青山学院大・高等部・中等部等の教職員の一部が、一時金の減額を違法として差額を請求して、学校法人青山学院を提訴


青山学院大などを運営して著名な学校法人青山学院が、賞与に当たる一時金を例年よりも減額して支給したところ、教職員の一部がこれを違法として差額を請求して東京地裁に提訴したことが明らかになりました。

青山学院:教職員2割が提訴 「一方的に一時金減額」 – 毎日新聞 2014年12月25日 07時30分

学校法人「青山学院」(東京都渋谷区)の教職員285人が、一方的な一時金の規定廃止によって支給額を減額されたとして、学院を相手取り、規定との差額にあたる総額約5000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしたことが分かった。原告には大学教授らも名を連ね、学院が設置する大学や高等部、中等部などの教職員全体の2割に達するという。

 訴状などによると、教職員の一時金は1953年以降、就業規則で定める規定に基づいた額が支給されていた。しかし学院側は2013年7月、「財務状況が非常に厳しい。取り崩し可能な資金にも余裕がない」などとして、規定の削除と一時金の減額を教職員の組合に提案。その後、組合の合意を得ないまま就業規則から規定を削除した。2014年夏の一時金は、規定より0.4カ月分低い2.5カ月分にとどまった。

 学院側は教職員側に対し、少子化や学校間の競争激化を理由に挙げ、「手当の固定化は時代にそぐわない」などと主張。一方、教職員側は「経営状態の開示は不十分で、一方的な規定削除には労働契約法上の合理的な理由がない。学院と教職員が一体となって努力する態勢が作れない」などと訴えている。

(略)

上記の報道中に言及されていますが、青山学院は一時金の金額について算出方法を就業規則に定めていたということが重要になります。すなわち、本件は、就業規則の不利益変更の問題ということになります。

使用者が就業規則を不利益な方向に一方的に変更してしまった場合を、就業規則の不利益変更の問題といいますが、この場合については労働契約法に規定があります。

労働契約法

第10条 
使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

要するに不利益変更が合理的といえるかということになり、上記の規定中に現れている事情の総合考慮ということになります。報道からうかがえる事情で法律上意味を持ってきそうな事実は、経営状態、金額を算出する内容を削除したということ、組合との話し合い程度、削減した金額の多寡などということになりましょう。

しかし、いくら減らしたということもさることながら、一時金の金額を算出する算式を削除したという今回の内容は興味深い問題であるように思われます。今までは算式があった以上、支給を引き下げる算式にするくらいでよかったのではないかという考え方がありうるところです。

給与が減額された場合で争いになると、不利益になった金額の多寡が検討されますが、これは給与の内容を引き下げる変更をしているためで、金額の多寡は変更後の規定の内容そのものであるのです。

それに対して本件は算出方法自体をなくしてしまって、そのうえで適宜の金額を支給しているので、金額の多寡とは別の問題となる可能性があります。この点は注意が必要です。

しかし、規定を削除したことが極端化というとそうとも言えないと思われます。支給時の業績から賞与の金額を算出するための算式を持っていない企業はそう多くはないでしょうが、あくまで内部的なものにとどまり、給与規程等に規定までして労働契約の内容としてしまっている場合は多くはないと思われます。

そういう意味では、青山学院側の主張である手当の固定化は事態に合わないというのは他の企業の例を見るならばその通りであり、それほどおかしいことではないのだと思われます。

すると決めては、経営状況ということになるのかもしれません。

これまで問題となってきた賃金制度の変更とは若干異なる問題状況であることから非常に興味深い事例であると思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。