Month: 3月 2016

東京簡裁、ABCマートに違法残業で罰金50万円の略式命令

東京労働局、ABCマートで36協定で定めた上限時間を超える時間外労働があったとして、同社、人事担当役員及び従業員を東京地検に送検 | Japan Law Expressの続報です。少し時間がたってしまいましたが取り上げます。

労働基準法違反で送検された法人としてのABCマートとその関係取締役ですが、法人のみ略式命令で罰金という終局処分になったことが明らかになりました。

ABCマート法人に罰金50万円 違法残業で区検  :日本経済新聞 2016/3/3 1:32

 靴の販売店「ABCマート」を運営するエービーシー・マート(東京・渋谷)が従業員に違法な長時間労働をさせたとして、東京区検は2日までに、法人としての同社を労働基準法違反の罪で略式起訴した。東京簡裁は罰金50万円の略式命令を出し、同社が納付した。

 同区検は同法違反容疑で昨年7月に書類送検された同社の労務担当取締役ら3人は「事実を認め反省している」などとして、起訴猶予で不起訴処分とした。

 起訴状によると、同社は2014年4~5月、都内の2店舗で計4人の従業員に対し、労使協定で定めた上限(月79時間)や法定労働時間を超える月97~112時間の残業をさせたとしている。

(略)

 

本件は、未払い残業代はなく、協定の上限時間をオーバーしていただけでした。そのため、賃金の未払いの場合に出てくる労働基準法37条の事件ではなく32条違反だけが問題となったのですが、略式命令とはいえ、刑事罰という結果となりました。

割増賃金の未払いがないのにこのような思い結論となったことは大変珍しく、厚生労働省と検察庁の捉え方が変わってきていることを伺わせる一件となりました。

なお、送検の時点で、東京労働局は是正勧告などを出して指導してきたのに改善がなかったとして送検に踏み切ったとしていのに対して、会社からは、すでに問題状況は改善しているので見解の相違があるとの発表がありました。

しかし、送検の対象となったのは過去の32条違反ですので、違反には違いないのですが、その後の対応が過去の労基法違反の帰趨を決めてしまうという問題状況になる点にも注意が必要といえましょう。

また、36協定の上限時間及び特別条項については発動手続きに違反があっても32条違反になるため、すべての企業において時間外労働の管理体制を見直す必要があると思われます。

なお、本件は東京労働局に設置された「かとく」の第一号案件でしたが、大阪労働局の「かとく」の第一号案件であるフジオフードの方では、本件と同じ32条違反のほかに一部、割増賃金の未払いもあったとされていることから、取り扱いはやはり重くなることが予想されます。

 

 

厚労相、長時間労働是正の指導強化で、36協定の特別条項での設定時間数が100時間超となっている立入調査の指導対象を80時間に引き下げることを表明

長時間労働の抑制のために、すぐにはできない法改正ではなく、労働基準監督署の指導強化で対応することが打ち出されました。

長時間労働是正、首相「指導強める」 残業80時間で立ち入り  :日本経済新聞

安倍晋三首相は25日、首相官邸で開いた一億総活躍国民会議で、長時間労働の是正に向けた具体策の検討を指示した。「健康に望ましくない、長い労働時間を設定した事業者には指導強化を図る」と強調。塩崎恭久厚生労働相は「100時間超となっている指導対象を拡大する」と表明した。労働基準監督署が立ち入り調査に入る目安である1カ月の残業時間数100時間を80時間に引き下げて対象を広げる方針だ。

(略)

 

要するに労働基準監督署の立入調査の対象選定の目安の拡大ということです。

36協定には、時間外労働の上限時間を協定しますが、通常の延長時間と忙しくてそれでは収まらないときに発動する再度の延長時間である特別条項の延長時間が定められます。

この特別条項の時間数が100時間を超えていると、労働基準監督署が立入調査にやってきて、タイムカードや賃金台帳を確認して労基法違反がないかを見るのですが、この調査対象選定の目安を80時間に引き下げることにして、立入調査の対象となる範囲を広げることになりました。

日経新聞の報道では、これによって就業人口にして300万人が対象になるとされています。

実のところ、これは行政調査とその後の指導も、労基法違反があったなら別ですが、行政指導にすぎないため、いわゆる労基署に入られるのを契機として時間外労働を抑制するように向かうことを期待するというようなやや緩やかな対応となります。しかし、法改正は不要であり、しかも、実際、労基署が入るというのはそれなりに効果があるので、一つの方法ではあると思われます。

すると、入られるのが36協定の時間数を見てやってくるのなら引き下げて、回避を図るかもしれませんが、その通り時間外労働を抑制できるならいいですが、実態が変わらないのに、労基署が来ないようにということで時間数だけ減らすと、実際の時間外労働が協定に定めた時間をオーバーしてしまうので、こうなると刑事事件に発展してしまいます。

ABCマートは36協定の上限時間を超えて労働をさせたことで労働基準法32条違反で略式命令を受けているので、この点は安易に考えてはいけないところです。

労働時間については数年来大きな問題となってきていますが、その流れは止まることなく、この指導強化を機に、改めて厳密な労働時間管理について検討を迫られているといえるでしょう。

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