労働契約法

京都大学iPS細胞研究所、有期雇用職員の一部を無期転換

京都大学iPS細胞研究所が、研究者の研究環境の改善のためとして、有期雇用の職員の一部を無期転換したことが明らかになりました。

京大iPS研、有期雇用職員を寄付金で無期転換  :日本経済新聞 

2018/4/30

寄付金を財源にして有期雇用の教職員のうち13人を4月から無期雇用に転換した。研究者や研究を支援する職員で、優れた研究業績や組織運営上の貢献などを考慮した。研究環境が改善し、研究者が研究に集中したり長期的な視野で研究テーマを設定したりしやすくなり、研究活動が活性化すると期待する。

 京大本部の人事課によると、寄付金を財源にした無期雇用転換は珍しい。

(略)

昨今みられるようになっている研究不正がこちらでも発生したこともあり、長期的な視点で研究に打ち込めるようにとの対策の性格もあると思われます。

もっとも、原資は寄付金であり、恒久的な財源ではないことから、限界があるようで、約300人の職員のうち、9割が有期雇用であり、無期転換したのは13人とのことです。

松山地裁、井関農機のグループ会社の契約社員が手当や賞与の不支給を違法と主張して提訴した損害賠償請求訴訟で、手当について不合理な待遇格差であるとして約232万円の支払を命じる

いわゆる労働契約法20条訴訟で新たな裁判例が出ました。

違法格差認め手当支払い命令 井関農機グループ2社に  :日本経済新聞 2018/4/25 7:39

正社員と同じ業務なのに、手当が支払われず賞与に格差があるのは違法だとして、井関農機(松山市)のグループ会社2社の契約社員5人が2社に計約773万円の支払いなどを求めた訴訟の判決で、松山地裁(久保井恵子裁判長)は24日、手当の不支給を違法と認め、計約232万円の支払いを命じた。賞与については認めなかった。

 訴えていたのは「井関松山ファクトリー」の2人と「井関松山製造所」の3人で、訴訟としては2件。

 久保井裁判長はそれぞれの判決で、契約社員と正社員の間で「業務の内容に大きな相違があるとはいえない」と認定。住宅手当や家族手当の他、年齢に応じて生活費を補助する物価手当、欠勤がない場合に支払われる精勤手当の不支給は、労働契約法20条で禁じる「不合理な待遇格差」に当たるとした。

 一方、賞与の格差については契約社員も10万円程度が「寸志」として年2回支払われており、「有為な人材の獲得と定着のために一定の合理性が認められる」などとし、違法性を否定した。

(略)

判決全文については確認できていないのですが、業務の内容に大きな相違があるとは言えないとしたとされていますが、結論は一部認容なので、違いについても認定しているところがあるものと思われます。

また、手当は違法としつつ、賞与については寸志としての支給があることから違法としなかった点は注目に値すると思われます。

もっとも、住宅手当、家族手当、生活費の補助の物価手当、精勤手当などはどれもかなり伝統的な手当であり、業務や職務と直結しない手当の項目が多数並んでいるという点からして労務管理としてどうなのだろうかという感じがしないでもありません。

 

 

最高裁、ハマキョウレックス事件で弁論を開く 判決は長澤運輸事件と同じく6月1日

正規従業員と非正規従業員の基本給や手当の違いが労働契約法20条の問題となっている事件の先行事例にあたるハマキョウレックス事件の最高裁での弁論が開かれました。判決は6月1日に指定され、長澤運輸事件と同日になることが決まりました。

正社員と契約社員の待遇差 最高裁で弁論  :日本経済新聞 2018/4/23 17:45

業務内容が同じなのに、正社員と契約社員で賃金や手当に差をつけることの是非が争われた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は23日、当事者の主張を聞く弁論を開いた。判決は6月1日。正社員と非正社員の待遇に不合理な差をつけることを禁じた労働契約法20条の解釈を巡り、最高裁は初の判断を示すとみられる。

 原告は、物流大手「ハマキョウレックス」(浜松市)の契約社員の男性運転手。2016年7月の二審・大阪高裁判決は、「通勤手当」や「無事故手当」など4種類の手当について、正社員との格差を不合理と指摘。同社に差額分計77万円の支払いを命じた。

 原告側はこの日の弁論で、同法20条の適用について「職務内容という客観的な要素を最も重視すべきで、合理的に説明できない格差は原則無効と解釈すべきだ」と主張。「正規労働者と非正規労働者の不合理な格差は、放置できない状況になっている」と訴えた。

 一方、会社側は「人手不足が深刻ないま、人材獲得のため正社員に手当を支給したり福利厚生を充実させたりすることは、会社の合理的な裁量の範囲内にある」と主張。各種手当の差は不合理ではないと述べた。

(略)

 

労働契約法20条をめぐる訴訟は、実際のところ、職務内容や人事の範囲を検討した結果、完全に同じということはそうはないことと、その違いを基本給の金額に換算していくらということを説得的に言いにくいということもあり、結果、たどり着いたのが手当であり、手当の趣旨が妥当するかが主戦場になってしまうという状況を生んでいます。現在用意されている立法でも、この判断枠組みを一般化する方向であるので、最高裁の判断もこの中において、統一的な判断基準を示すのではないかと私見では予想しています。

ちなみに手当が主戦場になってしまうというのは、比較法的には結構、珍しい事態であるほか、そもそも近時、成果主義的な賃金制度が徐々に浸透してきており、手当を整理する方向が出てきているため、そもそも論的に限界のある話なのではないかという印象があります。

最高裁、長澤運輸事件で弁論を開く。判決は6月1日

定年再雇用で仕事が変わらず賃金が下がったのを、労働契約法20条違反と主張したいわゆる長澤運輸事件の上告審で、20日、弁論が開かれ、判決は6月1日と指定されました。

最高裁:再雇用賃下げ、初判断へ 原告「正社員と同じ仕事」 – 毎日新聞 2018年4月21日

仕事内容は同じなのに定年後の再雇用で賃金を減らされたのは違法だとして、横浜市の運送会社「長沢運輸」で働く契約社員の運転手3人が正社員との賃金差額を支払うよう同社に求めた訴訟の上告審弁論が20日、最高裁第2小法廷(山本庸幸(つねゆき)裁判長)であった。運転手側は逆転敗訴した2審判決の破棄を求め、会社側は維持を求めて結審した。判決は6月1日に言い渡される。

(略)

労働契約法20条にある有期雇用の不合理な労働条件の禁止に条文に関する事件なのですが、いわゆる正規と非正規の違いではなく、定年再雇用の労働条件の問題であるところが、特徴的な事件となっています。正規と非正規の違いのケースであるハマキョウレックス事件もこれに続いて最高裁で弁論が開かれることから、近い論点の事件について統一的に判断をするものと思われます。

 

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日本相撲協会、セクハラをしたとされる式守伊之助を三場所出場停止の懲戒処分

大相撲の立行司・式守伊之助のセクハラ騒動ですが、日本相撲協会からの処分が決定されまして、労働法的観点からコメントをしようと思います。

式守伊之助、夏場所後辞職へ…無報酬で自宅謹慎 : スポーツ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)2018年01月13日 19時16分

 日本相撲協会は13日、両国国技館で臨時理事会を開き、泥酔して若手行司へセクハラ行為を働いた立行司の第40代・式守伊之助(58)(宮城野部屋)を、3場所出場停止の懲戒処分とするとともに、前日提出された辞職願を処分が明ける5月の夏場所後に受理することを決めた。

 この間、無報酬で自宅謹慎を命じ、土俵外での業務も行えない。伊之助は今後、土俵には上がらず協会を去る。

 発表によると、伊之助は沖縄県宜野湾市で冬巡業が開催された昨年12月16日夜、泥酔し、10代の若手行司に複数回キスをするなどの不適切な行為を行った。若手行司に被害届を出す考えはなく、今後も行司を務める意向だという。

(略)

 

1 同性間におけるセクハラ

まず、セクハラの概念についてですが、近時、均等法から委任を受けて定められている「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」が改定され同性に対する行為もセクハラとして、明記されました。

今回、後輩の行司に対する性的な行為であることから男性同士ということになりますが、これはまさにセクハラに当たるものであるということを改めて確認させてくれる事案となっているわけです。

2 出場停止処分後の退職の扱いについて

懲戒処分は当該労働者が在職中しか行うことができません。今回、辞職願という合意退職の形をとっていたため、日本相撲協会が受理するまでは退職が有効にならないため、処分を先にしてから退職とすることが可能になったわけです。逆に言うと、辞職願ではなく辞職届であった場合には、2週間経過後に一方提起に辞めることができてしまいますので、出場停止処分は一部期間については空振りということになってしまうということもありえたわけでした。今回は最後についても協会と調整の上で行っていると思われますのでそのような事態は生じようもなかったわけですが、教科書的な理屈だけでいくと、そのような場面であったわけです。

退職しかねないような重大な不祥事の場合、処分と退職のどちらが早いかのようなことは往々にして起きてくるところですので、今回のような机上の検討ばかりではないのが実態でもあります。

フジテレビ、暴力団関係者に乗用車の購入にあたり名義貸しをした同社社員を休職1カ月の懲戒処分にしたと報道される

京阪バス、運転中にポケモンGOを操作していたとしてバス運転手を懲戒解雇

東京高裁、大王製紙の内部告発者の解雇をめぐる訴訟の控訴審で双方の控訴を棄却

同一労働同一賃金の実現に向けた検討会、正規雇用と非正規雇用の待遇差が認められる場合の指針を作成へ

 
同一賃金同一労働の実現が政策課題となっていますが、厚生労働省内に

同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」が設置されて議論が進められています。

この検討会では、正規雇用と非正規雇用の待遇差が認められる場合の指針の作成が進められていますが、22日の会合において、委員である東大の水町教授から発表が行われ、待遇差が合理的と認められる場合について見解が示されたことが明らかになりました。

注目するべきは、補足資料のほうでして、こちらに待遇差が認められると考えられる部分についての言及があります。

第3回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」資料

資料2-2 同一労働同一賃金の推進について(補足【Q&A】と【参考文献】)(PDF:153KB)

職務内容と関連性の高い給付(基本給、職務手当、教育訓練など)

…職務内容、経験、資格などが合理性を基礎づける事情となりうる。基本給が職能給の場合には、キャリアコースの違いもそれが基本給の違いを説明できる内容のものであれば合理性を基礎づける事情となりうる。

 

同一労働という言葉や、同一労働同一賃金についての政府の検討の方向性としてすでに新聞の記事で言及されてきた内容では、習熟度などが言及されており、職務給を念頭にしたものという考え方がでていました。

これ自体は、同一賃金同一労働の考え方として一つの立場としては正当なものなのですが、日本では業務ごとの賃金という考え方が薄いため、そのまま進むとかなりの不整合になることが予想されるところです。

上記の水町教授の見解は、職能的な仕組みを選定として合理性を基礎づけることを可能とするものであり、日本企業への導入が容易になるようにという観点が入っていることがうかがわれるところです。

立法がなされる方向自体は変わっていませんが、その内容はかなり詰められてきている感じを受けるところです。今後も動向に注意が必要でしょう。

コープさっぽろ、パートの定年を65歳に延長することや正社員は介護などでの離職後5年以内なら同じ職ぐうで復職を認める人事制度を導入

人材不足が強まってきていることから、人材確保の観点から様々な人事制度の導入が試みられていますが、その一例として興味深いものが報道されましたので取り上げます。

コープさっぽろ、パート定年65歳まで延長  :日本経済新聞 2015/11/5 10:50 日本経済新聞 電子版

コープさっぽろは2016年度、高齢化社会に対応した新しい人事制度を導入する。パート・アルバイトの定年を現在の60歳から65歳に延長。親の介護などで退職せざるを得ない正社員については、5年以内なら同じ処遇で復職できるようにする。流通業で人手不足の問題が深刻になるなか、高齢化社会の進行に合わせて人事制度を見直し、優秀な人材の流出を防ぐ。

(略)

報道によると柱は①パートの定年を60歳から65歳にすることと、②介護等の理由で離職した正社員は5年以内ならものと処遇で復職を認めるというものです。

(1)定年の延長

定年を65歳にするという点ですが、定年という言い方をしているのだとすると期間の定めのないパート社員なのかと思いますが、従来から希望があれば68歳まで雇用延長をしていたとのことです。

しかし、賃金体系は安いものに変わるとのことで、業務内容も軽作業中心となっているとのことでした。

これは別にパート社員についてのものではなく、高年齢者雇用安定法によって要請される無期社員に対する継続雇用措置の内容として適切な内容であると評価されます。

高年齢者雇用安定法による継続雇用の場合には労働条件は自由に設定できますが、業務内容もそれに合わせたものになることが要請されるのは当然のこととされています。

このような高年齢者雇用安定法による継続雇用義務が、正社員の継続雇用以外にも適用されるのかは、実は別論なのですが、それはさておき、その趣旨を汲んだ人事制度を導入していたところ、さらに進めて、定年を延長し、賃金体系はそのままにして業務内容もそのままにするというところに意味があるわけです。

(2)5年以内の復職

二つ目の特徴である復職の制度は類例がそれほどあるわけではなく、大変注目される仕組みと思われます。

復職とはいうものの法的には再度採用するということでしょうから中途採用ということになるかと思われますが、報道から読み取れる限りでは、希望があれば自動で復職を認めることになりかねず、募集のプロセスがなくなってしまいかねないようにも読みとれました。この点については詳細が分からないので何とも言えないのですが、大変意欲的であると同時に、若干、人事上はリスクにもなりうるように思われます。

 

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