整理解雇によって解雇された労働者が,会社を相手取り,労働契約上の地位確認と賃金の支払いを求めた訴訟は,これまでに数多く例があります。このたび,裁判所が解雇無効の判断を下したものがまた一件でましたので取り上げます。
この事件では,整理解雇の対象は,派遣する労働者であり,特殊な点があるといえます。
以前に世間的にグッドウィルという会社がやたらと話題に上ったことがありましたが,このグループの人材派遣会社が整理解雇をした中で,派遣期間が満了した原告が含まれており,上記の通りの請求をする訴訟を提起したというわけです。
このような事実経緯がある以上,原告は常用型の派遣労働者だったのでしょう。
判決全文にはまだ当たっていないのですが,報道によると,本件は整理解雇の4要素のうち,必要性及び解雇回避努力義務の点が大きな意味を持ったことが伺われます。
旧グッドウィル雇い止め「解雇無効」と初判決 – MSN産経ニュース2011.1.25 19:06
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深見敏正裁判長は、解雇は無効と認定し、基本給など月額約30万円をさかのぼって支払うよう命じた。
深見裁判長は判決理由で、派遣会社の経営について「一時期を除き黒字で、切迫した人員削減の必要性は認められない」と指摘。「整理解雇を回避する努力を尽くしたとは認められず、解雇には合理性がない」と結論づけた。
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判決によると、男性は平成8年から派遣会社の社員としてメーカー工場に派遣されて働いていたが、21年3月末に派遣期間が終了すると、4月末に整理解雇された。
派遣労働者の整理解雇についてさらに裁判例が蓄積されたということで意味があるように思われます。
事実関係のほか,派遣ということで規範的判断がどうなっているのかも気になるところです。
解雇回避努力義務は,派遣労働者となると,別の派遣先を探すべきということになるのか,社内の事務仕事などでも仕事を探すべきだと言っているのかも気になるところです。