Month: 11月 2015

黒田電気、株主総会当時に公表された従業員組織による声明は、従業員組織によるものではなく、執行役、課長などの会社関係者による作成であったとする社外調査委員会の報告書を公表

下記、tweetの続報です。

 

外部有識者による報告書が、黒田電気から公表されました。

内容としては、C&Iホールディングスの指摘の通り、従業員組織による作成ではなかったことが判明したとするものとなっています。

社外調査委員会の調査報告書について | ニュース | 黒田電気株式会社

調査報告書

端的には、執行役からの指示に基づき、法務知財課長が作成したということとされています。

このことは、私文書偽造罪、虚偽記載のある参考書類等の利用禁止違反(金融商品取引法)、東証の上場規程の趣旨に悖る行為(東証からの照会に虚偽を回答していること)、会社法の善管注意義務違反(執行役について)などを構成するとされています。

このほか、経営責任、道義上の責任も肯定されるところであり、大変な問題行為をしていたことが指摘されています。

村上氏自体は、目下、別の問題の渦中にあるわけでそのタイミングでこのような事実は明るみに出ても反応の仕方が難しい可能性がありますが、ことは東証などにも影響していることから、ドタバタしている状況の中で有耶無耶ということは難しいものと思われます。

三田労働基準監督署、JCB及びその役員4名を、違法な長時間労働をさせたとして、労働基準法違反で東京地検に送検

長時間労働の抑制ために労働基準行政が果断に権限行使をするようになって久しく、特に下記のような、いわゆる「かとく」による検挙事例が衆目を集めるところとなっています。

東京労働局、ABCマートで36協定で定めた上限時間を超える時間外労働があったとして、同社、人事担当役員及び従業員を東京地検に送検 | Japan Law Express

大阪労働局及び京都労働局、36協定の上限時間を超える時間外労働、休憩の不付与、割増賃金の未払いがあったとして、まいどおおきに食堂などを運営するフジオフードシステムと店長などを送検 大阪労働局過重労働撲滅特別対策班による初の送検事例とされる | Japan Law Express

このたび、「かとく」による検挙事例ではないですが、労働基準監督署が長時間労働に関して労働基準法違反で著名な企業を送検した事例が明らかになりました。

JCBを書類送検、三田労基署| Reuters 2015年 11月 19日 19:47 JST

 三田労働基準監督署(東京)は19日、従業員に違法な長時間労働をさせたとして、労働基準法違反の疑いで、クレジットカード大手JCB(東京都港区)の役員ら4人と法人としての同社を書類送検した。

 送検容疑は、昨年2~3月、二つの部署の従業員計7人に対し、労使協定で定めた上限の月80時間を超える時間外労働をさせた疑い。三田労基署によると、最長で月約67時間超えたという。残業代は支払われていた。労基署はこれまでにも是正勧告を繰り返していた。

 送検された4人は、60歳と56歳の常務執行役員、49歳と56歳の部長で、いずれも男性。肩書は送検容疑当時。

残業147時間…JCBを書類送検 – 産経ニュース 2015.11.19 18:56

クレジットカード大手「ジェーシービー」(東京都港区)が昨年、本社勤務の社員7人に違法な時間外労働をさせたとして、東京労働局三田労働基準監督署は19日、労働基準法違反の疑いで、同社と取締役ら4人を東京地検に書類送検した。

 送検容疑は昨年2~3月、正社員の男女7人に労使協定で定められた月80時間を超える残業をさせたとしている。最も長く働いた30代男性は月約147時間の残業をしていた。

(略)

 

本件のポイントは、ABCマートの件と同じく、36協定の上限時間を超えた時間外労働をさせていた一方、割増賃金自体は適正に支払われていたという点です。

したがって、賃金の未払いの労基法違反はないため、送検された中に会社の代表者は含まれておらず、労務管理の責任者のみが含まれるという内容になっているわけです。

上記報道によると、80時間が特別条項の方の設定時間であるのかは定かではないのですが、時間数から言って特別条項だと思われます。

特別条項だとすると、適正に発動したかもポイントになってくるところから、時間数の設定のほか、特別条項発動の手続をきちんと踏んでいるかも注意しなければいけないと思われます。割増賃金を支払っていてもこのように報道で企業名が出てしまう事態になることから、より緻密な管理が求められるところです。

なお、形式的に本件に該当したのは確かとしても、かなり前のことですので、是正勧告を受けてその後の改善によっては、送検が避けられたということもありえたように思われます。

この点については、労基署は長時間労働が是正されていないとしている一方、会社は指摘を受けてからは起きていないとしており、認識に齟齬がある模様です。

JCB企業情報サイト ニュースリリース - 本日の報道について

(略)

本件は、2013年度に「労使協定」への違反者が発生し、2014年5月、三田労働基準監督署による立入り検査が行われ、任意捜査を経て書類送検に至ったものであります。
当社では、2014年7月1日付で、総労働時間削減を目的とした全社横断的な組織として、社長を委員長とする「時間外削減対策委員会」を組成し、全社業務量の削減など時間外勤務の削減に留まらず、「働き方」にまで踏み込んだ労働時間短縮策に取り組んでおります。委員会の組成から1年半近く経過しておりますが、組成以来、労使協定違反は発生しておりません。

(略)

実際のところは判然としませんが、会社としては問題は解消したと認識したとしても、送検されることがあるのだとすると非常に大変な事態と言わざるを得ません。

これに続く指導事例、送検事例に重大な注意を払う必要があると思われます。

最高裁、主たる債務者に対する求償権に時効中断事由があっても、共同保証人に対する求償権に時効中断は生じないと判示

連帯保証人の一人が主債務者に代わって、債権者に弁済して主債務者に対する求償権を取得し、その後主債務者が一部は弁済したもののそのままになってしまったことから、主債務者に求償金請求訴訟を提起して勝訴確定したところ、そこから10年の事項にかかりそうになったため、共同保証人に対する求償権行使をしたという事案で判例が出るに至りました。

なぜ法的論点のある事件になったかというと、共同保証人から消滅時効の抗弁が主張されたためです。

最高裁判所第一小法廷平成27年11月19日判決 平成25(受)2001 求償金等請求事件

本件は、共同保証人間の求償権行使という法的構成なのですが、主債務者に対する求償権の時効中断事由(本件では訴訟上の請求)は、共同保証人間の求償権の時効中断事由にならないと主張がされたため、最高裁が判断するに至ったものです。

一見すると、主債務者に対しては時効中断しているのに共同保証人に対しては影響しないのはおかしいのではないか、請求の絶対効はどうなったのかと感じてしまいかねないですが、本件は共同保証人間の求償権講師であるところがポイントです。

(共同保証人間の求償権)

第四百六十五条  第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

 第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

本来、最終的には主債務者が全責任を負うのが保証人の場合の関係性ですが、無資力の場合には、共同保証人間で頭数割で負担することにして、それを実現するための清算のために特に設けられたのが、保証人間の求償権です。

すると、保証人に対する求償権とは性格的にも別物であるわけでして、この点から最高裁は端的に下記のように判示をしています。

民法465条に規定する共同保証人間の求償権は,主たる債務者の資力が不十分な場合に,弁済をした保証人のみが損失を負担しなければならないとすると共同保証人間の公平に反することから,共同保証人間の負担を最終的に調整するためのものであり,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものではないと解される。したがって,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じないものと解するのが相当である。

したがって、主債務の求償権が10年の時効にかかりそうになっているくらいで、その間、保証人間の求償権には何もしてこなかったわけですので、当然、時効消滅という結論になったわけなのでした。

要するに、保証人間の求償権についても何かしておくべきだったということになりますが、主債務者に対してなら全部いけるのに、保証人間の求償権についても手当をするというのはなかなか想起しがたいことなのかもしれません。

しかし、それよりもさらにそもそも論ですが、本件は、保証人間の求償権の事件ですが、共同保証人がいるケースでこの権利が行使されることはあまりないように思われます。というのは、現実には、共同保証人には主債務の求償権についても連帯保証を求めていることが多いからであり、このように求める保証人は機関保証であり、そういう意味で保証人を要求しているからと考えられます。

したがって、求償権へ連帯保証をつければいいことですので、やや珍しい事態に対する判例であり、実務的にこれが即影響する場面というのもそうはないように思われます。

なお、民法改正案では、この465条は改正されないことになっていますので、本件の判示もそのまま改正法成立後も意義をもつものと考えられます。

2015.11.22 法律関係tweetまとめ

最高裁、自筆証書遺言の文面全体に斜線を引いた行為を、故意に遺言書を廃棄したときに該当するとして、遺言を撤回したと判断

遺言にはいくつか方式が決まっており、それぞれについて作成方式が厳格に定まっています。

民事行為についてはあまり要式性を要求しない日本法では珍しいのですが、遺言の作成そのものがそれほど多くなかったことと、作成するにしても専門家の関与が必要となる公正証書遺言が大半であるため、遺言をめぐる法律紛争は、一般的に想像するよりはとても少ないのが現実です。遺産相続の紛争は増えていますが、遺言についての紛争はそう多くはありません。

そのような中、自筆証書遺言をめぐり、紛争になってしまったという例が発生、最高裁判決が出るに至りました。

最高裁判所第二小法廷平成27年11月20日 平成26(受)1458 遺言無効確認請求事件

本件は要するに、自筆証書遺言に赤線で斜線を引いた行為が、遺言を撤回したものといえるかということにつきます。

本件で問題となった自筆証書遺言に即していうと、方式に関する民法の定めは以下の通りになります。

民法

(自筆証書遺言)

第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)

第千二十四条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

968条は自筆証書遺言専用の定めですが、作成や修正するときは定めている通り、署名押印がいるわけです。

これに対して、1024条はすべての方式の遺言に共通の規定であり、破棄すれば撤回したとみなすという規定です。

本件は、斜線を引いただけであるので、それだけでは上記のどれに当たるのかが判然としないので問題となったものです。

原審は斜線を引いただけだと、文字は読めるとして、破棄にあたらないとして、遺言は以前として有効としました。

これに対して最高裁は、968条が厳格に方式を要求していることとの比較で、以前として判読できるので、撤回に当たらないという判断にも理解は示しつつも、これを否定して、968条2項は、遺言をするということ自体は以前としてあり、内容の変更であるため、その方式を厳格に定めていると理解をして、すべての効力を失わせる場合には、同様に判断することはできないとしました。要するに方式を厳格に要求する必要はないということと考えられます。

ここから、斜線を引くということの一般的な意味を考察して、故意に破棄したときに該当するというべきであるとして遺言は撤回したものと判断、破棄自判をして請求を認容しました。

 

本件自体は、自筆証書遺言が問題となっているため、どれほど同種の紛争事例があるか若干疑問であるため、本件判決の意義については微妙な気がしないでもありませんが、遺言の変更と撤回とでは、遺言の効力自体は存続するか否かで大きな違いがあるので、方式性の要求の度合いが異なるという考え方は、一般的なものになりえますので、やはり大きな意義があるように思われます。

さて、余談ですが、本件では斜線を引いたのは遺言者であること自体は、事実認定がされており問題となっていません。赤い斜線というだけですので、この事実認定自体それなりに難しいような気がしまして、類似事例で実際の紛争の争点はむしろそちらになるのではないかと勘繰られるところであります。

 

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2015.11.08 Japan Law Express twitter まとめ


コープさっぽろ、パートの定年を65歳に延長することや正社員は介護などでの離職後5年以内なら同じ職ぐうで復職を認める人事制度を導入

人材不足が強まってきていることから、人材確保の観点から様々な人事制度の導入が試みられていますが、その一例として興味深いものが報道されましたので取り上げます。

コープさっぽろ、パート定年65歳まで延長  :日本経済新聞 2015/11/5 10:50 日本経済新聞 電子版

コープさっぽろは2016年度、高齢化社会に対応した新しい人事制度を導入する。パート・アルバイトの定年を現在の60歳から65歳に延長。親の介護などで退職せざるを得ない正社員については、5年以内なら同じ処遇で復職できるようにする。流通業で人手不足の問題が深刻になるなか、高齢化社会の進行に合わせて人事制度を見直し、優秀な人材の流出を防ぐ。

(略)

報道によると柱は①パートの定年を60歳から65歳にすることと、②介護等の理由で離職した正社員は5年以内ならものと処遇で復職を認めるというものです。

(1)定年の延長

定年を65歳にするという点ですが、定年という言い方をしているのだとすると期間の定めのないパート社員なのかと思いますが、従来から希望があれば68歳まで雇用延長をしていたとのことです。

しかし、賃金体系は安いものに変わるとのことで、業務内容も軽作業中心となっているとのことでした。

これは別にパート社員についてのものではなく、高年齢者雇用安定法によって要請される無期社員に対する継続雇用措置の内容として適切な内容であると評価されます。

高年齢者雇用安定法による継続雇用の場合には労働条件は自由に設定できますが、業務内容もそれに合わせたものになることが要請されるのは当然のこととされています。

このような高年齢者雇用安定法による継続雇用義務が、正社員の継続雇用以外にも適用されるのかは、実は別論なのですが、それはさておき、その趣旨を汲んだ人事制度を導入していたところ、さらに進めて、定年を延長し、賃金体系はそのままにして業務内容もそのままにするというところに意味があるわけです。

(2)5年以内の復職

二つ目の特徴である復職の制度は類例がそれほどあるわけではなく、大変注目される仕組みと思われます。

復職とはいうものの法的には再度採用するということでしょうから中途採用ということになるかと思われますが、報道から読み取れる限りでは、希望があれば自動で復職を認めることになりかねず、募集のプロセスがなくなってしまいかねないようにも読みとれました。この点については詳細が分からないので何とも言えないのですが、大変意欲的であると同時に、若干、人事上はリスクにもなりうるように思われます。

 

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東芝、提訴請求を受けた28人の現旧役員のうち5人に責任追及の訴えを提起 株主は残りの役員について株主代表訴訟提起の構え

東芝は、不適切会計の問題で株主から関与したとされる役員に対する提訴請求を受けていましたが、これに対して一部について責任追及の訴えを提起しました。

東芝のプレスリリース

提訴請求では、現役および元役員合計28人に対して、総額10億円の損害賠償請求をするようにと提訴請求を受けていましたが、これに対して、東芝はそのうちの5名に対して3億円の責任追及の訴えを提起したということになります。

提訴請求のやり方は以下の通りに定められています。

会社法施行規則

(株主による責任追及等の訴えの提起の請求方法)

第二百十七条 法第八百四十七条第一項 の法務省令で定める方法は、次に掲げる事項を記載した書面の提出又は当該事項の電磁的方法による提供とする。

 被告となるべき者

 請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実

この定め方は、実体法上の権利を反映しているわけですが、その帰結として、提訴請求をしながら会社が提訴しなかった分については、株主代表訴訟を提起できるということになります。

このため、提訴請求をした株主の代理人からは、株主代表訴訟の意向が示されています。

個人株主代理人「他の東芝役員にも訴訟検討」  :日本経済新聞 2015/11/7 23:44 日本経済新聞 電子版

東芝に現旧役員への訴訟を起こすように求めていた奈良県在住の個人株主の代理人である金啓彦弁護士は7日、東芝が旧役員5人に損害賠償を求めて提訴したことを受け「被告とならなかった役員については別途、株主代表訴訟を提起することも検討する」とのコメントを発表した。

(略)

役員の責任はそれぞれ個人ごとに権利としては別物になりますので訴訟物も別ということになりますが、弁論の併合はありうると考えられています。すると、馴れ合いが懸念される会社による追行と株主による追行が同時に行われることになり、大変混乱した訴訟になることが懸念されます。

 

 

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