Month: 6月 2009

日本ラッド株主総会、公開買付をしている前会長派の株主の動議により社長の取締役選任議案が否決される

前会長が突然の公開買付を開始して混乱の様相を呈していた日本ラッドの株主総会が29日に行われ、会社提案の役員の選任議案に修正動議が出されて、社長をはじめとする二名が賛成多数で差し替えられるという異例の事態となりました。

修正後の役員選任議案は承認されましたが、社長は交替せざるを得ず、それを受けてか、承認されたばかりの取締役が即日辞任するというこれまた異例の事態になっています。

日本ラッドのプレスリリース

修正動議で提案の一部を差し替えるというのは、役員選任議案に関して株主提案をしないで対案を出すことを可能にするために選ばれたのだと思いますが、総会当日に議決権を行使できる出席株主が多数いないといけないため、流動性が低い会社でないとできないことです。よって多用されるものではないですが、驚きました。

修正動議を出した株主は前会長の意向を受けた人物を報道では言及されており、公開買付とも関連がある行動であると思われます。

日本ラッドの株主総会、社長ら2人の取締役選任案を否決(日本経済新聞2009年6月30日)

システム開発の日本ラッドが29日に開催した株主総会で、大和喜一社長ら2人の取締役選任案が否決された。同社のTOB(株式公開買い付け)を発表している前会長の大塚隆一取締役側の株主が役員選任案の修正動議を提案。会社案への反対票は6割超を占めた。大和社長は総会の結果を受けて退任、新社長には子会社の日本ラッド情報サービス取締役の長岡均氏が就任した。

総会終了後に記者会見した大塚氏らは修正動議を提案した理由を「大和氏ら2人が(日本ラッドの買収を目指す)社外の勢力と連絡を取っている疑いが強まったため」とした。長岡新社長は「大塚氏が安定株主になることは好ましい」とTOBに賛成の意向で、近く会社側の意見を表明する。

(略)

こうして、日本ラッドは会社としては公開買付に賛成するということになりそうです。

その理由が、上記のとおりに社外の勢力と連絡を取っているということだとしたら、若干妙な感じを受けます。株主が役員を選解任するのは権利ですので、左右するものではありませんが、アメリカでは買収提案があったらもっとも高いところに売るようにすることが役員の株主に対する義務になりますので、社外と連絡をとったということで非難されると、アメリカでは取締役としての信認義務に反することになりかねません。取締役間での会社の方向性に関する意見の対立があったというのが実際のところなのでしょう。

自殺した佐川急便社員の遺族がパワハラによる自殺であるとして労災申請へ

パワハラに関する事例がさらに一件発生しました。

「自殺原因はパワハラ」佐川急便社員の遺族が労災申請へ(MSN産経2009年6月30日)

佐川急便新潟店(新潟市)の男性係長(42)が自殺したのは上司によるパワーハラスメントが原因だったとして、遺族が週内にも新潟労働基準監督署に労災認定を申請することが分かった。同店の従業員約200人のうち、130人が会社に連名で原因究明を求める嘆願書を提出しており、115人がパワハラの実態を証言する文書を遺族に寄せているという。遺族側は労災認定を受けた上で、上司と会社を相手に損害賠償請求も検討するとしている。

(略)

同僚が遺族に出した証言書によると、課の朝礼で係長は課長代理から「数字を上げられないお前は係長でも何でもねえ」「仕事をしていなんだから給料を返せ」などと部下の前で罵倒され続けた。構内放送で名前を呼び捨てにされ、出席簿から名前が消された。25人の部下を管理する係長業務に加えて配送の仕事もさせられ、4月には「お前なんかいらないから行ってこい」と1週間の新人研修に2度も参加させられた。

男性は妻に「最近、みんなの前で怒られるんだ」「うつ(鬱病)っぽいかもしれない」と漏らしていた。5月16、17日は久しぶりの連休で自宅で休養したが、翌18日午前4時、仕事で東京に出張していた妻の携帯電話に「仕事をこんな形でしか解決できなかった。今までありがとう。本当に幸せだった」とメールを送信。同日早朝、新潟市東区のスーパー跡地で飛び降り自殺した。

(略)

パワハラの問題についてはまだ事例を整理して検討したことがないので他日を期したいと思いますが、上記の報道の通りだとするとまさに人格権侵害の不法行為といえ、労災に認定されるかについては別の問題もあるので即断は出来ませんが、実際の行為者や使用者の責任は十分検討に値するように思われます。

書評

個人献金が実は故人献金だったりして、性質の悪い冗談が横行している日本政治の現状ですが、さすがに辟易してきます。一体全体どうなっているのでしょうか。

さて、水町先生編の事例演習労働法についてどうかというお尋ねをいただいたので、この場で簡単に答えておきますと、今年の新司法試験の問題はほぼすべて網羅しています。模範解答に書かれている分でも十分ですので、つなぎ合わせれば高評価を得られる答案になると思います。

というのは、問題が単元ごとにすごくたくさん載っているためでして、落ちている問題はほとんどありません。完全にないわけではないですが。

事例が簡単すぎるため、本番ではもっと難しい複雑な事例になるという違いはあるものの、基本的な論点の確認には非常に優れていると思います。載っている模範解答には、企業人としては納得しかねる部分もありますが、あれで十分だと思います。

定期試験の準備から新司法試験まで対応可能であるといえると思います。

ちなみに新司法試験の合格者の再現答案を拝見しますと、労働法に関しては、使用者よりの答案が目立つように思いました。特に20年度で顕著でした。企業人の私でもこれは労働者の勝ちだろうと思う事案でも、使用者よりの答案を構成されており、理屈さえ通れば自由だと思いますが、下手をすると人間としてのバランス感覚の問題になりかねませんので、一応、社会通念から考える余裕もあったほうがいいかもしれません。

東京地裁、昭和シェルで人事制度に男女差別があったと認定

昇進等の人事における男女差別は労働法の古くて新しいテーマで、女性差別を認定して賠償を認容する裁判例も出ています。

この論点の議論は、いつから男女差別が違法になるかという起点の問題で、均等法が制定されたこと、その改正と続く立法がいつから公序になったといえるのかがメインテーマとなっています。

改正均等法は、平成9年改正で募集・採用・配置・昇進において差別禁止が努力義務から強行規定になりましたので、これが施行された平成11年以降は男女差別になる制度を存置させると公序に反するというのが、野村證券事件(東京地裁平成14年2月20日判例時報1781号34頁)です。

さて、同じような人事制度における男女差別が争われた事件について東京地裁で判決が出ました。

「違法な男女差別」昭和シェルに慰謝料命令(読売新聞2009年6月29日)

昭和シェル石油(東京)の女性社員ら12人が、「女性であるという理由で賃金差別を受けた」として、同社に、男性社員との差額賃金や慰謝料の支払いなどを求めた訴訟の判決が29日、東京地裁であった。

渡辺弘裁判長は「原告らは違法な男女差別を受けた」と述べ、原告全員に対して慰謝料計4945万円を支払うよう命じた。

訴えていたのは、同社の現職社員9人と、定年退職した2人、死亡退職した1人の遺族で、12人は高校・短大卒業後の1966~74年に旧シェル石油に入社。判決によると、同社の人事制度は、99年までは主に年功序列制度(旧制度)を採用し、その後は能力・成果を重視する制度に切り替えた(新制度)。

判決は、旧制度について「男女別の昇格管理が行われ、原告らを含む高卒、短大卒の女性社員は、男性に比べて著しい格差があった」と指摘。新制度についても、「改善されつつあるが、不当な差別は残っている」とし、1人345万~690万円の支払いを命じた。

(略)

上記の報道では、上記論点についての判断の詳細がよく分からないのですが、差別を認定したという点では同種の判断であるということはいえます。

昭和シェルについてはすでに労働者側勝訴に終わった判決が別に確定しているので、それとも整合している判断です。

分権したらどうなるのか

地方分権が特に叫ばれている今日この頃ですが、進歩的な首長がいる自治体ならまだしも、土建屋と癒着しており、自分が金を稼ぐことにしか興味が全くない首長のいる自治体であると分権をしてもいいことは特になく、むしろ使えるお金が増えてうれしいということでより一層悪事にまい進するかもしれません。

その辺を何とかするのは住民が選んだわけですから自分たちに跳ね返ってくるのは仕方がないということなのでしょうね。

こういってはなんですが、普通自分の自治体の行政がどうなっているかなんて無関心ではないですかね。私もそうだったのですが、何だかおかしなことが目立つにつけて、少し調べている見ると私の住んでいるところの自治体のお寒い現実を知ることになりました。

市役所の建設部長は土建屋に必ず天下っていますし、その土建屋に市は無理やり公共事業を発注していますが、その土建ははまる投げでさらに地方の土建屋に仕事を投げていて、差額を丸儲けしているだけです。

こともあろうにその土建者の社長は、私の高校の同窓会のうちの地区の支部の代表をしており、同窓会の案内を見るたびにむかついていました。

今度同窓会の地区代表が交代して少しはせいせいしたのですが、別の土建者の社長に代わっただけでした。どうなっているんだよ川越高校OB。地元に残っているのは土建屋しかいないんですかね。

飲みすぎの反動

昨日の飲みすぎので気持ちが悪かったのですが、この日は司法研修所のガイダンスがあるということで東大に出かけねばならず、大変でした。本当は前日は昼間に終わるので、かえってから準備しようと思っていたのですが、遅くまで旧交を温めていたために、何もせずに出かける羽目になってしまいました。

ほとんど授業みたいなものでろくろく準備していなかったのでさされなくて良かったです。

忘れてはじめていることがよく分かり、しっかり復習せねばと痛感した次第です。

旧交を温めすぎ

この日は東大ロースクールの同窓会だったのですが、色々良いことがあり、行ってよかったです。

特に学部時代からの友人に久しぶりに再会して、旧交を温めました。

同窓会は帝国ホテルで昼間にやったのですが、そのまま昼間にもかかわらず飲みに行ってしまいました。昼間から酒を飲むことに全く抵抗がないので、全く気にせず大酒を飲んでいました。

地方における警察と検察の力関係について大声で話していて、警察とか県警とかいう単語があまりに飛び交ったせいか、隣の席で飲んでいた外見がおっかない人たちが足早に去っていきました。

いろいろな情報を得られて有益だったのですが、飲みすぎてしまい帰宅してからすぐに寝てしまいました。12時から同窓会があったのに散々飲んで家に帰ったのは23時過ぎでした。我ながらすごい一日でした。

ライブドア初の配当 大株主の堀江氏には配当せずと報道される

ライブドアが初の配当をしたことが話題になっています。その当否自体が議論となっているようですが、それとはやや異なる点に注目したいと思います。

赤字のライブドア、配当に680億円…純資産の半分以上(読売新聞2009年6月26日)

LDH(旧ライブドアホールディングス)の株主総会が26日、東京都大田区で開かれ、計約680億円を配当する剰余金処分案など3議案が賛成多数で可決された。

同社は粉飾決算事件でフジ・メディア・ホールディングス(旧フジテレビジョン)に約310億円の和解金などを払ったが、純資産は約1200億円あり、このうち半分以上を配当にあてることになる。

(略)

同社は堀江貴文元社長らによる粉飾決算事件後、2006年4月に上場廃止となり、大株主は投資ファンドや外資系金融機関。約17%を保有する第2位株主の堀江氏には配当しないという。

堀江氏には配当しないと報道されているのですが、これだと法的におかしなことになりそうです。

確かに会社に損害を与えたという過去がありますが、その件はまだ東京地裁で係争中のようで、損害賠償額も確定していません。よって、相殺するというには無理があります。

よって単純に考えると、会社法105条や109条に反するような気がします。

第105条(株主の権利)

株主は、その有する株式につき次に掲げる権利その他この法律の規定により認められた権利を有する。

一 剰余金の配当を受ける権利

二 残余財産の分配を受ける権利

三 株主総会における議決権

2 株主に前項第一号及び第二号に掲げる権利の全部を与えない旨の定款の定めは、その効力を有しない。

第109条(株主の平等)

株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。

2 前項の規定にかかわらず、公開会社でない株式会社は、第百五条第一項各号に掲げる権利に関する事項について、株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることができる。

3 前項の規定による定款の定めがある場合には、同項の株主が有する株式を同項の権利に関する事項について内容の異なる種類の株式とみなして、この編及び第五編の規定を適用する。

そうではなく、配当しないのではなくて、配当請求権を仮差押するなら分かるのですが、ライブドアはこの件についてリリースをしていないようなので、どういう構成なのだか正確には分かりません。何だか妙な文言を報道で目にするだけになっています。

労働法ゆえの特性か

7月末まで東大生協の書籍部で有斐閣フェアをやっていて15%引きなので、弟にまとめて有斐閣の書籍の購入を依頼しているのですが、気がかりなのは荒木先生の労働法が予定通りに7月にでるかというところです。

本当なら3月にでているはずなのに、お忙しいせいでどんどん遅れていますからね。

結構高いので、5%の割引率の違いでも無視できない違いになります。フェア中にかえるといいなと思う次第です。

さて、労働法の体系書の話題つながりですが、会社の労務系の実務家と話していて、水町先生が、水町労働法の簡潔な記述をさして、あれくらいの記述にとどめて、後は頭で考えられるようでないとだめだと仰っていたけどどう思うか聞いてみたところ、皆、水町労働法では記述が不足していると言っていました。菅野労働法のマニュアルのような分厚さが必要だと皆の意見は一致していました。

水町先生の思想が理解されるにはまだまだ長い道のりがかかりそうですね。

労働法は、他の法律と比べて、企業人が実務を担う程度が高く、問題も多く発生するために、すぐに参照できる信頼できる大著が求められる傾向が強いです。しかも企業の行動原理としては、安全にも安全でないといけないので、「この記述から解釈すると云々」なんてやっている場合ではなく、すぐに答えがほしい感じがあります。

こういう構造からすると、辞書みたいな本からの脱却は実務レベルでは中々難しそうです。

アルプス電気株主総会で単元未満株の買取等にかかわる定款変更の会社提案が外国人株主を主とした反対により否決される

株主総会シーズンですが、今年は業績の悪化でやや荒れ模様の総会が相次いでいるようです。それら一般的な動向とはやや異なる不思議な事象があったので取り上げます。

アルプス電気株主総会、一部議案否決 株券電子化巡る定款変更(日本経済新聞2009年6月26日)

アルプス電気は25日、同日に開催した株主総会で一部の議案が否決されたと発表した。株券電子化に伴う定款変更案の文言の一部が株主の権利行使を阻害しかねないとの懸念から、主に外国人株主が反対に回ったようだ。株券電子化に伴う事務に支障はないという。

否決されたのは、会社提案で株券電子化に伴う定款の一部変更を図った第1号議案。単位未満株の買い取りといった株式の取り扱い手続きについて、「取締役会の定める株式取り扱い規則による」と表記したのが反発を招いた。総会では議決権ベースで約4割が反対に回り、可決に必要な3分の2以上に届かなかった。「株主の権利がアルプス電気の取締役会によって制限されるとの懸念が出たようだ」(同社広報部)

過去にも06年に任天堂が配当など利益剰余金の処分を取締役会で決定できる議案を提出したが、総会で否決された例がある。株主の権利を巡る定款変更は、権利意識の高い外国人株主や機関投資家の関心が高いとされる。(00:30)

要するに、単元未満株の買い増しや買取に関する制度を定款で基本的な規定は設けるものの詳細は取締役会で定める別の規則によるとしたところ、株主権が取締役会によって制限されると思われて否決されてしまったということです。

定款変更は抱き合わせになっているので、電子化によって不要になった規定までもそのままになってしまいました。これらの規定は無効になるのでほっておいても変なことにはなりません。

さて、、「取締役会の定める株式取り扱い規則による」という定め方ですが、これはごく普通の定め方です。

否決してしまうと売り渡し請求は定款に規定をおかないと、設けられないので株主にとっては不利になります。

第194条

株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該単元未満株主に売り渡すことを請求することをいう。以下この条において同じ。)をすることができる旨を定款で定めることができる。

2 単元未満株式売渡請求は、当該単元未満株主に売り渡す単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

3 単元未満株式売渡請求を受けた株式会社は、当該単元未満株式売渡請求を受けた時に前項の単元未満株式の数に相当する数の株式を有しない場合を除き、自己株式を当該単元未満株主に売り渡さなければならない。

4 第百九十二条第三項及び前条第一項から第六項までの規定は、単元未満株式売渡請求について準用する。

単元未満株の買取請求権は定めをおかなくても会社法の規定から当然に請求権がありますので、定款変更の否決によっては特段の問題は生じません。

第192条(単元未満株式の買取りの請求)

単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。

2 前項の規定による請求は、その請求に係る単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

3 第一項の規定による請求をした単元未満株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、当該請求を撤回することができる。

外国人株主や機関投資家が恐れたのは、よく分からないのですが、多分、取締役会が手続を定めることで請求権を実質的に制限できるのではないかということでしょう。

しかし、取締役会で請求権の行使を制限的にするような内容を定めることが出来るでしょうか。権利の内容については法定されたものを損なうことのないような手続しか定められないというところが妥当ではないでしょうか。

これらの株主の請求権に関する会社法の規定は強行規定でしょうから、定款で定めることも含めて会社が自治をすることは出来ないと思います。

もっとも、それは実体法上の話であり、争ってみなければ取締役会の定めた規定の当否はわかりません。そうなっては遅く、とりあえず会社が定められるという状況になること自体が許しがたいというなら、そうなのでしょう。

しかし、定款に単元未満株に関する請求権の手続きについて定めをおくのはいかにも場違いな感じがします。別に定めるとして、法的義務ではありませんが株主総会の承認を取ればいいのでしょうか。反対した株主に説明して納得してもらえばいいような気もしますが、この点はよく分からないところです。