Month: 3月 2015

育児休業給付金が、月80時間未満の短時間勤務の場合にも支給されるように変更されていることが注目を集める

育児休業を取得させることは企業の義務ですが、一般的にこの期間は無給とされていることが多いです。そのかわりに国から雇用保険を原資として給付金がでるのですが、これは賃金が出ない場合に支給されるのが原則で、正確には月に11日以上就業すると出ないというものでした。

しかし、実は平成26年10月1日から育児休業給付金の支給要件が緩和され、月に80時間まで労働していても支給されるように変更がなされました。

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000042797_2.pdf

このことの周知がだんだん進んできた模様で報道でも取り上げられるようになりました。

育休中、広がる在宅勤務 月80時間までの休業給付で  :日本経済新聞 2015/3/28 13:30

育児休業の社員が自宅などで短時間の勤務をする動きが広がってきた。月80時間までなら就業日数にかかわらず育児休業給付金が受給できるようになったことがきっかけだ。スムーズな職場復帰を促し、多様な働き方の一つとして関心を寄せる企業も増えており、女性の活躍推進を後押しする策の一つとして注目されつつある。

(略)

このような認知の広がりによって、月に80時間まで働きたいという要望を受けたのだがという企業からのご相談も増えています。

何でご相談事項になってしまうかというと、まだ多くの企業で育児短時間勤務は1日当たり5時間までの短縮を認めているだけのパターンが多いため、規程に合わないのだがというご相談が多いのです。

育休期間中でも働きたいという要望をするのは、これまた国が育休の取得を奨励している有期雇用の労働者からでして、元からの収入が低めであるためできる限り働きたいということになっているものと推測されます。

しかし、シフト制で勤務を汲んでいる事業では4時間の仕事を生み出すのが難しいということがあるようで、ご相談いただく事態になっている傾向があります。

そもそも、ご相談をいただく事象から推察すると、シフト制でなくても短時間での働き方では、働く方にとってもかなり限界があるのが実情のようです。育児休業給付金の受給要件の緩和ではからずも単に短く働くことを認めるだけでは限界があるということが改めて露呈しているような印象です。

2015.02.22~03.23 法律関係tweetまとめ

[twitter only]法務省、1月に休眠会社7万8千社をみなし解散させたことが判明。会社法施行後初のみなし解散で12年ぶりの実施。今後は毎年実施するとのこと。

[twitter only]雪国まいたけ、株主が申立てていた臨時株主総会招集のための基準日が3月6日になったと発表。株主が2月3日を基準日とする公告を官報に出したものの定款に定めた公告の方法ではなく、改めて日経新聞に公告したことに伴うもの。

[twitter only]大津地裁、大津いじめ訴訟で、大津市と遺族間の訴訟について和解勧告をしていたことが明らかに。市は過失を認めていることから賠償金の支払いを含んだ内容になる模様。市との間で和解が成立した場合でも、加害者とされる生徒との訴訟は継続する見通し。

[twitter only]日本経済新聞が実施した社長100人アンケートで、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入するとの回答は、0.7%だったことが明らかになる。前向きに検討は19.3%とのこと(3月22日)。

[twitter only]大阪市がユニバーサル・スタジオ・ジャパンに賃貸する私有地の賃料をめぐる賃料増額請求訴訟で、年間1億3千万円増となった大阪地裁判決に対して、大阪市とUSJの双方が控訴(3月20日)。

厚生労働省労働政策審議会、労働基準法等の一部を改正する法律案要綱についておおむね妥当とする答申 答申を踏まえて今国会に労働基準法改正案提出へ

遅れての取り上げですが、今月2日にかねてから取り上げている労働基準法の改正ですが、労働政策審議会から、改正案要綱についてそのままの内容でおおむね妥当と厚生労働大臣に対して答申されました。

「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」の答申 |報道発表資料|厚生労働省

労働条件分科会からの答申においては、巷で大きな話題となっているホワイトカラーエグゼンプションの方ではなく、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大について労働者側委員から反対意見があったことが付記されているところが注目されます。

とにかく答申が出されましたので、当初の予定通りの内容で改正法案が今国会に提出されることになりますが、答申後、本日までの間に、国会の情勢がやや流動的になってきており成立するか、若干微妙になってきました。

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最高裁、職場におけるセクハラ行為で警告や注意を受けることなく懲戒したのを無効とは言えないと判断 懲戒を受けたことを理由とする人事上の降格事由も有効と判断

セクハラについての処分が争われて最高裁判例が出ましたので取り上げます。

かなり程度のひどいセクハラ態様であることから事例判断の側面が強く感じられますが、人事労務に関する非常に重要な判示が行われており、その点に注目して取り上げます。

最高裁判所第一小法廷平成27年2月26日判決 平成26(受)1310 懲戒処分無効確認等請求事件

すでに報道で明らかになっていますが、大阪市にある有名な水族館である海遊館の管理職の社員2名が派遣の女性従業員に1年以上にわたって執拗なセクハラ行為を行い、当該派遣労働者は派遣元を退職してしまいました。

運営会社である第三セクターである株式会社海遊館(上告人)は、セクハラ防止を重要課題と位置付けていたことから、本件で問題となったセクハラ行為より以前にセクハラを禁止する文書を出しており、様々な取り組みを行っていました。

退職した被害従業員からの申告によりセクハラの事実を把握した上告人は、セクハラをした社員(被上告人)を懲戒処分とし、出勤停止としました。

このときの就業規則の規定の適用関係は、禁止行為として定められていた「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」と懲戒事由としての「就業規則に違反したこと」であり、懲戒の種類は行為の軽重によって、戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇が定められていました。

上告人は上から二番目の重さの懲戒をしたということになります。

また、上告人は、職能等級制度を採用している模様ですが、その中の人事権としての降格の事由に懲戒処分を受けたときという定めがあったことから、上告人は被上告人を降格させたものです。

これによって当然、賃金の減少を招いたわけですが、被上告人から懲戒処分の無効確認請求訴訟が提起されました。

原審は、請求を認めて、懲戒処分を無効としました。

その判断の骨子は以下の通りになります。

  • 被害者から明確な拒否をされていないことから許されていると誤信していたこと
  • 事前に警告や注意等を受けていなかったこと

セクハラは客観的に判断されるものであり、受け手によって左右されるのは妥当ではないことは一般化してきていますので、セクハラに当たらないといっているのではなく誤診していたのでやむないという情状事由としての捉え方をしているとはしても妥当とは受け取れませんが、二点目には相当な重みがあります。

確かに懲戒の有効性判断においては、注意や指導をしてもそれでもなお懲戒事由該当行為をしたことという補充性の原則のようなものを求める考え方がありますので、その点に考慮をして重すぎると大阪高裁は判断したことになります。

しかし、最高裁はこの点について、以下のようにいきなり懲戒することを許容しました。

原審は,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして,これらも被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,上告人の管理職である被上告人らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上記(1)のような上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや,本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており,従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において,上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば,被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。

上記のとおり、注意する機会がなかったということとと、さんざん取組をしていたので、具体的注意を待たずに知っていて当然という二点から根拠づけています。したがって会社が重要な方針として周知を図っていることで注意の機会が期待できないような場合にはいきなりの懲戒処分も許容されることがあるということになりましょう。

また、この件では、出勤停止の後に降格されていることから、二重処罰のようになり、その点から降格が無効と考える余地がありそうですが、この点についても最高裁は以下のように述べて有効としています。

本件資格等級制度規程は,社員の心身の故障や職務遂行能力の著しい不足といった当該等級に係る適格性の欠如の徴表となる事由と並んで,社員が懲戒処分を受けたことを独立の降格事由として定めているところ,その趣旨は,社員が企業秩序や職場規律を害する非違行為につき懲戒処分を受けたことに伴い,上記の秩序や規律の保持それ自体のための降格を認めるところにあるものと解され,現に非違行為の事実が存在し懲戒処分が有効である限り,その定めは合理性を有するものということができる。

判示から見る限りでは、上告人は職能等級制度をとっている模様ですので、懲戒処分を受けたことが職務遂行能力の欠如を意味するのかは若干疑問の余地はないではないところがあります。もっとも、懲戒されるような行為をすることは職場秩序まで含めて考えると職務遂行能力を欠いているといえないわけでもないように思えますので、そのような趣旨から最高裁は人事権としての降格事由を有効としています。

この降格についての判断は、重要な判断であり、職能等級制度について人事権の裁量の範囲を画する意味で本件を超えて通用する判示であるように思われます。

大変ひどい態様のセクハラであり、事案限りでも解決を図る必要は極めて高い件ではありますが、判示の内容はそれに限定するものではないことから実務に大変大きな示唆を与えるものではないかと思われます。

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大阪高裁、阪神バスの障害のある運転手が配慮したシフトを打ち切られたため、新シフトで働く義務がないことの確認を求めた訴訟の控訴審で和解が成立

このブログでは取り上げるのを失念しておりましたが、阪神バスの障害のある運転手が、障害に配慮したシフトを打ち切られたことから、新しいシフトで働く義務がないことの確認請求訴訟を提起して、第一審で新シフトが公序良俗に反するとして請求が認められた事件の控訴審で和解が成立したことが明らかになりました。

報道によると会社が配慮を続けるということを内容とする和解である模様です。

この件では訴訟に先立って、仮処分も申立てられており、勤務ごとの時間を14時間あけることも認められていましたが、第一審判決ではその内容は命じられませんでした。確認請求訴訟なのである意味当たり前ですが、仮処分でシフト作成についても介入があったという点できわめて衝撃的な事態であったわけですが、配慮をするという内容で終わった模様です。

もっとも、本件は阪神電鉄が分社化して阪神バスが誕生した際に、勤務作成上の配慮がなされなくなったというものであり、経緯からして合理性が難しかった点が伺われる事案だったというところも作用しているように思われます。

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株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループ、指名委員会等設置会社へ移行 取締役の3分の1以上を独立社外取締役とすることもルール化へ

東証、上場企業に2名以上の独立社外取締役の選任を求めるコーポレートガバナンスコードを6月から施行へ 選任しない場合には理由の説明が求められることに | Japan Law Expressの関連情報です。

上記リンク先の記事でお伝えした通り、東証のコーポレートガバナンスコードでは、独立社外取締役を2人以上選任するべきとされていますが、それに関わらず、独立社外取締役を3分の1以上とするならばそれを開示することも求められています。

この内容に対応する実例が早速現れてきましたので取り上げます。

株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループは、これまで委員会等設置会社と呼ばれていた指名委員会等設置会社への移行を、6月の定時株主総会での承認を前提として、公表しました。

指名委員会等設置会社への移行について

このリリースの中で指名委員会等設置会社への移行と同時に「MUFG コーポレートガバナンス方針」の制定についても公表され、その中に独立社外取締役が3分の1以上をしめることもルール化するとされました。

これは、とりもなおさず、東証のコードで推奨されることになる内容の先取りということになりましょう。

コーポレートガバナンスの実務の動きが早速始まっているということができ、今後の規模の大きな上場企業から同様の動きが相次ぐものと思われます。

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東証、上場企業に2名以上の独立社外取締役の選任を求めるコーポレートガバナンスコードを6月から施行へ 選任しない場合には理由の説明が求められることに

金融庁と東証がまとめる「コーポレートガバナンス・コード」で、上場規則に複数の社外取締役の設置を求めることが明らかに | Japan Law Expressの続報です。

上記記事を受けて、昨年12月17日に東証からコーポレートガバナンス・コードの基本的な考え方(案)が公表されていますが、当該コードが6月から施行され、上場規則でこのコードの内容を実施しない場合には説明をすることが求められるという形で、上場規則の整備が行われることになり、2月24日にパブリックコメントに付されました。

コーポレートガバナンス・コードの策定に伴う上場制度の整備について

コードの内容は多岐にわたることから、独立社外取締役の点だけ取り上げるのは適当ではなく、他にもさまざまなコーポレートガバナンスに関する内容について、行うべきとされていることが示されており、実施しない場合には説明が求められるという形になっています。

コードのうち、独立社外取締役についての箇所は以下の通りになります。

【原則4-8.独立社外取締役の有効な活用】
独立社外取締役は会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に寄与するように役割・責務を果たすべきであり、上場会社はそのような資質を十分に備えた独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきである。また、業種・規模・事業特性・機関設計・会社をとりまく環境等を総合的に勘案して、自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである。

上記だけ読むと、開示するべきは、後段の3分の1以上の独立社外取締役の選任に関する場合に限られそうに読めますが、そもそも全体を拾う規定として以下のようなものがあり、全体の内容について説明をしないといけない立てつけになっています。

【原則3-1.情報開示の充実】
上場会社は、法令に基づく開示を適切に行うことに加え、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から、(本コード(原案)の各原則において開示を求めている事項のほか、)以下の事項について開示・公表し、主体的な情報発信を行うべきである。
(ⅰ)会社の目指すところ(経営理念等)や経営戦略、経営計画
(ⅱ)本コード(原案)のそれぞれの原則を踏まえた、コーポレートガバナンスに関する基本的な考え方と基本方針
(ⅲ)取締役会が経営陣幹部・取締役の報酬を決定するに当たっての方針と手続
(ⅳ)取締役会が経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行うに当たっての方針と手続
(ⅴ)取締役会が上記(ⅳ)を踏まえて経営陣幹部の選任と取締役・監査役候補の指名を行う際の、個々の選任・指名についての説明

上記プレスリリース内に書かれていますが、 “Comply or Explain”(原則を実施するか、実施しない場合にはその理由を説明するか)が、コーポレートガバナンスの規律方法として確立して久しいですが、その段階がさらに進展したということになります。

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