商事法務事情

三菱商事、相談役、特別顧問制度を実質的に廃止

相談役、顧問などの社長、会長退任後の役職について廃止または見直しの動きが強まっていますが、三菱商事も見直し、実質的には廃止といえる制度変更を行うことが明らかになりました。

社長・会長退任後の相談役・特別顧問制度に関するお知らせ

上記のリリースは現況報告が主たる内容になっていますが、最後に相談役を非常勤かつ無報酬、特別顧問は今後任命しないとされており、制度変更といえる内容が記載されています。

廃止の動きが強まっていますが、JALのようにディスクロージャーをより行いつつ制度は維持する企業、トヨタのように独立役員が評価する仕組みを導入する企業など、変化の方向性は分かれており、当面は様々な動きがみられるものと思われます。

JPホールディングスの筆頭株主の投資会社が、同社の臨時株主総会において議決権行使の参入に不正があったとして損害賠償請求訴訟を提起

保育大手のJPホールディングスでは、経営権をめぐり混乱の様相を呈していますが、その一端である3月23日の臨時株主総会の議決権行使をめぐる同社の扱いに不正があったとして、筆頭株主が損害賠償請求訴訟を提起する事態になったことが明らかになりました。

筆頭株主、JPHDを提訴 「臨時総会の議決権で不正」 :日本経済新聞 2018/4/21

臨時株主総会での議決権行使の算入に不正があり、多額の損害を被ったとして、保育サービス大手、JPホールディングス(HD)の筆頭株主で投資会社のマザーケアジャパン(東京・新宿)が20日、JPHDに約2億6480万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

 訴状によると、今年3月23日のJPHDの臨時株主総会で、マザーケアジャパンの議決権行使の結果を「無効」「賛否不明」などとしたことでJPHDの荻田和宏社長の解任を求める株主提案が否決され、財産権を侵害されたなどとしている。(略)

 

マザーケアジャパン、JPホールディングスの双方のウェブサイトではこの件についてまだ確認できていないのですが、問題とされている議決権の扱いの件は、適時開示において以下のように記載されている点ではないかと思われます。

 

EDINET

(4) 株主総会に出席した株主の議決権の数の一部を加算しなかった理由

本株主総会前日までの事前行使分及び当日出席の一部の株主から議案の賛否に関して確認できたものを合計したことにより否決の要件を満たし、会社法上適法に決議が成立したため、本株主総会に出席した株主のうち、賛否の確認ができていない議決権の数は加算しておりません。

なお、賛成割合については、当日出席株主のうち賛否を確認できなかった株主の議決権の数も分母に加算して計算しています。

 

マザーケアジャパンの主張の当否はともかく、これを争う方法として損害賠償請求訴訟が選択されている点も、興味深いところと見受けられます。株主たちはさらなる臨時株主総会の開催を請求しており、この株主総会の議決を争うこと自体を目的としていないということが表れているのかもしれません。

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トヨタ、退任役員の相談役・顧問への就任について社外取締役が起用を判断する制度を導入

退任した役員が、その後、会社法上の機関ではない名誉的な地位につくことが日本企業では多く見受けられますが、近時、これについて、法令上の責任を負っていないのに経営陣に事実上の影響を与えていることから不当であると厳しい見方が外国の機関投資家を中心になされるようになってきました、

これを受けて、トヨタ自動車は、慣例的に就任するのをやめ、社外取締役が審査を行う制度にしたことが明らかになりました。

役員退任後に相談役・顧問 トヨタ、慣例廃止 社外取締役らが起用審査 :日本経済新聞 2018/1/5付 日本経済新聞 朝刊

トヨタ自動車は相談役と顧問の制度を見直す。これまでは役員が退任した後、慣例で一定期間、相談役や顧問に就いていた。今後は社外取締役らが職務や権限、報酬の必要性などを審査したうえで起用するかどうかを判断する。現在は計約50人が相談役または顧問に就いているが、今年6月に東京証券取引所に提出する報告書から相談役などの情報を記す。

(略)

従来は、副社長以上の退任役員は相談役を4年、専務以下の役員は1年から2年間顧問に就任していたとのことで、これを自動ではなくするとのことです。

起用に説得的な理由がつかない場合には、見送られることになる可能性もあるわけですが、批判の根底にある責任がないのに影響力を行使しうるという点は、起用を決断するような有為な人材ほど、影響力があることになりかねないので、実は答えになるのか微妙である可能性もあるようにも考えられます。

最高裁、株主総会の議案が否決された決議の取消の訴えは不適法と判示

会社の組織に関する訴えは、会社法に特に定めが置かれていますが、この訴訟の中に株主総会決議の取消の訴えがあります。

この決議取消の訴えが、議案を否決する決議についてもできるのかという点が争われて判例が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成28年3月4日判決 平成27(受)1431 株主総会決議取消請求事件

本件は、実のところ、なんとも人を食った話でして、被上告人(会社)の株主である上告人が、被上告人での取締役から解任する議案が否決されたところ、その否決について上告人が取消の訴えを提起したというものです。

まるで自分を解任されなかったのが不当であるかのような話で矛盾挙動のようにも見えますが、別訴で解任の訴えが提起されており、否決の決議が取り消されるとその訴えが不適法になるので、この訴えは適法だと主張してここまで来てしまったものです。

最高裁は、議案を否決した決議の取消の訴えは不適法としました。その理由については以下のように述べています。

会社法は,会社の組織に関する訴えについての諸規定を置き(同法828条以下),瑕疵のある株主総会等の決議についても,その決議の日から3箇月以内に限って訴えをもって取消しを請求できる旨規定して法律関係の早期安定を図り(同法831条),併せて,当該訴えにおける被告,認容判決の効力が及ぶ者の範囲,判決の効力等も規定している(同法834条から839条まで)。このような規定は,株主総会等の決議によって,新たな法律関係が生ずることを前提とするものである。

要するに、新しい法律関係を生んでしまうので、早期確定の観点から対世効のある組織法上の訴えを限定しているのであって、否決されただけだと何も生じていないので早期に確定させないといけない理由はないということです。

要するにもう一度、議案を出せばいいではないかということになります。

もっとも、再提案制限にかかることがあるので、やはり瑕疵があるなら訴えの利益があるのではないかということもいえないではないですが、補足意見で、重大な瑕疵があるなら再提案できると解するべきであり、その当否で争えばよく、否決された決議を取り消すまではないという趣旨が言及されています。

これは、条文上、まさに書いてあるわけではないのですが、判旨の通りと思われます。

そもそもなんとも人を食ったような話で問題となった事案であることから言っても、そもそも問題となること自体が妙なことであったといえるのかもしれません。

シャープ、鴻海が買取る予定としていた銀行系ファンドが保有する種類株式をプレミアムの負担軽減のためとして取得することを発表 人材の確保のため株式を活用した報酬制度を検討することをも発表

シャープが銀行系ファンドが保有している種類株式を当初の予定から変更して自ら取得することを発表しました。

また、同時に株式を利用したインセンティブ制度を検討することも同時に発表しました。

 

シャープ、株式活用し新報酬制度 人材流出防ぐ  :日本経済新聞 2016/4/29 20:25

経営再建中のシャープは29日、優秀な人材の流出を防ぐため、株式を活用した報酬制度を導入すると発表した。同社は1000人規模を削減する検討に入ったが、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下入りや足元の業績悪化に伴い、幹部を含む人材の流出が進んでいる。新制度で再生に向けた人材を確保する。

 詳細は今後詰める。5月12日の取締役会に付議する方針だ。シャープにストックオプション(株式購入権)など、株式を使ったインセンティブプログラムはこれまでなかった。

(略)

 29日、銀行系ファンドのジャパン・インダストリアル・ソリューションズ(JIS)が保有するシャープの250億円分の優先株を全て買い取ることも発表した。取得額には優先配当金や償還時のプレミアム分が上乗せされる見込み。時期は未定だが、財務負担を抑えるため早期の買い取りを目指す。

 シャープはJISの持つ優先株については、鴻海が買い取る予定だと2月末に発表していた。

 

上記についてのシャープのプレスリリースは以下の通りです。

B種種類株式の取得及び役職員向けインセンティブプログラムの導入方針に関するお知らせ

日経の報道とプレスリリースでのいい方が異なっているところが興味深いですが、プレスリリースによっても、買取る株式をインセンティブに使用するのかどうかというつながりについて明言しておらず、そもそも銀行系ファンドに割り当てた種類株式をインセンティブに使用するのかということの当否もありますので、別目的の事項をまとめて発表したのではないかと感じられるところです。

シャープと鴻海の関係は、二転三転することが目につきますが、これもその一部のように見えないでもありません。

最高裁、漁業協同組合の理事会の議決が特別利害関係を有する理事が加わったものであっても、当該理事を除外しても議決に必要な多数が存するときは、その効力は否定されないと判示

特別利害関係取締役の議決権は行使できないとされていますが、行使してしまった場合に取締役会の議決が無効になるのかについては規定を欠いており、一般原則から考察することになるものと思われます。

しかし、会社以外の各種法人の立法では、役員の意思決定機関である理事会について、会社法と同じく特別利害関係理事の議決権を排除する規定を有するものの、個別事例においてはその特別利害関係理事を除いても理事会の議決が成立する多数が占められていた場合には、決議を有効とする判例があります。

中小企業等協同組合法についてこのことを判示したのが以下になります。

最判昭和54年2月23日民集第33巻1号125頁

このたび、上記昭和54年判決を引用して、漁業組合の理事会の議決について同旨を判示した判例が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成28年1月22日判決 平成27(行ヒ)156 損害賠償請求事件

この事案は、端的には理事8人のうち6人が出席した理事会で全会一致で出席理事のうちの一人が代表を務める組合に利益になる議決がされ、理事にはその組合の代表の息子も含まれていたということで、いわば特別利害関係理事が2名いたというようなケースでした。

しかし、この二名を除外しても議決は有効に成立するとして効力を否定されないとしたものです。

特別利害関係人の議決権の除外は、各種法人の立法に共通ですが、議決権が行使されてしまった場合の議決の効果についても同じ理解になるでしょうか。

この判例では以下のように一般論を判示しています。

水産業協同組合法37条2項が,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事が議決に加わることはできない旨を定めているのは,理事会の議決の公正を図り,漁業協同組合の利益を保護するためであると解されるから,漁業協同組合の理事会において,議決について特別の利害関係を有する理事が議決権を行使した場合であっても,その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは,そのことをもって,議決の効力が失われるものではないというべきである。

会社法では、東京高判平成8年2月8日などを見る限り、特別利害関係人の議決権行使の事実のほかに、議長も務めてしまうなどその他の事情も含めて総合考慮するのだろうと思われます。

このような判断は各種法人の場合にも妥当させた方がよいと思われるのですが、上記のように本件も含めて各種法人の場合の判示の仕方が数にしか言及していないため、議決権の数以外の事情も検討に入れるような判断の余地がなさそうに思われます。

会社、その他の各種法人の意思決定の問題は結構発生していることから、判例の蓄積から理事会運営のガバナンスにどのようにフィードバックしていくべきかは気になるところといえましょう。

黒田電気、株主総会当時に公表された従業員組織による声明は、従業員組織によるものではなく、執行役、課長などの会社関係者による作成であったとする社外調査委員会の報告書を公表

下記、tweetの続報です。

 

外部有識者による報告書が、黒田電気から公表されました。

内容としては、C&Iホールディングスの指摘の通り、従業員組織による作成ではなかったことが判明したとするものとなっています。

社外調査委員会の調査報告書について | ニュース | 黒田電気株式会社

調査報告書

端的には、執行役からの指示に基づき、法務知財課長が作成したということとされています。

このことは、私文書偽造罪、虚偽記載のある参考書類等の利用禁止違反(金融商品取引法)、東証の上場規程の趣旨に悖る行為(東証からの照会に虚偽を回答していること)、会社法の善管注意義務違反(執行役について)などを構成するとされています。

このほか、経営責任、道義上の責任も肯定されるところであり、大変な問題行為をしていたことが指摘されています。

村上氏自体は、目下、別の問題の渦中にあるわけでそのタイミングでこのような事実は明るみに出ても反応の仕方が難しい可能性がありますが、ことは東証などにも影響していることから、ドタバタしている状況の中で有耶無耶ということは難しいものと思われます。

東芝、提訴請求を受けた28人の現旧役員のうち5人に責任追及の訴えを提起 株主は残りの役員について株主代表訴訟提起の構え

東芝は、不適切会計の問題で株主から関与したとされる役員に対する提訴請求を受けていましたが、これに対して一部について責任追及の訴えを提起しました。

東芝のプレスリリース

提訴請求では、現役および元役員合計28人に対して、総額10億円の損害賠償請求をするようにと提訴請求を受けていましたが、これに対して、東芝はそのうちの5名に対して3億円の責任追及の訴えを提起したということになります。

提訴請求のやり方は以下の通りに定められています。

会社法施行規則

(株主による責任追及等の訴えの提起の請求方法)

第二百十七条 法第八百四十七条第一項 の法務省令で定める方法は、次に掲げる事項を記載した書面の提出又は当該事項の電磁的方法による提供とする。

 被告となるべき者

 請求の趣旨及び請求を特定するのに必要な事実

この定め方は、実体法上の権利を反映しているわけですが、その帰結として、提訴請求をしながら会社が提訴しなかった分については、株主代表訴訟を提起できるということになります。

このため、提訴請求をした株主の代理人からは、株主代表訴訟の意向が示されています。

個人株主代理人「他の東芝役員にも訴訟検討」  :日本経済新聞 2015/11/7 23:44 日本経済新聞 電子版

東芝に現旧役員への訴訟を起こすように求めていた奈良県在住の個人株主の代理人である金啓彦弁護士は7日、東芝が旧役員5人に損害賠償を求めて提訴したことを受け「被告とならなかった役員については別途、株主代表訴訟を提起することも検討する」とのコメントを発表した。

(略)

役員の責任はそれぞれ個人ごとに権利としては別物になりますので訴訟物も別ということになりますが、弁論の併合はありうると考えられています。すると、馴れ合いが懸念される会社による追行と株主による追行が同時に行われることになり、大変混乱した訴訟になることが懸念されます。

 

 

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東芝、「不適切会計」の問題で、外部調査委員会の報告を待って旧経営陣提訴へ

東芝はいわゆる「不適切会計」の問題で、株主から当該不適切な会計をしていた期間の経営陣に対する提訴請求を受けていますが、会社としての対応を決めるため外部調査委員会として弁護士3人からなる「役員責任調査委員会」を設け検討をしています。

この委員会の報告の方向性が、旧経営陣に問題があったとする内容になる模様で、東芝は報告を待って、旧経営陣を提訴する方向であることが報道されました。

東芝、旧経営陣提訴へ 会計不祥事 西田・佐々木氏らに賠償請求 :日本経済新聞 2015/10/25

東芝の会計不祥事を巡る経営責任を調べている外部委員会は、旧経営陣に問題があったとする報告書を近くまとめる。これを受け、東芝は西田厚聡氏ら歴代3社長を含む旧経営陣を相手取り、損害賠償請求訴訟を起こす見通しだ。不適切会計を認識しながら是正を指示せず、会社の信用を失墜させたとして一部の株主から経営陣を提訴するよう求められていた。

(略)

提訴期限が11月初旬になるため、会社としての対応を決する必要があるわけですが、株主からの提訴請求では28人の現と元役員が対象であるのに対して、会社の現時点での方針としては被告は10人以下となる模様で、株主の請求内容との齟齬がこの時点ですでにでています。

このまま進むと請求金額についても齟齬が出る可能性があり、外部調査委員会の結論に基づいて会社の提訴内容を決したということにはなるのでしょうが、齟齬があまりに大きいと色々と難しい問題を生じさせるように思われます。

日経225構成企業で6月総会を終えた197社において、社外取締役が総会前比で18%増加したことが判明

8月10日付の日経新聞に載った三菱UFJ信託銀行がまとめたところによると、日経225を構成する企業で6月総会を終えた197社において、総会後に社外取締役が人数にして85人、比率にして18%の増加となっていることが明らかになりました。

複数の社外取締役を選任した企業も179社であり、社外取締役の複数の選任を求めているコーポレートガバナンスコードへの対応も行われていることが伺われます。

むしろ総会を迎えて、あえて複数選任をしないで終えた企業が、コーポレートガバナンスコードで求められることになる理由の説明についてどのような内容を説明するのかが注目されることになりそうです。