民事法事情

最高裁、抵当権の被担保債権が免責許可決定を受けた場合、当該抵当権は民法396条の適用は受けず、20年の消滅時効にかかると判示

抵当権は、民法396条によって被担保債権と同時でなければ時効消滅しないと定められています。

これは、担保にするために抵当権を設定しているのに先に時効消滅してしまっては意味がないのと、自らの債務の履行は怠りながら、抵当権の消滅を主張することは信義則に反するからとされています。この信義則という点から、396条は債務者及び物上保証人に対してと対象を限っています。

 

(抵当権の消滅時効)

第三百九十六条 抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。

 

この度、被担保債権が債務者の破産とその後の免責許可決定によって、債務としては究極的に弁済しなくてよくなったために、根抵当権の帰趨が問題となるという事案について判例が出されました。

最高裁判所第二小法廷 平成30年2月23日判決 平成29(受)468 建物根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件

原判決は、396条を形式的に適用して、免責許可決定が出ると消滅時効の進行が観念できないとして、被担保債権が時効消滅しないので、ずっと存続するという帰結を導いていました。

これに対して最高裁は、消滅しない抵当権を民法が想定しているとは考え難いとして、民法396条は被担保債権たる債権に消滅時効が観念されない場合には適用はないとして、消滅時効の原則に戻り、債権または所有権以外の財産権に該当するとして、20年の消滅時効にかかるとしました。

消滅時効がなく永遠に存続する所有権以外の財産権があってもおかしくないとは思いますが、それが被担保債権について免責許可決定が出た場合の抵当権というのではいくらなんでも特殊過ぎ、むしろ抵当権だけ永遠に存続するというのはどういうことなのかと疑問に考えられますので、消滅時効がないことを正当化する理由がなく、最高裁の言うとおりだと思われます。

最高裁、滞納処分による差押後、競売開始前に設定された賃借権により使用収益する者は、民法395条の競売手続の開始前から使用収益する者に該当すると判示

民法395条に抵当権に対抗できない抵当建物使用者の引渡しの猶予についての条文がありますが、この条文に該当する例について判示した最高裁判決が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第三小法廷平成30年4月17日決定 平成30(許)3 不動産引渡命令に対する執行抗告審の取消決定に対する許可抗告事件

民法395条には、昔悪名高かった短期賃貸借に代わって、抵当権に対抗力がない建物を使用収益する者は、引渡しの猶予だけが認められているとする規定があります。

 

(抵当建物使用者の引渡しの猶予)

第三百九十五条 抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるもの(次項において「抵当建物使用者」という。)は、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない。

一 競売手続の開始前から使用又は収益をする者

二 強制管理又は担保不動産収益執行の管理人が競売手続の開始後にした賃貸借により使用又は収益をする者

2 前項の規定は、買受人の買受けの時より後に同項の建物の使用をしたことの対価について、買受人が抵当建物使用者に対し相当の期間を定めてその一箇月分以上の支払の催告をし、その相当の期間内に履行がない場合には、適用しない。

 

それほど大きな効力はなさそうなのですが、この条文が問題となる事件が起きました。

要するに本件は、抵当権の設定後に設定された賃貸借によって使用収益が開始され、その後、担保権実行がされたという事案なのですが、本来なら引渡し猶予となりそうなのですが、この賃貸借が滞納処分による差し押さえの後に設定された点をとらえて、395条の競売の開始前から使用収益をする者に当たらないと主張して、直ちに引き渡しを求めたというものです。

これに対して最高裁は、引渡し猶予の制度には特別な効果があることから、要件の明確性が必要であることを指摘して、抗告を棄却しました。

要件の明確性の点から、滞納処分に劣後することは、競売開始前から使用収益していないことにはならないと判断したわけです。

滞納処分と競売の手続自体はさすがに異なるため、これはその通りでしょう。

実質的に考えてみても、差押えの段階ではまだ使用収益する権利は失われない一方、民法395条によって一つのターニングポイントにされている競売手続開始は、ここからある意味、使用収益に制限がかかる時点ということですので、別物と考えるほかないでしょう。

差押えが租税滞納処分によるものであったとしても、国税徴収法69条から使用収益は原則可能になっていることから、性質がそれほど変わるわけではないわけです。

民法395条についての初めての判例だと思われまして、その意味では興味深いですが、ある意味、条文通りの帰結であったといえるように思われます。

大阪高裁、別居中の妻が凍結保存された受精卵を用いて夫の同意なく出産した場合でも、嫡出は推定されるとして、父が親子関係不存在確認訴訟で争うのは不適法と判示

何を言っているのかわからないタイトルになって申し訳ないですが、家族法分野において興味深い判決がありましたので取り上げます。

父子関係再び認定 凍結卵無断出産、大阪高裁  :日本経済新聞 2018/4/26 18:20

別居中だった元妻が凍結保存していた受精卵を無断で使って女児を出産したとして、奈良県在住の外国籍の40代男性が女児との間に父子関係がないことの確認を求めた訴訟の控訴審判決で、大阪高裁(江口とし子裁判長)は26日、訴えを却下した一審・奈良家裁判決を支持し、男性側の控訴を棄却した。男性側の代理人弁護士は上告する方針を示した。

 江口裁判長は判決理由で、元妻が女児を妊娠した2014年7月ごろ、男性は別居中だったが、長男を含めた3人で外出するなどしており「夫婦の実態が失われていたとはいえない」と指摘。男性が受精卵の母体移植に同意していないことは、妻が婚姻中に妊娠した子を夫の子とする民法の「嫡出推定」を否定する理由にはならないと判断した。

 一審判決は生殖補助医療で生まれた子と夫の間に法的な父子関係を認めるためには、夫が受精卵の移植に同意していることが必要との判断を示した。控訴審判決はこの点に言及しなかった。

 判決などによると、男性は04年に元妻と結婚。10年、奈良市のクリニックで体外受精を行い、複数の受精卵を凍結保存した。一部の受精卵を使い、11年に長男が生まれたが、13年に別居。元妻は14年、男性に無断で残りの受精卵を移植し、15年に女児を出産。16年に離婚が成立した。

 

実のところ、法的には争い方の選択について判示しているだけで親子関係を認定したのとは異なるため、上記報道のタイトルは若干ミスリードなのではないかと思われます。

本件は要するに、父親の側から親子関係を争う場合の事件なのですが、そもそもの出生が体外受精によって凍結保存された受精卵を使用した出産であったという事情がある場合というものです。

婚姻中に懐胎して出生した子について、父親の方から親子関係を争う場合には、嫡出推定がされている場合には、嫡出否認の訴えであり提訴期間の制限がありますが、嫡出推定が働かない場合には、親子関係不存在確認の訴えで争うことになり提訴期間の制限がないことになります。

本件では、提訴期間の問題があることから親子関係不存在確認訴訟で争える場合であるという主張がなされた事件と考えられます。

すると形式的には婚姻中の懐胎であるものの嫡出推定が及ばないことを主張しないといけないわけですが、嫡出推定が及ばないことは、伝統的には、その間はすでに婚姻関係が破たんしていたとか、長期にわたる出張などで接触がなかったなどという場合が例として挙げられているわけです。

しかし本件は以前の体外受精による凍結保存した受精卵ということであり、その時には婚姻関係が破たんしていたとかそのようなことはおよそないと考えられるわけで、伝統的な議論が全く妥当しないわけです。

そこで、原判決は体外受精の場合については夫の同意などの要件を考案することを試みていたようなのですが、本件では生物学的には父親である点も踏まえてだと思うのですが、原則論を採用したということと見受けられました。

この分野は生殖医療の進歩などにまったく追いついてないとよく指摘されているところですが、本件はひとまず生物学的な意味を重視しつつ、親子関係を固定化して安定を図るという点も併せ持っている民法の考え方に依拠すると導かれる結論になったといえそうです。

裁判例情報

大阪高裁平成30年4月26日判決

東京地裁、多摩テックの跡地開発をめぐって三菱商事が明治大学を提訴した損害賠償請求訴訟で、明治大学に約8億3900万円の支払を命じる一部認容の判決

三菱商事、多摩テックの跡地開発をめぐって明治大学を提訴 | Japan Law Expressの続報です。

東京地裁で判決が出まして、明治大学に約9億3900万円の支払を命じる一部認容となりました。

明大に8億円支払い命令…多摩テック跡地訴訟 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2018年04月21日 16時53分

自動車遊園地「多摩テック」(東京都日野市)の跡地にスポーツ施設を建てる明治大の計画が頓挫して損害を被ったとして、三菱商事が明大に約62億5000万円の支払いを求めた訴訟の判決が20日、東京地裁であった。

 田中秀幸裁判長は請求の一部を認め、約8億3900万円を支払うよう明大に命じた。

 判決によると、同社は明大に売却する前提で2013年4月までに跡地を購入したが、同年10月に計画は頓挫。同社側は訴訟で、跡地の購入価格の1・4倍で明大が買い取る契約だったと主張した。判決は契約の成立を認めなかったが、「明大は事後処理として跡地を買い取る可能性を誠実に協議する義務を怠った」などとして同社の損害を認定した。

 

判決全文は確認できていないのですが上記報道から行きますと、三菱商事が開発後に明治大学が買い取るとされたスキームについて、契約として成立していないと判断した模様です。

請求額に対して認容額が非常に低いことから行っても、履行利益賠償ではないを考えられ、実質的には明治大学の主張が認められた判決と言えると思われます。

 

裁判例情報

東京地裁平成30年4月20日判決

京都地裁、後見開始の審判をした家庭裁判所が成年後見人の事務の遂行状況を確認しなかったため、成年後見人が被後見人の預金払戻しを繰り返し多額の使途不明金を発生させたとして提起した国家賠償請求訴訟で、一部認容をして1300万円の支払を命じる

成年後見人による被後見人の財産の使い込みが問題視されるようになって久しいですが、使い込みについて、国の責任を肯定した裁判例が出ましたので取り上げます。

成年後見人の財産管理で使途不明金「家事審判官の監督責任」認定…国に1300万円賠償命令 京都地裁 – 産経WEST 2018.1.10 19:10

 成年後見人の財産管理で多額の使途不明金が生じたのは、京都家裁の家事審判官(裁判官)や調査官が監督を怠ったからだとして、京都府に住む被後見人の女性の兄が国に4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁(久保田浩史裁判長)は10日、家事審判官の責任を認め、国に約1300万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性の後見人は継母で、平成元年から女性が亡くなるまで約20年間、財産を管理。兄は女性の遺産相続人だった。継母は女性の預金口座から払い戻しを繰り返し、19年(2007年)3月以降で1900万円余りの使途不明金があったが、家事審判官は「後見事務の遂行状況は良好」などとして事態を把握せず、確認をしなかった。継母は2012年に死亡した。

 久保田裁判長は、家事審判官が19年(2007年)以降、継母の事務が適切に行われているか確認しなかったことを「成年後見人の監督の目的、範囲を著しく逸脱した」と指摘。継母はそれ以前にも使途不明金や不適切な支出が指摘されていたことを踏まえ、「確認の手続きを取っていれば、不適切な支出を防止できた」とした。

(略)

成年後見人の監督義務怠る 国に賠償命令 | NHKニュース 1月11日 0時53分

8年前に亡くなった女性の遺族が生前、成年後見人だった義理の母親に預金を繰り返し引き出されて使途不明となったのは、家庭裁判所の家事審判官などが後見人の監督義務を怠ったからだと訴えていた裁判で、京都地方裁判所は家事審判官の責任を認めて国におよそ1300万円の賠償を命じました。

8年前の平成22年(2010年)に70代で亡くなった女性は生前、成年後見人だった義理の母親に預金を繰り返し引き出されて使途不明となりました。
これについて、相続人である京都府に住む女性の兄が、家庭裁判所の家事審判官だった裁判官などが後見人を監督する義務を怠ったからだとして、国に対し4400万円の賠償を求める裁判を起こしていました。

 

成年被後見人がなくなり、その後、後見人もなくなったのですが、被後見人の相続人が後見人による使い込みと思われる事態を受けて、すでに後見人がなくなっていることから、国を監督義務違反を主張して訴えたという事案のようです。

現時点で判決全文が公開されていませんので詳細が不明なのですが、後見監督人の選任されていない事例である模様です。

後見人による使い込みについて国の監督責任を認めるということになりますと、大変大きな意味がありそうな事案ですが、本件では、かねてより使途不明金や不適正な支出や指摘されていた模様で、その情報に接しながら何もしなかったのは、不作為の違法があるという判断だと思われます。

従いまして、失われた被後見人の財産の回復に国の責任追及をすればよいという簡単な話にはならないと思われます。

裁判例情報

京都地裁平成30年1月10日判決

最高裁、親権者である父が、監護権を有しない母のもとで養育されている子について、親権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として仮処分申立てした事案で、母による監護が相当ではないことの疎明がない場合においては、当該申立ては権利濫用と判示

いわゆる子の引渡しの紛争類型には、大別して二種類の裁判手続きが可能とされています。

一つ目は家事事件手続法所定の子の監護に関する処分に関する審判手続きですが、この他にも、法律上明文の規定はないのですが、親権に基づく妨害排除としての子の引渡し請求ができるとされており、判例にもできることを前提として判示をしたものがあります。

このたび、家事事件手続法の手続きをとらずに、親権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として仮処分命令の申立てをして、子の引渡しを求めた事案で判例が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第三小法廷平成29年12月5日決定 平成29(許)17  子の引渡し仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

原決定は、このような争い方について、家事事件手続法の手続保障の趣旨を没却するという点を考慮して、不適法として却下したのですが、最高裁は、手続自体は可能としつつも、権利濫用として、原決定を結論において是認しました。

離婚した父母のうち子の親権者と定められた一方は,民事訴訟の手続により,法律上監護権を有しない他方に対して親権に基づく妨害排除請求として子の引渡しを求めることができると解される(最高裁昭和32年(オ)第1166号同35年3月15日第三小法廷判決・民集14巻3号430頁,最高裁昭和45年(オ)第134号同年5月22日第二小法廷判決・判例時報599号29頁)。

もっとも,親権を行う者は子の利益のために子の監護を行う権利を有する(民法820条)から,子の利益を害する親権の行使は,権利の濫用として許されない。本件においては,長男が7歳であり,母は,抗告人と別居してから4年以上,単独で長男の監護に当たってきたものであって,母による上記監護が長男の利益の観点から相当なものではないことの疎明はない。そして,母は,抗告人を相手方として長男の親権者の変更を求める調停を申し立てているのであって,長男において,仮に抗告人に対し引き渡された後,その親権者を母に変更されて,母に対し引き渡されることになれば,短期間で養育環境を変えられ,その利益を著しく害されることになりかねない。他方,抗告人は,母を相手方とし,子の監護に関する処分として長男の引渡しを求める申立てをすることができるものと解され,上記申立てに係る手続においては,子の福祉に対する配慮が図られているところ(家事事件手続法65条等),抗告人が,子の監護に関する処分としてではなく,親権に基づく妨害排除請求として長男の引渡しを求める合理的な理由を有することはうかがわれない。

 

権利濫用という一般条項になるのはかなり刺激的ではありますが、家事事件手続法の制定によって法理上できなくなったと解することまでは難しいと思われますので、条文に書いていないとしても、親権に基づく妨害排除請求のルートも認めざるを得ないと思われます。そこで、極めて補充的にしか認められない趣旨を述べて、家事事件手続法の手続がある以上、監護が相当でないなどあえてそちらをとらないといけない理由がない限りは、手段の選択を許すわけではないという結論になったものと言えましょう。

最高裁、暴力団排除条項に基づいて条項新設前に開設された口座の解約を有効と判断して、道仁会会長らの請求を棄却した原判決を支持して上告を棄却

銀行の取引約款に暴力団排除条項が導入されて久しいですが、この条項を根拠に、暴排条項導入前に開設された暴力団幹部の口座を三井住友銀行、みずほ銀行が解約したところ、解約の無効を主張して両行が提訴されましたが、第一審福岡地裁、控訴審福岡高裁とも解約を有効としていました。

これに対して上告、上告受理申立がされましたが、最高裁は棄却する決定をしていたことが判明しまして、暴力団排除条項を遡及適用して口座を解約することを有効とする判断が確定しました。

 

銀行勝訴の判決確定 道仁会会長らの口座解約巡り  :日本経済新聞 2017/9/1 21:24

預金口座の解約を巡って訴えを起こしたのは、暴力団道仁会の小林哲治会長ら幹部2人。三井住友銀行、みずほ銀行に解約の無効を訴えたが、7月に「暴力団排除で既存口座を解約することには合理性がある」との判決が最高裁で確定した。

 確定判決によると、幹部2人は1999~2006年に口座を開設した。両行は10年2月、約款に「暴力団組員と判明した場合、口座を解約できる」との暴排条項を追加。15年4~5月に2人の口座を解約した。

 2人は暴排条項の導入前に遡った解約は無効だとして提訴。「口座は社会生活に欠かせず、不利益が大きい」と訴えた。

 一審・福岡地裁判決は口座が違法行為に使われる危険性を重視し「既存口座を解約できなければ暴排の目的を達成できない」と判断した。二審・福岡高裁も解約が有効と認めた。2人は上告したが、最高裁第3小法廷(林景一裁判長)は7月11日の決定で上告を退け、銀行の勝訴が確定した。

 

なお、原判決では、口座がいわゆる生活費口座ではないことにも言及があり、該当する場合には解約が制限される可能性も否定されてはいません。

しかし、第一審判決では、銀行口座がなくてもおよそ社会生活が営めないわけではない旨が指摘されたり、第一審判決、原判決とも暴力団を脱退すれば解約という事態は回避できるので自分で何とか吸うることができるという点に言及がされています。

ここからいきますと、生活費口座であっても必ずしも解約が制限されるわけではないという結論になるように思われます。

実際、生活費口座なら解約できないとなると、反社会的な目的と生活目的を混在すれば回避できてしまうことになりますので、やはりそのような解釈が妥当ということになりましょう。

 

 

判例情報

最高裁平成29年7月11日決定

福岡高裁平成28年10月4日判決

福岡地裁平成28年3月4日判決

後見監督人の選任が平成27年度に約4800件に及び過去最高となったことが明らかに

札幌高裁、札幌ドームでファウルボールで失明した女性が提起した損害賠償請求訴訟の控訴審で、日本ハム、札幌ドーム、札幌市に賠償を命じた一審に対して、日本ハムのみに責任を認める

下記tweetで取り上げた事件の控訴審判決が出ました。

 

ファウル失明、札幌高裁も賠償命令 日ハムのみ3300万円 | どうしんウェブ/電子版(社会) 05/20 13:59、05/21 01:01 更新

札幌ドームでプロ野球観戦中にファウルボールの直撃を受けて右目を失明した札幌市内の30代女性が、北海道日本ハムなど3者に計約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、札幌高裁であった。佐藤道明裁判長は、3者に約4200万円の支払いを命じた一審の札幌地裁判決を変更、「安全配慮が不十分だった」として日本ハム球団のみに約3300万円の賠償を命じた。

 球場の設備の安全性については問題がなかったとの判断を示し、ドームの管理会社の札幌ドームと、所有者の札幌市への請求は棄却した。一方、「女性が打球を見ていなかったのは過失と認められる」として、一審が認定した損害額から女性側の過失分の2割を差し引き、賠償額を減額した。

(略)

佐藤裁判長は判決理由で「女性は、観戦イベントで球団から招待を受けた子供の保護者。野球に関する知識はほとんどなく、ファウルボールの危険性もほとんど理解していなかった」と指摘。「球団には危険性を具体的に告知し、その危険を引き受けるか否かを判断する機会を与えるなどの安全配慮義務があったのに、十分ではなかった」と断じた。

 昨年3月の一審札幌地裁判決は、球団側が2006年に内野席前の防球ネットを撤去したことなどについて「臨場感の確保に偏り、球場が通常備えるべき安全性を欠いていた」としたが、控訴審は「臨場感も野球観戦の本質的な要素」と指摘。その上で、防球ネットはなかったものの「内野フェンスの高さは他球場に比べて特に低かったわけではなく、ファウルボールへの注意を促す放送など他の対策も考慮すると、プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとは言えない」とした。

(略)

原判決では、球場の設備そのものが安全性を欠いているという判断がなされ、球団だけではなく施設を保有している札幌市、札幌ドームにも責任を認めていたのですが、控訴審では、球場の設備面の安全性がほかの球場と比べて劣っているわけではないと判断が一変しました。

そのうえで、球団の安全配慮義務として、野球をよく知らない観客への配慮が足りないという判断がされ、これを根拠に損害賠償責任を肯定しています。

チケットなどに告知などは入っているものですが、基本的に誰が入ってくるのかわからない球場という環境でそれ以上の安全配慮義務を果たすのはむつかしそうです。しかし、本件では球団から招待を受けた子供の保護者の観客であるという点が意味を持っているようであり、そのような場面では個別に安全についての告知等の配慮をするべきということになるのだと思われます。

裁判例情報

札幌高裁平成28年5月20日判決

最高裁、建物区分所有法の59条競売を請求する権利を被保全権利として、処分禁止の仮処分を申し立てることはできないと判示

建物区分所有法の59条競売の特殊性には、このブログでもすでに何度か取り上げてきたところですが、競売をして区分所有者の所有権を強制的に奪ってしまうものですので、かなり極限的なものと理解されています。

そのような考え方を適用したものとして、59条競売のために処分禁止の仮処分はできないという判例が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成28年3月18日決定 平成27(許)15 仮処分決定取消及び仮処分命令申立て却下決定に対する保全抗告棄却決定に対する許可抗告事件

最高裁は端的に民事保全法に上がっている請求権ではないとしています。

民事保全法53条は同条1項に規定する登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行方法について,同法55条は建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するためのその建物の処分禁止の仮処分の執行方法についてそれぞれ規定しているところ,建物の区分所有等に関する法律59条1項の規定に基づき区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する権利は,民事保全法53条又は55条に規定する上記の各請求権であるとはいえない。

条文は下記のように被保全権利も明確に記載しており、競売をすることができるという59条競売は確かに異なるとえましょう。

民事保全法

(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)

第五十三条  不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

 不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。

 第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項 、第五十三条及び第五十四条の規定は、前二項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)

第五十五条  建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

 第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項 、第五十三条及び第五十四条の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

 

また、59条競売の特殊性について以下のようにも言及して念を押しています。

上記の競売を請求する権利は,特定の区分所有者が,区分所有者の共同の利益に反する行為をし,又はその行為をするおそれがあることを原因として,区分所有者の共同生活の維持を図るため,他の区分所有者等において,当該行為に係る区分所有者の区分所有権等を競売により強制的に処分させ,もって当該区分所有者を区分所有関係から排除しようとする趣旨のもの – 2 – である。このことからしても,当該区分所有者が任意にその区分所有権等を処分することは,上記趣旨に反するものとはいえず,これを禁止することは相当でない。

59条競売をする権利を被保全権利として仮処分ができるようになってしまうと、最終手段とした立法の趣旨が損なわれてしまいますので確かにその通りだと思われます。

しかし、一方で分譲マンションにおける紛争解決には何ら資するところはないわけで非常に悩ましい状況を固定化させるだけなのかもしれません。