国際経済法事情

経済産業省,アメリカのバード修正条項への対抗措置の継続を発表

JAPAN LAW EXPRESS: 財務省、アメリカのバード修正条項に対する報復関税の継続を決定及びJAPAN LAW EXPRESS: 財務省、バード修正条項への報復関税の継続を決定の関連情報です。

上記従前の記事で取り上げたバード修正条項への対抗措置が継続されることになりました。

米国のバード修正条項に対する対抗措置を延長します(METI/経済産業省)

すっかり恒常化してしまっているので,当然の延長といった感じで繰り返されています。

しかし,今回の延長では,品目と税率が大幅に増加しているので,例年通りの延長というわけではないところもあるようです。

WTOパネル、EUの複合機関税がWTO協定違反との報告書を公表

WTO協定には、パソコン周辺機器は関税をかけないことが定められているのですが、EUはプリンタでよくあるスキャナなどの機能も併せ持つ複合機について、併せ持つ機能に着目してパソコン周辺機器ではなく普通の電化製品のほうに分類して関税をかけています。

これがWTO協定違反であると日本、アメリカ、台湾がパネルに訴えていたのですが、パネルは日本などの主張を認め、EUの措置をWTO協定違反で違法としました。

報告書の全文は以下のリンク先です(英文)。

WTO | 2010 News items – Panel reports issued on information technology dispute

 

EUは上級委員会に上訴する可能性があるので、紛争がこれで終わるかはまだわかりません。

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財務省、バード修正条項への報復関税の継続を決定

JAPAN LAW EXPRESS: 財務省、アメリカのバード修正条項に対する報復関税の継続を決定」の続報です。

アメリカが相変わらず、アンチダンピング税等を、影響を受けていると申し立てた国内事業者に分配することを続けているために、日本の報復措置もまた継続されることが発表されました。

米国バード修正条項に対する報復関税措置の延長を決定しました:財務省

アンチダンピング税とは何かについては、上記の従前の記事をご覧ください。この問題についての総論的な解説があります。

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景気対策のエコカー補助がWTO法違反であるとの見解が出てくる

景気対策で行われているエコカー補助ですが、アメリカから国内メーカーの車を優遇しているとして、WTO法違反であるとする見解が出てきています。通商摩擦になる可能性が出てきたといえます。

日本のエコカー補助「不平等」 米下院議員が声明(日本経済新聞2010年1月8日)

【ワシントン=御調昌邦】米民主党のサットン下院議員(オハイオ州選出)は6日、日本のエコカー補助が米国メーカーなどに対して不平等だとする決議案を下院に提出したと発表した。対日協議を直ちに開始し、世界貿易機関(WTO)ルールに違反している状況を改善するよう米通商代表部(USTR)に求めている。

日本政府は環境基準などに沿って、米国を含む海外メーカーの自動車も公平に扱っているとの立場をとっている。

(略)

客観的な環境基準を設けてそれを満たしているのが日本車が多いのだというのはもっともな理由に見えますが、これは下手をすると内国民待遇に反することになりかねません。

日本車ばかりが該当するように基準を設定してしまえばいいからです。よって本当にWTO法の問題となりパネルや上級委員会で争うなら環境基準に科学的根拠があるのか、恣意ではないのかなどを検討することになるでしょう。

実際には通商紛争の大半は外交的な解決が図られることもあるので、法律的な検討をしても仮定的検討に終わることも十分にありうるところです。

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WTO上級委員会、中国国内での映画等の流通規制をWTO協定違反と判断

JAPAN LAW EXPRESS: 中国、輸入映画などの流通規制がWTOのパネルでWTO法違反とされたことを不服として上級委員会へ上訴」の続報です。

詳しい事実はリンク先の記事をご覧ください。

中国は上級委員会に上訴していましたが、上級委員会はこれに対してアメリカの主張をほぼ全面的に支持する判断を下したことが明らかになりました。

WTO、中国巡る紛争増 映画・音楽で敗訴最終確定(日本経済新聞2009年12月22日)

【ジュネーブ=藤田剛】世界貿易機関(WTO)の上級委員会は21日に発表した報告書で、中国内での映画のDVDや音楽CDへの流通規制がWTO協定に違反するとの判断を下した。米国の訴えをほぼ全面的に認める内容で、中国の敗訴が最終的に確定した。

(略)

中国は特定の国営企業だけにDVDやCDを輸入する権利を与えている。上級委は8月にパネルが出した判断を踏襲し、これらの規制が協定に違反すると認定。

(略)

実際に中国が主張した内容の詳細はわからないのですが、上訴の際の会見では、それぞれの国の事情に応じた措置で許容されるべきだというような主張をしていたのですが、WTOはこういった各国の国情を訴えるような主張は条文上の根拠がない限り認めません。

特に上級委員会はWTO協定の法令解釈をするだけのところですので、なおさら通りにくいことになります。

今回もWTOのそのような性格が反映された結果となった模様です。

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中国、アメリカのセーフガード発動に対抗措置と見られる動き

アメリカが中国製タイヤにセーフガードを発動したことに対して、中国が対抗措置のような行動をとっています。

中国、反ダンピング調査 米国製の一部自動車と鶏肉(日本経済新聞2009年9月14日)

【北京=高橋哲史】中国商務省は13日、米国製の一部輸入自動車と鶏肉製品について、反ダンピング(不当廉売)・反補助金調査の手続きを始めたと発表した。米政府は11日に中国製タイヤに特別セーフガード(緊急輸入制限)を発動すると発表したばかりで、今回の調査開始は米国への対抗措置とみられる。米中間の通商摩擦が激しさを増す可能性が出てきた。

中国商務省の声明によると、今回の調査は国内の自動車や鶏肉業界から寄せられた「(米国企業が)ダンピングや補助金など不公平な貿易方式で中国市場に進出しており、国内産業に打撃を与えている」との申し立てに基づいて始める。商務省は「中国の国内法と世界貿易機関(WTO)の規則に基づいた措置」と強調している。

(略)

直接は関係ない措置であるかのようにしていますが、時期を同じくして逆のことをしようとしているので対抗措置の意図で始めたものなのでしょう。

ちなみにタイヤのセーフガードに対しては正面からWTOに提訴する意向を示唆していました。どちらにせよ、政治的解決がになることも多いのでどうなるかわかりませんが、表面的には米中の通商紛争は先鋭化してきました。

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アメリカ、中国製のタイヤにセーフガードを発動

オバマ大統領がITCの勧告のとおりに中国製のタイヤにセーフガードを活動、関税率の上乗せを発表しました。

中国製タイヤ輸入制限 米、関税を3年間上乗せへ(日本経済新聞2009年9月11日)

(略)

対象となるのは乗用車や軽トラックなどに使う中国製タイヤ。現行の関税率4%に、1年目は35%、2年目は30%、3年目は25%をそれぞれ加える。オバマ政権にとっては初めてのセーフガードであり、月内に発動する見通し。6月末に米国際貿易委員会(ITC)が大統領に勧告した関税率(55~35%)よりは圧縮された。

(略)

WTO体制の下では、安価な輸入品に対してとることのできる措置は限定されており、その一つがセーフガードです。

よってこれはWTO法に則った措置であり、中国側からも同じくWTO法に則った反応が出てくると思われます。

ちなみに日本もセーフガードを発動したことがありますが、これは中国の対抗措置によって結果として損害をこうむる羽目に終わったという経緯があります。

雇用確保の目的にしていると思われる今回の措置ですが、総合的に見てその目的を達成できるかはわからないところです。

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中国、輸入映画などの流通規制がWTOのパネルでWTO法違反とされたことを不服として上級委員会へ上訴

中国は輸入した映画・音楽などの著作物の流通を特定の国有企業にのみ輸入権を与え、流通も規制しています。

これをWTO法違反であるとしてアメリカがWTOのパネルに提訴しましたが、12日、パネルはアメリカの主張をほぼ認めて、中国の措置をWTO法に違反するとしました。一部の規制については協定違反ではないとしています。

WTOのリリース

アメリカは外国企業を差別しているという主張をしていましたので、内国民待遇の論点なのではないかと思いますが、詳しくはパネルの報告書を読んで追記します。

これに対して中国は上級委員会への上訴を表明しました。

ただ、中国商務省の報道官は「各国の歴史文化は異なり、それぞれの管理方式を採用するのが適当だ」と述べているのですが、社会政策上の措置なんだといってもWTOはそのような理由付けを受け付けないので、理由はもっと充実したものにしないといけないでしょう。

日本も以前、皮革製品の件で特有の歴史的経緯から社会政策上必要なのだという主張をしたことがあるのですが、まったく顧みられないで終わりました。

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WTO上級委員会、アメリカのダンピング調査手法でゼロイングをいまだにしていると認定

連日のWTO法関連の話題です。

輸入品にダンピングがあると対抗措置をとって関税をかけることができるのですが、ダンピングがあるという認定をする場合には、価格の比較をします。

輸出国の国内価格と比較したり、他国向け価格と比較をしたりするのですが、単品で診ても仕方がないので集合的に観察します。

この際に、ダンピングがない方向に作用する数値、すなわちマイナスがでてしまった場合にそれはなかったことにして0扱いをすることをゼロイングといいます。

これをするとダンピングと認定しやすくなるわけです。

ゼロイングが適法なのかはWTOで長く争われたテーマですが、違法ということで決着しています。

しかし、争いはいまだに続いているのです。それは遵守審査というのですが、違法とされた措置をやめたかどうかが争いになっているためです。

このたびアメリカのゼロイング廃止の遵守審査で日本の主張を認めてアメリカはいまだにゼロイングをしているという認定がWTO上級委員会によって出されました。

米の反ダンピング関税調査、日本の主張認定 WTO報告書(日本経済新聞2009年8月18日)

世界貿易機関(WTO)は18日、米国による反ダンピング(不当廉売)関税の調査手法について日本の申し立てを全面的に認める報告書を発表した。米国の手法がWTO協定に違反しており、是正勧告も履行していないことが確定した。米国が是正しない場合、日本は関税引き上げによる対抗措置を発動できる。

日本が問題視していたのは、米国がダンピング調査に用いている「ゼロイング」という手法。日本からの高値での輸出を無視し、安値での輸出だけを抽出して計算し、輸出全体をダンピングと認定する。日本から米国に輸出するベアリング(軸受け)で不当な高関税をかけられており、日本は280億円の損害が出ているとみている。

(略)

WTOの紛争処理手続は、パネルが一審であり上訴すると上級委員会というところに行きます。

ゼロイングはパネルでは適法とされてきたのですがそのたびに上級委員会が目的論的解釈をして、ゼロイングは違法だという判断を繰り返してようやく違法と確定したという歴史があります。これらの事情を知っているとまだまだ遵守されていないといういこと自体は憂うべきですが、違法という判断自体は確立しているということには感慨深いものがあります。

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