Author: Arakawa

両備バス労働組合、新規バス路線の参入をめぐり中国運輸局の認可は違法と主張してストライキを実施

岡山市内のバスの新規参入をめぐって両備ホールディングスが問題提起していましたが、労働組合も雇用が脅かされるとしてストライキを行って、当局の認可に対して抗議をする事態になっています。

両備バス労組が時限スト 八晃の新路線参入巡り抗議  :日本経済新聞 2018/4/23 19:59

両備ホールディングス(HD)のバス事業の労働組合、両備バス労働組合(岡山市)は23日、岡山市の中心部と東部を結ぶ主力路線を対象に、午後1時から1時間のストライキを行った。同路線への八晃運輸(同)の「めぐりん」の参入を巡り、岡山市の道路占用許可に不備があり、「中国運輸局の認可は違法」と主張。参入で黒字が圧迫され、路線網や賃金、雇用を守れなくなるとしている。

 両備HDによると、ストで上下計16本が運休し約200人に影響が出たという。同社の主力である西大寺線には、八晃運輸が低運賃循環バス「めぐりん」の新路線の参入を申請。中国運輸局が2月に認可し、八晃は今月27日の運行開始を予定している。

 岡山市で開いた決起集会には、組合員ら約200人が参加。高木秀治執行委員長は「地域の方には迷惑をかけるが、今回の参入はどう考えてもおかしい」と訴えた。同労組は26日に西大寺線で時限スト、27日は全路線で終日ストを予定。同じ両備グループの岡山電気軌道労組でも、27日にバスと路面電車の全路線で終日ストを計画している。

 

両備ホールディングスのウェブサイトでは、ストライキの趣旨を組合は以下のように主張している模様です。

ストライキ通告書について | 両備グループ ポータルサイト – Ryobi Group -

1.趣旨

①現在両備バスが運行している西大寺線に対して、競合他社であるH社が新規参入してきたが、同社の参入は不当に低廉な運賃での参入であり、これにより両備バスは著しい業績悪化(年間約1億6000万円の減収)が見込まれる。

②上記の業績悪化により、両備バス労働組合員の大幅な減収が見込まれるほか、事業存続の為、複数の赤字路線が廃止されるおそれもあり、最悪の場合両備バス労働組合員の雇用が危ぶまれる。

③かかる事態を回避し、組合員の雇用と生活を維持するために、争議行為を行うとともに、上記の不当な認可を行った行政に対しても抗議をしていく。

 

雇用が脅かされるとはしているものの、今回の事態は会社が招いたわけではなく、行政への抗議ともされています。

すると、使用者に処分することのできない問題に対してストライキをしていることになりかねず、いわゆる政治ストにすぎない可能性があります。

このような態様のストライキに正当性があるかについては、議論のあるところです。

政治ストに理解を示す学説だと、労働法制に関する主張のストライキは許されるのではないかとしているくらいですので、今回のも正当性があるとするのかもしれませんが、菅野説では、使用者に処分できない、団交で解決できる問題でないならば正当性がないのではないかとされているので、この立場では正当性がないことになりそうです。

上記ウェブサイトでは会社は特に見解を示していませんが、私見では法的には微妙なストライキなのではないかと感じるところです。

最高裁、ハマキョウレックス事件で弁論を開く 判決は長澤運輸事件と同じく6月1日

正規従業員と非正規従業員の基本給や手当の違いが労働契約法20条の問題となっている事件の先行事例にあたるハマキョウレックス事件の最高裁での弁論が開かれました。判決は6月1日に指定され、長澤運輸事件と同日になることが決まりました。

正社員と契約社員の待遇差 最高裁で弁論  :日本経済新聞 2018/4/23 17:45

業務内容が同じなのに、正社員と契約社員で賃金や手当に差をつけることの是非が争われた訴訟の上告審で、最高裁第2小法廷(山本庸幸裁判長)は23日、当事者の主張を聞く弁論を開いた。判決は6月1日。正社員と非正社員の待遇に不合理な差をつけることを禁じた労働契約法20条の解釈を巡り、最高裁は初の判断を示すとみられる。

 原告は、物流大手「ハマキョウレックス」(浜松市)の契約社員の男性運転手。2016年7月の二審・大阪高裁判決は、「通勤手当」や「無事故手当」など4種類の手当について、正社員との格差を不合理と指摘。同社に差額分計77万円の支払いを命じた。

 原告側はこの日の弁論で、同法20条の適用について「職務内容という客観的な要素を最も重視すべきで、合理的に説明できない格差は原則無効と解釈すべきだ」と主張。「正規労働者と非正規労働者の不合理な格差は、放置できない状況になっている」と訴えた。

 一方、会社側は「人手不足が深刻ないま、人材獲得のため正社員に手当を支給したり福利厚生を充実させたりすることは、会社の合理的な裁量の範囲内にある」と主張。各種手当の差は不合理ではないと述べた。

(略)

 

労働契約法20条をめぐる訴訟は、実際のところ、職務内容や人事の範囲を検討した結果、完全に同じということはそうはないことと、その違いを基本給の金額に換算していくらということを説得的に言いにくいということもあり、結果、たどり着いたのが手当であり、手当の趣旨が妥当するかが主戦場になってしまうという状況を生んでいます。現在用意されている立法でも、この判断枠組みを一般化する方向であるので、最高裁の判断もこの中において、統一的な判断基準を示すのではないかと私見では予想しています。

ちなみに手当が主戦場になってしまうというのは、比較法的には結構、珍しい事態であるほか、そもそも近時、成果主義的な賃金制度が徐々に浸透してきており、手当を整理する方向が出てきているため、そもそも論的に限界のある話なのではないかという印象があります。

JPホールディングスの筆頭株主の投資会社が、同社の臨時株主総会において議決権行使の参入に不正があったとして損害賠償請求訴訟を提起

保育大手のJPホールディングスでは、経営権をめぐり混乱の様相を呈していますが、その一端である3月23日の臨時株主総会の議決権行使をめぐる同社の扱いに不正があったとして、筆頭株主が損害賠償請求訴訟を提起する事態になったことが明らかになりました。

筆頭株主、JPHDを提訴 「臨時総会の議決権で不正」 :日本経済新聞 2018/4/21

臨時株主総会での議決権行使の算入に不正があり、多額の損害を被ったとして、保育サービス大手、JPホールディングス(HD)の筆頭株主で投資会社のマザーケアジャパン(東京・新宿)が20日、JPHDに約2億6480万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。

 訴状によると、今年3月23日のJPHDの臨時株主総会で、マザーケアジャパンの議決権行使の結果を「無効」「賛否不明」などとしたことでJPHDの荻田和宏社長の解任を求める株主提案が否決され、財産権を侵害されたなどとしている。(略)

 

マザーケアジャパン、JPホールディングスの双方のウェブサイトではこの件についてまだ確認できていないのですが、問題とされている議決権の扱いの件は、適時開示において以下のように記載されている点ではないかと思われます。

 

EDINET

(4) 株主総会に出席した株主の議決権の数の一部を加算しなかった理由

本株主総会前日までの事前行使分及び当日出席の一部の株主から議案の賛否に関して確認できたものを合計したことにより否決の要件を満たし、会社法上適法に決議が成立したため、本株主総会に出席した株主のうち、賛否の確認ができていない議決権の数は加算しておりません。

なお、賛成割合については、当日出席株主のうち賛否を確認できなかった株主の議決権の数も分母に加算して計算しています。

 

マザーケアジャパンの主張の当否はともかく、これを争う方法として損害賠償請求訴訟が選択されている点も、興味深いところと見受けられます。株主たちはさらなる臨時株主総会の開催を請求しており、この株主総会の議決を争うこと自体を目的としていないということが表れているのかもしれません。

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最高裁、長澤運輸事件で弁論を開く。判決は6月1日

定年再雇用で仕事が変わらず賃金が下がったのを、労働契約法20条違反と主張したいわゆる長澤運輸事件の上告審で、20日、弁論が開かれ、判決は6月1日と指定されました。

最高裁:再雇用賃下げ、初判断へ 原告「正社員と同じ仕事」 – 毎日新聞 2018年4月21日

仕事内容は同じなのに定年後の再雇用で賃金を減らされたのは違法だとして、横浜市の運送会社「長沢運輸」で働く契約社員の運転手3人が正社員との賃金差額を支払うよう同社に求めた訴訟の上告審弁論が20日、最高裁第2小法廷(山本庸幸(つねゆき)裁判長)であった。運転手側は逆転敗訴した2審判決の破棄を求め、会社側は維持を求めて結審した。判決は6月1日に言い渡される。

(略)

労働契約法20条にある有期雇用の不合理な労働条件の禁止に条文に関する事件なのですが、いわゆる正規と非正規の違いではなく、定年再雇用の労働条件の問題であるところが、特徴的な事件となっています。正規と非正規の違いのケースであるハマキョウレックス事件もこれに続いて最高裁で弁論が開かれることから、近い論点の事件について統一的に判断をするものと思われます。

 

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東京地裁、多摩テックの跡地開発をめぐって三菱商事が明治大学を提訴した損害賠償請求訴訟で、明治大学に約8億3900万円の支払を命じる一部認容の判決

三菱商事、多摩テックの跡地開発をめぐって明治大学を提訴 | Japan Law Expressの続報です。

東京地裁で判決が出まして、明治大学に約9億3900万円の支払を命じる一部認容となりました。

明大に8億円支払い命令…多摩テック跡地訴訟 : 社会 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE) 2018年04月21日 16時53分

自動車遊園地「多摩テック」(東京都日野市)の跡地にスポーツ施設を建てる明治大の計画が頓挫して損害を被ったとして、三菱商事が明大に約62億5000万円の支払いを求めた訴訟の判決が20日、東京地裁であった。

 田中秀幸裁判長は請求の一部を認め、約8億3900万円を支払うよう明大に命じた。

 判決によると、同社は明大に売却する前提で2013年4月までに跡地を購入したが、同年10月に計画は頓挫。同社側は訴訟で、跡地の購入価格の1・4倍で明大が買い取る契約だったと主張した。判決は契約の成立を認めなかったが、「明大は事後処理として跡地を買い取る可能性を誠実に協議する義務を怠った」などとして同社の損害を認定した。

 

判決全文は確認できていないのですが上記報道から行きますと、三菱商事が開発後に明治大学が買い取るとされたスキームについて、契約として成立していないと判断した模様です。

請求額に対して認容額が非常に低いことから行っても、履行利益賠償ではないを考えられ、実質的には明治大学の主張が認められた判決と言えると思われます。

 

裁判例情報

東京地裁平成30年4月20日判決

被保佐人となったことで警備員の失職を余儀なくされたとして、元警備員の男性が警備業法所定の警備員の制限を違憲として国家賠償請求訴訟と会社に対して地位確認の訴えを提起

憲法訴訟と労働訴訟を共同訴訟にした訴訟が提起された模様でして、特徴的なので取り上げます。

成年後見利用で失職は違憲、岐阜の警備員男性が提訴  :日本経済新聞 2018/1/10 11:39 (2018/1/10 13:43更新)

成年後見制度利用者の就業を認めない警備業法の規定は、職業選択の自由を保障した憲法に違反するなどとして、勤務先の警備会社を退職せざるを得なくなった岐阜県の30代男性が10日、国に100万円の損害賠償と、会社に社員としての地位確認を求める訴訟を岐阜地裁に起こした。

 男性の代理人弁護士によると、男性は軽度の知的障害がある。2014年4月から県内の警備会社で警備員として勤務していたが、家族間のトラブルに悩んでいたことから、17年2月に成年後見制度を利用し、障害者支援団体を「保佐人」として自身の財産管理を任せるようになった。

 その後、会社から、警備業法の規定で制度の利用者は勤務を続けられないとの指摘を受け、同3月に退職を余儀なくされたという。

(略)

問題とされているのは、以下の規定です。

警備業法

(警備業の要件)

第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、警備業を営んではならない。

一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの

二 禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなつた日から起算して五年を経過しない者

三 最近五年間に、この法律の規定、この法律に基づく命令の規定若しくは処分に違反し、又は警備業務に関し他の法令の規定に違反する重大な不正行為で国家公安委員会規則で定めるものをした者

四 集団的に、又は常習的に暴力的不法行為その他の罪に当たる違法な行為で国家公安委員会規則で定めるものを行うおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者

五 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)第十二条若しくは第十二条の六の規定による命令又は同法第十二条の四第二項の規定による指示を受けた者であつて、当該命令又は指示を受けた日から起算して三年を経過しないもの

六 アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚醒剤の中毒者

七 心身の障害により警備業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの

八 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者。ただし、その者が警備業者の相続人であつて、その法定代理人が前各号及び第十号のいずれにも該当しない場合を除くものとする。

九 営業所ごと及び当該営業所において取り扱う警備業務の区分(前条第一項各号の警備業務の区分をいう。以下同じ。)ごとに第二十二条第一項の警備員指導教育責任者を選任すると認められないことについて相当な理由がある者

十 法人でその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)のうちに第一号から第七号までのいずれかに該当する者があるもの

十一 第四号に該当する者が出資、融資、取引その他の関係を通じてその事業活動に支配的な影響力を有する者

 

(警備員の制限)

第十四条 十八歳未満の者又は第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない。

2 警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。

 

警備業法14条1項で端的に成年被後見人、被保佐人は、警備業を営めない欠格事由の一部を準用するかたちで警備員になれないとされており、これを職業選択の自由に反して憲法違反としているものです。

憲法訴訟としての争い方なども興味深いところですが、仮に違憲だったとしても、この方は解雇されたのか、やむを得ず自主的に退職したのかによっても、結論に影響が出てきそうに感じられます。

いずれにせよ非常に珍しい種類の問題であるといえましょう。

京都地裁、後見開始の審判をした家庭裁判所が成年後見人の事務の遂行状況を確認しなかったため、成年後見人が被後見人の預金払戻しを繰り返し多額の使途不明金を発生させたとして提起した国家賠償請求訴訟で、一部認容をして1300万円の支払を命じる

成年後見人による被後見人の財産の使い込みが問題視されるようになって久しいですが、使い込みについて、国の責任を肯定した裁判例が出ましたので取り上げます。

成年後見人の財産管理で使途不明金「家事審判官の監督責任」認定…国に1300万円賠償命令 京都地裁 – 産経WEST 2018.1.10 19:10

 成年後見人の財産管理で多額の使途不明金が生じたのは、京都家裁の家事審判官(裁判官)や調査官が監督を怠ったからだとして、京都府に住む被後見人の女性の兄が国に4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁(久保田浩史裁判長)は10日、家事審判官の責任を認め、国に約1300万円の支払いを命じた。

 判決によると、女性の後見人は継母で、平成元年から女性が亡くなるまで約20年間、財産を管理。兄は女性の遺産相続人だった。継母は女性の預金口座から払い戻しを繰り返し、19年(2007年)3月以降で1900万円余りの使途不明金があったが、家事審判官は「後見事務の遂行状況は良好」などとして事態を把握せず、確認をしなかった。継母は2012年に死亡した。

 久保田裁判長は、家事審判官が19年(2007年)以降、継母の事務が適切に行われているか確認しなかったことを「成年後見人の監督の目的、範囲を著しく逸脱した」と指摘。継母はそれ以前にも使途不明金や不適切な支出が指摘されていたことを踏まえ、「確認の手続きを取っていれば、不適切な支出を防止できた」とした。

(略)

成年後見人の監督義務怠る 国に賠償命令 | NHKニュース 1月11日 0時53分

8年前に亡くなった女性の遺族が生前、成年後見人だった義理の母親に預金を繰り返し引き出されて使途不明となったのは、家庭裁判所の家事審判官などが後見人の監督義務を怠ったからだと訴えていた裁判で、京都地方裁判所は家事審判官の責任を認めて国におよそ1300万円の賠償を命じました。

8年前の平成22年(2010年)に70代で亡くなった女性は生前、成年後見人だった義理の母親に預金を繰り返し引き出されて使途不明となりました。
これについて、相続人である京都府に住む女性の兄が、家庭裁判所の家事審判官だった裁判官などが後見人を監督する義務を怠ったからだとして、国に対し4400万円の賠償を求める裁判を起こしていました。

 

成年被後見人がなくなり、その後、後見人もなくなったのですが、被後見人の相続人が後見人による使い込みと思われる事態を受けて、すでに後見人がなくなっていることから、国を監督義務違反を主張して訴えたという事案のようです。

現時点で判決全文が公開されていませんので詳細が不明なのですが、後見監督人の選任されていない事例である模様です。

後見人による使い込みについて国の監督責任を認めるということになりますと、大変大きな意味がありそうな事案ですが、本件では、かねてより使途不明金や不適正な支出や指摘されていた模様で、その情報に接しながら何もしなかったのは、不作為の違法があるという判断だと思われます。

従いまして、失われた被後見人の財産の回復に国の責任追及をすればよいという簡単な話にはならないと思われます。

裁判例情報

京都地裁平成30年1月10日判決

日本相撲協会、セクハラをしたとされる式守伊之助を三場所出場停止の懲戒処分

大相撲の立行司・式守伊之助のセクハラ騒動ですが、日本相撲協会からの処分が決定されまして、労働法的観点からコメントをしようと思います。

式守伊之助、夏場所後辞職へ…無報酬で自宅謹慎 : スポーツ : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)2018年01月13日 19時16分

 日本相撲協会は13日、両国国技館で臨時理事会を開き、泥酔して若手行司へセクハラ行為を働いた立行司の第40代・式守伊之助(58)(宮城野部屋)を、3場所出場停止の懲戒処分とするとともに、前日提出された辞職願を処分が明ける5月の夏場所後に受理することを決めた。

 この間、無報酬で自宅謹慎を命じ、土俵外での業務も行えない。伊之助は今後、土俵には上がらず協会を去る。

 発表によると、伊之助は沖縄県宜野湾市で冬巡業が開催された昨年12月16日夜、泥酔し、10代の若手行司に複数回キスをするなどの不適切な行為を行った。若手行司に被害届を出す考えはなく、今後も行司を務める意向だという。

(略)

 

1 同性間におけるセクハラ

まず、セクハラの概念についてですが、近時、均等法から委任を受けて定められている「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」が改定され同性に対する行為もセクハラとして、明記されました。

今回、後輩の行司に対する性的な行為であることから男性同士ということになりますが、これはまさにセクハラに当たるものであるということを改めて確認させてくれる事案となっているわけです。

2 出場停止処分後の退職の扱いについて

懲戒処分は当該労働者が在職中しか行うことができません。今回、辞職願という合意退職の形をとっていたため、日本相撲協会が受理するまでは退職が有効にならないため、処分を先にしてから退職とすることが可能になったわけです。逆に言うと、辞職願ではなく辞職届であった場合には、2週間経過後に一方提起に辞めることができてしまいますので、出場停止処分は一部期間については空振りということになってしまうということもありえたわけでした。今回は最後についても協会と調整の上で行っていると思われますのでそのような事態は生じようもなかったわけですが、教科書的な理屈だけでいくと、そのような場面であったわけです。

退職しかねないような重大な不祥事の場合、処分と退職のどちらが早いかのようなことは往々にして起きてくるところですので、今回のような机上の検討ばかりではないのが実態でもあります。

藤田保健衛生大学病院、36協定を締結せず、オンコール対応の医師に時間外労働をさせていたとして、名古屋東労働基準監督署から是正勧告を受ける

医師の長時間労働も問題になってきていますが、医師のオンコール対応について、36協定を締結せずに行っていたとして労働基準法違反で是正勧告がされた事例が出たことが明らかになりました。

協定結ばず医師に時間外労働 藤田保健衛生大病院に是正勧告  :日本経済新聞 2017/12/26 23:15 日本経済新聞 電子版

藤田保健衛生大病院(愛知県豊明市)が時間外労働に関する労使協定(三六協定)を医師と結ばないまま緊急呼び出しをしていたなどとして、名古屋東労働基準監督署から是正勧告を受けていたことが26日、同病院などへの取材で分かった。呼び出し時間に応じた割増賃金も支払っていなかった。勧告は11月22日付。

(略)

オンコール態勢で対応した医師は時間外労働になるわけですが、36協定の締結がされていなかったということと報道されています。

病院のような大きな組織で36協定を締結していないとなると大変な事態のように感じますが、他の報道も含めて判断すると、36協定自体は締結されているものの、その対象に医師が入っていなかった模様です。

36協定は事業場単位で締結しないといけませんが、協定届の様式で時間外労働をさせる具体的事由を記載しないといけないため、ここから部署ごとに人数を列挙して記載をしないといけないなっています。想像するに本件では、医師の部門が協定から落ちていたものと思われます。

従って、携帯電話などを渡して呼び出しがあったら駆けつけることにするいわゆるオンコールについて、労働基準監督署が労働時間性を認めたとかそういう論点ではないと想像されます。

最高裁、親権者である父が、監護権を有しない母のもとで養育されている子について、親権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として仮処分申立てした事案で、母による監護が相当ではないことの疎明がない場合においては、当該申立ては権利濫用と判示

いわゆる子の引渡しの紛争類型には、大別して二種類の裁判手続きが可能とされています。

一つ目は家事事件手続法所定の子の監護に関する処分に関する審判手続きですが、この他にも、法律上明文の規定はないのですが、親権に基づく妨害排除としての子の引渡し請求ができるとされており、判例にもできることを前提として判示をしたものがあります。

このたび、家事事件手続法の手続きをとらずに、親権に基づく妨害排除請求権を被保全権利として仮処分命令の申立てをして、子の引渡しを求めた事案で判例が出ましたので取り上げます。

最高裁判所第三小法廷平成29年12月5日決定 平成29(許)17  子の引渡し仮処分命令申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

原決定は、このような争い方について、家事事件手続法の手続保障の趣旨を没却するという点を考慮して、不適法として却下したのですが、最高裁は、手続自体は可能としつつも、権利濫用として、原決定を結論において是認しました。

離婚した父母のうち子の親権者と定められた一方は,民事訴訟の手続により,法律上監護権を有しない他方に対して親権に基づく妨害排除請求として子の引渡しを求めることができると解される(最高裁昭和32年(オ)第1166号同35年3月15日第三小法廷判決・民集14巻3号430頁,最高裁昭和45年(オ)第134号同年5月22日第二小法廷判決・判例時報599号29頁)。

もっとも,親権を行う者は子の利益のために子の監護を行う権利を有する(民法820条)から,子の利益を害する親権の行使は,権利の濫用として許されない。本件においては,長男が7歳であり,母は,抗告人と別居してから4年以上,単独で長男の監護に当たってきたものであって,母による上記監護が長男の利益の観点から相当なものではないことの疎明はない。そして,母は,抗告人を相手方として長男の親権者の変更を求める調停を申し立てているのであって,長男において,仮に抗告人に対し引き渡された後,その親権者を母に変更されて,母に対し引き渡されることになれば,短期間で養育環境を変えられ,その利益を著しく害されることになりかねない。他方,抗告人は,母を相手方とし,子の監護に関する処分として長男の引渡しを求める申立てをすることができるものと解され,上記申立てに係る手続においては,子の福祉に対する配慮が図られているところ(家事事件手続法65条等),抗告人が,子の監護に関する処分としてではなく,親権に基づく妨害排除請求として長男の引渡しを求める合理的な理由を有することはうかがわれない。

 

権利濫用という一般条項になるのはかなり刺激的ではありますが、家事事件手続法の制定によって法理上できなくなったと解することまでは難しいと思われますので、条文に書いていないとしても、親権に基づく妨害排除請求のルートも認めざるを得ないと思われます。そこで、極めて補充的にしか認められない趣旨を述べて、家事事件手続法の手続がある以上、監護が相当でないなどあえてそちらをとらないといけない理由がない限りは、手段の選択を許すわけではないという結論になったものと言えましょう。