東京地裁、特許侵害で「一太郎」の製造・販売禁止の判決


日本語ワープロソフトの老舗・ジャストシステムが代表作「一太郎」「花子」のヘルプモードの特許をめぐり、松下電器産業に訴えられていた裁判の判決が1日、東京地裁であり、松下側の訴えを認め特許侵害を認定、当該ソフトの製造・販売禁止、在庫の廃棄が命じられました。記事はこちら。判決全文はこちら

仮執行宣言は「相当でないから」としてついていないので、いきなり店頭から「一太郎」がなくなることはありませんが、衝撃の大きな判決であることは間違いないでしょう。
さすが高部裁判官です。

特許侵害で訴えられた場合、反訴すると同時に、特許無効の審判を起こして当該特許をつぶすようにするのが定石なのですが、審判の有無は不明で、訴訟の判決だけ出てしまったようです。

判決中で松下の特許に関する進歩性の判断等もしていますが、この辺は技術の専門家である特許庁との役割のすみわけの点から問題となっていた点です。
この点については、公知技術の抗弁はなしうるというので実務上は定着しているので、その通りになっています。
ただ、これでは進歩性があるという結論にしているのでこれでいいのですが、無効と裁判所が判断できるかは依然として問題で、この先の訴訟にはこの点の理論的問題が内在します。

日経は社説で、「一太郎」にヘルプモードが搭載されたときには、まだ特許になっていなかったことをあげて、ジャストシステムの肩を持つようなことを言っていますが、出願時がいつかが大事なので、制度上は仕方がないというのが実態です。

ただ松下は1989年出願で1998年に特許登録、一方で「一太郎」に搭載されたのが1996年なので、松下は出願だけして、類似の技術が登場してくるのを待って審査請求をした可能性もあります。
特許の審査は2年くらいが普通なので、いくらプログラム特許といっても9年はかからないでしょう。

出願だけしておくというのは、特許になると登録料がかかってしまうため、ひとまず先に発明したんだということだけを確定させておくためによくする方法なので、別にどうということではありませんが、公示がないので若干ひどいといえばひどい面もあります。
そのため仮に上記のような経過なのなら日経社説の言うことにも一理あります。

有名なソフトの事件だけに非常に社会的な注目が集まっていますが、背景には特許法の抱えるちょっとした問題を考えることができる事件ですね。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。

2 thoughts on “東京地裁、特許侵害で「一太郎」の製造・販売禁止の判決

  1. こんにちは。「私の言語」と申します。かなり興味ある記事です。お願いがあります。この記事を下のブログにトラックバックしていただけないでしょうか。一太郎事件のブログを収集しています。http://tb.plaza.rakuten.co.jp/patent/diary/200502150000/協力よろしくお願いします。(005)

  2. 「私の言語」です。トラックバックありがとうございました。お礼が遅くなり申しわけありません。恐縮、そして感謝です。

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