三田労働基準監督署、JCB及びその役員4名を、違法な長時間労働をさせたとして、労働基準法違反で東京地検に送検


長時間労働の抑制ために労働基準行政が果断に権限行使をするようになって久しく、特に下記のような、いわゆる「かとく」による検挙事例が衆目を集めるところとなっています。

東京労働局、ABCマートで36協定で定めた上限時間を超える時間外労働があったとして、同社、人事担当役員及び従業員を東京地検に送検 | Japan Law Express

大阪労働局及び京都労働局、36協定の上限時間を超える時間外労働、休憩の不付与、割増賃金の未払いがあったとして、まいどおおきに食堂などを運営するフジオフードシステムと店長などを送検 大阪労働局過重労働撲滅特別対策班による初の送検事例とされる | Japan Law Express

このたび、「かとく」による検挙事例ではないですが、労働基準監督署が長時間労働に関して労働基準法違反で著名な企業を送検した事例が明らかになりました。

JCBを書類送検、三田労基署| Reuters 2015年 11月 19日 19:47 JST

 三田労働基準監督署(東京)は19日、従業員に違法な長時間労働をさせたとして、労働基準法違反の疑いで、クレジットカード大手JCB(東京都港区)の役員ら4人と法人としての同社を書類送検した。

 送検容疑は、昨年2~3月、二つの部署の従業員計7人に対し、労使協定で定めた上限の月80時間を超える時間外労働をさせた疑い。三田労基署によると、最長で月約67時間超えたという。残業代は支払われていた。労基署はこれまでにも是正勧告を繰り返していた。

 送検された4人は、60歳と56歳の常務執行役員、49歳と56歳の部長で、いずれも男性。肩書は送検容疑当時。

残業147時間…JCBを書類送検 – 産経ニュース 2015.11.19 18:56

クレジットカード大手「ジェーシービー」(東京都港区)が昨年、本社勤務の社員7人に違法な時間外労働をさせたとして、東京労働局三田労働基準監督署は19日、労働基準法違反の疑いで、同社と取締役ら4人を東京地検に書類送検した。

 送検容疑は昨年2~3月、正社員の男女7人に労使協定で定められた月80時間を超える残業をさせたとしている。最も長く働いた30代男性は月約147時間の残業をしていた。

(略)

 

本件のポイントは、ABCマートの件と同じく、36協定の上限時間を超えた時間外労働をさせていた一方、割増賃金自体は適正に支払われていたという点です。

したがって、賃金の未払いの労基法違反はないため、送検された中に会社の代表者は含まれておらず、労務管理の責任者のみが含まれるという内容になっているわけです。

上記報道によると、80時間が特別条項の方の設定時間であるのかは定かではないのですが、時間数から言って特別条項だと思われます。

特別条項だとすると、適正に発動したかもポイントになってくるところから、時間数の設定のほか、特別条項発動の手続をきちんと踏んでいるかも注意しなければいけないと思われます。割増賃金を支払っていてもこのように報道で企業名が出てしまう事態になることから、より緻密な管理が求められるところです。

なお、形式的に本件に該当したのは確かとしても、かなり前のことですので、是正勧告を受けてその後の改善によっては、送検が避けられたということもありえたように思われます。

この点については、労基署は長時間労働が是正されていないとしている一方、会社は指摘を受けてからは起きていないとしており、認識に齟齬がある模様です。

JCB企業情報サイト ニュースリリース - 本日の報道について

(略)

本件は、2013年度に「労使協定」への違反者が発生し、2014年5月、三田労働基準監督署による立入り検査が行われ、任意捜査を経て書類送検に至ったものであります。
当社では、2014年7月1日付で、総労働時間削減を目的とした全社横断的な組織として、社長を委員長とする「時間外削減対策委員会」を組成し、全社業務量の削減など時間外勤務の削減に留まらず、「働き方」にまで踏み込んだ労働時間短縮策に取り組んでおります。委員会の組成から1年半近く経過しておりますが、組成以来、労使協定違反は発生しておりません。

(略)

実際のところは判然としませんが、会社としては問題は解消したと認識したとしても、送検されることがあるのだとすると非常に大変な事態と言わざるを得ません。

これに続く指導事例、送検事例に重大な注意を払う必要があると思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。