仙台地裁,東北大前学長が,論文の不正の疑いを告発した名誉教授らを名誉棄損で損害賠償請求をした訴訟で,告発側に約110万円の支払いを命じる


東北大学の名誉教授らが同学の前学長の論文に不正の疑いがあると告発をしたのに対して,前学長が名誉棄損として損害賠償請求をした訴訟で,仙台地裁は1650万円の請求に対して,約110万円の支払いを命じる一方,名誉教授らの反訴は棄却しました。

東北大論文訴訟、前学長への名誉毀損認める : 宮城 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

東北大の大村泉名誉教授らが開設したホームページ(HP)に、論文に不正があるとする告発文を掲載され、名誉を傷つけられたとして、同大の井上明久前学長が大村名誉教授ら4人に損害賠償を求める訴えを起こし、4人が反訴した訴訟の判決が29日、仙台地裁であった。

市川多美子裁判長は「(閲覧した人に)捏造(ねつぞう)、改ざんがあるとの印象を与え、名誉が毀損(きそん)された結果、前学長の社会的評価を低下させた」として、大村名誉教授らに慰謝料110万円の支払いを命じた。大村名誉教授らの反訴は棄却された。

(略)

双方の対立は見解の違いにとどまり、不正確な写真を載せたことは否定できず、市川裁判長は論文の質の問題だと指摘。「学術論争で決着が図られるべきものだ」と一蹴した。

一方、井上前学長は、HP上の告発文の削除や謝罪文の掲載も求めていたが、その必要はないとした。

特徴的だと思われるのは,学問上の問題であるので司法は立ち入らないとかそういう立場ではなく,内容に踏み込んでいる点だと思われます。学術論争で決着が図られるべきという言及はあるようですが,これは司法審査を避けるという意味での言及ではなく,不正といいうるほどのことではないという趣旨である模様です。

学術上の論争というと,本来は司法が立ち入らない分野に思えるところなのですが,被告側の行為が名誉棄損的な方法にわたっているために,内容に立ち入って判断しているということであり,名誉棄損的な表現ではなく,ウェブサイトを利用しての学術上の論争と評価できるようなものであった場合にはこのようなことにはならなかったのではないかというような印象です。

 

裁判例情報

仙台地裁平成25年8月29日判決

About Arakawa

サラリーマン経験のある弁護士兼社会保険労務士 このサイトでは、ビジネス関連の法律ニュースをもとにして私見をお送りするブログです。 ●筆者紹介 埼玉県立川越高校卒 東京大学法学部卒 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了(法学修士) 専攻・国際私法、国際取引法、会社法 某企業で法務担当というよりむしろ労務担当 東大ロースクール修了 新司法試験合格 弁護士登録 現在,弁護士兼社会保険労務士です。