Month: 5月 2016

2016.05.29 法律関係tweetまとめ



2016.05.22 法律関係tweetまとめ


千葉労働局、違法な時間外労働をさせていたとして是正指導を行った企業名を公表

厚生労働省は過重労働対策をさまざま強化していますが、対策の一つとして挙げていた手法の一つで初めての発動事例が出ましたので取り上げます。

労働基準監督監督官が労働基準法違反を認めて、いきなり送検とはいかずまず行政指導を行って違反状態を解消することを促すことがよくありますが、この行政指導である是正指導を労働時間についての問題で行った企業名を公表するという方針が平成27年5月から行うとされていたのですが、それが初めて発動されました。

ジャスダック上場の棚卸代行のエイジスが、違法な長時間労働で是正指導を受け、企業名が公表されました。

厚労省、長時間労働の社名公表 行政指導段階で初  :日本経済新聞 2016/5/19 23:05

 厚生労働省千葉労働局は19日、最長で月約197時間の違法な時間外労働をさせていたとして、千葉市の棚卸し業務代行会社「エイジス」(ジャスダック上場)を是正指導したと発表した。同省は昨年5月、複数の事業所で違法な長時間労働をさせる企業について、是正指導をした上で社名を公表する方針を決定。今回が初のケースとなる。

 同社はスーパーなどから棚卸し業務を受託する営業拠点を全国に50カ所持つ。昨年5月以降、営業拠点4カ所で働く従業員63人に、労使協定で定めた上限時間を上回る月100時間を超える時間外労働や休日労働をさせていた。残業代は支払っていたとしている。

(略)

 

千葉労働局のリリース

上記報道及び千葉労働局のリリースによると、100時間超の法定時間外労働を行っていた労働者の人数が記載されていますが、100時間超の時間外労働をさせることがただちに労基法違反なのではなく、36協定に違反する時間外労働をさせると労基法違反となります。

36協定は、特別条項をつけなければ月45時間、特別条項をつけるとその上限に規制はないため、本件は、特別条項を付けていないか、特別条項があってもそれを上回っていたものと思われます。リリースで取り上げているのが100時間で切っているため、特別条項を100時間としていたのかもしれませんが定かではありません。

この企業名の公表の取り扱いは、実は昨年に行うことを表明されており、実際に発動はされてこなかったのですが今回が初の事例となりました。

この公表は、いわゆる一般への情報提供という扱いになっており、法的な根拠を有するものではないのですが、実際には罰としての意味合いが極めて強いことからその構成の当否は問題があるといえましょう。

さて、なぜ今なのかというのは若干気になるところですが、慎重だったというよりは、実際のところ、下記リンクの通り、公表の基準をきわめて厳格にしており、大規模なケースではないと公表しないことにしているため適合するものがなかなか出てこなかったものとも考えられます。

厚生労働省ウェブサイトの情報

過重労働対策の一層の強化

長時間労働に係る労働基準法違反の防止を徹底し、企業における自主的な改善を促すため、社会的に影響力の大きい企業が違法な長時間労働を複数の事業場で繰り返している場合、都道府県労働局長が経営トップに対して、全社的な早期是正について指導するとともに、その事実を公表する。

都道府県労働局長による指導・公表の対象とする基準

指導・公表の対象は、次のⅠ及びⅡのいずれにも当てはまる事案。

Ⅰ 「社会的に影響力の大きい企業」であること。 ⇒ 具体的には、「複数の都道府県に事業場を有している企業」であって「中小企業に該当しないもの(※)」であること。 ※ 中小企業基本法に規定する「中小企業者」に該当しない企業。

Ⅱ 「違法な長時間労働」が「相当数の労働者」に認められ、このような実態が「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」こと。

1 「違法な長時間労働」について ⇒ 具体的には、①労働時間、休日、割増賃金に係る労働基準法違反が認められ、かつ、➁1か月当たりの時間外・休日労働時間が100時間を超えていること。

2 「相当数の労働者」について ⇒ 具体的には、1箇所の事業場において、10人以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者において、「違法な長時間労働」が認められること。

3 「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」 について ⇒ 具体的には、概ね1年程度の期間に3箇所以上の事業場で「違法な長時間労働」が認められること。

 

上記の基準で一番重大なのは、中小企業は除外されることとと複数の事業場で是正指導を受けることであり、これに該当するのは極めて珍しいことから、今回の公表に至ったものと思われます。

この公表のあと、同社の株価は急落しており、大変な影響があることがうかがわれます。

さて、同社は指導に基づき改善をしていることとなりますが、報道によると本件は期末の棚卸の業務によって長時間労働を強いられた面があった模様です。

同社の実情をまったく知らないため机上の空論の恐れはありますが、季節による繁閑がある業種の場合には、変形労働時間制を使うことによって労働時間を寄せることができるため、そういった面からの工夫もありえるところです。もっとも、日本企業では年単位の変形労働時間制を導入しているケースは統計上多いとされているため、そのような対処では生ぬるいほど、同社の業務は繁忙を極めているのかもしれません。

札幌高裁、札幌ドームでファウルボールで失明した女性が提起した損害賠償請求訴訟の控訴審で、日本ハム、札幌ドーム、札幌市に賠償を命じた一審に対して、日本ハムのみに責任を認める

下記tweetで取り上げた事件の控訴審判決が出ました。

 

ファウル失明、札幌高裁も賠償命令 日ハムのみ3300万円 | どうしんウェブ/電子版(社会) 05/20 13:59、05/21 01:01 更新

札幌ドームでプロ野球観戦中にファウルボールの直撃を受けて右目を失明した札幌市内の30代女性が、北海道日本ハムなど3者に計約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、札幌高裁であった。佐藤道明裁判長は、3者に約4200万円の支払いを命じた一審の札幌地裁判決を変更、「安全配慮が不十分だった」として日本ハム球団のみに約3300万円の賠償を命じた。

 球場の設備の安全性については問題がなかったとの判断を示し、ドームの管理会社の札幌ドームと、所有者の札幌市への請求は棄却した。一方、「女性が打球を見ていなかったのは過失と認められる」として、一審が認定した損害額から女性側の過失分の2割を差し引き、賠償額を減額した。

(略)

佐藤裁判長は判決理由で「女性は、観戦イベントで球団から招待を受けた子供の保護者。野球に関する知識はほとんどなく、ファウルボールの危険性もほとんど理解していなかった」と指摘。「球団には危険性を具体的に告知し、その危険を引き受けるか否かを判断する機会を与えるなどの安全配慮義務があったのに、十分ではなかった」と断じた。

 昨年3月の一審札幌地裁判決は、球団側が2006年に内野席前の防球ネットを撤去したことなどについて「臨場感の確保に偏り、球場が通常備えるべき安全性を欠いていた」としたが、控訴審は「臨場感も野球観戦の本質的な要素」と指摘。その上で、防球ネットはなかったものの「内野フェンスの高さは他球場に比べて特に低かったわけではなく、ファウルボールへの注意を促す放送など他の対策も考慮すると、プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとは言えない」とした。

(略)

原判決では、球場の設備そのものが安全性を欠いているという判断がなされ、球団だけではなく施設を保有している札幌市、札幌ドームにも責任を認めていたのですが、控訴審では、球場の設備面の安全性がほかの球場と比べて劣っているわけではないと判断が一変しました。

そのうえで、球団の安全配慮義務として、野球をよく知らない観客への配慮が足りないという判断がされ、これを根拠に損害賠償責任を肯定しています。

チケットなどに告知などは入っているものですが、基本的に誰が入ってくるのかわからない球場という環境でそれ以上の安全配慮義務を果たすのはむつかしそうです。しかし、本件では球団から招待を受けた子供の保護者の観客であるという点が意味を持っているようであり、そのような場面では個別に安全についての告知等の配慮をするべきということになるのだと思われます。

裁判例情報

札幌高裁平成28年5月20日判決

2016.05.16 法律関係tweetまとめ

2016.05.15 法律関係tweetまとめ


厚生労働省、平成29年1月から再就職手当を増額へ

雇用保険の被保険者が失業すると、失業給付を受給して求職活動をすることができます。

その失業給付がもらえる期間(所定給付日数)はそれまでの間の雇用保険の被保険者期間の長さや離職した理由によって決まってきますが、再就職すると、失業給付は受給できなくなるのは同じです。

すると、もらえるだけの期間はもらった方が得だということになってしまいかねず、そうなると就職している期間が大きく空いてしまうので再就職がより困難になる可能性があります。

そこで、所定給付日数を残して再就職してかつ比較的長期間残している一定の場合には再就職手当という一時金をもらうことができます。

ハローワークインターネットサービス – 就職促進給付

このたび、この早期の再就職を促すため、再就職手当の増額がされる方向になっていることが明らかになりました。

再就職、早期なら手当増 厚労省、失業長期化を回避 来年から、一時金1割上げ :日本経済新聞 2016/5/7付 日本経済新聞 朝刊

厚生労働省は若年層を中心に高止まりしている長期失業者を減らすため、雇用保険の失業手当(総合2面きょうのことば)を見直す。短い間隔で再就職する人への手当を2017年1月から引き上げる。

(略)

上記引用先の日経の電子版では会員でないと具体的内容が見られませんが、以下の通りです。

ハローワークインターネットサービス – 就職促進給付

  • 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の2以上の方は、所定給付日数の支給残日数×60%×基本手当日額((注意1)一定の上限あり)。
  • 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上の方は、所定給付日数の支給残日数×50%×基本手当日額((注意1)一定の上限あり)。

下線を付けているところが支給率で、要するに残りのもらえるはずだった失業給付のどれだけの割合をもらえるのかという割合となります。

報道によるとこれを1割増しにするとされています。