最高裁、債権譲渡について異議なき承諾をした債務者でも、譲渡人に対抗することができた事由の存在について善意だが過失のある譲受人に対しては、当該事由を対抗することができると判示


長くてわかりにくいタイトルで申し訳ございません。

債権譲渡の異議なく承諾について、新たな判例が6月に出ていましたので、遅れましたが取り上げます。

民法

第四六八条(指名債権の譲渡における債務者の抗弁)
 債務者が異議をとどめないで前条の承諾をしたときは、譲渡人に対抗することができた事由があっても、これをもって譲受人に対抗することができない。この場合において、債務者がその債務を消滅させるために譲渡人に払い渡したものがあるときはこれを取り戻し、譲渡人に対して負担した債務があるときはこれを成立しないものとみなすことができる。
2譲渡人が譲渡の通知をしたにとどまるときは、債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる。

民法の条文では、債権譲渡された場合に債務者が異議なき承諾をした場合には、譲受人側には特に要件は不要であり、異議なく承諾さえあれば、抗弁など一切の事由を対抗できなくなるかのように読めます。

しかし、この点については判例によって、主観的要件がついており、請負についての有名な判例(最判昭和42年10月27日民集21巻8号2161頁)から一般化されて、譲受人が悪意なら対抗可と理解されています。

この主観的要件についてはさらに拡大されて理解されており、悪意だけではなく有過失でも対抗可と解するのが有力説であり内田説もこの立場でした。

実務でも要件事実的には、譲受人の悪意または有過失は、譲受債権請求訴訟の再々抗弁に回るとされており、ある意味、定説となっていました。

このたび最高裁が、正面から譲受人が有過失の場合にも対抗可であることを認めた判決が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成27年6月1日判決  平成26(受)1817 不当利得返還請求事件

最高裁判所第二小法廷平成27年6月1日判決  平成26(受)2344 不当利得返還請求事件

理由について最高裁は、よりシンプルに判示をしている2344号事件の方で、以下のように述べています。

民法468条1項前段は,債務者が異議をとどめないで指名債権譲渡の承諾をしたときは,譲渡人に対抗することができた事由があっても,これをもって譲受人に対抗することができないとするところ,その趣旨は,譲受人の利益を保護し,一般債権取引の安全を保障することにある(最高裁昭和42年(オ)第186号同年10月27日第二小法廷判決・民集21巻8号2161頁参照)。そうすると,譲受人において上記事由の存在を知らなかったとしても,このことに過失がある場合には,譲受人の利益を保護しなければならない必要性は低いというべきである。実質的にみても,同項前段は,債務者の単なる承諾のみによって,譲渡人に対抗することができた事由をもって譲受人に対抗することができなくなるという重大な効果を生じさせるものであり,譲受人が通常の注意を払えば上記事由の存在を知り得たという場合にまで上記効果を生じさせるというのは,両当事者間の均衡を欠くものといわざるを得ない。

上記は有力説が根拠としてきた理由そのままであり、正面からこのように有力説の立場をとったといえましょう。

実務に何らの変更を与えるものではないといえるかと思われますが、重要な判示であることは確かであるといえるでしょう。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。