最高裁、事前求償権を被保全債権とする仮差押えは事後求償権の消滅時効を中断する効力も有すると判示


保証人が主債務者の代わりに弁済した場合には、主債務者に対して求償権を取得しますが(事後求償権)、委託を受けて保証をした場合には、弁済の前に求償権を行使することができます。これを事前求償権といいますが、判例は事後求償権と事前求償権は別の権利としています(最判昭和60年2月12日民集39巻1号89頁)。

保証委託を受けて保証をするのは、いわゆる機関保証であることが多いことになりますので、業としてやっている以上、事前求償権からしっかり行使してくることが考えられます。実際には事前求償できるくらいならそもそも主債務者が弁済できるはずですので、仮差押えなどが限度かもしれませんが、とにかく事前旧称から何らかの動きをするということはよくあるわけです。

そのような場合で、事前求償権に基づいて仮差押えをしていたが、事後求償権に基づいての別途の行為はしていなかったまま、かなり経過してから保証人が求償権の行使及び連帯保証人に対して請求をしてきたという事例で、弁済からは時効が成立するだけの期間が経過してしまっていたために時効消滅したのではないかという事件で判例が出ました。

最高裁判所第三小法廷 平成27年2月17日判決  平成24(受)1831  求償金等請求事件

上記の昭和60年判例の別個の権利というところを重視するなら、確かに時効消滅してしまったということになりそうです。

しかし、最高裁はそのようには考えず、実質論を展開し、事前求償権についての仮差押えは事後求償権の消滅時効も中断する事由となるとしました。

事前求償権は,事後求償権と別個の権利ではあるものの(最高裁昭和59年(オ)第885号同60年2月12日第三小法廷判決・民集39巻1号89頁参照),事後求償権を確保するために認められた権利であるという関係にあるから,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをすれば,事後求償権についても権利を行使しているのと同等のものとして評価することができる。また,上記のような事前求償権と事後求償権との関係に鑑みれば,委託を受けた保証人が事前求償権を被保全債権とする仮差押えをした場合であっても民法459条1項後段所定の行為をした後に改めて事後求償権について消滅時効の中断の措置をとらなければならないとすることは,当事者の合理的な意思ないし期待に反し相当でない。

要するに、事前求償権について行使すれば事後求償権についても行使したとしてもいいではないかということで、その肝は、事前求償権で民事保全をしておいたのにまた事後求償権についてもう一度繰り返さないといけないのだとすると、二度手間ですし、極めて不可解な行為を強いることになるからということでしょう。

事前求償権について仮差押えをしたら、おそらくそれでひとまずはよしとしているのが実務的な取扱いではないかと想像されますので、そういう意味では現実的な対処ということになりましょう。もっとも事前求償権がどれほど活用されているのか自体がそもそもわからないところがありますので、そうだとすると時効が成立しそうになってしまったかなりレアケースの場面だからこそ下された判断なのかもしれません。

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About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。