2019年12月27日付
https://r.nikkei.com/api/article/v1/plain/DGKKZO54125480X00C20A1CR8000
医師の長時間労働も問題になってきていますが、医師のオンコール対応について、36協定を締結せずに行っていたとして労働基準法違反で是正勧告がされた事例が出たことが明らかになりました。
協定結ばず医師に時間外労働 藤田保健衛生大病院に是正勧告 :日本経済新聞 2017/12/26 23:15 日本経済新聞 電子版
藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)が時間外労働に関する労使協定(三六協定)を医師と結ばないまま緊急呼び出しをしていたなどとして、名古屋東労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが26日、同病院などへの取材で分かった。呼び出し時間に応じた割増賃金も支払っていなかった。勧告は11月22日付。
(略)
オンコール態勢で対応した医師は時間外労働になるわけですが、36協定の締結がされていなかったということと報道されています。
病院のような大きな組織で36協定を締結していないとなると大変な事態のように感じますが、他の報道も含めて判断すると、36協定自体は締結されているものの、その対象に医師が入っていなかった模様です。
36協定は事業場単位で締結しないといけませんが、協定届の様式で時間外労働をさせる具体的事由を記載しないといけないため、ここから部署ごとに人数を列挙して記載をしないといけないなっています。想像するに本件では、医師の部門が協定から落ちていたものと思われます。
従って、携帯電話などを渡して呼び出しがあったら駆けつけることにするいわゆるオンコールについて、労働基準監督署が労働時間性を認めたとかそういう論点ではないと想像されます。
過重労働対策が社会的課題になっていますが、新国立競技場の建設現場でも労災申請がされる労働者の自殺が起きており、これに対して労基署が調査を行っていることが明らかになりました。
新国立工事現場に立ち入り調査、新宿労基署、作業員自殺受け :日本経済新聞 2017/7/21 14:20
新国立競技場の工事現場で管理業務に従事していた入社1年目の建設会社の男性社員(当時23)が3月に自殺し、遺族が労災申請したことを受け、新宿労働基準監督署(東京・新宿)は21日までに工事現場を任意で立ち入り調査した。
男性は昨年4月に東京都内の建設会社に入社。同社は新国立競技場の建設を請け負う大成建設から地盤改良工事を受注し、男性は同12月に施工管理業務に就いた。会社の調査によると、男性の時間外労働は今年2月に約193時間に上った。男性は3月に失踪し、4月に長野県で遺体で見つかった。
建設現場を管轄する新宿労基署が19日に調査を実施。現場監督者らから勤務状況などを聞き取ったとみられる。
3月に自殺があり、7月12日に遺族が労災申請をしたとのことで、それに対して一週間ほどで労基署の調査が入ったことになります。
報道ではそこまで触れられていませんが、過労自殺が疑われる労災申請の場合、関連する労基署の調査は、今日では二種類ありえまして、労災認定のための調査と過重労働が行われていないかの調査になります。
本件はおそらく前者だと思うのですが、改めて労働基準法違反について行政指導または送検のために調査に来る可能性もあるところです。
労災と労基署の監督行政の連動は、脳心臓疾患、精神疾患の労災申請の場合に発動されることから、労災の可能性のある事態の発生も重要な契機となることは認識が必要となっています。
藤沢労働基準監督署、三菱電機と労務管理担当の社員を労働基準法違反で送検(11日)。労使協定の上限である60時間を超えて78時間の時間外労働をさせたもの。36協定の数値内に収めるように虚偽申告することも指示されていたともされる。 https://t.co/eJVlwDc6Hs
— Japan Law Express (@JapanLawExpress) 2017年1月15日
三田労働基準監督署、エイベックス・グループ・ホールディングスに是正勧告(9日)。割増賃金の不払いや労働時間管理を行っていないことなどを指摘された模様で、昨今問題となっている36協定違反の長時間労働よりも深刻な指摘と思われる。 https://t.co/ic8wuE9Ix2
— Japan Law Express (@JapanLawExpress) 2016年12月13日
中央労働基準監督署、朝日新聞東京本社に36協定の上限超えで是正勧告(12月6日)。法定時間外労働が85時間20分で労使協定を4時間20分超えたとされ、特別条項の上限超えと考えられる。管理職が部下の勤怠を短く書き換えた事象もある模様。 https://t.co/yL70tYuR3s
— Japan Law Express (@JapanLawExpress) 2016年12月10日
横浜北労働基準監督署、ヤマト運輸の神奈川平川町支店で時間外労働の割増賃金の未払いがあるとして是正勧告をしていたことが判明。配送業務で使用する端末の稼働時間を労働時間として提出していたものの配送業務後にも労働をしていた模様。 https://t.co/SGLE2a7WTb
— Japan Law Express (@JapanLawExpress) 2016年11月21日
電通社員の自殺が労災認定されたことなどを受け、労働基準監督行政の強化のため、政府は労働基準監督署の監督官を増員する方向になったと報道されました。
労働基準監督官、増員へ…電通の過労自殺受け : 政治 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2016年11月05日 15時00分
政府は、長時間労働の是正を目指し、労働基準監督署の専門職員である労働基準監督官を増員する方針を固めた。
電通の新入社員の過労自殺問題を受け、従業員に長時間労働をさせている企業の監督や取り締まりを強化する必要があると判断したためだ。残業時間を減らすための制度整備と並行して、現場の体制を拡充することで、働き方改革の実効性を高める狙いがある。
労働基準監督官は現在、全国321の労基署に3241人が配置されている。労働者1万人当たりの監督官の数は0・53人で、ドイツ(1・89人)、英国(0・93人)など欧州の先進国と比べて見劣りする。取り締まりを強化しようにも、「マンパワーが足りずに対応が追いついていない」(政府関係者)というのが現状だ。
(略)
もっとも、労働基準監督行政の強化をするにしても、労働基準監督官が依拠する労働基準法の理解は、議論のある論点についても特定の立場をとっていることがあることから、対応に困難を生じることがあります。
労働基準法は特に改正で追加された部分については労使のせめぎあいの中でできるため、統一的な解釈が困難であることがあります。監督行政を強化するといってもやるべきことがすんなり判明する論点ばかりではないことには注意がいると思われます。
東京労働局過重労働撲滅特別対策班、電通の過労自殺の労災認定を受け、同社に立ち入り調査(14日)。 https://t.co/JNA7UYccs5
— Japan Law Express (@JapanLawExpress) 2016年10月19日
川口労働基準監督署、山陽自動車道のトンネル多重事故の運転手の所属する運送会社と役員を労働基準法違反で書類送検(8月16日)。36協定に反して1日8時間超の時間外労働をさせたほか少なくとも2週間に1日の休日を付与しなかったとされる。 https://t.co/ftPSZQSUmy
— Japan Law Express (@JapanLawExpress) 2016年8月18日