大分地裁中津支部、毎年1年の任期で33年間司書などとして勤務した非常勤職員に対して勤続年数に応じた年次有給休暇を付与しなかったのを違法と判断 実際に欠勤扱いとなった日数相当分のみ損害賠償を認める


年次有給休暇は10日の付与から始まり、勤続年数に応じて毎年の付与日数が増えていき、最終的には年20日の付与となるのが労働基準法の内容です。どの会社も最低限はこれを守らないといけません。

年次有給休暇については地方公務員もこれが同じく適用されます。

さて、この年次有給休暇は勤続年数が重要ということになりますが、有期雇用の場合にはどうなるのでしょうか。

更新するたびに新しく勤続年数が開始されると考えることも無理ではなさそうですが、この点については通達があり、更新によって雇用契約が実質的に継続していれば勤続年数は通算して考えるべきとされています。

1年で任用した非常勤の地方公務員について、毎年、年10日しか付与しなかった事例について勤続年数に応じた付与をするべきだったとして損害賠償請求訴訟が提起された件で、雇用が実質的に継続していると判断された事例がでましたので取り上げます。

元非常勤職員労基法下回る年休 「中津市の対応は違法」 – 大分のニュースなら 大分合同新聞プレミアムオンライン Gate 

中津市の元非常勤職員の男性(64)が、毎年1年間の任期で33年間、勤務し続けたにもかかわらず、労働基準法に基づく勤続年数に応じた年次有給休暇(年休)を与えられなかったのは違法だとして、市に約426万円の支払いを求めた訴訟で、大分地裁中津支部は12日、男性の勤務を継続的と認定し、単年度任用であることを前提に労基法を下回る年休数しかないとしてきた市の対応を違法と判断した。男性の請求を一部認め、市に約22万円の支払いを命じた。
 男性の訴訟をきっかけに市は本年度、新しい条例を施行して単年度任用の一般職の非常勤職員にも、労基法で定めた年休を与えるようにした。
 大垣貴靖裁判長は、年休の趣旨に照らし、勤務が継続していたかどうかは「形式的な契約期間などではなく、勤務実態で判断するべきだ」として、労基法に定める勤続年数に応じた年休が認められるとした。
 市が任用通知書で毎年、単年度分の年休日数を男性に伝えたことに対しては「虚偽の情報を告知しない法的義務を負っている。これに違反しており、国賠法上、違法な行為で債務不履行に当たる」と判断した。
 男性は不足した年休(計180日分)の賃金を支払うよう求めたが、大垣裁判長は「虚偽の情報がなくても、男性が年休を全て取得した可能性は低い」と指摘。出勤記録が残る範囲で、欠勤または病休扱いとなった約17日間分の賃金だけを損害として認定した。

(略)

更新を何度もしていることから直ちに勤務の継続を認めているわけではないとは思われますが、上記報道では原則の勤務実態の詳細は不明ですので、判断の肝がどこにあったのはは判然としないところがあります。

また、裁判所の判断において注目するべきなのは、損害賠償を認めたのは、付与されなかった分すべてではなく、有休を使い果たして欠勤控除に及んでしまった分のみであり、少ない付与だったとしても有休が残ってしまった年については本来付与されるべき日数が付与されても年休取得がされた可能性は低いとして損害を認めていない点といえましょう。

年休については、付与と取得の二段階の構造になっている特殊性がここにも表れているものといえましょう。

 

裁判例情報

大分地裁中津支部平成28年1月12日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。