プロバイダ責任法

東京地裁、アマゾンジャパンに対して、アマゾンのウェブサイトに中傷の書き込みをした投稿者の氏名・住所等の個人情報の開示を命令

インターネット上に書き込まれた投稿によって名誉棄損などの被害を受けた場合、インターネットの匿名性ゆえに誰がやったのか自体を調べるところから対応をはじめないといけません。

このためにプロバイダ責任法があり、これによる実例の集積は相当あるのですが、実際のところ、非常に手間がかかる、割に合わない負担というのが現実となっています。

これは、まずは、サイトの運営者にIPアドレスの開示を求めて、その後、そのIPアドレスをもとにプロバイダに書き込みをした者の情報の開示を求めるという二段階の手間がいるためです。

このたび、このような現状からみると非常に特異な事例が発生したことが明らかになりました。

 

アマゾンに開示命令 中傷書評の投稿者情報巡り東京地裁  :日本経済新聞 2016/4/11 11:40

通販大手アマゾンジャパン(東京・目黒)のサイトに投稿された書評によって社会的評価が低下したとして、本の著者側が同社に投稿者情報の開示を求めた訴訟の判決があり、東京地裁が投稿者の氏名や住所、メールアドレスの開示を命じていたことが11日までに分かった。裁判所がプロバイダー(接続業者)以外に利用者情報の開示を命じるのは異例。

 判決は3月25日付で、同社が控訴しなかったため11日までに確定した。

(略)

裁判例全文に当たれていないので、報道から検討するしかないのですが、上記で書いたような現状と比較すると、サイト運営者であるアマゾンに、個人情報まで含めて開示を求めることができた、二度手間が一度で済んだという一点ということになります。

これは、アマゾンが通販業者であることから、サイト運営者でありながら個人情報まで有しているという事情によるものです。

また、もう一点、上記報道では出てこないものの重要な点があったことが明らかになっています。

それは、アマゾンジャパンが管理していることをアマゾンが認めたということで、アマゾンの米国法人に対する訴えでなくてよくなったという点です。

外国法人を訴えるのは、そもそも送達が大変ですし、判決が出てもその執行が非常に難しいため、実効性が極めて低くなるのですが、内国法人に対する訴訟で済むためこれは非常に便利になります。

一般的にインターネットで行われている事業は、ウェブサイトは日本語でも運営しているのは外国法人ということはままあるのですが、アマゾンは日本法人に情報があることを認めたため、今回の結論に至っているわけです。

すると、本件は画期的ではありますが、アマゾンの特殊事情によるところが非常に大きいわけで、プロバイダ責任法上の実務が画期的に変わるわけではないということになりそうです。

もっともこの件があった以上、アマゾンのウェブサイト上でのレビューの記述には慎重さが必要だと考える向きもあるのかもしれませんが、それは別論といえましょう。

裁判例情報

東京地裁平成28年3月25日判決

2015.02.01~02.08 法律関係tweetまとめ

[twitter only]大阪高裁、日本におけるハーグ条約に基づく返還命令の第一号事案である父親のいるスリランカへの返還を命令した大阪家裁の審判に対する母親からの即時抗告を棄却(1月30日)

[twitter only]アステラス製薬、主力のプログラフのアメリカにおける後発薬の発売を妨害したとされて医薬品卸売業者らから提起された集団訴訟で115億円を支払う内容で和解。同社は後発薬の安全性や有効性の試験をFDAに求めて後発薬の発売を遅らせたと主張されていた。

[twitter only]最高裁、滋賀の公立中学校での部活練習中での死亡事故で顧問に対する賠償請求を求めて行われた遺族側の上告を棄却(2月5日)。地方地自体に対する賠償請求は確定しており、顧問に対する個人の賠償責任を追及しようとしたもの。

[twitter only]神戸地裁尼崎支部、ヤフーブログの書き込みで名誉を傷つけられたとして、ヤフーに発信者情報の開示と50万円の慰謝料を請求した訴訟で、IPアドレスの開示と30万円の慰謝料の支払いを命じる(2月5日)。慰謝料は記事の削除要請に応じなかったことに対するもの。

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インターネットの書き込みに関する仮処分の申し立てが、4年で20倍になっていることが明らかに

プロバイダ責任法によってプロバイダに対応を求めることができるにもかかわらず、インターネットの書き込みに関連する仮処分が急増していることが明らかになりました。

ネット関係の仮処分申し立て、4年で20倍 投稿削除要請など  :日本経済新聞 2014/10/27 1:15

インターネットの掲示板で誹謗(ひぼう)中傷されたとして投稿者の情報開示や投稿の削除をプロバイダー(接続業者)やサイト運営管理者に求めるなど、ネット関係の仮処分申し立てが激増している。東京地裁が2013年に扱ったのは711件で、4年前の20倍以上になったことが地裁関係者への取材で分かった。

 関係者によると、東京地裁が09年に扱ったネット関係の仮処分は計33件で、仮処分申立総数の3%に満たなかった。しかし、10年に175件、11年に499件、12年は736件と増加。13年の711件は仮処分申立総数の40%近くを占めた。

 13年の711件の内訳は、名誉毀損やプライバシー侵害の状態を解消するための「投稿記事の削除」が247件、損害賠償請求訴訟を起こす前段階としての「発信者(投稿者)情報の開示」が290件、通信記録保存のための「発信者情報の消去禁止」が174件だった。

 仮処分申し立てが増えたのは、会員制交流サイト(SNS)などの普及でトラブルが増加したのと、対処する手続きが周知されたのが主な理由。02年施行のプロバイダー責任制限法では被害者は投稿者の情報開示や記事の削除をプロバイダーなどに直接請求できるが、司法手続きを取らざるを得ない実情があるとみられる。

 ネット事情に詳しい弁護士によると、プロバイダーへの要請で問題の投稿が削除されても、誹謗中傷の投稿は繰り返されることが多く、再発防止と損害賠償請求のため投稿者の特定を望む被害者が増えている。

 また、プロバイダーは記事の削除に応じても、投稿者の氏名やネット上の住所に当たるIPアドレスの開示は拒むことが多いという。〔共同〕

上記報道によると、根源的な原因はインターネットの書き込みによるトラブルの増加があるわけですが、それらの問題に対するプロバイダ責任法によるプロバイダの対応に限界があり、投稿が何度も繰り返されることにより、結果として目的を達せられないことから法的手段をとらざるを得ないことになっている模様です。

実際のところ、インターネットへの書き込みをめぐる弁護士への相談は増えている肌感覚があります。

このような流れは今後も増加傾向が続くように思われます。