民事法事情

最高裁、自筆証書遺言の文面全体に斜線を引いた行為を、故意に遺言書を廃棄したときに該当するとして、遺言を撤回したと判断

遺言にはいくつか方式が決まっており、それぞれについて作成方式が厳格に定まっています。

民事行為についてはあまり要式性を要求しない日本法では珍しいのですが、遺言の作成そのものがそれほど多くなかったことと、作成するにしても専門家の関与が必要となる公正証書遺言が大半であるため、遺言をめぐる法律紛争は、一般的に想像するよりはとても少ないのが現実です。遺産相続の紛争は増えていますが、遺言についての紛争はそう多くはありません。

そのような中、自筆証書遺言をめぐり、紛争になってしまったという例が発生、最高裁判決が出るに至りました。

最高裁判所第二小法廷平成27年11月20日 平成26(受)1458 遺言無効確認請求事件

本件は要するに、自筆証書遺言に赤線で斜線を引いた行為が、遺言を撤回したものといえるかということにつきます。

本件で問題となった自筆証書遺言に即していうと、方式に関する民法の定めは以下の通りになります。

民法

(自筆証書遺言)

第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)

第千二十四条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

968条は自筆証書遺言専用の定めですが、作成や修正するときは定めている通り、署名押印がいるわけです。

これに対して、1024条はすべての方式の遺言に共通の規定であり、破棄すれば撤回したとみなすという規定です。

本件は、斜線を引いただけであるので、それだけでは上記のどれに当たるのかが判然としないので問題となったものです。

原審は斜線を引いただけだと、文字は読めるとして、破棄にあたらないとして、遺言は以前として有効としました。

これに対して最高裁は、968条が厳格に方式を要求していることとの比較で、以前として判読できるので、撤回に当たらないという判断にも理解は示しつつも、これを否定して、968条2項は、遺言をするということ自体は以前としてあり、内容の変更であるため、その方式を厳格に定めていると理解をして、すべての効力を失わせる場合には、同様に判断することはできないとしました。要するに方式を厳格に要求する必要はないということと考えられます。

ここから、斜線を引くということの一般的な意味を考察して、故意に破棄したときに該当するというべきであるとして遺言は撤回したものと判断、破棄自判をして請求を認容しました。

 

本件自体は、自筆証書遺言が問題となっているため、どれほど同種の紛争事例があるか若干疑問であるため、本件判決の意義については微妙な気がしないでもありませんが、遺言の変更と撤回とでは、遺言の効力自体は存続するか否かで大きな違いがあるので、方式性の要求の度合いが異なるという考え方は、一般的なものになりえますので、やはり大きな意義があるように思われます。

さて、余談ですが、本件では斜線を引いたのは遺言者であること自体は、事実認定がされており問題となっていません。赤い斜線というだけですので、この事実認定自体それなりに難しいような気がしまして、類似事例で実際の紛争の争点はむしろそちらになるのではないかと勘繰られるところであります。

 

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消費者委員会消費者契約法専門調査会の中間とりまとめに対して、三井不動産、楽天などの企業の法務担当者有志が説明会を開催、勧誘に広告を含める案について懸念の意見が出される

政府の消費者員会消費者契約法専門調査会が8月に公表した中間とりまとめにおいて、「勧誘」に広告のうち一定のものを含む可能性が示されました。

消費者委員会 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」(PDF形式:371KB)

該当する記述は長いのですが、今後の検討の方向性については以下のようにまとめられています。

事業者が、当該事業者と消費者との間でのある特定の取引を誘引する目的をもってした行為については、それが不特定の者を対象としたものであっても、それを受け取った消費者との関係では、個別の契約を締結する意思の形成に向けられたものと評価することができると考えられる。そこで、事業者が、当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合、そこに重要事項についての不実告知等があり、これにより消費者が誤認をしたときは、意思表示の取消しの規律を適用することが考えられるが、適用対象となる行為の範囲については、事業者に与える影響等も踏まえ、引き続き検討すべきである。

広告一般を含めるわけではないことは当然前提としていますが、このような枠組みにしますと、個別判断のようになるため事業者の側にとっては大変判断に困る事態になることは容易に想像されます。

このため早くも経済界からは懸念の意見が出ており、法務担当者有志が説明会を開催して、会場から様々な意見がだされるという機会があった模様です。

広告も「勧誘」に、企業側が懸念 消費者契約法改正で  :日本経済新聞 2015/9/10 21:33

消費者契約法の改正を巡り、三井不動産、楽天など大手企業の法務担当者有志が10日都内で説明会を開いた。政府の消費者委員会専門調査会が8月にまとめた中間報告では、契約を取り消せる「勧誘」の対象に広告を含める案などが盛り込まれた。説明会では広告に書いていないことを理由に返品を求める事態が頻発するなど、企業活動に影響が出ることを懸念する声が相次いだ。

 広告やネット、小売り、アパレル、金融などの担当者100人以上に加え、消費者委員会の事務局が参加した。規制が強化されると、ポスターなどに消費者に伝えるべき注意を限りなく記載する必要が出てくるとの指摘がある。

 説明会では「どれが『勧誘』に該当したかの判断は難しい」(電通担当者)との声が出た。三井不動産担当者は「誇大広告などは宅地建物取引業法でも対応しており、業者への罰則もある。新たな規制は混乱を起こす」と指摘した。

(略)

まだまだ法改正の議論としては途中ですが、かなり尖鋭的な取りまとめがされたことから、事業者からの動きも早くも活発なものになっている模様です。

最高裁、債権譲渡について異議なき承諾をした債務者でも、譲渡人に対抗することができた事由の存在について善意だが過失のある譲受人に対しては、当該事由を対抗することができると判示

長くてわかりにくいタイトルで申し訳ございません。

債権譲渡の異議なく承諾について、新たな判例が6月に出ていましたので、遅れましたが取り上げます。

民法

第四六八条(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

民法の条文では、債権譲渡された場合に債務者が異議なき承諾をした場合には、譲受人側には特に要件は不要であり、異議なく承諾さえあれば、抗弁など一切の事由を対抗できなくなるかのように読めます。

しかし、この点については判例によって、主観的要件がついており、請負についての有名な判例(最判昭和42年10月27日民集21巻8号2161頁)から一般化されて、譲受人が悪意なら対抗可と理解されています。

この主観的要件についてはさらに拡大されて理解されており、悪意だけではなく有過失でも対抗可と解するのが有力説であり内田説もこの立場でした。

実務でも要件事実的には、譲受人の悪意または有過失は、譲受債権請求訴訟の再々抗弁に回るとされており、ある意味、定説となっていました。

このたび最高裁が、正面から譲受人が有過失の場合にも対抗可であることを認めた判決が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成27年6月1日判決  平成26(受)1817 不当利得返還請求事件

最高裁判所第二小法廷平成27年6月1日判決  平成26(受)2344 不当利得返還請求事件

理由について最高裁は、よりシンプルに判示をしている2344号事件の方で、以下のように述べています。

民法468条1項前段は,債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をしたときは,譲渡人に対抗することができた事由があっても,これをもって譲受人に対抗することができないとするところ,その趣旨は,譲受人の利益を保護し,一般債権取引の安全を保障することにある(最高裁昭和42年(オ)第186号同年10月27日第二小法廷判決・民集21巻8号2161頁参照)。そうすると,譲受人において上記事由の存在を知らなかったとしても,このことに過失がある場合には,譲受人の利益を保護しなければならない必要性は低いというべきである。実質的にみても,同項前段は,債務者の単なる承諾のみによって,譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができなくなるという重大な効果を生じさせるものであり,譲受人が通常の注意を払えば上記事由の存在を知り得たという場合にまで上記効果を生じさせるというのは,両当事者間の均衡を欠くものといわざるを得ない。

上記は有力説が根拠としてきた理由そのままであり、正面からこのように有力説の立場をとったといえましょう。

実務に何らの変更を与えるものではないといえるかと思われますが、重要な判示であることは確かであるといえるでしょう。

最高裁、責任無能力者の未成年者が他人に損害を与えたもののその態様が通常は人身に危険が及ぶような行為ではない場合、親権者に具体的に予見が可能であるなど特別の事情が認められない限り、監督義務を尽くしていなかったと判断するべきではないと判示

報道でも大きく取り上げられましたが、子供がサッカーボールを蹴って道にボールが飛び出してしまい、通りかかったバイクの老人がそれによって怪我をしてしまい、入院を経て、誤嚥性肺炎でなくなってしまったという事案について、親の監督責任が問われた損害賠償請求訴訟で、最高裁が一部認容していた原判決を破棄して請求棄却の自判を行いました。判決が出て1カ月たちますが取り上げます。

最高裁判所第一小法廷 平成27年4月9日判決 平成24(受)1948 損害賠償請求事件

民法により未成年者は責任無能力ですが、責任無能力者が損害を与えた場合には、監督義務者が監督義務を怠っていない場合以外、責任を負うことになっています。

第七一四条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
 前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

そしてこの監督義務者の責任は、立証責任が転換していることがハードルを上げることにつながり、事実上無過失責任の様相を呈してしまっていました。そのような判断の根底には、誰も賠償の責を負わないというのはおかしいと考えて、事実上、代位責任的に破断しているきらいがあるのですが、条文そのものは監督義務者の責任という形式自体は維持されています。

このような考え方には当然批判のあるところであり、監督義務を怠っていなかったとするのは酷ではないのか、どうすれば監督責任を果たしていたといえるのかということが指摘されることになっていました。

本件はそのような中、最高裁まで係属した事件ですが、大変、特徴的な事実関係がありました。

未成年者の行為はサッカーゴールにフリーキックをしたところ、道路までボールが転げ出てしまったというものでしたが、以下のような事実があったことが判示されています。

  • ゴールからさらにその先の学校の門までは10メートル
  • 門の左右にはネットが張られており、その外には1.8メートルの側溝
  • 本件では門の外にかかっている橋にボールが行ってしまい道路に転げ出てしまった
  • 道路の交通量は普段多くない

このようにボールが出てしまったことと、ちょうどバイクが通りかかったことは、かなり偶然性が高いといえます。

このような点をとらえて最高裁は、この行為を、通常は人身に危険が及ぶ行為ではないと評価をしまして、通常は人身に危険が及ぶ行為ではない行為から損害が発生した場合に監督義務を尽くしていたかの判断基準を以下のように述べています。

親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。

その上で、特別の事情があったとうかがわれないとして請求を棄却する判断をしています。

通常は人身に危険が及ぶ行為ではないのに、特別に予見される場合というと、未成年者が故意でやったことでそれを監督義務者が知っていたとかそういう極限的な場合ではないと該当しないように思われますので、監督義務者の責任についてかなり実質的判断をしたといえるように思われます。

ただ、報道ではこれで一気に流れがかなり変わるというような受け止め方がされていましたが、「通常は人身に危険が及ぶ行為ではない」の判断において、本件では単なる公園でのボール遊びとかよりはかなり偶然性を感じさせる要素が基礎になっていることから、果たして射程がどこまで広いのかは微妙な感じがします。

また、監督義務の判断を実質化させると、未成年者による行為であるというために、誰も賠償の責を負わないという事態が発生してしまうことからも、大変難しい問題です。立法措置を考えないうえでバランスを考えるならば、監督義務者の責任のハードル自体はやはり若干変えざるを得ないようにも思われ、そのような苦しい判断があるからか、この判例の判示はどうもすっきりしない書き方になっているきらいがあります。

監督義務を尽くしていなかったとすべきではないという一般論の後の当てはめ的な個所で、義務を怠らなかったとまで言ってしまっており、論の運びとの対応関係がやや不整合な感じを受けるところがあります。

最高裁も要旨の書き方や公表した判決文中の下線の引き方で事例判断であることを強調しており、あまり射程を広げて捉えないほうが無難な感じがする一件と言えるかと思われます。

 

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日本郵政インフォメーションテクノロジー、ソフトバンクモバイルと野村総合研究所を相手取って通信回線敷設の遅れで損害が生じたとして損害賠償請求訴訟を提起

日本郵政が全国の郵便局などの拠点を結ぶ新しい通信ネットワークを作る工事をソフトバンクモバイルなどが受注したものの、工事が遅延して損害が生じたとして、日本郵政の子会社がソフトバンクモバイルと野村総合研究所を相手取って損害賠償請求訴訟を提起したことが明らかになりました。

ソフトバンクと日本郵政が相互に訴訟提起、ITシステム納入で | マイナビニュース [2015/05/02]

日本郵政と日本郵政インフォメーションテクノロジー(JPiT)は5月1日、ソフトバンクモバイル(SBM)と野村総合研究所(NRI)を相手取り、両者に発注した業務の履行遅延から生じた損害に相当する161.5億円の賠償を求め、東京地方裁判所に訴訟提起を行ったと発表した。なお、ソフトバンクモバイルも、4月30日にJPiTを被告とする追加報酬の支払い請求訴訟の提起を行っている。

SBMとJPiTは、2013年2月7日に全国の日本郵政グループの事業所拠点を繋げるネットワーク「5次PNET」の通信回線整備の事業契約を締結。SBMは通信回線の敷設工事など、NRIはネットワークの移行管理・調整業務を発注したという。

(略)

しかし、この移行作業が遅滞しており、納期も3月31日から6月30日に延期されたことから「日本郵政グループに損害が発生」(JPiTリリースより)し、損害賠償の請求を行ったとしている。

一方でソフトバンクモバイルは、JPiTから当初の契約における受注業務の範囲を超える業務の依頼を受けており、「追加の業務も実施してきた」(リリースより)という。

両社は損害賠償の請求、追加業務に関する報酬の請求など、相互に交渉を続けてきたが、協議による解決には至らなかった。JPiTは4月9日付でSBMに、4月23日付でNRIに訴訟提起を行う旨を通知している。請求額については、SBMからJPiTが約149億円、JPiTからSBMとNRIへは161.5億円となっている。

(略)

上記報道ではかなり中身やその後の経緯まで言及されており、よくわかる内容となっています。

システム開発系で発生するトラブルとしてはありがちな内容ともいえるのですが、通信回線といったハードの工事も含まれることからシステムでよくありがちなトラブルと同じ問題といえるのかは微妙なところがあります。

一方で、だんだんと当初の発注から拡大していったという契約後に動き出してからの経緯についても触れざるを得ないという点でシステム系のトラブルと同じ感じがあります。

日本郵政、ソフトバンクモバイル、野村総研といった大企業でこのようなトラブルになったということは一見するとやや意外なところですが、上記の報道でもある通り、話し合いが不調で司法の判断にゆだねるを得なくなったという経緯もうかがわれます。その点は利害関係者の多い大企業だからこその判断である点もあるので、むしろ司法の場に移ったのはある意味当然の判断なのだと思われます。

 

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三菱商事、多摩テックの跡地開発をめぐって明治大学を提訴

2009年に閉園した遊園地「多摩テック」の跡地開発について、明治大学がスポーツパークを開設することを計画して、道微視商事との事業スキームが動いていましたが、東日本大震災後の建設費の高騰で、2013年11月に明治大学が中止を発表していました。

本学のスポーツパーク(仮称)事業計画について

その後も三菱商事と明治大学との間では話し合いが行われたものと思われますが、司法で決着をつけざるを得なくなった模様で、三菱商事が明治大学を提訴したことが明らかになりました。すでに第1回口頭弁論が開かれています。

三菱商事、明治大を提訴 施設計画中断で60億円請求 – 47NEWS(よんななニュース)2015/05/01 19:18 【共同通信】

遊園地「多摩テック」(東京都日野市)跡地にスポーツ施設を建てる明治大の計画が中断したため損害を受けたとして、土地の代金を立て替えた三菱商事が、明大に約60億9千万円の支払いを求める訴えを東京地裁に起こしていたことが1日、分かった。

 関係者によると、1日の第1回口頭弁論で明大は請求棄却を求めた。

 訴状によると、明大は2009年9月に閉園した多摩テックの跡地にスポーツ施設を建てることを計画。11年1月、三菱商事が土地を購入して開発許可を取得し、明大が土地を買い取るとの合意書を交わした。

日経の報道によると、開発スキームは、三菱商事が土地を取得して開発許可を取得、明治大学が土地を買い取るというものであったとのことです。

これだと建物の建設がどうなるのかが不明なのですが、とにかく共同事業ではあることから、明治大学によって中止とされてしまったことで三菱商事にとっては取得した土地に関して明治大学に損害賠償請求をしたということのようです。

このような開発スキームがあいまいなやり取りのまま進むとは思われませんので、あいまいなまま進んだ経緯をとらえて契約の解釈をするということではなく、建設費の高騰が事情変更の原則に抵触するのかなどの論点になるように思われますが、詳細が不明であるため憶測にすぎません。

企業と大学の共同事業について紛争になる例がちらほら見受けられますが、大学の体質もさることながら、この数年来、日本社会はとても急激な変化に見舞われることが多いためその余波を受けているという面が大きいと思われます。

 

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高松地裁、多胎妊娠で胎児1人の死亡が確認されたことから、残りの胎児を帝王切開して出産したところ、障害が残ったために提起された損害賠償請求訴訟で、請求全額を認容

出産事故で非常に判断の難しい事案について、判決が出たことが明らかになりました。

「帝王切開判断早すぎ」日赤に2億円の賠償命令 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2015年04月23日 07時41分

三つ子の胎児の1人が死亡後、帝王切開で出産した残る2人のうち長男(12)に重い障害が起きたのは医師の切開の判断が早すぎたためとして、高松市在住の両親と長男が病院側に介護費用など2億1147万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、高松地裁であった。

福田修久裁判長は両親らの主張を認め、病院を運営する日本赤十字社に請求全額の支払いを命じた。

 判決によると、母親が高松赤十字病院(高松市)入院中の2003年2月、胎児1人の死亡が判明。医師の勧めですぐ帝王切開を受け、残る男女2人を妊娠30週と6日で産んだが、長男には重い脳障害が起き、常時介護が必要になった。両親らは12年9月に提訴した。

 福田裁判長は判決で、3人の胎児が胎内でそれぞれ違う膜に包まれていた点を挙げ、当時の医学的知見ではこうした場合、「胎児死亡の他の胎児への影響は限定的とされていた」と指摘。長男の障害が妊娠32週以前の早産児に多いことを踏まえ、「脳障害予防の観点から可能な限り胎児の成長を待つべきだった」と述べた。

(略)

判決全文を見ていないので何とも言えないのですが、上記報道からうかがわれる限りでは、3名の胎児がいて1人が死亡している場合に、他の胎児を直ちに出産するべきであるかということ、その上で、生じた障害がこの早期の出産に起因しているのかが争点となった模様です。

報道によると、証拠調べの結果、当時の医学的知見では、胎児1人が死亡しても違う膜につつまれていた場合には他の胎児への影響は限定的であったということになり、過失があったと判断された模様です。医学の知識がないのでこの見解の当否がわからないのですが、大変重い判断であるということは言えそうです。なお、妊婦は当時29歳と別の報道では言及されています。

また、この訴訟では日赤側は、損害額についての反論としていなかったために、請求全額認容となったきらいがある模様です。損害額の認定は、裁判所が主張を待たずにできるはずのところではあるものの、実際のところ主張を待ってのところも多分にある部分です。

日赤側の訴訟方針も判断の難しいところがあったのかもしれません。

最高裁、事前求償権を被保全債権とする仮差押えは事後求償権の消滅時効を中断する効力も有すると判示

保証人が主債務者の代わりに弁済した場合には、主債務者に対して求償権を取得しますが(事後求償権)、委託を受けて保証をした場合には、弁済の前に求償権を行使することができます。これを事前求償権といいますが、判例は事後求償権と事前求償権は別の権利としています(最判昭和60年2月12日民集39巻1号89頁)。

保証委託を受けて保証をするのは、いわゆる機関保証であることが多いことになりますので、業としてやっている以上、事前求償権からしっかり行使してくることが考えられます。実際には事前求償できるくらいならそもそも主債務者が弁済できるはずですので、仮差押えなどが限度かもしれませんが、とにかく事前旧称から何らかの動きをするということはよくあるわけです。

そのような場合で、事前求償権に基づいて仮差押えをしていたが、事後求償権に基づいての別途の行為はしていなかったまま、かなり経過してから保証人が求償権の行使及び連帯保証人に対して請求をしてきたという事例で、弁済からは時効が成立するだけの期間が経過してしまっていたために時効消滅したのではないかという事件で判例が出ました。

最高裁判所第三小法廷 平成27年2月17日判決  平成24(受)1831  求償金等請求事件

上記の昭和60年判例の別個の権利というところを重視するなら、確かに時効消滅してしまったということになりそうです。

しかし、最高裁はそのようには考えず、実質論を展開し、事前求償権についての仮差押えは事後求償権の消滅時効も中断する事由となるとしました。

事前求償権は,事後求償権と別個の権利ではあるものの(最高裁昭和59年(オ)第885号同60年2月12日第三小法廷判決・民集39巻1号89頁参照),事後求償権を確保するために認められた権利であるという関係にあるから,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをすれば,事後求償権についても権利を行使しているのと同等のものとして評価することができる。また,上記のような事前求償権と事後求償権との関係に鑑みれば,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをした場合であっても民法459条1項後段所定の行為をした後に改めて事後求償権について消滅時効の中断の措置をとらなければならないとすることは,当事者の合理的な意思ないし期待に反し相当でない。

要するに、事前求償権について行使すれば事後求償権についても行使したとしてもいいではないかということで、その肝は、事前求償権で民事保全をしておいたのにまた事後求償権についてもう一度繰り返さないといけないのだとすると、二度手間ですし、極めて不可解な行為を強いることになるからということでしょう。

事前求償権について仮差押えをしたら、おそらくそれでひとまずはよしとしているのが実務的な取扱いではないかと想像されますので、そういう意味では現実的な対処ということになりましょう。もっとも事前求償権がどれほど活用されているのか自体がそもそもわからないところがありますので、そうだとすると時効が成立しそうになってしまったかなりレアケースの場面だからこそ下された判断なのかもしれません。

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福岡地裁、刑事弁護事件で別の刑事弁護人を選任したため、着手金の返還を請求した訴訟で、請求を認容してアディーレ法律事務所に着手金の返還を命令

弁護士事務所に着手金の返還を命じるという一見すると何が起きたのか疑問に思えてしまう判決が出ましたので取り上げます。

アディーレ法律事務所に返還命令 弁護の「着手金」 – 産経ニュース 2014.12.16 15:38

 法律事務所に依頼した刑事弁護を中途解約した福岡県の男性が、支払った着手金45万円の返還に事務所側も合意したにもかかわらず返金されないと主張した訴訟の判決で、福岡地裁は16日、事務所側に返還を命じた。

 事務所は債務整理を多く手掛ける「アディーレ法律事務所」(東京)。

 訴訟でアディーレ側は「返金は、新しく選任された別の事務所の弁護士が謝罪する条件で合意した。謝罪がない」と主張したが、永井裕之裁判長は判決で「アディーレの弁護士が送った書面には謝罪の条件はない。返金の合意は成立している」と指摘した。

 判決によると、男性と、逮捕された長男は11月7日、異なる弁護士にそれぞれ刑事弁護を依頼した。男性はアディーレ側への依頼をキャンセルし、支払い済みの計130万円の返還を求めたが、うち着手金分は返還されなかった。

長男が刑事弁護人を必要とする事態になったところ、原告と長男とで別途、刑事弁護人を依頼してしまったため、原告はアディーレ法律事務所に対する依頼をキャンセルして着手金の返還を求めたところ、謝罪が条件だったのにそれがされないということで返還に応じなかったため、訴訟になってしまったという事件です。

アディーレの弁護士を弁護人選任までしたのかが定かではないのですが、結局、別の刑事弁護人がついたため、アディーレは弁護活動としてはそれほど行っていないと思われますが、その余は返還されたようですが、着手金分の返還がなされなかったため訴訟になった模様です。

弁護士への委任契約は、着手金は理由のいかんを問わず返還しないとかそういう契約条項になったりしているものですが、なぜか返還に関する合意の解釈問題になってしまい、新しい刑事弁護人の謝罪が条件であるのにそれがないと条件が成就していないという抗弁がアディーレから出されるという不思議な経緯をたどった模様です。

刑事弁護人が重複してしまいどちらかが辞任するということはままあるような気がしますので、謝罪をするなどの事態は考えられないような気がそもそもするのですが、福岡地裁はそもそも書面にそんな条件は書かれていないとして、条件になっていないと端的に解した模様です。

返還するのが当然なのかはともかく、明らかになった事実からは当たり前といえば当たり前のような結論になっていますが、そもそもなぜこのような紛争になったのかが極めて不思議である一件と感じられます。

裁判例情報

福岡地裁平成26年12月16日判決

最高裁、相続開始後に相続財産の投資信託受益権から元本償還金及び収益配当金が発生して被相続人名義の口座に振り込まれたとしても、当然に相続分に応じて分割されて法定相続人に帰属することはないと判示

相続発生によって相続財産中に投資信託が含まれていた場合に、預金と同じように当然に相続人に帰属することはないということは判例があり、以下の通り本ブログでも取り上げています。

最高裁、共同相続された委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債は、相続開始で当然に相続分に応じて分割されることはないと判示 | Japan Law Express

しかし、投資信託の受益権そのものは上記のとおりですが、そこから配当金や元本の償還などで金銭債権が発生したらどうなるのでしょうか。

その点についての判例が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成26年12月12日判決 平成24(受)2675 相続預り金請求事件

しかし、受益権の一部が金銭の請求権を含んでいるというだけですので、指図やガバナンスに関する不可分の投資信託の権利と表裏一体であるわけです。

したがって、全体として不可分ということになり、当然に相続分に応じて分割されるわけはないことになります。

この判例もその旨を簡単に述べています。

新しい点についての判示ですが、既存の判例理論から行くと当然の帰結であると思われます。