もうすぐ現代語化されるのでかわりますが、民法501条では、債権の一部代位があった場合に一部代位者は抵当権者とともに権利行使できるとしています。
これについて最判昭和60年5月23日は、物上保証人は代位できるが抵当権者には劣後するとすると判示しました。
これは、代位によって抵当権が害されるいわれはないので当たり前なのですが、実体経済をかんがみるとこれを一般化してしまってよい状況ではないことも結構あり、それを踏まえた判決が出ました。
個人間の金の貸し借りのような事態は実際にはあまりなく、企業の資金繰りでの貸し借りが大半です。すると、債権債務関係は時系列に沿って複数存在してそれらをまとめて抵当権で担保するようなことになります。
また機関保証が主になり、保証料を払って保証をつけてもらうようになります。この場合、払える範囲でしか保証がつかないので、抵当権の被担保債権すべてに保証がつくというわけではなくなります。
こういった場合に保証人が保証債務を履行した場合まで一部代位としてしまい、抵当権者に劣後させてしまうと保証人は自らの保証していない債務の完全回収まで甘受しなければいけなくなります。
これはさすがに妥当ではないので、最高裁は平成17年1月27日の第一小法廷判決で一部代位した場合に抵当権者に劣後する場合を一個の債権を一個の抵当権で担保している場合に限定して、複数債権がありそのうちの一部を保証した保証人が保証債務を完全履行した場合は抵当権者と按分して権利行使せよと判示しました。
これは会社更生事件になってしまっているので更生担保権の優先劣後の問題になっていますが、基本は民法の問題でしょう。
この判決について評釈が無いか検索していてこちらにたどり着きました。金融機関に勤務しており本判決が非常に気になるもので…
この判決は普通の保証人の立場からすれば当然のことでしょうが、機関保証においては少々困ったことになりそうです。
通常金融機関が機関保証人をつけるときに、原債権を担保する根抵当権の設定があればプロパー債権が優先すると考え(昭和60年の原債権者優先の最判による)担保に空き枠(余力)が無くても融資を行っているはずです(各地の信用保証協会の利用等)。
しかし、本判決のように債権額で按分となると金融機関は担保の極度額全額の配当弁済は受けられないこととなるため、融資を躊躇する虞もありそうです。
もっとも本判決では優先劣後の念書があればそれに従うとしていますので、保証機関が原債権者に対し劣後する旨の念書を交付すれば解決できそうです。
しかし、保証機関は通常その求償権を担保するため求償権保証人を徴求しています。そのため、念書を交わさなければ債権額で按分であったのにあえて劣後する念書を交わすとなると、今度は保証を行う機関の求償権を保証する保証人との関係で担保保存義務違反(免除特約は当然あるでしょうがどこまで有効かという問題もありますし)を問われるかもしれません。となると保証機関も劣後の念書を交付してくれないのでしょうか。どうなんでしょう。
だんだんと何を書いているかわからなくなってきました。すいません。
ブログは内容が金融法務に関する話題がまとまっていてわかりやすく助かります。今後もまたのぞかせてもらいます。