規制緩和を実現することになっている特区構想ですが,そのうち,労働法制に関する規制緩和をする件については解雇規制の緩和の対象が士業の有資格者や修士号,博士号取得者を対象にして,外国人の多い企業や創業5年以内の企業が利用できるとする内容であることが日経の報道で明らかになりました。
また,ホワイトカラーエグゼンプションについても導入は断念されたことが,八田達夫座長によって発表されました。
朝日新聞デジタル:解雇は専門職限定、労働時間特例は先送り 戦略特区案 – 政治
【清井聡、山本知弘】安倍政権で「国家戦略特区」の検討を進める有識者ワーキンググループ(WG)の八田達夫座長(阪大招聘〈しょうへい〉教授)が4日記者会見し、特区で解雇などの規制緩和をする対象を「弁護士らの専門職と院卒者」に限ることを明らかにした。
労働時間規制を緩める提案は調整の遅れで今回の検討から外し、解雇ルールの明確化と有期雇用の規制緩和を中心に、今月始まる臨時国会への法案提出に向けて調整する。
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政府、「残業代ゼロ」特区導入を断念 : 政治 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
政府は、一定水準以上の年収がある人などの残業代をゼロにできる「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度について、「国家戦略特区」への導入を断念した。
特区構想を検討している有識者会議「国家戦略特区ワーキンググループ」の八田達夫座長(大阪大招聘しょうへい教授)が4日、記者会見で明らかにした。
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現状において解雇しにくいという理由で,士業の雇用が進んでいないとか雇用が抑制されているという実態はないような気がしますので,この解雇規制の緩和はそれだけではおよそ意味がなく,解雇規制に一穴開けるということで後日につなげるということがない限り,効果の大きな規制緩和ということにはならないものと思われます。
また労働時間規制についても意欲的な検討をしつつ断念したということになりますので,賃金の上昇だけ使用者に要請しつつ,規制緩和はしないという形になってしまいました。
特区構想は労働法制の規制緩和の点だけからいうと,あまり実質のないものにとどまりそうです。