民事手続法事情

東京地裁、「日本会議の研究」の出版差止めの仮処分に対する保全異議の申立てを認め、保全命令を取消

出版差し止めの仮処分というと満足的仮処分の一種になりますが、「日本会議の研究」という書籍について出された出版差し止めの仮処分について出版社からの保全異議申立てが認容され、保全命令が取り消されて出版可能となる事例が出ました。

「日本会議の研究」販売差し止めの仮処分取り消し:朝日新聞デジタル 2017年3月31日21時32分

憲法改正運動を進める団体「日本会議」の成り立ちなどを書いた書籍「日本会議の研究」の販売差し止めを命じた東京地裁の仮処分決定に対し、出版元の扶桑社が保全異議を申し立てた審理で、同地裁(中山孝雄裁判長)は31日、仮処分を取り消す決定を出した。同社は仮処分決定後、指摘された箇所を抹消した修正版を販売していた。修正前の本を再び販売するかは「検討中」という。

(略)

異議審の決定は「出版物の差し止めは、真実ではないことなどが明白の場合に例外的に許される」と指摘。問題とされた部分について「真実ではないことが明白であると認めるのは困難」とした。

(略)

仮処分の保全命令に対する不服申立ては、複雑でわかりにくいですが、保全命令を出されてしまった場合、それまでに生じていた事実について検討の対象とする不服申立ては、保全異議であり、それに対する不服申し立ては、保全抗告になることになります。

今回は保全異議に対する判断でして、この後、もとの出版差止めを申立てた保全債権者(本件では書籍中で言及されている人物)から保全抗告される模様です。本件については今しばらく係争が続く模様です。

東京地裁、15万部を超えるベストセラーの「日本会議の研究」を、「真実でない可能性が高い」箇所があるとして販売差止の仮処分

東京高裁、厚木市内の建物を暴力団事務所として使用することを禁じる仮処分命令に反したとして、周辺住民による間接強制の申立てが一部却下されたことに対する執行抗告審で、1日100万円の支払命令

昨今の山口組の抗争状態のため暴力団事務所として使用しないことを命じる仮の地位を定める仮処分命令に反したとして、間接強制の申立てがなされたという事件がありまして、報道からは詳細が不明なところがあるのですが、興味深い点がありましたので、取り上げます。

 

山口組系に制裁金、東京高裁認める 「事務所禁止」巡り  :日本経済新聞 2016/8/18 1:06

暴力団山口組系の3次団体が、神奈川県厚木市内の建物を事務所として使うことを禁じた仮処分に従わなかったとして、周辺住民が3次団体側に、使用した場合に1日100万円を支払うよう求める間接強制を申し立て、東京高裁が認める決定をしていたことが分かった。住民側弁護団が17日、明らかにした。決定は10日付。

 弁護団によると、横浜地裁小田原支部が2003年、この建物を事務所として使用するのを禁止する仮処分決定を出した。だが今年2月、建物にトラックが突っ込む事件が発生。山口組と暴力団神戸山口組の抗争とみられ、不安を訴える住民側が5月、同支部に間接強制を申し立てた。

 同支部は6月、03年の仮処分は現在の「6代目山口組」とは異なる「5代目山口組」の傘下組織に対するものだったとして、申し立てを一部却下。住民側が不服として執行抗告していた。

(略)

 

いわゆる仮の地位を定める仮処分で不作為債務の場合には、仮処分命令で直ちに金銭の支払いを命じられるわけではなく、改めて間接強制を申し立てる必要があり、授権決定を経て、それを債務名義として金銭執行をするということになります。

報道によりますと、住民が2003年に事務所として使用しない旨の仮処分決定を得たものの、ここにきて対立抗争によってトラックが突っ込む事件が発生したことから、使用している状態にあるとして間接強制の申し立てがされた模様です。

他の報道によりますと、組側は住んでいるだけとの言い分がある模様で、申尋でこれを言ったのかは定かではないのですが、まずはこの点がポイントとなりそうです。

また、二点目のポイントして、仮処分命令の債務者と現在の債務者が異なるという主張がされたことが報道からうかがわれます。

暴力団が法人組織などではないことから、個人が債務者とすると、代替わりによって異なるという理屈になりそうで、非常に問題と感じられます。

この点をどのように解釈したのかは定かではないのですが、東京高裁は、横浜地裁小田原支部の一部却下の決定に対する執行抗告を認めていますので、ここは債務者は同じであるという見解をとったものと思われます。

最高裁、無限連鎖講によって給付を受けた者は、行っていた会社の破産手続開始決定後に破産管財人が行う配当金の返還請求を、不法原因給付に基づく給付であることを理由に拒むことは信義則上許されないと判示

これまた少し前の判例を取り上げます。

いわゆるねずみ講と呼ばれる無限連鎖講は禁止される類のものですので、それによって給付を受けた配当は、不法原因給付となります。

第708条(不法原因給付) 
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

無限連鎖講を行っていた会社が破産手続開始決定を受け、破産管財人が選任されたものの、例によって債権者に比して財産がほとんどなかったため、出資金に比して配当金が多かったためにいわば利益が生じていた会員に対して、返還請求を行ったところ、不法原因給付であるとして請求することができないとされたため、上告受理申し立てがされたという事件で最高裁判例が出ました。

最高裁判所第三小法廷平成26年10月28日判決 平成24(受)2007 不当利得返還等請求事件

不法原因給付だから返還請求できないとすると、無限連鎖講ですので大変の会員は被害者となっているわけですが、偶然一部の会員だけが他の会員の犠牲の上で利益を得ることになります。

これはあまりに不当といえますので、最高裁は以下のように述べて破棄自判しました。

 破産会社の破産管財人である上告人が,被上告人に対して本件配当金の返還を求め,これにつき破産手続の中で損失を受けた上記会員らを含む破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとすることは,衡平にかなうというべきである。仮に,被上告人が破産管財人に対して本件配当金の返還を拒むことができるとするならば,被害者である他の会員の損失の下に被上告人が不当な利益を保持し続けることを是認することになって,およそ相当であるとはいい難い。

 したがって,上記の事情の下においては,被上告人が,上告人に対し,本件配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されないと解するのが相当である。

要するに拒むことは信義則上許されないという判断をしたわけです。

結論としては妥当なものと考えられますが、一般理論である点がやや苦しい構成である感じがしますが、それでも無限連鎖講などに限定して適用される法理として画するためなら当然のことだとも思えます。

しかし、木内判事はこの構成には若干気になる模様で補足意見で以下のように言及をしています。

その事業実施者(無限連鎖講の事業者のこと)が破産した場合,破産管財人が行う給付(利得)の返還請求は,破産者に代わって行うものということはできない。破産制度の目的は「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」ことであり(個人破産については「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る」ことが加わる。),その目的のために「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整」(破産法1条)するという破産管財人の任務の遂行としてこれを行うのである。

上記のとおり、無限連鎖講の場合に限定するところは変わらないものの、無限連鎖講の事業者が破産した場合の破産管財人の返還請求は破産者と同じくする資格で行っているわけではないということを述べておられます。法定訴訟担当のような考え方になるのかもしれませんが、なぜ無限連鎖講の時だけそうなるのか考えると若干大仰な構成に感じられなくもありません。

とにかく、不法原因給付の返還を求めることができる場合が一つ認められたということで注目すべき判例と思われます。

インターネットの書き込みに関する仮処分の申し立てが、4年で20倍になっていることが明らかに

プロバイダ責任法によってプロバイダに対応を求めることができるにもかかわらず、インターネットの書き込みに関連する仮処分が急増していることが明らかになりました。

ネット関係の仮処分申し立て、4年で20倍 投稿削除要請など  :日本経済新聞 2014/10/27 1:15

インターネットの掲示板で誹謗(ひぼう)中傷されたとして投稿者の情報開示や投稿の削除をプロバイダー(接続業者)やサイト運営管理者に求めるなど、ネット関係の仮処分申し立てが激増している。東京地裁が2013年に扱ったのは711件で、4年前の20倍以上になったことが地裁関係者への取材で分かった。

 関係者によると、東京地裁が09年に扱ったネット関係の仮処分は計33件で、仮処分申立総数の3%に満たなかった。しかし、10年に175件、11年に499件、12年は736件と増加。13年の711件は仮処分申立総数の40%近くを占めた。

 13年の711件の内訳は、名誉毀損やプライバシー侵害の状態を解消するための「投稿記事の削除」が247件、損害賠償請求訴訟を起こす前段階としての「発信者(投稿者)情報の開示」が290件、通信記録保存のための「発信者情報の消去禁止」が174件だった。

 仮処分申し立てが増えたのは、会員制交流サイト(SNS)などの普及でトラブルが増加したのと、対処する手続きが周知されたのが主な理由。02年施行のプロバイダー責任制限法では被害者は投稿者の情報開示や記事の削除をプロバイダーなどに直接請求できるが、司法手続きを取らざるを得ない実情があるとみられる。

 ネット事情に詳しい弁護士によると、プロバイダーへの要請で問題の投稿が削除されても、誹謗中傷の投稿は繰り返されることが多く、再発防止と損害賠償請求のため投稿者の特定を望む被害者が増えている。

 また、プロバイダーは記事の削除に応じても、投稿者の氏名やネット上の住所に当たるIPアドレスの開示は拒むことが多いという。〔共同〕

上記報道によると、根源的な原因はインターネットの書き込みによるトラブルの増加があるわけですが、それらの問題に対するプロバイダ責任法によるプロバイダの対応に限界があり、投稿が何度も繰り返されることにより、結果として目的を達せられないことから法的手段をとらざるを得ないことになっている模様です。

実際のところ、インターネットへの書き込みをめぐる弁護士への相談は増えている肌感覚があります。

このような流れは今後も増加傾向が続くように思われます。

事業再生ADRで債権者会議を全員の同意を要している現行から、4分の3の多数決へと変更する案が検討されていることが明らかに

再生型の法的整理である会社更生、民事再生ではなく、法的整理ではない私的整理のうち裏付けがあるという点で法的な仕組みに近い事業再生ADRについて、使い勝手を良くする修正が検討されており、政府の成長戦略に盛り込まれる方向であることが明らかになりました。

事業再生ADRは主に銀行団だけが債権放棄をすることで仕入れ先に迷惑をかけないことなどが期待されるものですが、債権者全員の同意がいるため、実際にはうまくいかず法的整理にいたったり、そもそもそれを懸念して最初から選択されないという傾向があるとされていました。

そこで、債権者会議を多数決に修正することが検討されています。諸外国は多数決であることが多いとされていますが、そのうちイギリスと同様の4分の3の多数決とする方向とされています。

このニュースは日経でしか報道されていないことからアドバルーン的な要素があるものと思われますが、大きな制度変更ではあるので、今後が注目されます。

最高裁,権利能力なき社団に,その社団の構成員に総有的に帰属する土地について,その社団の代表者名義への移転登記を請求する訴訟の当事者適格があると判示

何を言っているのか判然としないタイトルで申し訳ありません。しかし,民事訴訟法の基礎的な分野について興味深い判例がでましたので,取り上げます。

民事訴訟法の教科書的な問題として,当事者能力というテーマがあります。

権利能力なき社団については,民事訴訟法で当事者能力が認められているのに,権利能力なき社団はその名前の通り権利能力の主体になることができないので,訴訟をすることができるといわれてもいったい何の実益があるのか,どのような訴訟ならできるのかが問題となるために論点として議論の蓄積がある分野です。

紛争の局面に即して述べると,権利能力がないわけですから,権利能力なき社団で財産を持つ場合には,代表者の個人名義になるわけですが,その財産をめぐり訴訟の必要性があった場合,誰が訴訟を提起するべきなのかが問題となるわけです。

司法試験の短答知識ですが,最高裁は,代表者が自己名義への引渡しを請求訴訟をするべきといったことがありまして(最判昭和47年6月2日民集26巻5号957頁),このことの反射的な効果として,社団自身が原告になることには否定的な理解がされてきました。

要するに代表者がやらないといけないというわけですが,すると民事訴訟法上,権利能力なき社団に当事者能力を与えた意味がおよそなくなってしまいます。

この考え方の背景には,権利能力なき社団の財産にかかわる請求権自身は,社団に権利能力がないので帰属せず,訴訟担当を認めるにしても,例えば登記請求権では代表者個人という主体がいるのに,訴訟担当を認めることができるのかという訴訟要件の問題があったためです。

もっとも,判例は,入会権について代表者の訴訟追行について授権を要するとしていることから,社団の性格から当事者適格を認めることで訴訟担当構成を許容する余地があるともいえました。

そのような中,権利能力なき社団に,代表者への移転登記請求訴訟を行うことについての,当事者適格を正面から認めた判例がでました。

最高裁判所第一小法廷平成26年02月27日判決 平成23(受)2196 所有権移転登記手続等請求事件

そもそもの原因は,代表者の交替に伴う登記の移転が必要になったためであるようなのですが,本件ではあまり法律論に関わってこないので省略します。

最高裁の理由づけは,正面からは,実質的には社団が所有しているといえるので,訴訟追行を認めた方が簡明であり,当事者の意思にも合致するということです。

このほかに補強的な材料として,上記の昭和47年判決も,社団が代表者名義への請求をすることについてはブランクであることにも触れています。

したがって,最高裁は実質的には社団が所有しているということから,訴訟の有効性は認めたわけですが,権利能力の主体ではないというところは維持しているため,当事者適格があるという構成にしているわけです。

しかし,結果を実現するのに,それで十分かということを考えると,逆に当事者適格を否定する事情となりかねないために,執行の場面についても若干触れてフォローをしています。

権利能力なき社団の訴訟の判決効は,構成員全員に及ぶため,代表者はこの判決から直ちに自己への移転登記請求ができるとして,問題はないことに触れています。

従来からの延長上の範囲内で合理的に解決を図るという意味で,当事者適格構成を最高裁が採用したということであり,理論的には批判がありうるところでしょうが,実態としては妥当なところなのだと思われます。

最高裁,新株発行無効の訴えの請求認容の確定判決の効力を受ける第三者は確定判決について独立当事者参加の申し出をすることによって同判決の再審の訴えの原告適格を有すると判示

昨年11月に民事訴訟法と会社法について大変重要な判示をした判例が出ましたので,遅ればせながら取り上げます。

最高裁判所第一小法廷 平成25年11月21日決定 平成24(許)43 再審請求棄却決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

 

事実関係

250103

上記の図を参照いただきたいのですが,本件はXが再審を求めている事件です。

再審請求にかかる確定判決は,Y2がY1を相手取って提起した新株発行無効の訴えであり,その内容は,Y1がXに対して発行した新株の無効を主張するもので,Y1は請求を認諾したものの,裁判所は主張を促して証拠調べをして,結論としては請求認容となりこのまま確定しました。

Xは自分の株式が無効となる判断がされたことを判決確定後に知って,独立当事者参加の申立てをして,再審の訴えも提起したというものです。

XはもともとはY1の代表取締役でしたが解任されたという経緯があり,すでに前訴以前からXの株式の有効性をめぐってY1が無効と主張するなど紛争となっていました。そこでXは内容証明をY1に送るなどしていたという事実関係がありました。

そのような中,知らぬ間に新株発行無効の訴えが提起され,実質的に会社が認容するような形で確定していたわけです。

そこで,Xは再審を申し立てたわけですが,果たして再審ができるのか自体から問題となり,仮にできるとしても本件のような場合が再審事由に該当するのかが問題となったわけです。

 

争点1 再審の訴えの原告適格

原決定では問題となっておらず最高裁で浮上したのですが,前提となる争点は,本件のXに再審の訴えの原告適格があるのかということです。

一般的に再審の訴えができるのは,前訴の当事者ということになりますが,そのほかに判決の効力を受ける者も含まれるとされています。すると,Xは前訴の確定判決の効力を受けますから当然に再審の原告適格がありそうですが,そうは簡単ではありません。

会社法は法律関係の画一的確定を重視しているため,確定判決の効力を受けるものが再審の訴えの原告適格がある場合について個別に規定を置いていることがある(責任追及の訴えについて853条1項)のですが,新株発行無効の訴えにはこのような規定を欠いていることから,会社法の規定や対世効があるということだけから再審は認められないようにも考えられるからです。

 

争点2 再審事由に該当するか

第二に問題になるのは,Xを蚊帳の外において,勝手に新株発行無効の訴えを行って,請求認諾のような形になったことが再審事由に当たるのかという点です。

再審事由は,法的安定性のために極めて限定的に列挙されているだけで,唯一広く使えるのが,338条1項3号です。

第338条(再審の事由)
次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。

(略)

三 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。

この1項3号は,訴訟代理人が無権代理であった場合だけのように読めますが,広く解されており,手続保障を欠いた場合を広くここに含めています。

本件の事実がこの3号に該当するのかが原告適格があるとしたうえで次の争点となるわけです。

一見すると,手続保障を欠くことおびただしいので,該当しそうだなと思えますが,会社法の法定安定性の要請から,限定的に解するべきですので,単純に結論づけるわけにはいかないわけです。

 

判旨1 再審の訴えの原告適格

第一の争点について原決定は,Xは共同訴訟的補助参加ができるので,再審の原告適格があるとして,この点は簡単に済ませていました。

しかし,最高裁はこの点について誤りがあるとして,この点だけ捉えて破棄差し戻しを行いました。

最高裁は,要するに確定判決の効力を受けるからというだけで再審の原告適格を認めても,訴訟の当事者ではないことから訴訟行為ができないので,確定判決を左右することができないという点を強調しています。要するに,確定判決の効力が及ぶかだけではなく,再審の中でどのように訴訟行為をできるのかという点も含めて考えないといけないということと思われます。

そこで,共同訴訟的補助参加できる地位だからということではなく,前訴について独立当事者参加しておく必要があるということを述べています。

独立当事者参加しておけば当事者になるわけですから当然に訴訟行為できるわけです。しかし,前訴はすでに確定しているわけですが,その点については再審開始決定があれば訴訟行為できるようになるので,ある意味,再審の訴えと独立当事者参加の申立ての両方をすることが必要という判断をしました。

そのうえで原決定は,Xが前訴確定後に行った独立当事者参加の適法性について触れていないためその審理をするようにとして差し戻しているわけです。

 

判旨2 再審事由に該当するか

さらに最高裁は,再審事由に該当するかについて,やはり会社の場合には特に再審事由を限定的に解するべきという前提からと思われますが,以下のような一般論をまず提示しました。

新株発行の無効の訴えは,株式の発行をした株式会社のみが被告適格を有するとされているのであるから(会社法834条2号),上記株式会社によって上記訴えに係る訴訟が追行されている以上,上記訴訟の確定判決の効力を受ける第三者が,上記訴訟の係属を知らず,上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかったとしても,直ちに上記確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由があるということはできない。

被告適格を限定しているのに効力が及ぶものに再審を認めたら,限定した意味がなくな

最高裁,明示的一部請求は残部についても裁判上の催告の効果があると判示

非常に教科書的な論点についての判例が6月に出ておりまして,遅れましたが取り上げます。

本当は多岐にわたる判示があり,もっと長いタイトルにするべきなのですが,短くまとめました。

 

民事訴訟法の教科書で出てきますが,一部請求と時効中断という論点があります。

債権のうちの一部請求をした場合に時効中断がどの範囲で生じるのかということでして,判例は明示的一部請求の場合は訴訟物を当該一部としていますので,訴訟物の範囲で時効中断するということで当該一部だけということで決着しています。

そういうことで,判例によって結論が出ている論点なのですが,消滅時効ぎりぎりに明示的一部請求をして,その認容判決の確定後に残部請求をしたものの,その第二訴訟提起の時点では消滅時効が完成するだけの期間が経過していたという事案で,残部についても第一訴訟で時効中断がされていたのかという点が争われて最高裁に至りました。

最高裁判所第一小法廷平成25年06月06日判決 平成24(受)349 未収金請求事件

事実関係を簡単にまとめますと,平成17年6月24日に時効が完成する債権について,Xが平成17年4月16日に内容証明で催告をして,同年10月14日に明示的一部請求の訴訟を提起しました。

この訴訟で,債務者であるYは,相殺の抗弁を出したところ,一部請求と相殺の外側説にたつと一部請求の金額を上回ったことから,平成21年4月24日に請求が全部認容されました。この結論は,平成21年9月18日にに確定しました。

この確定に先立ち,Xは相殺の抗弁を前提として計算される残部について第二訴訟を提起したところ,最初の催告から6か月以内に訴訟提起がされていないので時効消滅したとYが主張したというものです。

原審では消滅時効の成立が認められたことから,Xは,①明示的一部請求でも残部について裁判上の請求の準じる効力があり時効中断の効力が生じる,②①が認められなくても裁判上の催告の効力があり,第一訴訟の確定前に第二訴訟を提起した以上,時効中断の効力が生じていると主張したものです。

判例裁判例が,裁判上の請求に準じる効力を認めたものがいくつかあることからそれに該当するのだという主張と,該当しなくても裁判上の催告の効力はあると順序をつけて主張しているものであり,理論的に組み立てられれているように見えます。

しかし,明示的一部請求の場合に訴訟物は一部であることは判例上明らかですので①はどうみても無理があります。

そこで最高裁は①は認められないとしたのですが,②については,裁判上の催告の効力は認めたため,本判決がなされるに至りました。

明示的一部請求の訴えが提起された場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6箇月以内に民法153条所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができると解するのが相当である。

しかし,裁判上の催告がどのような場合に認められてきたかを考えると,この場合が含まれるのはある意味当たり前でして,問題は,含まれるか否かではなく,催告を繰り返すことはできないことから,この期に及んで裁判上の催告の効力であると認められても意味がないのではないかという点です。

案の定,最高裁は以下のように述べて,最初の催告から6か月で消滅時効が完成するとしました。

催告は,6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなければ,時効の中断の効力を生じないのであって,催告から6箇月以内に再び催告をしたにすぎない場合にも時効の完成が阻止されることとなれば,催告が繰り返された場合にはいつまでも時効が完成しないことになりかねず,時効期間が定められた趣旨に反し,相当ではない。
  したがって,消滅時効期間が経過した後,その経過前にした催告から6箇月以内に再び催告をしても,第1の催告から6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなかった以上は,第1の催告から6箇月を経過することにより,消滅時効が完成するというべきである。この理は,第2の催告が明示的一部請求の訴えの提起による裁判上の催告であっても異なるものではない。

ある意味,当たり前の判示ということができましょう。したがって,これまた当たり前の帰結ですが,時効成立直前である場合には一部請求を選択すると,残部については時効成立となってしまう可能性が高いということになるわけです。理論的にはこのような帰結になるのは当然ということになりましょう。

最高裁,千葉裁判官の補足意見で将来給付の訴えの利益を否定した昭和63年3月31日判決の射程を限定する言及を行う

半年前の判決であり,今更という感じなのですが,取り上げます。

民事訴訟法135条に定められている,将来給付の訴えの利益については,大阪空港事件の最高裁判決が先例となっていることは有名な知識です。

第135条(将来の給付の訴え) 
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。

最大判昭和56年12月16日民集第35巻10号1369頁

およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。

端的にまとめますと,発生が確実で,将来において債務内容の変更がある場合に債務者が請求異議で立証することになっても不当ではないようなものに限られるということになります。

ここからいくと,賃料,利息,扶養料などなら該当しそうということになります。

しかし,賃料が問題となった件で最高裁は将来給付の訴えの利益を否定したことがあります。それが最判昭和63年3月31日です。

この事件は,賃料が問題になっているのですが普通に賃借人に請求しているわけではなく,土地の共有者が単独名義の登記名義を有している他の共有者に対して,共有持ち分を超える分の賃料相当額を不当利得として請求したというかなり複雑なものであり,上記大阪空港事件の規範に照らして,将来給付の訴えの利益を否定したのです。

これは賃料に関係しているのに将来給付が認められなかったという点だけ捉えると教科書的知識とやや異なる点で意外な判示であり,司法試験の短答で出題されてもおかしくない知識ということになります。

さて,去年の暮れですが,同じような持分割合を超える賃料相当額の不当利得返還を将来の分まで請求した事件で最高裁判決が出たのですが,その中で昭和63年判決の射程について詳細に言及するという一風変わった判示がなされました。

最高裁判所第二小法廷平成24年12月21日判決 平成23(受)1626 所有権移転登記手続,持分移転登記抹消登記手続等,持分権確認等請求事件

この事件の法廷意見自体は,昭和63年判決があるので将来給付の訴えの利益なしといっただけで終わっているのですが,千葉裁判官が詳細な補足意見を述べており,昭和63年判決の射程について,狭く解するべきとしています。

千葉裁判官は,持分割合を超える賃料部分の不当利得返還請求の場合に一般的に将来給付の利益を欠くと解することは広すぎるとして,昭和63年判決の事例が賃貸借とはいっても駐車場であったということを重視するべきとしています。

駐車場であるとすると,将来にわたって継続する蓋然性は低いので,大阪空港事件に照らしても訴えの利益を認めるべきではないことになるのであり,これが借家の賃料や建物所有目的の借地の場合には,将来の給付請求を認めるべきであるとしています。

こうなると,昭和63年判例から一律に遮断されると考えがちであったものについても,元となっている賃料が何についてのものかによっては結論が変わってくることになります。

このような細分化して整理することにどのような意義があるのかという点ですが,相続によって賃貸借の目的物が共有になってしまっている物件などで案外該当する事態があるかもしれません。