Month: 12月 2014

厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会、ホワイトカラー・エグゼンプションについて健康維持策の義務付けを議論

ホワイトカラー・エグゼンプションについての審議会における議論が進んでおり、通常国会への提出を見据えて、適用に当たっての細部の条件について検討が進んでいます。

12月24日に行われた厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会第121回労働政策審議会労働条件分科会において、ホワイトカラー・エグゼンプションについては、健康確保のために義務付ける内容が議論されました。

労働条件分科会審議会資料 |厚生労働省

まだ、議事録が公開されていないため、議論の内容は報道によるしかありませんが、健康維持策の義務付けで合意が得らえたとされています。

報道によると健康維持策としては以下のようなものが上がった模様です。

  1. 労働時間や在社時間の把握義務
  2. 長時間労働が疑われる場合には産業医の面談を受けさせる
  3. 一定日数の休日取得 or 労働時間の上限 or 次の勤務との間に一定時間の休息の確保

1と2は現在の裁量労働制でも必要とされる措置であり、この制度についても裁量労働制とパラレルに捉えていることが伺われます。しかし、ホワイトカラー・エグゼンプションは、深夜、休日の割増賃金も発生しないようになることが前提として議論されていることから、裁量労働制とは異なる中身になることにも注意が必要でしょう。

これまでにあまり見たことがないものとして特徴的なのは3ですが、3つの選択肢からいずれかを採用することを求める方向とされています。

連続労働を抑制する必要がある観点からの歯止めになるものであり、むしろ年単位の変形労働制での仕組みにちかいものがあります。年単位の変形労働時間制では総労働時間の枠がありますし、連続しての長時間労働が続かないように限界がいくつかもうけられていますので、それに近いものがあるといえるでしょう。

また、勤務と勤務の間の休息については、日本法上は新しい発想といえますが、厚生労働省が勤務と勤務の間にどれだけ時間を空けることが法制度上求められているかについて、諸外国の例の研究をしていたことがあったのですが、それがここで活かされてきた感じでもあります。

労働時間自体は把握することを求めることになるため、現在の裁量労働制に寄せられているのと同じ批判が発生するように思われますが、健康維持策の確保自体はこのような内容で議論をまとめ、次の検討課題としては、年収や職種の範囲に移るものとされています。

通常国会に提出するとなると、議論のペースを速めないと国会開会後に提出することになりかねませんが、選挙の結果もあることから、継続審議という事態にはならないで成立にはこぎつけられるようにも思われます。

一旦、不透明になった労働基準法改正ですが、選挙後は一転して加速がかかってきた模様です。

2014.12.30 法律関係tweetまとめ

[twitter only]シャルレの株主が、子会社に無謀な貸し付けや増資をしたことで損害が生じたとして、元社長らに総額15億2千万円の賠償を求める責任追及の訴えを提起(12月27日)。

[twitter only]日本郵船、自動車運送の価格カルテルに関して、反トラスト法に違反したことを認め、アメリカ司法省と70億円の支払いで合意(12月30日)。

[twitter only]千葉県警、犯歴情報をOBに漏えいしたとして巡査長を減給100分の10(1か月)の懲戒処分。県信用保証協会で債権回収の業務を担当していた元上司の県警OBに漏えいしたもの。元上司は千葉区検から略式起訴され、罰金9万円とのこと。

2014.12.29 法律関係tweetまとめ

[速報]ソニー・ピクチャーズエンタテインメントの元従業員が、サイバー攻撃で個人情報が流出してネット上から削除できなくなっているとして、同社を集団提訴。プレイステーションのネットワークサービスから利用者情報が流出した件にも触れて、狙われる可能性を予測できたのに対応を怠ったと言及。

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青山学院大・高等部・中等部等の教職員の一部が、一時金の減額を違法として差額を請求して、学校法人青山学院を提訴

青山学院大などを運営して著名な学校法人青山学院が、賞与に当たる一時金を例年よりも減額して支給したところ、教職員の一部がこれを違法として差額を請求して東京地裁に提訴したことが明らかになりました。

青山学院:教職員2割が提訴 「一方的に一時金減額」 – 毎日新聞 2014年12月25日 07時30分

学校法人「青山学院」(東京都渋谷区)の教職員285人が、一方的な一時金の規定廃止によって支給額を減額されたとして、学院を相手取り、規定との差額にあたる総額約5000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしたことが分かった。原告には大学教授らも名を連ね、学院が設置する大学や高等部、中等部などの教職員全体の2割に達するという。

 訴状などによると、教職員の一時金は1953年以降、就業規則で定める規定に基づいた額が支給されていた。しかし学院側は2013年7月、「財務状況が非常に厳しい。取り崩し可能な資金にも余裕がない」などとして、規定の削除と一時金の減額を教職員の組合に提案。その後、組合の合意を得ないまま就業規則から規定を削除した。2014年夏の一時金は、規定より0.4カ月分低い2.5カ月分にとどまった。

 学院側は教職員側に対し、少子化や学校間の競争激化を理由に挙げ、「手当の固定化は時代にそぐわない」などと主張。一方、教職員側は「経営状態の開示は不十分で、一方的な規定削除には労働契約法上の合理的な理由がない。学院と教職員が一体となって努力する態勢が作れない」などと訴えている。

(略)

上記の報道中に言及されていますが、青山学院は一時金の金額について算出方法を就業規則に定めていたということが重要になります。すなわち、本件は、就業規則の不利益変更の問題ということになります。

使用者が就業規則を不利益な方向に一方的に変更してしまった場合を、就業規則の不利益変更の問題といいますが、この場合については労働契約法に規定があります。

労働契約法

第10条 
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

要するに不利益変更が合理的といえるかということになり、上記の規定中に現れている事情の総合考慮ということになります。報道からうかがえる事情で法律上意味を持ってきそうな事実は、経営状態、金額を算出する内容を削除したということ、組合との話し合い程度、削減した金額の多寡などということになりましょう。

しかし、いくら減らしたということもさることながら、一時金の金額を算出する算式を削除したという今回の内容は興味深い問題であるように思われます。今までは算式があった以上、支給を引き下げる算式にするくらいでよかったのではないかという考え方がありうるところです。

給与が減額された場合で争いになると、不利益になった金額の多寡が検討されますが、これは給与の内容を引き下げる変更をしているためで、金額の多寡は変更後の規定の内容そのものであるのです。

それに対して本件は算出方法自体をなくしてしまって、そのうえで適宜の金額を支給しているので、金額の多寡とは別の問題となる可能性があります。この点は注意が必要です。

しかし、規定を削除したことが極端化というとそうとも言えないと思われます。支給時の業績から賞与の金額を算出するための算式を持っていない企業はそう多くはないでしょうが、あくまで内部的なものにとどまり、給与規程等に規定までして労働契約の内容としてしまっている場合は多くはないと思われます。

そういう意味では、青山学院側の主張である手当の固定化は事態に合わないというのは他の企業の例を見るならばその通りであり、それほどおかしいことではないのだと思われます。

すると決めては、経営状況ということになるのかもしれません。

これまで問題となってきた賃金制度の変更とは若干異なる問題状況であることから非常に興味深い事例であると思われます。

2014.12.27 法律関係tweetまとめ

[法律]米第9巡回区連邦控訴裁判所、シー・シェパードが日本の調査捕鯨船への妨害行為を繰り返し、妨害や接近を禁じた仮処分命令に違反したと判断(12月19日)。賠償額が今後算定される方向とのこと。

[法律]法務省、休眠会社の職権によるみなし解散を平成27年度以降は毎年行う方針を固める(12月24日)。これまでは5年から12年おきに行っていたとされる。

福岡地裁、刑事弁護事件で別の刑事弁護人を選任したため、着手金の返還を請求した訴訟で、請求を認容してアディーレ法律事務所に着手金の返還を命令

弁護士事務所に着手金の返還を命じるという一見すると何が起きたのか疑問に思えてしまう判決が出ましたので取り上げます。

アディーレ法律事務所に返還命令 弁護の「着手金」 – 産経ニュース 2014.12.16 15:38

 法律事務所に依頼した刑事弁護を中途解約した福岡県の男性が、支払った着手金45万円の返還に事務所側も合意したにもかかわらず返金されないと主張した訴訟の判決で、福岡地裁は16日、事務所側に返還を命じた。

 事務所は債務整理を多く手掛ける「アディーレ法律事務所」(東京)。

 訴訟でアディーレ側は「返金は、新しく選任された別の事務所の弁護士が謝罪する条件で合意した。謝罪がない」と主張したが、永井裕之裁判長は判決で「アディーレの弁護士が送った書面には謝罪の条件はない。返金の合意は成立している」と指摘した。

 判決によると、男性と、逮捕された長男は11月7日、異なる弁護士にそれぞれ刑事弁護を依頼した。男性はアディーレ側への依頼をキャンセルし、支払い済みの計130万円の返還を求めたが、うち着手金分は返還されなかった。

長男が刑事弁護人を必要とする事態になったところ、原告と長男とで別途、刑事弁護人を依頼してしまったため、原告はアディーレ法律事務所に対する依頼をキャンセルして着手金の返還を求めたところ、謝罪が条件だったのにそれがされないということで返還に応じなかったため、訴訟になってしまったという事件です。

アディーレの弁護士を弁護人選任までしたのかが定かではないのですが、結局、別の刑事弁護人がついたため、アディーレは弁護活動としてはそれほど行っていないと思われますが、その余は返還されたようですが、着手金分の返還がなされなかったため訴訟になった模様です。

弁護士への委任契約は、着手金は理由のいかんを問わず返還しないとかそういう契約条項になったりしているものですが、なぜか返還に関する合意の解釈問題になってしまい、新しい刑事弁護人の謝罪が条件であるのにそれがないと条件が成就していないという抗弁がアディーレから出されるという不思議な経緯をたどった模様です。

刑事弁護人が重複してしまいどちらかが辞任するということはままあるような気がしますので、謝罪をするなどの事態は考えられないような気がそもそもするのですが、福岡地裁はそもそも書面にそんな条件は書かれていないとして、条件になっていないと端的に解した模様です。

返還するのが当然なのかはともかく、明らかになった事実からは当たり前といえば当たり前のような結論になっていますが、そもそもなぜこのような紛争になったのかが極めて不思議である一件と感じられます。

裁判例情報

福岡地裁平成26年12月16日判決

「ステーキのどん」等運営の株式会社どん、短時間勤務制度を育児、介護などの事由がなくても取得できるように制度変更 時間限定社員も創設へ

「ステーキのどん」などを運営する株式会社どんにおいて、いわゆる限定正社員の導入が行われることになった模様です。

吉野家HD傘下のどん、理由なしで時短勤務OK  :日本経済新聞 2014/12/19 23:49

吉野家ホールディングス傘下で「ステーキのどん」を運営するどん(東京・北)は来春、社員が育児などの理由がなくても利用できる短時間勤務制度を導入する。勤務時間は4時間か6時間。勤務時間の短いアルバイトでも社員に登用しやすくする。外食業界の人手不足は今後も続くとみて、働きやすい環境づくりを進めるのが狙いだ。

(略)

日経新聞の報道によると、「どん」は、短時間勤務制度の拡大と時間外労働のない時間限定社員の二種類の人事制度変更を行う模様です。

短時間勤務制度は、育児介護休業法にあるもので、育児や介護といった事由のある労働者から請求があると認めるというものですが、これを理由を問わない形に拡大するということで、育児介護休業法の制度から、時間を限定した限定正社員の仕組みに性格が拡大することになるといえます。

あえて短時間勤務制度を広げるということにしたのは、原則はあくまでフルタイムの所定労働時間としつつ、一時的な仕組みとして扱うためなど理由は想像されますが、実際のところは不明です。

また、時間外労働のない時間限定社員を設けるとのことで、こちらも、育児介護休業法にある時間外労働の免除の仕組みを拡大するものといえそうです。

本件の特徴はフルタイムの正社員以外の雇用種別を増やすというこれまでの限定正社員の導入実例と異なる点が興味深いものがあります。

また、報道によると、導入の背景は、外食産業の人手不足があるということで、特に新卒者がこの業界に入ってくるハードルを下げたいという意向があるとされています。この点もこれまでの限定正社員の例とは異なるものがあり、特徴ある実例として興味深い一件であると思われます。

2014.12.23 法律関係tweetまとめ

[法律]東芝、韓国SKハイニックスがNAND型フラッシュメモリーの研究データを不正に入手したとして提起した損害賠償請求訴訟で330億円の支払いを受けることで和解(12月19日)。同社は東芝の主張を一部認めたとみられる。知的財産をめぐる訴訟で日本企業が得た和解額としては過去最大。

Japan Law Express(@JapanLawExpress) | Twitter

2014.12.18 法律関係tweetまとめ

[法律]ベネッセと情報流出事件で、持株会社の個人株主が、同社が対策費用として支出した260億円について当時の役員6人に責任追及の訴えを提起するように提訴請求(12月15日)。厳重な情報管理体制を構築して運営する責任を怠ったとしており、任務懈怠があると主張の模様。

2014.12.14 法律関係tweetまとめ

[法律]東京地裁、集団的自衛権の行使容認の閣議決定を憲法違反といて無効確認請求訴訟で、訴えを却下(12月12日)。「閣議決定がすぐに原告の権利を制限するわけではない。具体的な法律関係の争いではないので訴えは不適法だ」とのことで、法律上の争訟に当たらないと判断している模様。

Japan Law Express(@JapanLawExpress) | Twitter