労働者派遣には期間制限のある業務がありますが,製造業はこれにあたり,最長で派遣期間は3年になります。これを超えると派遣先には直接雇用の問題がでてきます。
そのような中,マツダが,派遣で労働者を受け入れつつ,3年を超える前にクーリング期間として3か月だけサポート社員として直接雇用して,その後,派遣に戻すということをしていたところ,元派遣労働者から正社員としての地位確認等がなされたという事件で,山口地裁は黙示の労働契約の成立を認めて,正社員と認めるという判断を下しました。
非正規雇用の労働者を正社員と認めることは極めて珍しいことから大変大きな反響を呼んでいます。
まだ判決全文を確認できていないのですが,報道によると,派遣の形式は維持しつつ,熟練工の確保を図ろうとしていたことを派遣法の趣旨に反するとして厳しく批判している模様です。
日経の報道によると,以下のような内容が含まれているようで,重要だと思われます。
マツダは派遣社員を技能に応じてランク付けし、給与に反映させる制度なども導入しており、こうしたシステム全体を違法とした。
さらに「派遣の体裁を整えているが、実質は派遣と評価できない」とし、マツダが就業条件や賃金を実質的に決めていたと言及。13人の派遣元とマツダの派遣契約を無効とし、マツダとの黙示の労働契約を認めた。
黙示の労働契約という構成はかなりハードルが高いわけですが,この論点について詳細な判示をしているパナソニック・プラズマディスプレイ事件に照らしてどうかを考えないといけませんが,上記の報道での言及を見る限り,この判例を踏まえて理由づけとしてランク付けと給与について注目していることがうかがえるところです。
パナソニック・プラズマディスプレイ事件については下記の従前の記事をご覧ください。
JAPAN LAW EXPRESS: 最高裁、パナソニックプラズマディスプレイ事件(旧松下プラズマディスプレイ事件)で労働契約上の地位確認請求を認容した原審を破棄
全文を確認してからコメントを追加したいと思いますが,報道に出てきて事実からは,派遣としてはかなり問題のある制度設計があった模様で,実務的に大きな意味のある事例判断と思われます。
裁判例情報
山口地裁平成25年3月13日判決