労働基準法

労働政策審議会労働条件分科会、賃金請求権の消滅時効について改正民法と同じく5年としつつも当面の間は3年とする労働基準法改正案を承認。通常国会に提出へ。施行は改正民法の施行と同じく4月1日を予定。

1月10日

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08869.html

堺労働基準監督署、堺市が医療業務を短時間補助する保健医療業務協力従事者を有償ボランティアとして年休を拒否したのに対して、労働者であるとして是正勧告

2019年12月27日付

https://r.nikkei.com/api/article/v1/plain/DGKKZO54125480X00C20A1CR8000

藤田保健衛生大学病院、36協定を締結せず、オンコール対応の医師に時間外労働をさせていたとして、名古屋東労働基準監督署から是正勧告を受ける

医師の長時間労働も問題になってきていますが、医師のオンコール対応について、36協定を締結せずに行っていたとして労働基準法違反で是正勧告がされた事例が出たことが明らかになりました。

協定結ばず医師に時間外労働 藤田保健衛生大病院に是正勧告  :日本経済新聞 2017/12/26 23:15 日本経済新聞 電子版

藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)が時間外労働に関する労使協定(三六協定)を医師と結ばないまま緊急呼び出しをしていたなどとして、名古屋東労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが26日、同病院などへの取材で分かった。呼び出し時間に応じた割増賃金も支払っていなかった。勧告は11月22日付。

(略)

オンコール態勢で対応した医師は時間外労働になるわけですが、36協定の締結がされていなかったということと報道されています。

病院のような大きな組織で36協定を締結していないとなると大変な事態のように感じますが、他の報道も含めて判断すると、36協定自体は締結されているものの、その対象に医師が入っていなかった模様です。

36協定は事業場単位で締結しないといけませんが、協定届の様式で時間外労働をさせる具体的事由を記載しないといけないため、ここから部署ごとに人数を列挙して記載をしないといけないなっています。想像するに本件では、医師の部門が協定から落ちていたものと思われます。

従って、携帯電話などを渡して呼び出しがあったら駆けつけることにするいわゆるオンコールについて、労働基準監督署が労働時間性を認めたとかそういう論点ではないと想像されます。

愛知労働局、36協定を超える違法な時間外労働で複数事業所で80時間を超えていたとして、大宝運輸に是正指導を行い、新しい公表基準に従って社名を公表

長時間労働が社会問題化する中で、違法な長時間労働については行政指導段階でも、企業名を公表するという運用がなされてきましたが、公表基準がかなり狭く設定されていたためその実例は1件にとどまっていました。

そのような中、電通の自殺を受けて、厚生労働省の長時間労働削減推進本部が過労死等ゼロ緊急対策を取りまとめて、行政指導である是正勧告段階での企業名の公表を拡大する運用が開始されました。

この運用開始後、新基準による公表の初の事例が出ましたので取り上げます。

違法な長時間労働を複数の事業場で行っていた企業に対し愛知労働局長が是正指導をしました | 愛知労働局

 

最長で月197時間残業…企業名公表の運送会社、愛知労働局 – 産経WEST 2017.9.4 21:12

 厚生労働省愛知労働局は4日、最長で1カ月当たり約197時間の違法な長時間労働を複数の事業所でさせ、2月の是正指導後も労働状況が改善しなかったとして、名古屋市の運送会社「大宝運輸」の社名を公表した。

 同労働局によると、昨年12月~今年2月の立ち入り調査で、2事業所の計54人が80時間を超える残業をし、うち50人で100時間超を確認。最長のケースで約197時間に上った。7月の立ち入り調査でも最長約134時間の従業員がおり、30人が80時間超で、うち24人が100時間を超えていたことから再度、是正指導した。

(略)

 

公表拡大をしてもまだ2件目かという見方もあろうところと思われます。しかし、この公表は、あくまで行政上の情報提供という整理になり、法的根拠があるものではなく、しかも公表がされると上場企業であると株価が急落するなど大変な影響があることから、明確な公表基準を設けて相当、深刻な事案に限定することは行政法の観点から行くと、やはり必要であろうと感じられるところです。

公表による業績等への甚大な影響を恐れている企業は多い印象で、一罰百戒の効果はあるように感じられます。したがって、公表例が少ないというだけで、実効性がないのではないかと判断するのは早計ではないかと思われます。

 

 

 

新宿労働基準監督署、新国立競技場の建設現場で管理業務に従事していた労働者が自殺して遺族が過重労働によるものとして労災申請をしたことに関連して建設現場を調査

過重労働対策が社会的課題になっていますが、新国立競技場の建設現場でも労災申請がされる労働者の自殺が起きており、これに対して労基署が調査を行っていることが明らかになりました。

新国立工事現場に立ち入り調査、新宿労基署、作業員自殺受け  :日本経済新聞 2017/7/21 14:20

新国立競技場の工事現場で管理業務に従事していた入社1年目の建設会社の男性社員(当時23)が3月に自殺し、遺族が労災申請したことを受け、新宿労働基準監督署(東京・新宿)は21日までに工事現場を任意で立ち入り調査した。

 男性は昨年4月に東京都内の建設会社に入社。同社は新国立競技場の建設を請け負う大成建設から地盤改良工事を受注し、男性は同12月に施工管理業務に就いた。会社の調査によると、男性の時間外労働は今年2月に約193時間に上った。男性は3月に失踪し、4月に長野県で遺体で見つかった。

 建設現場を管轄する新宿労基署が19日に調査を実施。現場監督者らから勤務状況などを聞き取ったとみられる。

3月に自殺があり、7月12日に遺族が労災申請をしたとのことで、それに対して一週間ほどで労基署の調査が入ったことになります。

報道ではそこまで触れられていませんが、過労自殺が疑われる労災申請の場合、関連する労基署の調査は、今日では二種類ありえまして、労災認定のための調査と過重労働が行われていないかの調査になります。

本件はおそらく前者だと思うのですが、改めて労働基準法違反について行政指導または送検のために調査に来る可能性もあるところです。

労災と労基署の監督行政の連動は、脳心臓疾患、精神疾患の労災申請の場合に発動されることから、労災の可能性のある事態の発生も重要な契機となることは認識が必要となっています。

藤沢労働基準監督署、三菱電機と労務管理担当の社員を労働基準法違反で送検

厚生労働省、過労死等ゼロ緊急対策を取りまとめ 是正指導段階での企業名公表の対象を拡大や労働時間の適正把握ガイドラインの制定などが盛り込まれる

電通の一件を契機として、長時間労働の問題がさらに大きくクローズアップされていますが、政府がこれをうけての緊急対策を、昨年12月26日に取りまとめて公表しました。

 

内容は多岐にわたりますが、報道では、現在も存在している長時間労働の是正指導段階における企業名公表制度について、対象を拡大することが盛り込まれており注目されています。

この企業名公表ですが、現行の下では、1回しか公表された実績がありません。

下記エントリーをご覧ください。

千葉労働局、違法な時間外労働をさせていたとして是正指導を行った企業名を公表 | Japan Law Express

 

1回しかない理由は、要件が下記の通りとなっており、極めて限定的であるためです。

厚生労働省公表資料

都道府県労働局長による指導・公表の対象とする基準

指導・公表の対象は、次のⅠ及びⅡのいずれにも当てはまる事案。

Ⅰ 「社会的に影響力の大きい企業」であること。 ⇒ 具体的には、「複数の都道府県に事業場を有している企業」であって「中小企業に該当しないもの(※)」であること。 ※ 中小企業基本法に規定する「中小企業者」に該当しない企業。

Ⅱ 「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと。

1 「違法な長時間労働」について ⇒ 具体的には、①労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、かつ、➁1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていること。

2 「相当数の労働者」について ⇒ 具体的には、1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者において、「違法な長時間労働」が認められること。

3 「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」 について ⇒ 具体的には、概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で「違法な長時間労働」が認められること。

これを拡大する方向になり、平成29年から実施とされていますが、その改正点は以下の通りとされています。

「過労死等ゼロ」緊急対策(PDF:236KB)

是正指導段階での企業名公表制度の強化

○ 現行の要件を以下のとおり拡大。

① 月100時間超を月80時間超に拡大

② 過労死等・過労自殺等で労災支給決定した場合も対象 → これらが2事業場に認められた場合に、前ページの企業本社の指導を実施し、是正されない場合に公表

○ 月100時間超と過労死・過労自殺が2事業場に認められた場合などにも企業名を公表

上記は要するに、

  • 現行のⅡ2の100時間を80時間に引き下げ
  • 労災支給決定の実績が出た場合という新たな観点を入れ、このカテゴリの場合には、2事業所で発生+本社の指導に至った場合に公表の対象とすること
  • 労災支給決定で100時間超の場合には、2事業所で公表の対象とすること

ということになります。

時間のハードルの引き下げと、3事業所から労災発生の場合2事業所で公表になる可能性があるという点で拡大となるわけです。

しかし、これでどれほど拡大するかはよくわかりませんし、そもそもこの公表の実例があまり出ないのは、おそらくⅠの要件で、中小企業を除いている点にもあると思われますので、この公表拡大をどれほど重大にとらえるかについては異論もありそうに思われます。

 

それよりも、実務的に重大なのは、

  • 労働時間の適正把握のガイドラインが策定されること
  • 事業場単位の指導にとどまらず、本社の指導にも踏み込むこと

だと思われます。

特に労働時間の適正把握は、現在でも通達がありこれに基づいて指導が行われていますが、上記取りまとめの内容から行くとこの通達から内容はさらに発展する模様で、大変な影響が想定されます。

労働時間に関する監督権行使は、さらに強化の方向性が明らかになったわけですが、実務対応も厳しいものになると予想されるところです。

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