Month: 6月 2010

最高裁、権利能力なき社団を債務者とする債務名義に基づいて当該社団の構成員の総有に属するが第三者が登記名義人になっている不動産に強制執行をする場合、登記名義人に対する執行文の付与を求めることはできず、当該不動産が構成員の総有に属することを確認する確定判決その他これに準ずる文書を添付して強制執行をすることができると判示

長くわかりにくいタイトルで申し訳ないです。

報道で著名ですが、朝鮮総連の本部に対する強制執行が争われている事件があります。

この事件について、最高裁で執行法の問題について意義深い判断が示されました。

整理回収機構が朝鮮総連に対して600億円を超える債務名義を取得しており、これに基づいて朝鮮総連の本部に対する強制執行をしようとしたところ、朝鮮総連は権利能力なき社団であり登記の名義人になることができず、登記名義が合資会社「朝鮮中央会館管理会」になっており、そのままでは強制執行できないという事態になりました。

強制執行ができるのは、債務名義の名義人の財産に対して行うのが原則であるためです。

しかし、実質的には、朝鮮総連本部は朝鮮総連の物であるとして、整理回収機構が強制執行を可能にするために、二種類の訴訟を提起しました。

第一が、朝鮮総連に対する600億円超の債務名義で、合資会社「朝鮮中央会館管理会」に対する強制執行を可能にするために執行文付与の訴えを提起しました。

民事執行法

第27条

2 債務名義に表示された当事者以外の者を債権者又は債務者とする執行文は、その者に対し、又はその者のために強制執行をすることができることが裁判所書記官若しくは公証人に明白であるとき、又は債権者がそのことを証する文書を提出したときに限り、付与することができる。

この第一の訴えに関する事実関係やこれまでの経緯については以下のリンク先の記事をご覧ください。

JAPAN LAW EXPRESS: 整理回収機構提起の朝鮮総連本部強制競売のため執行文付与の訴えで第1回口頭弁論開かれる

JAPAN LAW EXPRESS: 東京地裁、朝鮮総連本部強制競売のための執行文付与を認めず

※控訴審判決については取り上げるのを失念しておりました。

第二が、合資会社「朝鮮中央会館管理会」から朝鮮総連の代表者に登記名義を移転するように求める訴えで、600億円超の債務名義の執行力が当然に及ぶ範囲に財産を戻してしまおうというものです。

これについての詳細は以下の記事をご覧ください。

JAPAN LAW EXPRESS: 東京地裁、朝鮮総連の土地建物について代表者への移転登記を命令

 

このうち、第一の訴訟についての上告審判決が本件です。

最高裁判所第三小法廷平成22年06月29日判決 平成21(受)1298 執行文付与請求事件

民事執行法23条2項によって執行文の付与が認められるのは、債務名義上に表示された債務者と異なる者であるが、実はその者は執行力の範囲に入っているという者に対する場合です。

執行力の範囲については以下のように、民事執行法27条1項に規定されています。

第23条(強制執行をすることができる者の範囲)

執行証書以外の債務名義による強制執行は、次に掲げる者に対し、又はその者のためにすることができる。

一 債務名義に表示された当事者

二 債務名義に表示された当事者が他人のために当事者となつた場合のその他人

三 前二号に掲げる者の債務名義成立後の承継人(前条第一号、第二号又は第六号に掲げる債務名義にあつては口頭弁論終結後の承継人、同条第三号の二に掲げる債務名義又は同条第七号に掲げる債務名義のうち損害賠償命令に係るものにあつては審理終結後の承継人)

2 執行証書による強制執行は、執行証書に表示された当事者又は執行証書作成後のその承継人に対し、若しくはこれらの者のためにすることができる。

3 第一項に規定する債務名義による強制執行は、同項各号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者に対しても、することができる。

しかし、本件では、合資会社「朝鮮中央会館管理会」は上記の23条1項2号、3号のどちらにも当たらないため、そのままでは承継執行文は認められません。

朝鮮総連が権利能力なき社団であるために、朝鮮総連から合資会社「朝鮮中央会館管理会」に権利が承継されたわけではありませんし、朝鮮総連が訴訟担当であった場合でもないからです。

上記は権利能力なき社団ゆえに生じてくるわけですが、これだと容易に執行逃れをされてしまいます。そこで学説で、このような状況へ対処する解釈論が提唱されていました。

そのうちの一つが、本件で整理回収機構が主張した理由である、23条3項の所持者と所持人の解釈で対処できないかというものです。

上記の規定のとおり、債務名義の債務者の代わりに所持している者には強制執行が可能であり、朝鮮総連は権利能力なき社団であるために登記名義人になれないということから考えると、合資会社「朝鮮中央会館管理会」は朝鮮総連からみて所持人に似ているというものです。

ただし、23条3項の所持人はそもそもは、倉庫業者などに寄託している特定の物品についても委託者への債務名義で当然に強制執行できるという趣旨の規定であり、このような場合を念頭にしているわけではありません。そこで、23条3項の類推適用とされ、規定の趣旨から執行文の付与を求められるという構成になっています。

23条3項に該当するなら、当然に執行できるので、執行文付与を認めるきっかけに使うという点で類推適用であるわけです。

しかし、第一審原審とも、この論点については、一般論としては肯定したものの、認められる範囲が限定されるとして、権利能力なき社団の代表者が登記名義人である場合に限られるとして、本件の合資会社「朝鮮中央会館管理会」は認められる場合に該当しないとしました。

本件判例のまとめによると原審は以下のように判示しています。

原審は,権利能力のない社団を債務者とする金銭債権を表示した債務名義を有する債権者が,当該社団の構成員全員に総有的に帰属する不動産(以下「構成員の総有不動産」という。)に対して強制執行をしようとする場合において,上記不動産につき,当該社団の代表者がその登記名義人とされているときは,法23条3項の規定を拡張解釈して,上記債権者は,上記債務名義につき,上記代表者を債務者として構成員の総有不動産を執行対象財産とする執行文の付与を求めることができると解するのが相当であるが,本件不動産の登記名義人である被上告人は,そもそもAの構成員でなく,その代表者でないから,上

無風の選挙になってしまうのか

大相撲の野球賭博やワールドカップの陰に隠れて、あまり選挙に注目が集まらないのが残念なところです。もっとも、本来の民主党が口先だけなのか、政権担当能力があるのかはついこの間始まったことなので、まだ選挙で審判をするにも材料不足です。ある意味無風の選挙になってしまうのはいたし方ないのかもしれません。

菅総理と比べて、鳩山前総理を理想主義者と位置づける向きがありますが、あれは理想主義者とはややことなり、誰に対してもいい顔をしたいだけで、確たる自己というものはなかったように思えます。あれを理想主義的な政治だと捉えると、後日、現状とはかけ離れた日本のあるべき姿を提示して、それに向けてドラスティックに改革を行おうとする本当の意味での理想主義者が、困ることになりかねないので、あまりよろしくないように思えます。

こともあろうに歴史的な政権交代で誕生した最初の総理があのような人物であったのは、日本にとって非常に不幸なことだったように思えます。最初から今、表舞台にたっている「青臭い」民主党の面々がやってくれていればよかったのにと思います。

果たしてその真価はどうなのかがこれからの問題なのですが、やや不安を感じつつある今日この頃です。

ウェブ上での定時株主総会の議決権行使結果の開示が相次ぐ

金商法上の義務としては、臨時報告書での開示でよい議決権行使結果の開示ですが、東証のルールのためウェブサイト上での議決権行使結果開示も相次いでいます。

ソニー

東芝

ソニーはかねてより行っていましたが、比較的簡単なものでした。

今年からは、ウェブサイト上で臨時報告書をそのまま掲載しており、開示内容の充実が認められます。

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色々とおきてくる

今日は、民事執行について興味深い判決が出まして、ぜひ記事にするべきところなのですが、少ししっかり取り上げたいので日を改めます。

また、最近、株式買取請求権について一連の動きが相次いでおり、日経も今週月曜の法務面で取り上げて旗振りに一役買っていますが、何だか引っかかるものがあります。これも、経済産業省が提出した例の会社法の見直し案と絡めて少ししっかり取り上げたいところです。

ということで予告ばかりになっています。中々余裕がなくて、今日のところはあまりたいしたことができません。

それほど忙しいというわけではないのですが、湿度がとてつもなく高いせいか、夜になるとすっかりくたびれてしまい、力を入れて書く気力がなえてしまいます。

何とか頑張りたいところです。

大盛工業で株主代表訴訟が提起される

大盛工業についてはすでにいくつかの事象についてお伝えしてきました。

JAPAN LAW EXPRESS: 大盛工業、株主請求の臨時株主総会を開催 株主提案の取締役選任議案は否決される

JAPAN LAW EXPRESS: 大盛工業の株主、自らが勧誘した委任状に関する大盛工業の有効無効の判断に疑義があるとして、株主総会決議取消の訴えを提起

上記の記事で取り上げたのは、株主提案とそれが否決された決議取消の訴えなのですが、これらの行動に及んだ株主が、今度は大盛工業の役員と元役員に対して責任追及の訴えを提起したことが明らかになりました。

株主代表訴訟に関するお知らせ

問題にしているのは、他社への資金支援と出資等の行為によって、会社に損害が生じたというものであり、これが善管注意義務違反・忠実義務違反を構成するとして損害賠償請求権が生じるとしています。

上記の総会関係の問題とは、詳細が異なりますが、当事者である株主が同一であることから、経営権をめぐる一連の問題を構成しているということができるでしょう。

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脱線から生じる法的問題

昨晩は窓を開けて寝たのですが、あまりに暑くて今朝は汗だくでとてつもなく早起きしてしまいました。

あまりに汗をかいていたので、一瞬、病気になったのではないかと誤解したほどです。

全然関係ない話ですが、東武東上線の車両で、納車後すぐに森林公園の車庫で手歯止めをつけたまま動かして脱線してしまい、一度も営業運転をしないうちに台車を壊してしまった51003Fが、ようやく営業運転に入ったようです。

修理に随分長い間かかってしまったのはやや意外でした。

さて、目下増備している、地上用の50000系は、購入ではなくリースでの導入になっています。こういう契約関係において東武鉄道が車両を破壊した場合の法的問題についてはやや興味深いところです。

別の問題なんですが、手歯止めをしたまま動かしてしまった運転手はどうなるでしょうか。一般論としては、下手をすると下ろされかねないような気もするのですが、果たしてどうなったのでしょうか。

経済産業省、「今後の企業法制の在り方について」を公表

JAPAN LAW EXPRESS: 経済産業省、会社法の見直し案を法制審議会に提示」の関連情報です。

上記リンク先記事で日経紙面上でのまとめを引用した経済産業省の意見ですが、法制審議会のウェブサイトで、配布資料としてはまだ公表されていませんが、経済産業省のウェブサイトですでに公表されていました。

詳細な全文が公表されていますので、リンクを掲載します。

今後の企業法制の在り方に関する経済産業省の意見について(METI/経済産業省)

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エロとの戦い

くだらない話で恐縮ですが、このブログはコメントを承認制にしていますが、これはアダルトサイトへの誘導を目的とする書き込みをフィルタリングするためです。ブログを運営されている方に共通の悩みではないかと思います。

いかにも書きそうな内容から、禁止ワードを色々と設定して、アダルトサイト関連の書き込みを排除することに全力を注いでいるのですが、敵もさるもので、色々と回避手段をとってきます。

最近は、卑猥な単語の間にスペースを入れることで、外見上、卑猥な単語にめるようにしておきながら、フィルタリングの禁止ワードには一致しないという方法で回避するということが頻繁に行われています。具体的には、仮に林檎という語が卑猥な単語であるとして禁止ワードにしたとすると、「林 檎」と書いてくるわけです。

これだと回避されてしまうわけです。

そこで、頭に血が上った私は、卑猥な単語を構成する可能性のある文字をどんどん禁止ワードにするという、過度の広汎性の法理に照らしてどうなのかという強硬手段に打って出まして、なんでもない一文字が禁止ワードになっています。これのおかげで、ほとんどのアダルト書き込みを排除することができるようになりました。

もっとも恐れたほど、普通の書き込みまで排除していません。法律関係の記事ばかりですから、あまり禁止ワードにした文字を使わずにすんでいるようです。

まあ、法律関係の記事への書き込みで、「亀」とか「舐」とか使うことはありませんよね。他にも色々な文字を禁止しています。

よって普通のコメントをしたいとお考えの方には、比喩的な表現を駆使して法律ではあまり使わない表現を使わないようにお願いいたします。普通の文を書く分にはまず引っかかりませんが。

ということでこのブログにされた書き込みは、アダルト書き込みを排除するためのものですので、そうでない書き込みは、私個人への連絡で公開するべきではないものを除いて、批判的なものも含めてすべて承認がされています。今後もずっと維持するとまで約束できるようなものではありませんが、表現の自由を尊重する観点からできる限り頑張りたいと思います。

ビックカメラ元会長の有価証券報告書等の虚偽記載に基づく課徴金納付命令勧告を受けての審判手続きで、違反事実がない旨の決定

JAPAN LAW EXPRESS: ビックカメラの有価証券報告書等の虚偽記載に基づく課徴金納付命令勧告について、ビックカメラは納付の意向を示すも元会長は争う姿勢を示す」の続報です。

なぜか結論が中々でなかった元会長のほうの課徴金を課すか否かを判断する審判ですが、違反事実がないという驚きの結論が出されました。

株式会社ビックカメラ役員が所有する同社株券の売出しに係る目論見書の虚偽記載事件に対する違反事実がない旨の決定について:金融庁

証券取引等監視委員会からの課徴金納付命令勧告に反する結論になることになりました。金商法の課徴金はまだそれほど実例があるわけではないので、勧告通りにならなかったということの重みは、極限的に大きいというわけでもないのかもしれませんが、それでも相当衝撃的です。

 

また、違反事実がないということの理由ですが、以下のように述べています。

被審人が、目論見書の作成に関与した時点で、目論見書に虚偽の記載があることを知っていたと認めることはできない。

要するに、故意がなかったということであり、何だか腰砕けのような感じを受けざるを得ません。

というのは、争点は以下の3点であったためです。

  • ①ビックカメラの第27期事業年度連結会計期間に係る有価証券報告書及び第28期事業年度中間連結会計期間に係る半期報告書を参照書類とした目論見書に虚偽の記載があると認められるか(以下「争点1」という。)。

  • ②被審人は目論見書の作成に関与した時点で、目論見書に虚偽の記載があることを知っていたと認められるか(以下「争点2」という。)。

  • ③被審人は虚偽の記載がある目論見書の作成に関与したと認められるか(以下「争点3」という。)。

本件は②についてしか判断していませんが、これは①について認められることを前提としているのではありません。以下のように述べていることからこれは明らかです。

仮に目論見書に虚偽の記載があり、かつ、被審人が目論見書の作成に関与したとしても、被審人が目論見書の作成に関与した時点で、目論見書に虚偽の記載があることを知っていたとまでは認められない。

そうすると、その他の争点を検討するまでもなく、本件審判事件において、金融商品取引法第178条第1項第2号に該当する事実は認められないこととなる。

なんだか肩透かしを食らったような結論になってしまいました。

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東京地裁、半導体集積回路の複写技術をめぐる職務発明の対価を請求する訴訟で、6300万円の支払いを命じる 原告、被告とも控訴へ

日立製作所の元社員が職務発明の対価を請求した訴訟で、東京地裁は一部認容をして、6300万円の支払いを日立製作所に命じました。

発明対価訴訟:日立に6300万円支払い命令 元社員の発明対価--東京地裁 – 毎日jp(毎日新聞)毎日新聞 2010年6月24日 東京朝刊

半導体集積回路の複写技術を発明した日立製作所(東京都千代田区)の元社員、岡本好彦さん(59)=静岡県菊川市=が「正当な対価が支払われていない」として同社に6億円の支払いを求めた訴訟の判決で、東京地裁は23日、約6300万円の支払いを命じた。清水節裁判長は「発明で利益を得られたのは日立の貢献が大きい」と減額理由を説明した。

(略)

岡本さんは「会社は少なくとも約80億円のライセンス料を得ており、貢献度は20%を下回らない」と主張し、その一部を請求していた。

(略)

日立の主張よりの判決ですが、一部でも認容されたことに不満があるとのことで、直ちに控訴した模様です。

原告も当然控訴する意向とされています。

裁判例情報

東京地裁平成22年6月23日判決

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