高年齢者雇用安定法への対応は、いったん退職して継続雇用制度を導入したのが多数を占めていますが、人手不足を背景に定年の延長を導入する実例も増えてきています。
そのような中、定年を延長する代わりに、人件費の急増を抑制するため現役世代の人件費を引き下げるというかなりドラスティックな措置を北海道ガスがとることが明らかになりました。
北海道ガス、60歳超の賃金上げ 定年65歳に延長 :日本経済新聞 2016/4/16 10:27
北海道ガスは7月、65歳まで働き続けることを前提とした賃金に移行する。平均的な社員の賃金水準は従来、60歳を超えると3分の1程度まで下がっていたが、7割程度まで引き上げる。少子高齢化の加速による若年層の減少に対応する。一方で、総賃金の急増を避けるため、40~60歳の賃金水準は5%程度抑える苦肉の策をとる。
(略)
北海道ガス株式会社:お知らせ一覧/65歳定年制の導入について
上記プレスリリースでは、賃金制度の内容のうち引下げには触れられていません。
これまで60歳以上は定年再雇用制度で、賃金はそれまでの3分の1ほどになっていた模様ですが、定年延長でそれまでの7割程度とするとされており、そのためにかなりの人件費の増加が見込まれる模様です。
そこで現役世代のうち40歳以上の賃金を5%程度引き下げるという不利益変更がなされる模様です。
報道によると組合との話し合いの中で、導入が決定したものとされていますので、現役世代の労働者にとってはかなりの不利益ではありますが、合理性は手続きの面からそれなりに補強はされているといえるのかもしれませんが、未曽有の内容であり、評価は難しい感じがします。
また、そもそも定年延長となると、一度定年を挟んでいないのでなぜ給与を7割まで下げていいのかが問題となりそうです。昨今、同一賃金同一労働に注目が集まっていることを考えるとなおさら微妙な点があります。
その点については、役職定年になり、いわゆる一般社員に戻るような運用をとることが前提とされているようなことが報道で言及されており、業務内容の質的な変化もあるならばこの点も正当化は可能であろうと思われるところです。
いずれにせよ、かなりドラスティックな内容であり、丁寧に導入がされた様子から変に問題として顕在化することはないのだと思いますが、法的には色々な論点を含む制度変更だと思われます。