最高裁、漁業協同組合の理事会の議決が特別利害関係を有する理事が加わったものであっても、当該理事を除外しても議決に必要な多数が存するときは、その効力は否定されないと判示


特別利害関係取締役の議決権は行使できないとされていますが、行使してしまった場合に取締役会の議決が無効になるのかについては規定を欠いており、一般原則から考察することになるものと思われます。

しかし、会社以外の各種法人の立法では、役員の意思決定機関である理事会について、会社法と同じく特別利害関係理事の議決権を排除する規定を有するものの、個別事例においてはその特別利害関係理事を除いても理事会の議決が成立する多数が占められていた場合には、決議を有効とする判例があります。

中小企業等協同組合法についてこのことを判示したのが以下になります。

最判昭和54年2月23日民集第33巻1号125頁

このたび、上記昭和54年判決を引用して、漁業組合の理事会の議決について同旨を判示した判例が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成28年1月22日判決 平成27(行ヒ)156 損害賠償請求事件

この事案は、端的には理事8人のうち6人が出席した理事会で全会一致で出席理事のうちの一人が代表を務める組合に利益になる議決がされ、理事にはその組合の代表の息子も含まれていたということで、いわば特別利害関係理事が2名いたというようなケースでした。

しかし、この二名を除外しても議決は有効に成立するとして効力を否定されないとしたものです。

特別利害関係人の議決権の除外は、各種法人の立法に共通ですが、議決権が行使されてしまった場合の議決の効果についても同じ理解になるでしょうか。

この判例では以下のように一般論を判示しています。

水産業協同組合法37条2項が,漁業協同組合の理事会の議決について特別の利害関係を有する理事が議決に加わることはできない旨を定めているのは,理事会の議決の公正を図り,漁業協同組合の利益を保護するためであると解されるから,漁業協同組合の理事会において,議決について特別の利害関係を有する理事が議決権を行使した場合であっても,その議決権の行使により議決の結果に変動が生ずることがないときは,そのことをもって,議決の効力が失われるものではないというべきである。

会社法では、東京高判平成8年2月8日などを見る限り、特別利害関係人の議決権行使の事実のほかに、議長も務めてしまうなどその他の事情も含めて総合考慮するのだろうと思われます。

このような判断は各種法人の場合にも妥当させた方がよいと思われるのですが、上記のように本件も含めて各種法人の場合の判示の仕方が数にしか言及していないため、議決権の数以外の事情も検討に入れるような判断の余地がなさそうに思われます。

会社、その他の各種法人の意思決定の問題は結構発生していることから、判例の蓄積から理事会運営のガバナンスにどのようにフィードバックしていくべきかは気になるところといえましょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。