最高裁、主たる債務者に対する求償権に時効中断事由があっても、共同保証人に対する求償権に時効中断は生じないと判示


連帯保証人の一人が主債務者に代わって、債権者に弁済して主債務者に対する求償権を取得し、その後主債務者が一部は弁済したもののそのままになってしまったことから、主債務者に求償金請求訴訟を提起して勝訴確定したところ、そこから10年の事項にかかりそうになったため、共同保証人に対する求償権行使をしたという事案で判例が出るに至りました。

なぜ法的論点のある事件になったかというと、共同保証人から消滅時効の抗弁が主張されたためです。

最高裁判所第一小法廷平成27年11月19日判決 平成25(受)2001 求償金等請求事件

本件は、共同保証人間の求償権行使という法的構成なのですが、主債務者に対する求償権の時効中断事由(本件では訴訟上の請求)は、共同保証人間の求償権の時効中断事由にならないと主張がされたため、最高裁が判断するに至ったものです。

一見すると、主債務者に対しては時効中断しているのに共同保証人に対しては影響しないのはおかしいのではないか、請求の絶対効はどうなったのかと感じてしまいかねないですが、本件は共同保証人間の求償権講師であるところがポイントです。

(共同保証人間の求償権)

第四百六十五条  第四百四十二条から第四百四十四条までの規定は、数人の保証人がある場合において、そのうちの一人の保証人が、主たる債務が不可分であるため又は各保証人が全額を弁済すべき旨の特約があるため、その全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

 第四百六十二条の規定は、前項に規定する場合を除き、互いに連帯しない保証人の一人が全額又は自己の負担部分を超える額を弁済したときについて準用する。

本来、最終的には主債務者が全責任を負うのが保証人の場合の関係性ですが、無資力の場合には、共同保証人間で頭数割で負担することにして、それを実現するための清算のために特に設けられたのが、保証人間の求償権です。

すると、保証人に対する求償権とは性格的にも別物であるわけでして、この点から最高裁は端的に下記のように判示をしています。

民法465条に規定する共同保証人間の求償権は,主たる債務者の資力が不十分な場合に,弁済をした保証人のみが損失を負担しなければならないとすると共同保証人間の公平に反することから,共同保証人間の負担を最終的に調整するためのものであり,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権を担保するためのものではないと解される。したがって,保証人が主たる債務者に対して取得した求償権の消滅時効の中断事由がある場合であっても,共同保証人間の求償権について消滅時効の中断の効力は生じないものと解するのが相当である。

したがって、主債務の求償権が10年の時効にかかりそうになっているくらいで、その間、保証人間の求償権には何もしてこなかったわけですので、当然、時効消滅という結論になったわけなのでした。

要するに、保証人間の求償権についても何かしておくべきだったということになりますが、主債務者に対してなら全部いけるのに、保証人間の求償権についても手当をするというのはなかなか想起しがたいことなのかもしれません。

しかし、それよりもさらにそもそも論ですが、本件は、保証人間の求償権の事件ですが、共同保証人がいるケースでこの権利が行使されることはあまりないように思われます。というのは、現実には、共同保証人には主債務の求償権についても連帯保証を求めていることが多いからであり、このように求める保証人は機関保証であり、そういう意味で保証人を要求しているからと考えられます。

したがって、求償権へ連帯保証をつければいいことですので、やや珍しい事態に対する判例であり、実務的にこれが即影響する場面というのもそうはないように思われます。

なお、民法改正案では、この465条は改正されないことになっていますので、本件の判示もそのまま改正法成立後も意義をもつものと考えられます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。