アーバンコーポレーションが不可解なスキームの資金調達などをしていて問題となったことを記憶されている方も多いと思いますが,同社の株主が元経営陣を相手取って,損害賠償請求をしており,その判決が22日に出ました。
この事件で問題としてとらえているのは,資金調達情報に虚偽が含まれており,それによって株を購入してしまい,その後の顛末によって損害を被ったとするものです。
東京地裁は,元役員14人に対する総額約9億6千万円の請求に対して,元社長ら8人に約3億3千万円の支払いを命じる一部認容の判決を下しました。
資金調達情報に虚偽があったというだけでは,民法の不法行為の話になりそうですが,臨時報告書の虚偽記載ということになると,金融商品取引法の虚偽の有価証券報告書を提出していた場合の責任の規定が使えることになります。
臨時報告書は,有価証券報告書そのものとは違いますが,この責任が生じる開示書類の中には有報以外のものも含まれており,臨時報告書も入っているからです。
もっとも,この類の訴訟では,民法の不法行為構成でいくこともままあり,金商法の規定,法理は,損害の算定に当たり斟酌されているという形になることもままあります。本件の訴訟物がどちらであったのか等までは分からないのですが,ひとまず報道では,臨時報告書に重要事実の記載が欠けていたこと,損害の算定にあたり金商法の規定に依拠した計算をしていることが明らかです。
損害の算定にあたっては,金融商品取引法21条の2第2項の計算方法を用いている模様で,公表日前後1カ月間の平均株価との差額を基準に,その約3割が虚偽による損害としているようです。
株価下落分のうちのどの程度を損害とするかについては,非常に争いになりうるところです。
民法709条構成で株価の下落全体のうちのどこまでが損害であるかが問題となり,考慮してよい点について判示をしたのが西武鉄道事件であり,21条の2第5項の「虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下がり」の場合について判示をしたのが,ライブドア事件です。
法的構成によって,どちらが適用されるかが決まるわけですが,どちらも答えが一義に決まるような判示内容ではありませんので,依然として,本件においてはこうだというような議論は可能です。
法的構成のいかんにかかわらず,争いが続くことはありうるところかもしれません。
なお,ライブドア事件については,このブログで取り上げたいと思いつつ,まだできていないのですが,そのうちにきちんと取り上げたいと思います。
参考記事
JAPAN LAW EXPRESS: 西武鉄道事件最高裁判決の検討
裁判例情報
東京地裁平成24年6月22日判決