Month: 1月 2016

最高裁、漁業協同組合の理事会の議決が特別利害関係を有する理事が加わったものであっても、当該理事を除外しても議決に必要な多数が存するときは、その効力は否定されないと判示

特別利害関係取締役の議決権は行使できないとされていますが、行使してしまった場合に取締役会の議決が無効になるのかについては規定を欠いており、一般原則から考察することになるものと思われます。

しかし、会社以外の各種法人の立法では、役員の意思決定機関である理事会について、会社法と同じく特別利害関係理事の議決権を排除する規定を有するものの、個別事例においてはその特別利害関係理事を除いても理事会の議決が成立する多数が占められていた場合には、決議を有効とする判例があります。

中小企業等協同組合法についてこのことを判示したのが以下になります。

最判昭和54年2月23日民集第33巻1号125頁

このたび、上記昭和54年判決を引用して、漁業組合の理事会の議決について同旨を判示した判例が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成28年1月22日判決 平成27(行ヒ)156 損害賠償請求事件

この事案は、端的には理事8人のうち6人が出席した理事会で全会一致で出席理事のうちの一人が代表を務める組合に利益になる議決がされ、理事にはその組合の代表の息子も含まれていたということで、いわば特別利害関係理事が2名いたというようなケースでした。

しかし、この二名を除外しても議決は有効に成立するとして効力を否定されないとしたものです。

特別利害関係人の議決権の除外は、各種法人の立法に共通ですが、議決権が行使されてしまった場合の議決の効果についても同じ理解になるでしょうか。

この判例では以下のように一般論を判示しています。

水産業協同組合法37条2項が,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事が議決に加わることはできない旨を定めているのは,理事会の議決の公正を図り,漁業協同組合の利益を保護するためであると解されるから,漁業協同組合の理事会において,議決について特別の利害関係を有する理事が議決権を行使した場合であっても,その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは,そのことをもって,議決の効力が失われるものではないというべきである。

会社法では、東京高判平成8年2月8日などを見る限り、特別利害関係人の議決権行使の事実のほかに、議長も務めてしまうなどその他の事情も含めて総合考慮するのだろうと思われます。

このような判断は各種法人の場合にも妥当させた方がよいと思われるのですが、上記のように本件も含めて各種法人の場合の判示の仕方が数にしか言及していないため、議決権の数以外の事情も検討に入れるような判断の余地がなさそうに思われます。

会社、その他の各種法人の意思決定の問題は結構発生していることから、判例の蓄積から理事会運営のガバナンスにどのようにフィードバックしていくべきかは気になるところといえましょう。

デンソー、女性のみを対象として幹部候補の中途採用を開始 トヨタもポジティブアクション募集を行い女性の応募が上昇

社労士試験の知識のような話ですが、実は労働基準法で男女差別について言及しているのは、賃金についてのみであり、それ以外の労働条件については均等法に任されています。

そして均等法では、実は女性を有利にすることも原則として禁止しており、ポジティブアクションといわれる差別を解消するための措置としてのみ可能となっています。

労働基準法

(男女同一賃金の原則)

第四条  使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律

(性別を理由とする差別の禁止)

第五条  事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。

(略)

(女性労働者に係る措置に関する特例)

第八条  前三条の規定は、事業主が、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となつている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることを妨げるものではない。

さて、このポジティブアクションは、指針と通達によって、どのような場合に行ってよいかが具体化されています。

そのうち募集については、雇用管理区分ごとに女性が4割を下回る場合には、女性に限定した募集を行ってよいとされています。

労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号)

(略)

14 法違反とならない場合

(1) 2から4まで、6、8及び9に関し、次に掲げる措置を講ずることは、法第8条に定める雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的とする措置(ポジティブ・アクション)として、法第5条及び第6条の規定に違反することとはならない。

イ 女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分における募集又は採用に当たって、当該募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること、採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用することその他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること。

(略)

改正雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の施行について

(略)

3 女性労働者に係る措置に関する特例(法第8条)

(略)イからヘまでにおいて「相当程度少ない」とは、我が国における全労働者に占める女性労働者の割合を考慮して、4割を下回っていることをいうものであること。

(略)

以上から、総合職と一般職という区分を持っており、総合職で女性が4割を切っているときには、総合職で女性のみに限定した募集を行うことができます。

このポジティブアクションを利用して女性だけに絞った募集をすることはそれほどよく見るわけではないのですが、女性の活躍推進が言われるようになった昨今の女性を反映してか、女性に絞って幹部候補の募集を行う例が出てきていることが明らかになりました。

 

女性に絞り幹部候補急募 トヨタ、デンソーが中途採用  :日本経済新聞 2016/1/18 12:00 日本経済新聞 電子版

 「女性のみ募集します」。トヨタ自動車やデンソーなど最大手メーカーや地方の著名企業が、女性総合職や専門職に焦点を絞った中途採用を始めた。これは職場の女性の割合の低さを改善するのに、例外的に許されるポジティブアクションという手法だ。重要なポストに就く女性を増やし、多様な視点を取り込んで商品開発に生かす目的がある。転職を希望する女性が注目し、応募者は膨らんでいる。

(略)

 

トヨタは女性のみとしているわけではないようですが、デンソーは女性のみと明示しているとのことです。

日本を代表する企業でこのような動きが出てきていることで今後も追随する動きが出てくるのか注目されるところだと思われます。

2016.01.24 法律関係tweetまとめ



厚生労働省と法務省、外国人技能実習制度を大幅見直しへ

外国人技能実習制度が大幅に見直されることになりました。現時点では、正式な公表はありませんが、報道で先行して情報が出てきたものです。

途上国を念頭に技能の習得の機会を日本国内で設けるという研修という建前でありながら、事実上、外国人労働者の受け入れの仕組みとなっているところであり、色々と労働問題が発生していました。

今回は建前と現実のかい離について大きな是正を図るものではなく、問題が発生している現状に対する監督機能の強化といった色彩の強いものになりそうです。

 

外国人待遇不当なら企業処分 技能実習、受け入れ届け出制に  :日本経済新聞 2016/1/13 2:01

 厚生労働省と法務省は外国人が働きながら学ぶ技能実習制度を見直す。2016年内にも監督組織を設け、受け入れ企業には届け出を義務付ける。賃金水準など日本人と同等以上の待遇を求め、違反すれば罰金や行政処分の対象とする。

(略)

報道によると、制度変更の内容は以下のようなものとなる模様です。

  • 監督組織として外国人技能実習機構を新設(2016年内の設置を目指す)
  • 受け入れ企業には同機構への届出を義務づけ、機構は実習内容を確認
  • 届出義務の違反には罰金のほか、受け入れ禁止の制裁
  • 受入れ団体の監理団体は許可制
  • 不正行為には業務改善命令や許可取り消し
  • 実習生には日本人労働者と同等以上の待遇を求める
  • 技能実習の対象に介護を追加

評価はさておくとしても大幅な制度変更ではあることは確かで、実習の受け入れを行っている企業にとってはかなりの変更になることが予想されます。

 

大分地裁中津支部、毎年1年の任期で33年間司書などとして勤務した非常勤職員に対して勤続年数に応じた年次有給休暇を付与しなかったのを違法と判断 実際に欠勤扱いとなった日数相当分のみ損害賠償を認める

年次有給休暇は10日の付与から始まり、勤続年数に応じて毎年の付与日数が増えていき、最終的には年20日の付与となるのが労働基準法の内容です。どの会社も最低限はこれを守らないといけません。

年次有給休暇については地方公務員もこれが同じく適用されます。

さて、この年次有給休暇は勤続年数が重要ということになりますが、有期雇用の場合にはどうなるのでしょうか。

更新するたびに新しく勤続年数が開始されると考えることも無理ではなさそうですが、この点については通達があり、更新によって雇用契約が実質的に継続していれば勤続年数は通算して考えるべきとされています。

1年で任用した非常勤の地方公務員について、毎年、年10日しか付与しなかった事例について勤続年数に応じた付与をするべきだったとして損害賠償請求訴訟が提起された件で、雇用が実質的に継続していると判断された事例がでましたので取り上げます。

元非常勤職員労基法下回る年休 「中津市の対応は違法」 – 大分のニュースなら 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate 

中津市の元非常勤職員の男性(64)が、毎年1年間の任期で33年間、勤務し続けたにもかかわらず、労働基準法に基づく勤続年数に応じた年次有給休暇(年休)を与えられなかったのは違法だとして、市に約426万円の支払いを求めた訴訟で、大分地裁中津支部は12日、男性の勤務を継続的と認定し、単年度任用であることを前提に労基法を下回る年休数しかないとしてきた市の対応を違法と判断した。男性の請求を一部認め、市に約22万円の支払いを命じた。
 男性の訴訟をきっかけに市は本年度、新しい条例を施行して単年度任用の一般職の非常勤職員にも、労基法で定めた年休を与えるようにした。
 大垣貴靖裁判長は、年休の趣旨に照らし、勤務が継続していたかどうかは「形式的な契約期間などではなく、勤務実態で判断するべきだ」として、労基法に定める勤続年数に応じた年休が認められるとした。
 市が任用通知書で毎年、単年度分の年休日数を男性に伝えたことに対しては「虚偽の情報を告知しない法的義務を負っている。これに違反しており、国賠法上、違法な行為で債務不履行に当たる」と判断した。
 男性は不足した年休(計180日分)の賃金を支払うよう求めたが、大垣裁判長は「虚偽の情報がなくても、男性が年休を全て取得した可能性は低い」と指摘。出勤記録が残る範囲で、欠勤または病休扱いとなった約17日間分の賃金だけを損害として認定した。

(略)

更新を何度もしていることから直ちに勤務の継続を認めているわけではないとは思われますが、上記報道では原則の勤務実態の詳細は不明ですので、判断の肝がどこにあったのはは判然としないところがあります。

また、裁判所の判断において注目するべきなのは、損害賠償を認めたのは、付与されなかった分すべてではなく、有休を使い果たして欠勤控除に及んでしまった分のみであり、少ない付与だったとしても有休が残ってしまった年については本来付与されるべき日数が付与されても年休取得がされた可能性は低いとして損害を認めていない点といえましょう。

年休については、付与と取得の二段階の構造になっている特殊性がここにも表れているものといえましょう。

 

裁判例情報

大分地裁中津支部平成28年1月12日判決

2017年度末までに厚生年金未加入事業所の実態調査へ

厚生年金の適用事業所は、法人でありさえすればすべて該当します。

法人なりが多い日本においては個人事業主に雇用されている例は、比較的少数という帰結になりますので、実のところ雇用されている人は労働時間の要件などを満たせば厚生年金の被保険者資格を取得していることになるはずなのです。

しかし、法人であるのに未加入であったり、適用対象の個人事業主でも未加入である事業所は結構あるのが実態です。そこで安倍総理の指示で全事業所の調査を行うことになりました。

厚生年金未加入疑い、17年度末までに全事業所調査 首相指示  :日本経済新聞 2016/1/13 21:41

厚生労働省は厚生年金の加入を逃れている企業の実態調査を強化する。安倍晋三首相が13日の衆院予算委員会で、塩崎恭久厚労相に対策を指示する考えを表明した。厚労省の推計によると、約200万人が厚生年金に加入せず国民年金のままになっている。未加入の疑いのある全事業所の調査を2017年度末までに実施する方針だ。

 調査の対象になる事業所は15年9月時点で79万カ所ある。日本年金機構を通じて調査票を送り、加入状況を調べる。未加入であることが確認でき、督促しているにもかかわらず支払う意思を示さない事業所には職員が訪問して指導する。実態調査は15年4月から始め、9月までに18万カ所の調査を実施したが、時間がかかっている。

(略)

未加入の事業所は零細企業が多いとされ、厚労省は「経営に配慮して保険料を督促する」方針。強制徴収権の発動には消極的で、どこまで加入が進むかは不透明だ。

 

国民年金と厚生年金とでは年金額がえらく異なるほか、徴収する保険料も比較になりませんので、将来の生活保障の観点及び保険料の徴収増を目指す観点から適用拡大を図っているのですが、それをさらに総理の指示で拡大するということになります。

実のところ、年金事務所から未加入を指摘されて加入させられると保険料をさかのぼって納めることを求められる例が多いのに対して、それまでは加入しないといけないのに怠っていた事業所が任意に申し出て加入すると、過去の保険料を納めることまでは求められないことが多くなっています。

上記では強制徴収の発動には抑制的とありますが、これは滞納がある場合には租税滞納処分の例によるとなっているのにそれを使わないことが原則となっているということです。

それに対して、この調査の結果、加入を命じられることは当然出るわけで、その際に保険料の遡りをどこまで求められるかはまったく別の問題といえましょう。調査の進展をにらみつつ、自主的に加入を行うべきといえ、その際には給与の支給額を見直さないと社会保険料負担で経営に悪影響が出る事態が起きるように思われます。

2016.01.11 法律関係tweetまとめ


2016.01.03 法律関係tweetまとめ