福岡高裁,公立中学校に1年の任期で更新を繰り返して33年間図書館司書として勤務した元職員が退職手当を請求した訴訟で,正規職員と同じで一般職として原判決を破棄し,請求を認める


いわゆる非正規雇用が繰り返されたことによって正規雇用と同じ路同条件になっているかという論点について注目すべき裁判例が出ました。

地方公務員なので一般の雇用契約の問題全般に妥当するかはわからないところがありますが,1年の有期雇用を33年繰り返した学校の図書館司書であった元職員について,正規職員に対して設けられている退職手当の請求を認めるという衝撃的な判決が出ました。

退職手当認める逆転判決、学校図書館の非常勤司書 : 最新ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

大分県中津市の市立中学校図書館で非常勤の司書として33年間勤めた男性(60歳代)が、一般職と同様に働いたのに退職手当を支給されないのは違法として、市に約1090万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決が12日、福岡高裁であった。古賀寛裁判長は「勤務条件などから一般職に当たる」とし、請求を棄却した1審・大分地裁中津支部判決を取り消し、市に全額の支払いを命じた。

判決によると、男性は1979年4月から週5日、午前8時~午後5時まで勤務。1年ごとに雇用契約を更新し、2012年3月に退職した。だが、市の条例は一般職を退職手当の支給対象としており、市は非常勤の男性に対して退職手当を支払わなかった。

1審は、男性の勤務実態が一般職と同一であると認めながらも、非常勤として任用してきた市の取り扱いをより重視し、一般職には当たらないと判断。しかし、高裁は「地方公務員法は、勤務条件などから一般職か否かを判断するよう規定しており、市は法解釈を誤った」と指摘した。

原判決からして,勤務の実態は一般職と同じであるという点は認めていたものの,非常勤として扱っていた形式を重視して請求を棄却していたのですが,控訴審は,ここについて地方公務員法の趣旨から介入をすることで,判断を逆転させ,一般職と認定して,請求を認容しました。

福岡高裁の考え方は,条例が誤っているというよりは,市の取扱いが地方公務員法に反していたということになります。

もっとも,地方公務員法の解釈の下りについては,争いの余地があるように思われます。

地方公務員法に職階制の根本基準などが定められており,確かに同一の雇用条件は同一に扱いなさいということが定められています(同法23条5項)。しかし,この雇用条件というところに,1年更新ということがどれほどの重みをもってくるのかということはありますので,まだまだ検討の余地はありそうに思われます。

このようにこの事件では,地方公務員法の解釈問題である点が影響していることは否定できません。このため,一般の民間の雇用問題に照らすとどうかというと,契約の法形式そのものも重視する傾向が判例裁判例は見受けられますので,影響は限定的というのが実際のところのように思われます。

裁判例情報

福岡高裁平成25年12月12日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。