指定管理者による管理がされている区立図書館の副館長が違法に雇止めをされたとして,労働契約上の地位確認を請求して指定管理者を相手取って訴訟を提起したことが明らかになりました。
この区は足立区なのですが,指定管理者は有期雇用の形で雇用をしたらしく,副館長でも1年の契約社員だったとのことです。
区立図書館の元副館長、雇い止めで管理者を提訴
契約を更新されず雇い止めになったのは不当として、東京都足立区立図書館の元副館長の女性(51)が21日、同図書館の指定管理者を務める同区の金属加工会社に従業員としての地位確認などを求める訴えを東京地裁に起こした。
訴状によると、女性は2010年9月から同図書館の副館長として勤務。同社が11年8月、本に防犯用シールを貼る作業を従業員に勤務時間外に行うよう求めたため、女性が「仕事の割に報酬が極端に低すぎる」などと抗議したところ、12年4月以降の契約更新を拒否されたとしている。
(略)
報復として雇止めをされたとして,その報復の原因として主張するのが本に防犯用シールを貼る作業を所定労働時間外に1冊7円でやらせたところ2時間で50枚くらいが限度であり安すぎるとして,抗議をしたということだと原告は主張をしています。
最低賃金法に反するなどという指摘であり,それを受けて所定労働時間内に行われるようになったもののそれでも時給として300円から500円程度にしかならなかったということです。
これらをへたのち,契約更新に当たり,副館長だけ更新されず,残りのスタッフは更新されたとのことです。
このシールを貼る作業の問題点は,法的に整理すると最初は,雇用契約とは別に請負などの形で発注したということになるのだと思うのですが,雇用契約と同時に別の契約も締結するというのは労働法の潜脱になりやすいことから問題がありそうです。
しかし,実際にはその時間も含めて雇用関係であったかは細かい事実が必要ですので,潜脱っぽいからいって賃金として計算して最低賃金を割り込んでいるとしてよいかはやはり別ということが言えそうです。
また,最低賃金を割り込んでいるとしたとしても,請求の問題として出てくるのは未払い賃金の点であり,雇止めの当否の判断はやはり雇止め法理に照らして検討されねばならないでしょう。
報復的という点はその際斟酌する要素になるでしょうが,更新の期待があったか否かがやはり最大の要素になるでしょうから,それに関係する事実はシール作業だけの話題からは出てこない感じがあります。
ということで,請求を基礎づけるには,報道で触れられている以上に法的に橋渡しをしないといけない点がありそうだという印象です。