肥後銀行,36協定の上限を超える時間外労働をさせていたとして,労働基準法違反で罰金30万円の略式命令を受ける


36協定で定めた時間外労働の上限を超える時間外労働をさせた場合,労働基準法36条1項本文には罰則はついていないものの,罰則のついている労働基準法32条(労働時間規制)の違反となり,しかも32条1項の1日の労働時間の制限に反することと32条2項の週の労働時間の制限に反することの両方に反していた場合には併合罪となると判例は解しています。

JAPAN LAW EXPRESS: 最高裁、36協定を超えて時間外労働をさせた場合の労基法32条違反の罪について判示

このため,労働基準監督署によって,36協定の上限を超えている場合について送検して事業主に刑事罰が課される例が出てきているのですが,そのような例がさらに加わりました。

肥後銀行のリリース

労働基準法違反事案について | お知らせ | 肥後銀行

 

長時間残業、肥銀に罰金 行員自殺で熊本簡裁-熊本のニュース│ くまにちコム

飛び降り自殺した男性行員に労使協定で定めた限度を超えて時間外労働(残業)をさせていたとして、肥後銀行(熊本市)が労働基準法違反(長時間労働)の罪で罰金20万円の略式命令を受けたことが25日、分かった。
熊本労働基準監督署が3月、同法違反容疑で書類送検。熊本区検が11月29日付で略式起訴し、熊本簡裁が12月6日付で略式命令を出した。命令は25日付で確定。同行は既に罰金を納付している。

(略)

命令によると、同行の労使協定では時間外労働の限度を1カ月45時間と定めているにもかかわらず、副部長は2012年7月~10月中旬、部下の男性行員=当時(40)=に1カ月当たり96~142時間の時間外労働をさせた。1日当たりでは5時間45分の限度を超えた日が計28日あった。
同行文化・広報室は「事実を真摯[しんし]に受け止め、再発防止に取り組みたい」とコメントした。
男性は12年10月中旬に熊本市中央区の本店で飛び降り自殺。熊本労基署は13年3月、自殺を労災と認定した。男性の遺族は6月、自殺は長時間労働による過労が原因として、同行に損害賠償を求め、熊本地裁に提訴している。

(略)

労働基準法違反には両罰規定もついていることから,法人としての肥後銀行が罰金となったということになります。

本件は上記のように過剰な時間外労働によって自殺が発生しており,それが労災と認定されています。時間外労働に関する法律違反で刑事罰まで及ぶということは,このような突出した事象が発生しているということに起因していると考えられます。現実には,労災の認定の過程で労働基準監督署が調査をするわけですので,ある意味,当然に刑事罰にも及んだという点はあると思われます。

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。