福岡地裁、島根原発等で働いたことで被ばくして心筋梗塞になったとして、労災給付請求したものの不支給決定を受けた元作業員が提起した取消訴訟で請求を棄却


 

上記、tweetの詳細記事をお送りします。

原発労災訴訟:心筋梗塞発症の原告請求棄却 福岡地裁 – 毎日新聞 2016年4月15日 14時04分

原発労働での放射線被ばくが原因で心筋梗塞(こうそく)を発症したとして、福岡市早良区の元溶接工、梅田隆亮さん(81)が国を相手取って労災申請を退けた処分の取り消しを求めた訴訟の判決が15日、福岡地裁であり、山口浩司裁判長(岡田健裁判長代読)は請求を棄却した。

     争点は被ばく線量と心筋梗塞との因果関係だった。原告側は被ばく線量について、事業者の労働管理記録に残っている計8.6ミリシーベルトの数値は実態を反映しておらず低すぎると主張したが、山口裁判長は「証拠がない」と否定。「内部被ばくの量も限られており、放射線被ばくの寄与の程度はわずかなものに過ぎない」と疾病との因果関係を認めなかった。

    (略)

     

    労災とは業務上の理由で傷病にり患したことですが、国によって労災であると認められると労災保険から給付を受けられることになります。業務上とは、業務起因性と業務遂行性のあることで、非常に定性的な要件なのですが、いくつか類型化されているものについては数値基準などからなる認定基準があり、それに合致するとほぼそのまま認定がなされます。

    放射線障害についてはそもそも電離放射線を浴びることによって引き起こされる疾病として、急性放射線障害などいくつかが列挙されています。

    基発第810号昭和51年11月8日 電離放射線に係る疾病の業務上外の認定基準について

     急性放射線障害

     比較的短い期間に大量の電離放射線に被ばくしたことにより生じた障害をいい、これに該当するものは、次のとおりである。

    (1)急性放射線症(急性放射線死を含む。)
    (2)急性放射線皮膚障害
    (3)その他の急性局所放射線障害(上記(1)及び(2)に該当するものを除く。)

     慢性的被ばくによる電離放射線障害

     長期間にわたり連続的又は断続的に電離放射線に被ばくしたことにより生じた障害をいい、これに該当するものは、次のとおりである。

    (1)慢性放射性皮膚障害
    (2)放射線造血器障害(白血病及び再生不良性貧血を除く。)

     電離放射線による悪性新生物

     電離放射線に被ばくした後、比較的長い潜伏期間を経て現われる悪性新生物をいい、これに該当するものは、次のとおりである。

    (1)白血病
    (2)電離放射線の外部被ばくによって生じた次に掲げる原発性の悪性新生物
      イ 皮膚がん
      ロ 甲状腺がん
      ハ 骨の悪性新生物
    (3)電離放射線の内部被ばくによって生じた次に掲げる特定臓器の悪性新生物
      イ 肺がん
      ロ 骨の悪性新生物
      ハ 肝及び胆道系の悪性新生物
      二 甲状腺がん

     電離放射線による退行性疾患等

     上記1から3までに掲げる疾病以外の疾病で、相当量の電離放射線に被ばくしたことによって起こり得るものは、次のとおりである。

    (1)白内障
    (2)再生不良性貧血
    (3)骨壊疽(えそ)、骨粗鬆症
    (4)その他身体局所に生じた線維症等

     

    上記を見る限り、心筋梗塞のような疾患はただちには該当してこないため、労基署の判断としては、個別に業務起因性が立証されないと労災とは認められないという対応をとると考えられることから本件のような事態になっているものと思われます。

    訴訟では被ばく量に関する実態が放射線管理手帳と異なるなどとする点も争点となったことが伺われるのですが、従事期間が短いことや作業内容も当然検討しますのでそれらが影響した事実認定がされているものと考えられます。

    また、その前にそもそもこの疾患になるのかどうかも論点になりそうです。

    裁判例情報

    福岡地裁平成28年3月15日

    About Arakawa

    サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。