最高裁、共同相続された委託者指図型投資信託の受益権及び個人向け国債は、相続開始で当然に相続分に応じて分割されることはないと判示


今年の2月の判決を今更ながら取り上げます。すでに取り上げたつもりでいたのですが、関連する12月の判決の時期を書こうと検討したところ、2月の判決についてまだ記事にしていなかったことに気づきまして、合わせて取り上げようと思います。

相続が発生した場合に相続財産はいったん共有になりますが、物権なのか債権なのかによってどのような状態になるのかはどのような財産であるかによって異なります。

債権の場合には準共有になりますが、判例はここから多数当事者間の債権債務関係になるとしており、すると給付が不可分の場合には不可分債権になり、給付が可分の場合には可分債権になります。その結果、債権の中でも財産の種類ごとに話が違ってきてしまうのです。

銀行預金は金銭債権ですので、給付は可分ということになります。ここから、預金は遺産分割の対象になる相続財産に入らず、相続開始時点で当然に分割して相続人に帰属するとしています。

もっとも、銀行実務は相続人の一部からの払い戻し請求には応じないので、この点は現実は若干異なるのですが、少なくとも実体法的には上記のようなことになります。

すると、給付が可分であれば、共有にならずに相続人に帰属していることになりますが、この給付が過分ということは実はそれほど簡単ではなく、分割できそうなのだがどうなのだという財産が増えてきており問題になることが出てきました。

特に投資信託が問題となることが多くなってきています。これは口数で購入するものであり、かつ、配当金は完全に現金になってしまうことから可分に見えなくもないことが影響しています。

この点、最高裁が投資信託の受益権と国債について、預金と同じ扱いなのか、共有になるのかについて判示をした判例が出ています。

最高裁判所第三小法廷平成26年2月25日判決 平成23(受)2250 共有物分割請求事件  民集第68巻2号173頁

この事件で問題となったのは、1 委託者指図型投資信託の受益権、2 外国投資信託にかかる信託契約の受益権、3 個人向け国債の3つが共有になっているのかという点です。

原告は、他の相続人を被告として、上記財産は共有になっているという理解の下、主位的に共有物分割を請求、予備的に共有でないなら名義書き換え手続きを行うことを請求したところ、原審は準共有ではなく相続人に帰属しているとして主位的請求を却下して、予備的請求も権利がないとして棄却したので上告受理申立てがされたものです。

最高裁は以下のように述べて、上記の財産については準共有になるとしました。

1 投資信託受益権については

本件投信受益権のうち,本件有価証券目録記載3及び4の投資信託受益権は,委託者指図型投資信託(投資信託及び投資法人に関する法律2条1項)に係る信託契約に基づく受益権であるところ,この投資信託受益権は,口数を単位とするものであって,その内容として,法令上,償還金請求権及び収益分配請求権(同法6条3項)という金銭支払請求権のほか,信託財産に関する帳簿書類の閲覧又は謄写の請求権(同法15条2項)等の委託者に対する監督的機能を有する権利が規定されており,可分給付を目的とする権利でないものが含まれている。このような上記投資信託受益権に含まれる権利の内容及び性質に照らせば,共同相続された上記投資信託受益権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。

としました。上記の前に株主権について言及しており、要するに株主権と同じように金銭債権だけではなく、ガバナンスに関する権利と一体となっている以上、それらを分割することはできないという点に根拠を求めています。

2 外国投資信託については、外国のものということで内容が不明確であるのですが、上記の投資信託と同じに会する余地が十分にあるとしています。この点は理由があまり説得的には書かれていないのですが、同じものだろうということだと思われます。

3 個人向け国債については、さすがにガバナンスに関する権限等はないため、分割できそうにも考えられますが、最高裁は一口1万円である点に注目しています。

個人向け国債の額面金額の最低額は1万円とされ,その権利の帰属を定めることとなる社債,株式等の振替に関する法律の規定による振替口座簿の記載又は記録は,上記最低額の整数倍の金額によるものとされており(同令3条),取扱機関の買取りにより行われる個人向け国債の中途換金(同令6条)も,上記金額を基準として行われるものと解される。そうすると,個人向け国債は,法令上,一定額をもって権利の単位が定められ,1単位未満での権利行使が予定されていないものというべきであり,このような個人向け国債の内容及び性質に照らせば,共同相続された個人向け国債は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。

要するに1万円以下に分割できないので、法定相続分で分けることができないかもしれないので、可分ではないとしました。そうだと言われればそうとも思えますが、微妙といえば微妙にも聞こえるところです。

 

もっとも国債はともかく、投資信託については、実務上も有力な見解として上記のような考え方がされていました。したがって、この判決はその点では有力な見解を最高裁も認めたというところに尽きるように思われますが、国債に関するくだりから、相続財産に入るかどうかについて多数当事者間の債権債務関係の条文に照らして機械的に考えるという姿勢が貫徹されているということが改めて分かります。

実務的にも理論的にも重要な判決であると思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。