Month: 11月 2014

福井地裁、未成年の新入社員が自殺したのはパワハラによるものとして、会社に約7200万円の損害賠償を命じる

パワハラを認めて会社に損害賠償を命じた裁判例がでましたので取り上げます。

新入社員が、鬱病になって自殺してしまい、まだ未成年の若者だったという事案で、パワハラとして損賠賠償請求訴訟を遺族が提起したところ、パワハラと認定されて、請求が一部認容されました。

パワハラ自殺訴訟、認定根拠は手帳 上司の数々の発言書き記す 社会 福井のニュース |福井新聞ONLINE:福井県の総合ニュースサイト (2014年11月29日午前7時10分)

消火器販売などの「暁産業」(福井県福井市)に勤めていた男性社員=当時(19)=が自殺したのは上司の暴言によるパワーハラスメント(パワハラ)が原因として、男性の父親が会社と当時の上司2人に対し、慰謝料など約1億1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決言い渡しが28日、福井地裁であった。樋口英明裁判官は「典型的なパワハラ」として、同社と直属の上司に対し約7200万円の支払いを命じた。管理職の上司に対する請求は棄却した。

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樋口裁判官は判決理由で、男性がメモに残した直属の上司の暴言について「仕事上のミスに対する叱責(しっせき)の域を超え、男性の人格を否定、威迫するもの」と認定。さらに自殺した本人の過失はない、として賠償額の過失相殺をしなかった。
 会社についても、直属の上司に対する管理責任を認めた。管理職の上司については「パワハラの実態を把握するのは困難」として責任は問えないとした。
 判決文などによると、男性は2010年4月に正社員として入社。直属の上司から「死んでしまえばいい」「辞めればいい」などと言葉によるパワハラを受け、同年12月に自殺した。福井労基署は12年7月、男性は上司からのパワハラが原因で自殺したとして労災認定した。

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 「学ぶ気持ちはあるのか、いつまで新人気分」「毎日同じことを言う身にもなれ」「今日使った無駄な時間を返してくれ」「いつまでも甘甘、学生気分はさっさと捨てろ」(原文まま)―。判決の「典型的なパワハラ」の根拠となったのは、自殺した男性が手帳に記した、上司の発言23カ所だった。
 この手帳には、上司の指導の一環で、注意を受けたことなどが書き記されていたという。
 判決で、数々の言葉は高卒新入社員の男性への心理的負荷は「極めて強度である」と認めた。原告代理人は「言葉を具体的に取り上げた認定は珍しい。今後、同様の発言をすればパワハラになるという指標になるのではないか」と話した。

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未成年者に対するパワハラが認定されたのが初めてということが報道では目立っていますが、上記報道から行くと、この事件のポイントで未成年という点で特徴的なものがあるかは定かではありません。

すでに労災認定されていることからこれが意味を持ったであろうことは予想されますし、また、事実認定として、労働者自らがつけていたメモが重要な役割を果たしていることもうかがわれます。

未成年という点で気になるのが、上記のような事実認定された言動が、まだ社会経験の浅い未成年に対して行われるとするとパワハラになるという評価がされているかという点ですが、年齢によってハードルが変わるというような考え方をしているのかどうかは上記の報道からは定かではなく、判決全文を確認したいと思います。

裁判例情報

福井地裁平成26年11月28日判決

厚生労働省、企画業務型裁量労働制について本社で一括申請を可能にするなどの見直しを検討と報道される

裁量労働制の見直しが厚生労働省の労働政策審議会で検討のテーマに上っていますが、この審議会での検討と関係する模様ですが、厚生労働省が裁量労働制について見直しを検討している内容が日経に載りましたので取り上げます。

29日に日経新聞及び電子版で報道されたところによると、企画業務型裁量労働制について以下のような見直しが検討されているとのことです。

  • 事業所単位の申請から本社で一括申請可能にする
  • 労働時間及び健康確保の仕組についての定期報告の義務を廃止か頻度を減らすことを検討

上記のような内容を額面通り受け取ると、手続きの簡素化だけですので、利用増への寄与はあまりなさそうです。裁量労働制の導入が進まないのは、手続きが煩雑だからというよりは、適用できる範囲が狭すぎるからであるのが実際のところですので、これだけではあまり意味がなさそうです。

もっとも、本社で一括申請可能という点について、企画業務型裁量労働制では、本社以外の事業場では企画業務はおよそありえないことになっていたため、およそ本社事業場以外での実施例はありえないような説明がされていました。一括申請可能というところに企画業務型裁量労働制の拡大、要件的には「事業の運営に関する事項についての企画、立案、調査及び分析の業務」の意味するところが拡大されるのだとすると、かなり大きな意義がありそうです。

また、定期報告の緩和という点も、健康の観点から労働時間の実質的な把握現在求めていることは、裁量労働制の趣旨に反するため、導入当初から矛盾していると批判があったところでした。この矛盾の解消につながるのだとしたらこれも実質的に意味があることになりそうです。

しかし、いずれにせよ、選挙の前に詳細がでるはずがないので、あくまでアドバルーン的なものに過ぎないというのがこの報道の実際ではないかと思われます。

2014.11.25 法律関係tweetまとめ

[法律]福岡地裁、日本セレモニーの冠婚葬祭費を積み立てる互助会契約を中途解約する際の手数料のうち、会員の募集・管理に要する費用を上回る部分を無効と判断(福岡地裁平成26年11月19日判決)。24万円の積立に対し、約4万円の手数料だったところ、本判決によると4500円程度となる。

[法律]公正取引委員会、JA福井経済連が福井県内の農協を代行して発注した工事で事前に入札金額や落札業者を決め、自由な価格競争を制限したとして排除措置命令へ(11月21日)。入札の際、担当者が参加業者に対して事前に入札金額を指示し、落札業者を決めていたとのこと。

群馬大学、研究者に対するパワハラで教授を懲戒解雇

パワハラに関する懲戒処分の事例がまた報道に出ましたので取り上げます。

群馬大:パワハラで40代教授を解雇 – 毎日新聞 毎日新聞 2014年11月20日 21時17分

群馬大は20日、部下の教員5人にパワーハラスメントや暴言を繰り返したとして、大学院医学系研究科の40代の男性教授を懲戒解雇したと発表した。

大学によると、教授は2012年1月〜13年8月、同じ研究室の助教や講師の男性4人と女性1人に対し、退職や休日出勤を強要したり、長時間にわたり叱責、侮辱したりしたとしている。女性に対し、「結婚は三角、出産はバツ」との趣旨の発言もあったという。5人のうち2人が退職した。

 教授は大学の調査に対し女性蔑視発言を認めたが、他の行為については「指導の範囲内」と説明したという。大学側は教授を諭旨解雇とすることを決め、退職願を書くよう勧告したが、本人が拒否したため20日付で懲戒解雇とした。

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いわゆる研究室に入ってきた研究員に対するパワハラということで、相手が大学院生など学生の立場であったとしたらアカハラになるところだと思われます。

他社の報道によると、当の教授は、

この教授は「ずっと一人で研究してきた。(部下に)どう接したらいいか分からない」と指導法の悩みを周囲に漏らしていたという。

とのことで、教授がこのような乱暴な言動に及んでしまったことの原因が伺われるところです。

群馬大学は、当初、諭旨解雇にしようとしたところですが、拒否したため懲戒解雇としたとなっています。諭旨解雇は、法的に正確な定義があるわけではありませんが、一般的には期限を定めて退職届の提出を促し、提出がされない場合には懲戒解雇とするものです。

そのため懲戒解雇よりは一段前の懲戒処分ということになりますが、懲戒解雇してしまった場合には、懲戒解雇としての有効性の問題になるため、実のところ、懲戒解雇相当の事案ではない場合にはできないのが実情と思われます。

山喜、ノンコミットメント型のライツ・イシューで資金調達 東証の規制後初の事案であり同社は株主総会の承認を条件とすることも公表

東証、平成26年10月から、ノンコミットメント型のライツ・イシューを規制へ | Japan Law Expressの関連情報です。

上記従前の記事のとおり、東証は会社法の規定にかかわらず、新株予約権の発行のうち、ノンコミットメント型のライツ・イシューと呼ばれる株主割り当てであるものの未行使分の新株予約権について、行使を約束する引受人がいない類型について、規制を設けています。

この規制が設けられて以降、初のノンコミットメント型のライツ・イシューで資金調達をする事例が出ましたので取り上げます。行うのはシャツの大手の山喜になります。

山喜のプレスリリース

会社作成のQ&A

上記リリースから明らかなとおり、本来取締役会の権限であるものの、株主総会の承認を得ることを条件とするとされており、その理由として株主に影響があることを挙げており、さらに東証の上場規則で規制があることにも言及があります。したがって、ソフトローによる規制が実務態様にそのまま影響を与えたということになります。

また、本件では、株主の承認について、普通決議とされています。

この点、東証の上場規則では、株主の意思の確認という言い方をしているため(有価証券上場規程304条(2)b)、具体的な決議要件は実行しようとする会社それぞれの判断となるところです。

もっとも、経営権を巡って争いがあるなどの特段の事情がない限り、普通決議で意思確認をするというので十分と思われます。

司法試験自習用解答用紙

法務省が公表している司法試験の論文式試験の解答用紙から、黒色部分を除去して自習用にしたものです。

インクやトナーの節約になるほか、メモの書き込み等が容易になることから自習をするのに適している形にカスタマイズしたものです。

従来から、旧ブログで公開してきて、多くの方にご利用いただいたものと同じものです。OCNのブログサービスの終了を機に、引っ越して再公開するものです。

第3問追加版は、第1問から第3問までの問題番号が記入されたものがそれぞれ2ページずつ合計6ページのPDFからなります。2ページずつになっているのは両面印刷の便宜のためです。

問題番号自主記入式は、「第 問」となっていますので、ご自身で好きな問題番号にすることが可能です。こちらも2ページずつはいっています。

自由にご利用いただき、問題演習等に大いに活用していただければと思います。

東京地裁、日本ボクシングコミッションの元事務局長が提起した解雇無効等確認請求訴訟で、解雇事由とされた事実が認められないとして解雇を無効とするなど原告の請求認容の判決

下記従前の記事 2012.06.24 法律関係tweetまとめ | Japan Law Express の関連情報です。

2012.06.24 法律関係tweetまとめ | Japan Law Express

[法律]日本ボクシングコミッションの元事務局長,就業規則違反を理由としてされた同氏に対する解雇を,不当解雇であるとして東京地裁に訴訟提起(6月20日)。同氏は,解雇に先立って,降格処分も受けており,それについても訴訟提起しているとのこと。

この訴訟ですが、解雇無効、降格処分も無効という原則の請求認容の判決に至ったことが明らかになりました。

JBCの懲戒解雇は無効=前事務局長が勝訴—東京地裁 – WSJ 2014 年 11 月 21 日 17:30 JST 更新

日本ボクシングコミッション(JBC)から懲戒解雇された安河内剛氏(53)が、事務局長としての地位確認などを求めた訴訟の判決が21日、東京地裁であった。松田敦子裁判官は「処分は正当な理由がなく無効」として訴えを認めるとともに、JBC側に慰謝料30万円などの支払いを命じた。

 松田裁判官は、懲戒処分の前に行われた事務局長からの降格処分について、「JBCが団体分裂を回避するため、現事務局長代行らの要求を受け入れて安河内氏を排除することが目的だった」と指摘した。 

上記では引用していませんが日経の報道によると、判決で認定されている事実の経緯は以下のようなものであるとされています。

JBCは2011年6月、業務上の不手際を理由に安河内さんを降格処分にした。提訴翌月の12年6月には「別団体を設立しようとした上、ボクサーの個人情報を外部に漏らした」などとして懲戒解雇にした。

これに対して、東京地裁は、解雇事由とされた事実について証拠がないなどとして、懲戒事由該当性を否定する判断をした模様です。懲戒事由に該当しない以上、懲戒解雇処分は当然に濫用ということになります。

また、これに先立つ人事上の降格についても、対立する幹部の引き留めの目的で不当になされたものとしています。

業務上の不手際による降格ですので、人事権行使ではなく懲戒処分としての降格のように見えなくもないですが、東京地裁の判断枠組みからして人事権の濫用の枠組みで判断していることから、あくまで普通の人事権行使として検討している模様です。

法的に新規な点があるというよりは、事実関係に重きのある事案であると思われます。

裁判例情報

東京地裁平成26年11月21日判決

金融庁と東証がまとめる「コーポレートガバナンス・コード」で、上場規則に複数の社外取締役の設置を求めることが明らかに

会社法制定前後からのことですが、会社を規律する法制度について、機動的に動けない立法から離れてソフトローによる規律が進んできていますが、このソフトローは上場規則または金融商品取引法上の義務である継続開示の内容の追加などの形で具現化されています。

このたび、金融庁と東証が「コーポレートガバナンス・コード」をまとめ、その中で上場規則に社外取締役を複数置くことを求める内容が盛り込まれることが明らかになりました。

金融庁、社外取締役の複数化促す 上場企業行動指針-北海道新聞[経済] (11/22 11:54)

金融庁と東京証券取引所は22日、上場企業の行動指針となる企業統治原則(コーポレートガバナンス・コード)に、複数の社外取締役を置くよう促す規定を盛り込む方向で調整に入った。25日に開く有識者会議で原案を示す見通し。年内に結論を出し、来年6月の株主総会の時期までに東証上場規則に反映する。

 企業統治原則の策定は、企業の収益力を高める目的で、安倍政権がまとめた成長戦略に盛り込まれた。法律による義務化ではないが、企業は統治原則の内容を実施するか、しない理由を説明することが求められる。

上記のように結果として上場規則では、直接複数の社外取締役を置くことを求めるものではなく、複数の社外取締役を置く意思があるかについて公表する事を求めるという内容になる模様です。

このように意思の確認や理由の説明といった義務付けは、最近のソフトローの設計方法として定番化しており、その例に倣った感じといえるでしょう。

もっとも、社外取締役の設置はだんだんと進んできていますが、その人材は官界の出身者や法曹関係者が多く、ガバナンスという点では大いに寄与できるでしょうが、企業の成長という点ではどうなのかという疑問が出始めています。しかし、経営にアドバイスするのだとすると、それは業務執行ですので、それは社外取締役の役割は異なるのかもしれません。

2014.11.09~2014.11.19 法律関係tweetまとめ

[法律]東京地裁、歯科で親知らずを抜いた際に舌の神経が傷ついて味覚障害及び麻痺が残ったとして損害賠償が請求された訴訟で、約420万円の支払いを命じる判決(東京地裁平成26年11月6日判決)。報道によると、仕事に支障が出たことについても言及がある模様。

[法律]厚生労働省社会保障審議会年金部会、国民年金第1号被保険者についても産前産後の保険料免除を提案(11月4日)。自営業者、社会保険に加入していない被用者、所定労働時間の短い非正規雇用等への適用が見込まれる。

[法律]摂津市、JR東海が鳥飼車両基地で着手している井戸掘削が同市と国鉄が締結して同社が継承している地下水のくみ上げをしない協定に違反するとして提訴へ(10日)。JR東海は同基地の茨木市側で掘削することで協定に反しないと主張するも、摂津市は協定は同基地全体に及ぶと主張。

[法律]杉並区、幅4メートル未満の道路についてセットバックに強制力を持たせる条例を検討。区の審議会は財産権の一部制限は可能とするも、財産権侵害との意見も。従わない住民へのペナルティは「指導」「勧告」から「代執行」「過料」まで検討するも代執行は現実的ではないとの意見も。

[法律]大阪家裁、スリランカから一時帰国した母親が4歳の子供の連れ戻しを拒んだのに対して、父親がハーグ条約に基づき返還を求めたところ、返還命令の審判(11月19日)。日本におけるハーグ条約に基づく返還命令が明らかになるのは初。

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厚生労働省、セクハラ、マタハラに関して初の実態調査を実施へ

先日の最高裁判決を受けてということだと思われますが、厚生労働省がマタハラ及びセクハラについて初の実態調査を行うことになりました。

来年実施予定とのことですが、現在在職中の労働者に限ることなく、元労働者も含めて調査を行うことになる模様です。

報道によると、以下のような調査内容とされています。

  • 被害の具体的な内容
  • 雇用形態や加害者の立場
  • 勤務先に申告したかどうか
  • 勤務先の対応
  • 非正規雇用の女性については、解雇や雇い止めなど不当な扱いを受けていないか

個人に聞くしかないからだと思われますが、無作為抽出などの方法が検討されている模様で、全容という意味での実態の把握という点では難しいことになりそうですが、現在は労働局に相談されたりした件数及び内容しか把握していないことから、一歩踏み出すことにはなりそうです。