労働基準法

大阪労働局過重労働撲滅特別対策班、労働基準法違反で株式会社コノミヤ、同社執行役員、専務取締役を送検

電通の36協定改定の件の続報で、同社は協定において所定外労働の上限を定めている模様であることが判明

電通、過労自殺の労災認定を受け、36協定の時間外労働の上限を引下げへ

川口労働基準監督署、山陽自動車道のトンネル多重事故の運転手の所属する運送会社と役員を労働基準法違反で書類送検

千葉労働局、違法な時間外労働をさせていたとして是正指導を行った企業名を公表

厚生労働省は過重労働対策をさまざま強化していますが、対策の一つとして挙げていた手法の一つで初めての発動事例が出ましたので取り上げます。

労働基準監督監督官が労働基準法違反を認めて、いきなり送検とはいかずまず行政指導を行って違反状態を解消することを促すことがよくありますが、この行政指導である是正指導を労働時間についての問題で行った企業名を公表するという方針が平成27年5月から行うとされていたのですが、それが初めて発動されました。

ジャスダック上場の棚卸代行のエイジスが、違法な長時間労働で是正指導を受け、企業名が公表されました。

厚労省、長時間労働の社名公表 行政指導段階で初  :日本経済新聞 2016/5/19 23:05

 厚生労働省千葉労働局は19日、最長で月約197時間の違法な時間外労働をさせていたとして、千葉市の棚卸し業務代行会社「エイジス」(ジャスダック上場)を是正指導したと発表した。同省は昨年5月、複数の事業所で違法な長時間労働をさせる企業について、是正指導をした上で社名を公表する方針を決定。今回が初のケースとなる。

 同社はスーパーなどから棚卸し業務を受託する営業拠点を全国に50カ所持つ。昨年5月以降、営業拠点4カ所で働く従業員63人に、労使協定で定めた上限時間を上回る月100時間を超える時間外労働や休日労働をさせていた。残業代は支払っていたとしている。

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千葉労働局のリリース

上記報道及び千葉労働局のリリースによると、100時間超の法定時間外労働を行っていた労働者の人数が記載されていますが、100時間超の時間外労働をさせることがただちに労基法違反なのではなく、36協定に違反する時間外労働をさせると労基法違反となります。

36協定は、特別条項をつけなければ月45時間、特別条項をつけるとその上限に規制はないため、本件は、特別条項を付けていないか、特別条項があってもそれを上回っていたものと思われます。リリースで取り上げているのが100時間で切っているため、特別条項を100時間としていたのかもしれませんが定かではありません。

この企業名の公表の取り扱いは、実は昨年に行うことを表明されており、実際に発動はされてこなかったのですが今回が初の事例となりました。

この公表は、いわゆる一般への情報提供という扱いになっており、法的な根拠を有するものではないのですが、実際には罰としての意味合いが極めて強いことからその構成の当否は問題があるといえましょう。

さて、なぜ今なのかというのは若干気になるところですが、慎重だったというよりは、実際のところ、下記リンクの通り、公表の基準をきわめて厳格にしており、大規模なケースではないと公表しないことにしているため適合するものがなかなか出てこなかったものとも考えられます。

厚生労働省ウェブサイトの情報

過重労働対策の一層の強化

長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底し、企業における自主的な改善を促すため、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、都道府県労働局長が経営トップに対して、全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表する。

都道府県労働局長による指導・公表の対象とする基準

指導・公表の対象は、次のⅠ及びⅡのいずれにも当てはまる事案。

Ⅰ 「社会的に影響力の大きい企業」であること。 ⇒ 具体的には、「複数の都道府県に事業場を有している企業」であって「中小企業に該当しないもの(※)」であること。 ※ 中小企業基本法に規定する「中小企業者」に該当しない企業。

Ⅱ 「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと。

1 「違法な長時間労働」について ⇒ 具体的には、①労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、かつ、➁1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていること。

2 「相当数の労働者」について ⇒ 具体的には、1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者において、「違法な長時間労働」が認められること。

3 「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」 について ⇒ 具体的には、概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で「違法な長時間労働」が認められること。

 

上記の基準で一番重大なのは、中小企業は除外されることとと複数の事業場で是正指導を受けることであり、これに該当するのは極めて珍しいことから、今回の公表に至ったものと思われます。

この公表のあと、同社の株価は急落しており、大変な影響があることがうかがわれます。

さて、同社は指導に基づき改善をしていることとなりますが、報道によると本件は期末の棚卸の業務によって長時間労働を強いられた面があった模様です。

同社の実情をまったく知らないため机上の空論の恐れはありますが、季節による繁閑がある業種の場合には、変形労働時間制を使うことによって労働時間を寄せることができるため、そういった面からの工夫もありえるところです。もっとも、日本企業では年単位の変形労働時間制を導入しているケースは統計上多いとされているため、そのような対処では生ぬるいほど、同社の業務は繁忙を極めているのかもしれません。

厚生労働省、退社から翌日の出社までに一定時間あける制度を導入した企業に助成金を出す内容を職場意識改善助成金に追加へ

EUでは、退社後、翌日の出社の間に一定の時間を空けないといけないという規制があります。

日本でも、ホワイトカラーエグゼンプションの労基法改正案を検討する際に、車の両輪として過重労働を抑制する仕組みをセットにすることを念頭にこのEUの規制を検討して導入を探ったのですが、現在の労基法の体系にあまり合わないことから見送りとなっていました。

このたび、厚生労働省が法規制の形ではなく、会社の制度として導入した場合に助成金を出すというソフトな方法で導入を図ろうとしていることが明らかになりました。

 

退社→翌日出社、一定時間空けて 就業規則明記で助成  :日本経済新聞 2016/5/4 1:38

 厚生労働省は従業員がオフィスを退社してから翌日に出社するまで一定時間を空ける制度を導入した企業に助成金を出す方針だ。就業規則への明記を条件に、早ければ2017年度から最大100万円を支給する。深夜残業や早朝出勤を減らすことで、長時間労働の解消につなげる。

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報道によると、助成金とは、具体的には、既に存在している職場意識改善助成金に追加することが検討されている模様です。

職場意識改善助成金(職場環境改善コース) |厚生労働省

この助成金は、国の雇用分野の助成金の例に漏れず、中小企業だけが対象なのですが、報道によると、大企業にも拡大の可能性があることが言及されています。

最近、安倍内閣が力を入れている分野である限定正社員関係などの助成金は企業の規模に関係なく支給されるようになっており、この点でもパラダイム転換がされてきています。

また、このような動きは、会社法の分野と同じくソフトローによる法実現といえ、興味深いものがあります。

労働行政は場当たり的なところがあるため、会社法や金商法のような理論的と実務という整理を貫徹させることはできませんが、非常に興味深い動きが強まってきていることは確かといえましょう。

日本マイクロソフト、柔軟な勤務形態を認めるため就業規則を改定 在宅勤務から就業場所を自宅に限らないテレワークに変更、フレックスもコアタイムを廃止

柔軟な勤務形態を認める動きが活発になっていますが、労働時間や勤務地の柔軟化ということになりますので就業規則の変更が必要となるのが一般的です。

このたびマイクロソフトが、5月1日付で就業規則を変更して、非常に幅広く柔軟な勤務形態を認めるようになったことが明らかになりました。

日本マイクロソフト、テレワーク推進へ就業規則変更  :日本経済新聞 

2016/5/3 23:40

日本マイクロソフト(MS)はインターネットを使って自宅などで働く「テレワーク」を推進するため就業規則を変更した。従来は働く場所やテレワークの回数を制限していたが、それらを取り払う。育児や介護などでオフィスに出社して働くのが難しい社員の能力を活用しやすくする。

 5月1日付で在宅勤務制度を廃止し、テレワーク勤務制度を導入した。

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報道からうかがえる勤務制度の変更は以下のような内容である模様です。

在宅勤務制度からテレワーク勤務制度へ変更

  • 2週間前申請から前日申請へ緩和
  • 週3日から週5日まで拡大
  • 勤務場所は、自宅限定から「業務遂行に適切な場所」で緩和
  • 一日の一部だけのテレワークも許容

フレックスタイムの緩和

  • コアタイムを廃止

 

自宅以外も許容するというのは意欲的な試みといえると思われます。

事業場外で勤務する場合には、執務環境として整備がされているか、情報漏えいの恐れはないかなどが問題となるため、確認が取れればその後もその環境の下で勤務することが期待される自宅限定であることが多いわけですが、それ以外も許容するとなるとセキュリティや通信環境が特に問題となりそうです。

通信環境やセキュリティについては貸与する端末でのみ勤務することなどの措置にすることでコントロールできますし、VDIなども有用と考えられます。IT企業であればこのような手法には親和性がありそうですので、解決可能と判断されているものと考えられます。

東京簡裁、ABCマートに違法残業で罰金50万円の略式命令

東京労働局、ABCマートで36協定で定めた上限時間を超える時間外労働があったとして、同社、人事担当役員及び従業員を東京地検に送検 | Japan Law Expressの続報です。少し時間がたってしまいましたが取り上げます。

労働基準法違反で送検された法人としてのABCマートとその関係取締役ですが、法人のみ略式命令で罰金という終局処分になったことが明らかになりました。

ABCマート法人に罰金50万円 違法残業で区検  :日本経済新聞 2016/3/3 1:32

 靴の販売店「ABCマート」を運営するエービーシー・マート(東京・渋谷)が従業員に違法な長時間労働をさせたとして、東京区検は2日までに、法人としての同社を労働基準法違反の罪で略式起訴した。東京簡裁は罰金50万円の略式命令を出し、同社が納付した。

 同区検は同法違反容疑で昨年7月に書類送検された同社の労務担当取締役ら3人は「事実を認め反省している」などとして、起訴猶予で不起訴処分とした。

 起訴状によると、同社は2014年4~5月、都内の2店舗で計4人の従業員に対し、労使協定で定めた上限(月79時間)や法定労働時間を超える月97~112時間の残業をさせたとしている。

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本件は、未払い残業代はなく、協定の上限時間をオーバーしていただけでした。そのため、賃金の未払いの場合に出てくる労働基準法37条の事件ではなく32条違反だけが問題となったのですが、略式命令とはいえ、刑事罰という結果となりました。

割増賃金の未払いがないのにこのような思い結論となったことは大変珍しく、厚生労働省と検察庁の捉え方が変わってきていることを伺わせる一件となりました。

なお、送検の時点で、東京労働局は是正勧告などを出して指導してきたのに改善がなかったとして送検に踏み切ったとしていのに対して、会社からは、すでに問題状況は改善しているので見解の相違があるとの発表がありました。

しかし、送検の対象となったのは過去の32条違反ですので、違反には違いないのですが、その後の対応が過去の労基法違反の帰趨を決めてしまうという問題状況になる点にも注意が必要といえましょう。

また、36協定の上限時間及び特別条項については発動手続きに違反があっても32条違反になるため、すべての企業において時間外労働の管理体制を見直す必要があると思われます。

なお、本件は東京労働局に設置された「かとく」の第一号案件でしたが、大阪労働局の「かとく」の第一号案件であるフジオフードの方では、本件と同じ32条違反のほかに一部、割増賃金の未払いもあったとされていることから、取り扱いはやはり重くなることが予想されます。