下記tweetで取り上げた事件の控訴審判決が出ました。
[twitter only]札幌地裁、ファールボールで失明した女性が日本ハムファイターズ等に損害賠償を求めた訴訟で4190万円の賠償を命じる(3月26日)。球場の設備が安全性を欠いているとし、他球場に見劣りしないという主張にも他球場も安全を十分確保しているとは認めらないとした。
— Japan Law Express (@JapanLawExpress) 2015年3月29日
ファウル失明、札幌高裁も賠償命令 日ハムのみ3300万円 | どうしんウェブ/電子版(社会) 05/20 13:59、05/21 01:01 更新
札幌ドームでプロ野球観戦中にファウルボールの直撃を受けて右目を失明した札幌市内の30代女性が、北海道日本ハムなど3者に計約4700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が20日、札幌高裁であった。佐藤道明裁判長は、3者に約4200万円の支払いを命じた一審の札幌地裁判決を変更、「安全配慮が不十分だった」として日本ハム球団のみに約3300万円の賠償を命じた。
球場の設備の安全性については問題がなかったとの判断を示し、ドームの管理会社の札幌ドームと、所有者の札幌市への請求は棄却した。一方、「女性が打球を見ていなかったのは過失と認められる」として、一審が認定した損害額から女性側の過失分の2割を差し引き、賠償額を減額した。
(略)
佐藤裁判長は判決理由で「女性は、観戦イベントで球団から招待を受けた子供の保護者。野球に関する知識はほとんどなく、ファウルボールの危険性もほとんど理解していなかった」と指摘。「球団には危険性を具体的に告知し、その危険を引き受けるか否かを判断する機会を与えるなどの安全配慮義務があったのに、十分ではなかった」と断じた。
昨年3月の一審札幌地裁判決は、球団側が2006年に内野席前の防球ネットを撤去したことなどについて「臨場感の確保に偏り、球場が通常備えるべき安全性を欠いていた」としたが、控訴審は「臨場感も野球観戦の本質的な要素」と指摘。その上で、防球ネットはなかったものの「内野フェンスの高さは他球場に比べて特に低かったわけではなく、ファウルボールへの注意を促す放送など他の対策も考慮すると、プロ野球の球場が通常有すべき安全性を欠いていたとは言えない」とした。
(略)
原判決では、球場の設備そのものが安全性を欠いているという判断がなされ、球団だけではなく施設を保有している札幌市、札幌ドームにも責任を認めていたのですが、控訴審では、球場の設備面の安全性がほかの球場と比べて劣っているわけではないと判断が一変しました。
そのうえで、球団の安全配慮義務として、野球をよく知らない観客への配慮が足りないという判断がされ、これを根拠に損害賠償責任を肯定しています。
チケットなどに告知などは入っているものですが、基本的に誰が入ってくるのかわからない球場という環境でそれ以上の安全配慮義務を果たすのはむつかしそうです。しかし、本件では球団から招待を受けた子供の保護者の観客であるという点が意味を持っているようであり、そのような場面では個別に安全についての告知等の配慮をするべきということになるのだと思われます。
裁判例情報
札幌高裁平成28年5月20日判決