東京地裁,リコーが技術職の労働者を子会社に出向させ商品の箱詰めや検品を担当させた件で,出向を無効と判断


出向について興味深い裁判例が出ましたので取り上げます。

リコーが退職勧奨に応じない技術職の男性を子会社に出向させて,商品の箱詰めや検品を担当させたところ,当該労働者から無効だとして労働審判が申立てられ,無効との判断がされたものの会社側が異議を申し立てたために訴訟に移行した事件で,東京地裁は出向を無効と判断しました。

報道によりますと,判決理由では以下のように言及されている模様です。

  • 「子会社では立ち仕事や単純作業が中心で、それまで一貫してデスクワークに従事してきた2人のキャリアに配慮した異動とは言い難い」
  • 「出向命令は退職勧奨を断った2人が自主退職に踏み切ることを期待したもので、人選も不合理だ」

 

出向については,もともと新日鉄事件という判例があり,その後,当該判例を前提として,労働契約法で条文化されました。

第14条(出向)
使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

要するに,人事規程上の根拠があれば出向をなしうるのですが,濫用と判断される場合には無効とされるというわけです。

他の労働契約法上の規制と同じような規律の枠組みとなっていますが,人事権であることから同じ文言であるとしても比較的緩やかに合理性判断をされるものと思われます。

その観点から行くと,技術職だからキャリアとしてどうなのかと疑問を呈しているのだとすると,かなり踏み込んだ判断と言えそうに思えます。もっとも職種限定のような考え方をしているのかもしれません。

また,退職勧奨をしたのと同じ労働者にしていることが人選の合理性がないとしているとされると,退職勧奨や人事権の行使についてかなり使用者の裁量を狭めるために,踏み込んだ判断といえそうです。

一方で,労働審判から移行した事件であるというところも興味深いところです。

労働審判で和解できない場合には,異議が出ることを念頭に置きつつ審判が出されますが,その後に訴訟となっても審判の内容とほぼ同様の判断がされることが伺われます。審判で,本件は無効と判断されていたとのことで,それを受けてどのように判断するべきかは東京地裁にとっては難しいものであったということもあるかもしれません。

一方で,本件にはやはり法理上,争いうる点が多くあるように見受けられ,会社としては控訴することも検討するところだと思われます。

 

 

裁判例情報

東京地裁平成25年11月12日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。