額を教職員の組合に提案。その後、組合の合意を得ないまま就業規則から規定を削除した。2014年夏の一時金は、規定より0.4カ月分低い2.5カ月分にとどまった。

 学院側は教職員側に対し、少子化や学校間の競争激化を理由に挙げ、「手当の固定化は時代にそぐわない」などと主張。一方、教職員側は「経営状態の開示は不十分で、一方的な規定削除には労働契約法上の合理的な理由がない。学院と教職員が一体となって努力する態勢が作れない」などと訴えている。

(略)

上記の報道中に言及されていますが、青山学院は一時金の金額について算出方法を就業規則に定めていたということが重要になります。すなわち、本件は、就業規則の不利益変更の問題ということになります。

使用者が就業規則を不利益な方向に一方的に変更してしまった場合を、就業規則の不利益変更の問題といいますが、この場合については労働契約法に規定があります。

労働契約法

第10条 
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

要するに不利益変更が合理的といえるかということになり、上記の規定中に現れている事情の総合考慮ということになります。報道からうかがえる事情で法律上意味を持ってきそうな事実は、経営状態、金額を算出する内容を削除したということ、組合との話し合い程度、削減した金額の多寡などということになりましょう。

しかし、いくら減らしたということもさることながら、一時金の金額を算出する算式を削除したという今回の内容は興味深い問題であるように思われます。今までは算式があった以上、支給を引き下げる算式にするくらいでよかったのではないかという考え方がありうるところです。

給与が減額された場合で争いになると、不利益になった金額の多寡が検討されますが、これは給与の内容を引き下げる変更をしているためで、金額の多寡は変更後の規定の内容そのものであるのです。

それに対して本件は算出方法自体をなくしてしまって、そのうえで適宜の金額を支給しているので、金額の多寡とは別の問題となる可能性があります。この点は注意が必要です。

しかし、規定を削除したことが極端化というとそうとも言えないと思われます。支給時の業績から賞与の金額を算出するための算式を持っていない企業はそう多くはないでしょうが、あくまで内部的なものにとどまり、給与規程等に規定までして労働契約の内容としてしまっている場合は多くはないと思われます。

そういう意味では、青山学院側の主張である手当の固定化は事態に合わないというのは他の企業の例を見るならばその通りであり、それほどおかしいことではないのだと思われます。

すると決めては、経営状況ということになるのかもしれません。

これまで問題となってきた賃金制度の変更とは若干異なる問題状況であることから非常に興味深い事例であると思われます。

「ステーキのどん」等運営の株式会社どん、短時間勤務制度を育児、介護などの事由がなくても取得できるように制度変更 時間限定社員も創設へ

「ステーキのどん」などを運営する株式会社どんにおいて、いわゆる限定正社員の導入が行われることになった模様です。

吉野家HD傘下のどん、理由なしで時短勤務OK  :日本経済新聞 2014/12/19 23:49

吉野家ホールディングス傘下で「ステーキのどん」を運営するどん(東京・北)は来春、社員が育児などの理由がなくても利用できる短時間勤務制度を導入する。勤務時間は4時間か6時間。勤務時間の短いアルバイトでも社員に登用しやすくする。外食業界の人手不足は今後も続くとみて、働きやすい環境づくりを進めるのが狙いだ。

(略)

日経新聞の報道によると、「どん」は、短時間勤務制度の拡大と時間外労働のない時間限定社員の二種類の人事制度変更を行う模様です。

短時間勤務制度は、育児介護休業法にあるもので、育児や介護といった事由のある労働者から請求があると認めるというものですが、これを理由を問わない形に拡大するということで、育児介護休業法の制度から、時間を限定した限定正社員の仕組みに性格が拡大することになるといえます。

あえて短時間勤務制度を広げるということにしたのは、原則はあくまでフルタイムの所定労働時間としつつ、一時的な仕組みとして扱うためなど理由は想像されますが、実際のところは不明です。

また、時間外労働のない時間限定社員を設けるとのことで、こちらも、育児介護休業法にある時間外労働の免除の仕組みを拡大するものといえそうです。

本件の特徴はフルタイムの正社員以外の雇用種別を増やすというこれまでの限定正社員の導入実例と異なる点が興味深いものがあります。

また、報道によると、導入の背景は、外食産業の人手不足があるということで、特に新卒者がこの業界に入ってくるハードルを下げたいという意向があるとされています。この点もこれまでの限定正社員の例とは異なるものがあり、特徴ある実例として興味深い一件であると思われます。

神戸大学大学院医学系研究科の元准教授が、当時の教授から不当に退職を迫られたとして、大学と教授を相手取って提起した損害賠償請求訴訟の控訴審で、和解が成立

大阪高裁において、神戸大学大学院医学系研究科の元准教授が、教授(当時)から不当に退職を迫られたとして、大学と教授を相手取って提起した損害賠償請求訴訟の控訴審で、和解が成立して終了したことが明らかになりました。

神戸新聞NEXT|社会|神大アカハラ訴訟が和解 元准教授に解決金 大阪高裁 2014/12/3 14:11

神戸大大学院医学研究科の准教授だった男性(59)が、教授(当時)から不当に退職を迫られたとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審は、大学と教授が計125万円の解決金を支払うことなどを内容とする和解が3日までに、大阪高裁(小松一雄裁判長)で成立した。

 和解は11月7日付。解決金のほか、大学が「遺憾の意」を表し、ハラスメントの再発防止に努めることなどが含まれる。一審神戸地裁判決は、退職勧奨に応じないことへの嫌がらせとして診療や研究の制限があったと認め、計275万円の支払いを命令。大学と教授が控訴していた。

 一審判決によると、男性は2007年に准教授に着任し、08年以降、教授に退職を強要された。断ると組織再編に合わせて配置異動させられるなどし、10年に解任された。

退職勧奨をした理由については、この和解に関する報道ではあまり明らかではないのですが、上記のとおり原判決でも損害賠償が認められておりこの判決に関する報道によると以下のような事情があった模様です。

神戸新聞NEXT|社会|元医学部長の「アカハラ」認定 神戸大に賠償命令 神戸地裁 2013/6/29 05:45

(略)

判決によると、元医学部長は2008年4月に就任。当時、元准教授が科長を務める血液内科を腫瘍内科と統合・再編する計画が進んでおり、元医学部長は元准教授に「自分で身を引けへんかったら処分する」「進退を一任しないなら、研究も診療も一切できないようにする」などと再三退職を強要。元准教授が拒否すると「助教授のくせに」「アホ」「エゴイスト」などと非難した。

 小西裁判長は「長時間、侮蔑的・脅迫的な表現で退職を迫っており、不法行為に当たる」と認定。さらに、診療や研究ができない地位に追いやったことや、厳重注意処分としたことも「制裁や嫌がらせを目的にしたもので、原告が受けた精神的苦痛・不利益は大きい」と指摘した。

(略)

要するにきっかけは大学内というか医学部内の組織再編にあったことが伺われます。

上記報道では具体的な行為態様も引用されており、どのような退職勧奨がアカハラ、一般的な企業車内に置き換えるとパワハラに当たるかと検討するうえでの事例として有意義なものと思われます。

群馬大学、研究者に対するパワハラで教授を懲戒解雇

パワハラに関する懲戒処分の事例がまた報道に出ましたので取り上げます。

群馬大:パワハラで40代教授を解雇 – 毎日新聞 毎日新聞 2014年11月20日 21時17分

群馬大は20日、部下の教員5人にパワーハラスメントや暴言を繰り返したとして、大学院医学系研究科の40代の男性教授を懲戒解雇したと発表した。

大学によると、教授は2012年1月〜13年8月、同じ研究室の助教や講師の男性4人と女性1人に対し、退職や休日出勤を強要したり、長時間にわたり叱責、侮辱したりしたとしている。女性に対し、「結婚は三角、出産はバツ」との趣旨の発言もあったという。5人のうち2人が退職した。

 教授は大学の調査に対し女性蔑視発言を認めたが、他の行為については「指導の範囲内」と説明したという。大学側は教授を諭旨解雇とすることを決め、退職願を書くよう勧告したが、本人が拒否したため20日付で懲戒解雇とした。

(略)

いわゆる研究室に入ってきた研究員に対するパワハラということで、相手が大学院生など学生の立場であったとしたらアカハラになるところだと思われます。

他社の報道によると、当の教授は、

この教授は「ずっと一人で研究してきた。(部下に)どう接したらいいか分からない」と指導法の悩みを周囲に漏らしていたという。

とのことで、教授がこのような乱暴な言動に及んでしまったことの原因が伺われるところです。

群馬大学は、当初、諭旨解雇にしようとしたところですが、拒否したため懲戒解雇としたとなっています。諭旨解雇は、法的に正確な定義があるわけではありませんが、一般的には期限を定めて退職届の提出を促し、提出がされない場合には懲戒解雇とするものです。

そのため懲戒解雇よりは一段前の懲戒処分ということになりますが、懲戒解雇してしまった場合には、懲戒解雇としての有効性の問題になるため、実のところ、懲戒解雇相当の事案ではない場合にはできないのが実情と思われます。

東京地裁、日本ボクシングコミッションの元事務局長が提起した解雇無効等確認請求訴訟で、解雇事由とされた事実が認められないとして解雇を無効とするなど原告の請求認容の判決

下記従前の記事 2012.06.24 法律関係tweetまとめ | Japan Law Express の関連情報です。

2012.06.24 法律関係tweetまとめ | Japan Law Express

[法律]日本ボクシングコミッションの元事務局長,就業規則違反を理由としてされた同氏に対する解雇を,不当解雇であるとして東京地裁に訴訟提起(6月20日)。同氏は,解雇に先立って,降格処分も受けており,それについても訴訟提起しているとのこと。

この訴訟ですが、解雇無効、降格処分も無効という原則の請求認容の判決に至ったことが明らかになりました。

JBCの懲戒解雇は無効=前事務局長が勝訴—東京地裁 – WSJ 2014 年 11 月 21 日 17:30 JST 更新

日本ボクシングコミッション(JBC)から懲戒解雇された安河内剛氏(53)が、事務局長としての地位確認などを求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。松田敦子裁判官は「処分は正当な理由がなく無効」として訴えを認めるとともに、JBC側に慰謝料30万円などの支払いを命じた。

 松田裁判官は、懲戒処分の前に行われた事務局長からの降格処分について、「JBCが団体分裂を回避するため、現事務局長代行らの要求を受け入れて安河内氏を排除することが目的だった」と指摘した。 

上記では引用していませんが日経の報道によると、判決で認定されている事実の経緯は以下のようなものであるとされています。

JBCは2011年6月、業務上の不手際を理由に安河内さんを降格処分にした。提訴翌月の12年6月には「別団体を設立しようとした上、ボクサーの個人情報を外部に漏らした」などとして懲戒解雇にした。

これに対して、東京地裁は、解雇事由とされた事実について証拠がないなどとして、懲戒事由該当性を否定する判断をした模様です。懲戒事由に該当しない以上、懲戒解雇処分は当然に濫用ということになります。

また、これに先立つ人事上の降格についても、対立する幹部の引き留めの目的で不当になされたものとしています。

業務上の不手際による降格ですので、人事権行使ではなく懲戒処分としての降格のように見えなくもないですが、東京地裁の判断枠組みからして人事権の濫用の枠組みで判断していることから、あくまで普通の人事権行使として検討している模様です。

法的に新規な点があるというよりは、事実関係に重きのある事案であると思われます。

裁判例情報

東京地裁平成26年11月21日判決

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法が成立。有期雇用の無期転換制度に例外が設けられる

改正労働者派遣法が廃案、無期転換の特例を認める特別措置法も継続審議になることが明らかに | Japan Law Expressの続報です。

労働契約法改正で新設された有期雇用の無期転換制度に例外を設ける特別措置法は、通常国会で継続審議になっていましたが、臨時国会で成立しました。

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案:参議院

特別措置法の大まかな内容は下記の通りです。有期雇用の無期転換の通算5年の原則の例外を設ける特別措置法が閣議決定 | Japan Law Express

例外は極めて狭く、高齢者の再雇用の場面での活用はありそうですが、それ以外はどれほどの実例があるか微妙そうです。

また、例外扱いにあたっては厚生労働大臣の認定が必要であるため、例外扱いを実現するまでの間にもう一山あることに注意が必要であるように思われます。