雇用関係の助成金は、政策目的に応じて変更が頻繁ですが、来年度の制度改正で、助成金の再編と支給要件に新たに生産性に関する基準を設ける方向であることが明らかになりました。
生産性高い企業優遇 雇用関連助成金を再編 :日本経済新聞 2016/8/14 1:14 日本経済新聞 電子版
厚生労働省は雇用関連の助成金を改革する。助成金を現在の27種類から廃止や統合で15種類程度に再編し、新たに生産性が上がっている企業への助成額を増やす。成長企業を手厚く支援すると同時に、最低賃金の引き上げを受けて中小企業に生産性の向上を促す。
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倒産失業者の雇用促進 助成金最大2倍に :日本経済新聞 2016/8/19 2:00 日本経済新聞 電子版
厚生労働省は倒産企業や経営再建中の企業で働いていた従業員を成長企業が雇用した場合に支給する助成金を、最大で現在の2倍に増やす。1人雇うごとに80万円支給する案を軸に調整する。年内にも導入する。失業によるダメージを抑えるとともに、成長分野への労働力の移動を促す。
倒産・経営再建中の企業を離職した人の採用を促す「受け入れ人材育成支援奨励金」という制度を拡充する。
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再編の内容としては、目的が似通ったもののを統合するほか、利用が少ない高齢者関連や職業訓練関連の助成金の一部は廃止するとのことです。
また、一部の助成金について生産性向上の基準を設けて支給要件に追加することも明らかになりました。
この生産性の基準については、以下の通り数式が公表されています。
営業利益や減価償却費、人件費などを足した数字を分子、労働者数を分母として基準値を算出する。
人件費を削って生産性を上げることの内容に営業利益と人件費を足すことにしているとのことですが、これだと本当に生産性が上がっているのか謎ですし、減価償却費がすべてを決めかねない事態がありそうです。この生産性が、支給の可否を決めるほか、支給されるにしても助成金の額を左右することにも利用する模様です。
もともと、雇用関係の助成金では、労働者数が減っていないことが要件になっていたりしましたので、その延長上での発想なのだと思われます。
労働力の移転に関する助成金も拡充する模様ですが、どれほどニーズがあるかはややわからない感じがします。
一つ明らかな点としては、助成金の申請がより複雑化することから、申請に当たり困難が出ることが予想されます。