厚労相、長時間労働是正の指導強化で、36協定の特別条項での設定時間数が100時間超となっている立入調査の指導対象を80時間に引き下げることを表明


長時間労働の抑制のために、すぐにはできない法改正ではなく、労働基準監督署の指導強化で対応することが打ち出されました。

長時間労働是正、首相「指導強める」 残業80時間で立ち入り  :日本経済新聞

安倍晋三首相は25日、首相官邸で開いた一億総活躍国民会議で、長時間労働の是正に向けた具体策の検討を指示した。「健康に望ましくない、長い労働時間を設定した事業者には指導強化を図る」と強調。塩崎恭久厚生労働相は「100時間超となっている指導対象を拡大する」と表明した。労働基準監督署が立ち入り調査に入る目安である1カ月の残業時間数100時間を80時間に引き下げて対象を広げる方針だ。

(略)

 

要するに労働基準監督署の立入調査の対象選定の目安の拡大ということです。

36協定には、時間外労働の上限時間を協定しますが、通常の延長時間と忙しくてそれでは収まらないときに発動する再度の延長時間である特別条項の延長時間が定められます。

この特別条項の時間数が100時間を超えていると、労働基準監督署が立入調査にやってきて、タイムカードや賃金台帳を確認して労基法違反がないかを見るのですが、この調査対象選定の目安を80時間に引き下げることにして、立入調査の対象となる範囲を広げることになりました。

日経新聞の報道では、これによって就業人口にして300万人が対象になるとされています。

実のところ、これは行政調査とその後の指導も、労基法違反があったなら別ですが、行政指導にすぎないため、いわゆる労基署に入られるのを契機として時間外労働を抑制するように向かうことを期待するというようなやや緩やかな対応となります。しかし、法改正は不要であり、しかも、実際、労基署が入るというのはそれなりに効果があるので、一つの方法ではあると思われます。

すると、入られるのが36協定の時間数を見てやってくるのなら引き下げて、回避を図るかもしれませんが、その通り時間外労働を抑制できるならいいですが、実態が変わらないのに、労基署が来ないようにということで時間数だけ減らすと、実際の時間外労働が協定に定めた時間をオーバーしてしまうので、こうなると刑事事件に発展してしまいます。

ABCマートは36協定の上限時間を超えて労働をさせたことで労働基準法32条違反で略式命令を受けているので、この点は安易に考えてはいけないところです。

労働時間については数年来大きな問題となってきていますが、その流れは止まることなく、この指導強化を機に、改めて厳密な労働時間管理について検討を迫られているといえるでしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。