民事法事情

最高裁、暴力団排除条項に基づいて条項新設前に開設された口座の解約を有効と判断して、道仁会会長らの請求を棄却した原判決を支持して上告を棄却

銀行の取引約款に暴力団排除条項が導入されて久しいですが、この条項を根拠に、暴排条項導入前に開設された暴力団幹部の口座を三井住友銀行、みずほ銀行が解約したところ、解約の無効を主張して両行が提訴されましたが、第一審福岡地裁、控訴審福岡高裁とも解約を有効としていました。

これに対して上告、上告受理申立がされましたが、最高裁は棄却する決定をしていたことが判明しまして、暴力団排除条項を遡及適用して口座を解約することを有効とする判断が確定しました。

 

銀行勝訴の判決確定 道仁会会長らの口座解約巡り  :日本経済新聞 2017/9/1 21:24

預金口座の解約を巡って訴えを起こしたのは、暴力団道仁会の小林哲治会長ら幹部2人。三井住友銀行、みずほ銀行に解約の無効を訴えたが、7月に「暴力団排除で既存口座を解約することには合理性がある」との判決が最高裁で確定した。

 確定判決によると、幹部2人は1999~2006年に口座を開設した。両行は10年2月、約款に「暴力団組員と判明した場合、口座を解約できる」との暴排条項を追加。15年4~5月に2人の口座を解約した。

 2人は暴排条項の導入前に遡った解約は無効だとして提訴。「口座は社会生活に欠かせず、不利益が大きい」と訴えた。

 一審・福岡地裁判決は口座が違法行為に使われる危険性を重視し「既存口座を解約できなければ暴排の目的を達成できない」と判断した。二審・福岡高裁も解約が有効と認めた。2人は上告したが、最高裁第3小法廷(林景一裁判長)は7月11日の決定で上告を退け、銀行の勝訴が確定した。

 

なお、原判決では、口座がいわゆる生活費口座ではないことにも言及があり、該当する場合には解約が制限される可能性も否定されてはいません。

しかし、第一審判決では、銀行口座がなくてもおよそ社会生活が営めないわけではない旨が指摘されたり、第一審判決、原判決とも暴力団を脱退すれば解約という事態は回避できるので自分で何とか吸うることができるという点に言及がされています。

ここからいきますと、生活費口座であっても必ずしも解約が制限されるわけではないという結論になるように思われます。

実際、生活費口座なら解約できないとなると、反社会的な目的と生活目的を混在すれば回避できてしまうことになりますので、やはりそのような解釈が妥当ということになりましょう。

 

 

判例情報

最高裁平成29年7月11日決定

福岡高裁平成28年10月4日判決

福岡地裁平成28年3月4日判決

後見監督人の選任が平成27年度に約4800件に及び過去最高となったことが明らかに

札幌高裁、札幌ドームでファウルボールで失明した女性が提起した損害賠償請求訴訟の控訴審で、日本ハム、札幌ドーム、札幌市に賠償を命じた一審に対して、日本ハムのみに責任を認める

下記tweetで取り上げた事件の控訴審判決が出ました。

 

ファウル失明、札幌高裁も賠償命令 日ハムのみ3300万円 | どうしんウェブ/電子版(社会) 05/20 13:59、05/21 01:01 更新

札幌ドームでプロ野球観戦中にファウルボールの直撃を受けて右目を失明した札幌市内の30代女性が、北海道日本ハムなど3者に計約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、札幌高裁であった。佐藤道明裁判長は、3者に約4200万円の支払いを命じた一審の札幌地裁判決を変更、「安全配慮が不十分だった」として日本ハム球団のみに約3300万円の賠償を命じた。

 球場の設備の安全性については問題がなかったとの判断を示し、ドームの管理会社の札幌ドームと、所有者の札幌市への請求は棄却した。一方、「女性が打球を見ていなかったのは過失と認められる」として、一審が認定した損害額から女性側の過失分の2割を差し引き、賠償額を減額した。

(略)

佐藤裁判長は判決理由で「女性は、観戦イベントで球団から招待を受けた子供の保護者。野球に関する知識はほとんどなく、ファウルボールの危険性もほとんど理解していなかった」と指摘。「球団には危険性を具体的に告知し、その危険を引き受けるか否かを判断する機会を与えるなどの安全配慮義務があったのに、十分ではなかった」と断じた。

 昨年3月の一審札幌地裁判決は、球団側が2006年に内野席前の防球ネットを撤去したことなどについて「臨場感の確保に偏り、球場が通常備えるべき安全性を欠いていた」としたが、控訴審は「臨場感も野球観戦の本質的な要素」と指摘。その上で、防球ネットはなかったものの「内野フェンスの高さは他球場に比べて特に低かったわけではなく、ファウルボールへの注意を促す放送など他の対策も考慮すると、プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとは言えない」とした。

(略)

原判決では、球場の設備そのものが安全性を欠いているという判断がなされ、球団だけではなく施設を保有している札幌市、札幌ドームにも責任を認めていたのですが、控訴審では、球場の設備面の安全性がほかの球場と比べて劣っているわけではないと判断が一変しました。

そのうえで、球団の安全配慮義務として、野球をよく知らない観客への配慮が足りないという判断がされ、これを根拠に損害賠償責任を肯定しています。

チケットなどに告知などは入っているものですが、基本的に誰が入ってくるのかわからない球場という環境でそれ以上の安全配慮義務を果たすのはむつかしそうです。しかし、本件では球団から招待を受けた子供の保護者の観客であるという点が意味を持っているようであり、そのような場面では個別に安全についての告知等の配慮をするべきということになるのだと思われます。

裁判例情報

札幌高裁平成28年5月20日判決

最高裁、建物区分所有法の59条競売を請求する権利を被保全権利として、処分禁止の仮処分を申し立てることはできないと判示

建物区分所有法の59条競売の特殊性には、このブログでもすでに何度か取り上げてきたところですが、競売をして区分所有者の所有権を強制的に奪ってしまうものですので、かなり極限的なものと理解されています。

そのような考え方を適用したものとして、59条競売のために処分禁止の仮処分はできないという判例が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成28年3月18日決定 平成27(許)15 仮処分決定取消及び仮処分命令申立て却下決定に対する保全抗告棄却決定に対する許可抗告事件

最高裁は端的に民事保全法に上がっている請求権ではないとしています。

民事保全法53条は同条1項に規定する登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行方法について,同法55条は建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するためのその建物の処分禁止の仮処分の執行方法についてそれぞれ規定しているところ,建物の区分所有等に関する法律59条1項の規定に基づき区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する権利は,民事保全法53条又は55条に規定する上記の各請求権であるとはいえない。

条文は下記のように被保全権利も明確に記載しており、競売をすることができるという59条競売は確かに異なるとえましょう。

民事保全法

(不動産の登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行)

第五十三条  不動産に関する権利についての登記(仮登記を除く。)を請求する権利(以下「登記請求権」という。)を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

 不動産に関する所有権以外の権利の保存、設定又は変更についての登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分の執行は、前項の処分禁止の登記とともに、仮処分による仮登記(以下「保全仮登記」という。)をする方法により行う。

 第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項 、第五十三条及び第五十四条の規定は、前二項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

(建物収去土地明渡請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の執行)

第五十五条  建物の収去及びその敷地の明渡しの請求権を保全するため、その建物の処分禁止の仮処分命令が発せられたときは、その仮処分の執行は、処分禁止の登記をする方法により行う。

 第四十七条第二項及び第三項並びに民事執行法第四十八条第二項 、第五十三条及び第五十四条の規定は、前項の処分禁止の仮処分の執行について準用する。

 

また、59条競売の特殊性について以下のようにも言及して念を押しています。

上記の競売を請求する権利は,特定の区分所有者が,区分所有者の共同の利益に反する行為をし,又はその行為をするおそれがあることを原因として,区分所有者の共同生活の維持を図るため,他の区分所有者等において,当該行為に係る区分所有者の区分所有権等を競売により強制的に処分させ,もって当該区分所有者を区分所有関係から排除しようとする趣旨のもの – 2 – である。このことからしても,当該区分所有者が任意にその区分所有権等を処分することは,上記趣旨に反するものとはいえず,これを禁止することは相当でない。

59条競売をする権利を被保全権利として仮処分ができるようになってしまうと、最終手段とした立法の趣旨が損なわれてしまいますので確かにその通りだと思われます。

しかし、一方で分譲マンションにおける紛争解決には何ら資するところはないわけで非常に悩ましい状況を固定化させるだけなのかもしれません。

最高裁、相続開始後に認知されて相続人となった者が民法910条に基づいて価格の支払請求をする場合の遺産の価格算定の基準時は請求時であり、請求と同時に遅滞となると判示

民法は共有はなるべく早く解消されるべきであるという民法全体を貫いているテーゼを遺産分割の場面にも適用しており、その帰結として一度行った遺産分割の安定性に配慮した制度設計を採用しています。具体的には、遺産分割後に認知によって相続人が増えた場合には、遺産分割のやり直しではなく、価格賠償しかできないという仕組みになっているところに現れています。

 

(相続の開始後に認知された者の価額の支払請求権)

第九百十条  相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

 

さて、このような理論的背景があることを踏まえると、いざこの910条に基づいて価格賠償が請求された場合、遺産の評価はいつの時点にすればよいでしょうか。

遺産分割の一般論としては、分割の価格算定の基準時は、分割時又は審判時の時価とされています。

この一般論からいくと、価格賠償の支払い時になるのかもしれませんが、この点について最高裁が判例を出しましたので取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成28年2月26日 平成26(受)1312 価額償還請求上告,同附帯上告事件

この点について最高裁は以下のように判示しています。

相続の開始後認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払を請求する場合における遺産の価額算定の基準時は,価額の支払を請求した時であると解するのが相当である。

なぜならば,民法910条の規定は,相続の開始後に認知された者が遺産の分割を請求しようとする場合において,他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしていたときには,当該分割等の効力を維持しつつ認知された者に価額の支払請求を認めることによって,他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るものであるところ,認知された者が価額の支払を請求した時点までの遺産の価額の変動を他の共同相続人が支払うべき金額に反映させるとともに,その時点で直ちに当該金額を算定し得るものとすることが,当事者間の衡平の観点から相当であるといえるからである。

以上から、最高裁は、価格支払請求時を基準時としました。

最高裁は以前からこの910条については、価格賠償で済ませる場合を限定的に解してまさに条文に書いてある通りの場面だけとする立場をとっていますので、その意味では基準時についても分割類似のことをするということにはならず、独自の考え方をとるということにつながると思われます。

価格賠償の支払い時にしてしまいますと、この910条がそもそも分割後の話ですので、分割からかなりたっていることになります。すると、時間の経過によって時価がどちらに転ぶのかはわかりませんが、ひとまず分割時の割合を決める根拠とした時価評価とかなり離れてしまうことになります。

そこで、なるべく近づけつつなんとかバランスをとるととなると、請求時ということがぎりぎりになり、それが衡平ということと思われます。

また、いわゆる遅延利息の点も争点となっており、この点については、価格支払請求は期限のない債務であると指摘しています。

民法910条に基づく他の共同相続人の価額の支払債務は,期限の定めのない債務であって,履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当である。

いつ来るのか自体わからないものですので、これはその通りですが、評価の時期と離れることも遅延利息によってバランスをとることもできるという点も興味深いと思われます。

分割後に認知で相続人が追加されるということがどれほど発生するかは微妙ですので、本判例の影響は限定的なのかもしれませんが、相続法を貫く考え方に関わる点もあることから理論的には大きな意義を有するものであるように思われます。

東京地裁、アマゾンジャパンに対して、アマゾンのウェブサイトに中傷の書き込みをした投稿者の氏名・住所等の個人情報の開示を命令

インターネット上に書き込まれた投稿によって名誉棄損などの被害を受けた場合、インターネットの匿名性ゆえに誰がやったのか自体を調べるところから対応をはじめないといけません。

このためにプロバイダ責任法があり、これによる実例の集積は相当あるのですが、実際のところ、非常に手間がかかる、割に合わない負担というのが現実となっています。

これは、まずは、サイトの運営者にIPアドレスの開示を求めて、その後、そのIPアドレスをもとにプロバイダに書き込みをした者の情報の開示を求めるという二段階の手間がいるためです。

このたび、このような現状からみると非常に特異な事例が発生したことが明らかになりました。

 

アマゾンに開示命令 中傷書評の投稿者情報巡り東京地裁  :日本経済新聞 2016/4/11 11:40

通販大手アマゾンジャパン(東京・目黒)のサイトに投稿された書評によって社会的評価が低下したとして、本の著者側が同社に投稿者情報の開示を求めた訴訟の判決があり、東京地裁が投稿者の氏名や住所、メールアドレスの開示を命じていたことが11日までに分かった。裁判所がプロバイダー(接続業者)以外に利用者情報の開示を命じるのは異例。

 判決は3月25日付で、同社が控訴しなかったため11日までに確定した。

(略)

裁判例全文に当たれていないので、報道から検討するしかないのですが、上記で書いたような現状と比較すると、サイト運営者であるアマゾンに、個人情報まで含めて開示を求めることができた、二度手間が一度で済んだという一点ということになります。

これは、アマゾンが通販業者であることから、サイト運営者でありながら個人情報まで有しているという事情によるものです。

また、もう一点、上記報道では出てこないものの重要な点があったことが明らかになっています。

それは、アマゾンジャパンが管理していることをアマゾンが認めたということで、アマゾンの米国法人に対する訴えでなくてよくなったという点です。

外国法人を訴えるのは、そもそも送達が大変ですし、判決が出てもその執行が非常に難しいため、実効性が極めて低くなるのですが、内国法人に対する訴訟で済むためこれは非常に便利になります。

一般的にインターネットで行われている事業は、ウェブサイトは日本語でも運営しているのは外国法人ということはままあるのですが、アマゾンは日本法人に情報があることを認めたため、今回の結論に至っているわけです。

すると、本件は画期的ではありますが、アマゾンの特殊事情によるところが非常に大きいわけで、プロバイダ責任法上の実務が画期的に変わるわけではないということになりそうです。

もっともこの件があった以上、アマゾンのウェブサイト上でのレビューの記述には慎重さが必要だと考える向きもあるのかもしれませんが、それは別論といえましょう。

裁判例情報

東京地裁平成28年3月25日判決

最高裁、漁業協同組合の理事会の議決が特別利害関係を有する理事が加わったものであっても、当該理事を除外しても議決に必要な多数が存するときは、その効力は否定されないと判示

特別利害関係取締役の議決権は行使できないとされていますが、行使してしまった場合に取締役会の議決が無効になるのかについては規定を欠いており、一般原則から考察することになるものと思われます。

しかし、会社以外の各種法人の立法では、役員の意思決定機関である理事会について、会社法と同じく特別利害関係理事の議決権を排除する規定を有するものの、個別事例においてはその特別利害関係理事を除いても理事会の議決が成立する多数が占められていた場合には、決議を有効とする判例があります。

中小企業等協同組合法についてこのことを判示したのが以下になります。

最判昭和54年2月23日民集第33巻1号125頁

このたび、上記昭和54年判決を引用して、漁業組合の理事会の議決について同旨を判示した判例が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成28年1月22日判決 平成27(行ヒ)156 損害賠償請求事件

この事案は、端的には理事8人のうち6人が出席した理事会で全会一致で出席理事のうちの一人が代表を務める組合に利益になる議決がされ、理事にはその組合の代表の息子も含まれていたということで、いわば特別利害関係理事が2名いたというようなケースでした。

しかし、この二名を除外しても議決は有効に成立するとして効力を否定されないとしたものです。

特別利害関係人の議決権の除外は、各種法人の立法に共通ですが、議決権が行使されてしまった場合の議決の効果についても同じ理解になるでしょうか。

この判例では以下のように一般論を判示しています。

水産業協同組合法37条2項が,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事が議決に加わることはできない旨を定めているのは,理事会の議決の公正を図り,漁業協同組合の利益を保護するためであると解されるから,漁業協同組合の理事会において,議決について特別の利害関係を有する理事が議決権を行使した場合であっても,その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは,そのことをもって,議決の効力が失われるものではないというべきである。

会社法では、東京高判平成8年2月8日などを見る限り、特別利害関係人の議決権行使の事実のほかに、議長も務めてしまうなどその他の事情も含めて総合考慮するのだろうと思われます。

このような判断は各種法人の場合にも妥当させた方がよいと思われるのですが、上記のように本件も含めて各種法人の場合の判示の仕方が数にしか言及していないため、議決権の数以外の事情も検討に入れるような判断の余地がなさそうに思われます。

会社、その他の各種法人の意思決定の問題は結構発生していることから、判例の蓄積から理事会運営のガバナンスにどのようにフィードバックしていくべきかは気になるところといえましょう。

最高裁、主たる債務者に対する求償権に時効中断事由があっても、共同保証人に対する求償権に時効中断は生じないと判示

連帯保証人の一人が主債務者に代わって、債権者に弁済して主債務者に対する求償権を取得し、その後主債務者が一部は弁済したもののそのままになってしまったことから、主債務者に求償金請求訴訟を提起して勝訴確定したところ、そこから10年の事項にかかりそうになったため、共同保証人に対する求償権行使をしたという事案で判例が出るに至りました。

なぜ法的論点のある事件になったかというと、共同保証人から消滅時効の抗弁が主張されたためです。

最高裁判所第一小法廷平成27年11月19日判決 平成25(受)2001 求償金等請求事件

本件は、共同保証人間の求償権行使という法的構成なのですが、主債務者に対する求償権の時効中断事由(本件では訴訟上の請求)は、共同保証人間の求償権の時効中断事由にならないと主張がされたため、最高裁が判断するに至ったものです。

一見すると、主債務者に対しては時効中断しているのに共同保証人に対しては影響しないのはおかしいのではないか、請求の絶対効はどうなったのかと感じてしまいかねないですが、本件は共同保証人間の求償権講師であるところがポイントです。

(共同保証人間の求償権)

第四百六十五条  第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

 第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

本来、最終的には主債務者が全責任を負うのが保証人の場合の関係性ですが、無資力の場合には、共同保証人間で頭数割で負担することにして、それを実現するための清算のために特に設けられたのが、保証人間の求償権です。

すると、保証人に対する求償権とは性格的にも別物であるわけでして、この点から最高裁は端的に下記のように判示をしています。

民法465条に規定する共同保証人間の求償権は,主たる債務者の資力が不十分な場合に,弁済をした保証人のみが損失を負担しなければならないとすると共同保証人間の公平に反することから,共同保証人間の負担を最終的に調整するためのものであり,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものではないと解される。したがって,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じないものと解するのが相当である。

したがって、主債務の求償権が10年の時効にかかりそうになっているくらいで、その間、保証人間の求償権には何もしてこなかったわけですので、当然、時効消滅という結論になったわけなのでした。

要するに、保証人間の求償権についても何かしておくべきだったということになりますが、主債務者に対してなら全部いけるのに、保証人間の求償権についても手当をするというのはなかなか想起しがたいことなのかもしれません。

しかし、それよりもさらにそもそも論ですが、本件は、保証人間の求償権の事件ですが、共同保証人がいるケースでこの権利が行使されることはあまりないように思われます。というのは、現実には、共同保証人には主債務の求償権についても連帯保証を求めていることが多いからであり、このように求める保証人は機関保証であり、そういう意味で保証人を要求しているからと考えられます。

したがって、求償権へ連帯保証をつければいいことですので、やや珍しい事態に対する判例であり、実務的にこれが即影響する場面というのもそうはないように思われます。

なお、民法改正案では、この465条は改正されないことになっていますので、本件の判示もそのまま改正法成立後も意義をもつものと考えられます。

最高裁、自筆証書遺言の文面全体に斜線を引いた行為を、故意に遺言書を廃棄したときに該当するとして、遺言を撤回したと判断

遺言にはいくつか方式が決まっており、それぞれについて作成方式が厳格に定まっています。

民事行為についてはあまり要式性を要求しない日本法では珍しいのですが、遺言の作成そのものがそれほど多くなかったことと、作成するにしても専門家の関与が必要となる公正証書遺言が大半であるため、遺言をめぐる法律紛争は、一般的に想像するよりはとても少ないのが現実です。遺産相続の紛争は増えていますが、遺言についての紛争はそう多くはありません。

そのような中、自筆証書遺言をめぐり、紛争になってしまったという例が発生、最高裁判決が出るに至りました。

最高裁判所第二小法廷平成27年11月20日 平成26(受)1458 遺言無効確認請求事件

本件は要するに、自筆証書遺言に赤線で斜線を引いた行為が、遺言を撤回したものといえるかということにつきます。

本件で問題となった自筆証書遺言に即していうと、方式に関する民法の定めは以下の通りになります。

民法

(自筆証書遺言)

第九百六十八条  自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。

 自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

 

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄)

第千二十四条  遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

968条は自筆証書遺言専用の定めですが、作成や修正するときは定めている通り、署名押印がいるわけです。

これに対して、1024条はすべての方式の遺言に共通の規定であり、破棄すれば撤回したとみなすという規定です。

本件は、斜線を引いただけであるので、それだけでは上記のどれに当たるのかが判然としないので問題となったものです。

原審は斜線を引いただけだと、文字は読めるとして、破棄にあたらないとして、遺言は以前として有効としました。

これに対して最高裁は、968条が厳格に方式を要求していることとの比較で、以前として判読できるので、撤回に当たらないという判断にも理解は示しつつも、これを否定して、968条2項は、遺言をするということ自体は以前としてあり、内容の変更であるため、その方式を厳格に定めていると理解をして、すべての効力を失わせる場合には、同様に判断することはできないとしました。要するに方式を厳格に要求する必要はないということと考えられます。

ここから、斜線を引くということの一般的な意味を考察して、故意に破棄したときに該当するというべきであるとして遺言は撤回したものと判断、破棄自判をして請求を認容しました。

 

本件自体は、自筆証書遺言が問題となっているため、どれほど同種の紛争事例があるか若干疑問であるため、本件判決の意義については微妙な気がしないでもありませんが、遺言の変更と撤回とでは、遺言の効力自体は存続するか否かで大きな違いがあるので、方式性の要求の度合いが異なるという考え方は、一般的なものになりえますので、やはり大きな意義があるように思われます。

さて、余談ですが、本件では斜線を引いたのは遺言者であること自体は、事実認定がされており問題となっていません。赤い斜線というだけですので、この事実認定自体それなりに難しいような気がしまして、類似事例で実際の紛争の争点はむしろそちらになるのではないかと勘繰られるところであります。

 

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消費者委員会消費者契約法専門調査会の中間とりまとめに対して、三井不動産、楽天などの企業の法務担当者有志が説明会を開催、勧誘に広告を含める案について懸念の意見が出される

政府の消費者員会消費者契約法専門調査会が8月に公表した中間とりまとめにおいて、「勧誘」に広告のうち一定のものを含む可能性が示されました。

消費者委員会 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」(PDF形式:371KB)

該当する記述は長いのですが、今後の検討の方向性については以下のようにまとめられています。

事業者が、当該事業者と消費者との間でのある特定の取引を誘引する目的をもってした行為については、それが不特定の者を対象としたものであっても、それを受け取った消費者との関係では、個別の契約を締結する意思の形成に向けられたものと評価することができると考えられる。そこで、事業者が、当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合、そこに重要事項についての不実告知等があり、これにより消費者が誤認をしたときは、意思表示の取消しの規律を適用することが考えられるが、適用対象となる行為の範囲については、事業者に与える影響等も踏まえ、引き続き検討すべきである。

広告一般を含めるわけではないことは当然前提としていますが、このような枠組みにしますと、個別判断のようになるため事業者の側にとっては大変判断に困る事態になることは容易に想像されます。

このため早くも経済界からは懸念の意見が出ており、法務担当者有志が説明会を開催して、会場から様々な意見がだされるという機会があった模様です。

広告も「勧誘」に、企業側が懸念 消費者契約法改正で  :日本経済新聞 2015/9/10 21:33

消費者契約法の改正を巡り、三井不動産、楽天など大手企業の法務担当者有志が10日都内で説明会を開いた。政府の消費者委員会専門調査会が8月にまとめた中間報告では、契約を取り消せる「勧誘」の対象に広告を含める案などが盛り込まれた。説明会では広告に書いていないことを理由に返品を求める事態が頻発するなど、企業活動に影響が出ることを懸念する声が相次いだ。

 広告やネット、小売り、アパレル、金融などの担当者100人以上に加え、消費者委員会の事務局が参加した。規制が強化されると、ポスターなどに消費者に伝えるべき注意を限りなく記載する必要が出てくるとの指摘がある。

 説明会では「どれが『勧誘』に該当したかの判断は難しい」(電通担当者)との声が出た。三井不動産担当者は「誇大広告などは宅地建物取引業法でも対応しており、業者への罰則もある。新たな規制は混乱を起こす」と指摘した。

(略)

まだまだ法改正の議論としては途中ですが、かなり尖鋭的な取りまとめがされたことから、事業者からの動きも早くも活発なものになっている模様です。