法律情報

労働政策審議会労働条件分科会、賃金請求権の消滅時効について改正民法と同じく5年としつつも当面の間は3年とする労働基準法改正案を承認。通常国会に提出へ。施行は改正民法の施行と同じく4月1日を予定。

1月10日

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08869.html

堺労働基準監督署、堺市が医療業務を短時間補助する保健医療業務協力従事者を有償ボランティアとして年休を拒否したのに対して、労働者であるとして是正勧告

2019年12月27日付

https://r.nikkei.com/api/article/v1/plain/DGKKZO54125480X00C20A1CR8000

高年齢者雇用安定法改正案、通常国会に提出へ。70歳までの就業機会確保の努力義務として、定年廃止、定年延長、継続雇用に加えて他の企業への再就職、フリーランス契約への資金提供、起業支援、社会貢献活動参加への資金提供が加わる

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08657.html

東京地裁、労親を「囲い込んだ」任意後見人の長女と次女に対して三女が提起した損害賠償請求訴訟で、不法行為と認めて賠償を命じる

東京地判令和元年11月22日

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53993210Q9A231C1CC1000/

労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会、副業者に対する労災保険の適用について、労働時間の通算、保険給付の基礎として賃金の通算を提言する報告をまとめる

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08596.html

最高裁、抵当権の被担保債権が免責許可決定を受けた場合、当該抵当権は民法396条の適用は受けず、20年の消滅時効にかかると判示

抵当権は、民法396条によって被担保債権と同時でなければ時効消滅しないと定められています。

これは、担保にするために抵当権を設定しているのに先に時効消滅してしまっては意味がないのと、自らの債務の履行は怠りながら、抵当権の消滅を主張することは信義則に反するからとされています。この信義則という点から、396条は債務者及び物上保証人に対してと対象を限っています。

 

(抵当権の消滅時効)

第三百九十六条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

 

この度、被担保債権が債務者の破産とその後の免責許可決定によって、債務としては究極的に弁済しなくてよくなったために、根抵当権の帰趨が問題となるという事案について判例が出されました。

最高裁判所第二小法廷 平成30年2月23日判決 平成29(受)468 建物根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件

原判決は、396条を形式的に適用して、免責許可決定が出ると消滅時効の進行が観念できないとして、被担保債権が時効消滅しないので、ずっと存続するという帰結を導いていました。

これに対して最高裁は、消滅しない抵当権を民法が想定しているとは考え難いとして、民法396条は被担保債権たる債権に消滅時効が観念されない場合には適用はないとして、消滅時効の原則に戻り、債権または所有権以外の財産権に該当するとして、20年の消滅時効にかかるとしました。

消滅時効がなく永遠に存続する所有権以外の財産権があってもおかしくないとは思いますが、それが被担保債権について免責許可決定が出た場合の抵当権というのではいくらなんでも特殊過ぎ、むしろ抵当権だけ永遠に存続するというのはどういうことなのかと疑問に考えられますので、消滅時効がないことを正当化する理由がなく、最高裁の言うとおりだと思われます。

京都大学iPS細胞研究所、有期雇用職員の一部を無期転換

京都大学iPS細胞研究所が、研究者の研究環境の改善のためとして、有期雇用の職員の一部を無期転換したことが明らかになりました。

京大iPS研、有期雇用職員を寄付金で無期転換  :日本経済新聞 

2018/4/30

寄付金を財源にして有期雇用の教職員のうち13人を4月から無期雇用に転換した。研究者や研究を支援する職員で、優れた研究業績や組織運営上の貢献などを考慮した。研究環境が改善し、研究者が研究に集中したり長期的な視野で研究テーマを設定したりしやすくなり、研究活動が活性化すると期待する。

 京大本部の人事課によると、寄付金を財源にした無期雇用転換は珍しい。

(略)

昨今みられるようになっている研究不正がこちらでも発生したこともあり、長期的な視点で研究に打ち込めるようにとの対策の性格もあると思われます。

もっとも、原資は寄付金であり、恒久的な財源ではないことから、限界があるようで、約300人の職員のうち、9割が有期雇用であり、無期転換したのは13人とのことです。

最高裁、滞納処分による差押後、競売開始前に設定された賃借権により使用収益する者は、民法395条の競売手続の開始前から使用収益する者に該当すると判示

民法395条に抵当権に対抗できない抵当建物使用者の引渡しの猶予についての条文がありますが、この条文に該当する例について判示した最高裁判決が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第三小法廷平成30年4月17日決定 平成30(許)3 不動産引渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件

民法395条には、昔悪名高かった短期賃貸借に代わって、抵当権に対抗力がない建物を使用収益する者は、引渡しの猶予だけが認められているとする規定があります。

 

(抵当建物使用者の引渡しの猶予)

第三百九十五条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者

二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者

2 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

 

それほど大きな効力はなさそうなのですが、この条文が問題となる事件が起きました。

要するに本件は、抵当権の設定後に設定された賃貸借によって使用収益が開始され、その後、担保権実行がされたという事案なのですが、本来なら引渡し猶予となりそうなのですが、この賃貸借が滞納処分による差し押さえの後に設定された点をとらえて、395条の競売の開始前から使用収益をする者に当たらないと主張して、直ちに引き渡しを求めたというものです。

これに対して最高裁は、引渡し猶予の制度には特別な効果があることから、要件の明確性が必要であることを指摘して、抗告を棄却しました。

要件の明確性の点から、滞納処分に劣後することは、競売開始前から使用収益していないことにはならないと判断したわけです。

滞納処分と競売の手続自体はさすがに異なるため、これはその通りでしょう。

実質的に考えてみても、差押えの段階ではまだ使用収益する権利は失われない一方、民法395条によって一つのターニングポイントにされている競売手続開始は、ここからある意味、使用収益に制限がかかる時点ということですので、別物と考えるほかないでしょう。

差押えが租税滞納処分によるものであったとしても、国税徴収法69条から使用収益は原則可能になっていることから、性質がそれほど変わるわけではないわけです。

民法395条についての初めての判例だと思われまして、その意味では興味深いですが、ある意味、条文通りの帰結であったといえるように思われます。

大阪高裁、別居中の妻が凍結保存された受精卵を用いて夫の同意なく出産した場合でも、嫡出は推定されるとして、父が親子関係不存在確認訴訟で争うのは不適法と判示

何を言っているのかわからないタイトルになって申し訳ないですが、家族法分野において興味深い判決がありましたので取り上げます。

父子関係再び認定 凍結卵無断出産、大阪高裁  :日本経済新聞 2018/4/26 18:20

別居中だった元妻が凍結保存していた受精卵を無断で使って女児を出産したとして、奈良県在住の外国籍の40代男性が女児との間に父子関係がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は26日、訴えを却下した一審・奈良家裁判決を支持し、男性側の控訴を棄却した。男性側の代理人弁護士は上告する方針を示した。

 江口裁判長は判決理由で、元妻が女児を妊娠した2014年7月ごろ、男性は別居中だったが、長男を含めた3人で外出するなどしており「夫婦の実態が失われていたとはいえない」と指摘。男性が受精卵の母体移植に同意していないことは、妻が婚姻中に妊娠した子を夫の子とする民法の「嫡出推定」を否定する理由にはならないと判断した。

 一審判決は生殖補助医療で生まれた子と夫の間に法的な父子関係を認めるためには、夫が受精卵の移植に同意していることが必要との判断を示した。控訴審判決はこの点に言及しなかった。

 判決などによると、男性は04年に元妻と結婚。10年、奈良市のクリニックで体外受精を行い、複数の受精卵を凍結保存した。一部の受精卵を使い、11年に長男が生まれたが、13年に別居。元妻は14年、男性に無断で残りの受精卵を移植し、15年に女児を出産。16年に離婚が成立した。

 

実のところ、法的には争い方の選択について判示しているだけで親子関係を認定したのとは異なるため、上記報道のタイトルは若干ミスリードなのではないかと思われます。

本件は要するに、父親の側から親子関係を争う場合の事件なのですが、そもそもの出生が体外受精によって凍結保存された受精卵を使用した出産であったという事情がある場合というものです。

婚姻中に懐胎して出生した子について、父親の方から親子関係を争う場合には、嫡出推定がされている場合には、嫡出否認の訴えであり提訴期間の制限がありますが、嫡出推定が働かない場合には、親子関係不存在確認の訴えで争うことになり提訴期間の制限がないことになります。

本件では、提訴期間の問題があることから親子関係不存在確認訴訟で争える場合であるという主張がなされた事件と考えられます。

すると形式的には婚姻中の懐胎であるものの嫡出推定が及ばないことを主張しないといけないわけですが、嫡出推定が及ばないことは、伝統的には、その間はすでに婚姻関係が破たんしていたとか、長期にわたる出張などで接触がなかったなどという場合が例として挙げられているわけです。

しかし本件は以前の体外受精による凍結保存した受精卵ということであり、その時には婚姻関係が破たんしていたとかそのようなことはおよそないと考えられるわけで、伝統的な議論が全く妥当しないわけです。

そこで、原判決は体外受精の場合については夫の同意などの要件を考案することを試みていたようなのですが、本件では生物学的には父親である点も踏まえてだと思うのですが、原則論を採用したということと見受けられました。

この分野は生殖医療の進歩などにまったく追いついてないとよく指摘されているところですが、本件はひとまず生物学的な意味を重視しつつ、親子関係を固定化して安定を図るという点も併せ持っている民法の考え方に依拠すると導かれる結論になったといえそうです。

裁判例情報

大阪高裁平成30年4月26日判決