子供の虐待と児童相談所の権限行使は,対応の遅れが問題となることがありますが,権限行使をして,虐待の恐れのある子供を保護したところ,両親から実質的に親権を奪われたとして国家賠償請求がされた訴訟で,東京地裁が請求を棄却したことが明らかになりました。
報道によると,争点となったのは虐待があったかというところからして問題となっており,虐待の法律論として,「両親の意図にかかわらず、子供に常識を逸脱した苦痛を加えれば虐待だ」として,事例判断としてということになりますが,虐待とその後も虐待の恐れがあったと認定し,子供を両親から話し続けることは違法ではないと判断しています。
虐待についての法律論が示されたところには意義深いものがあるように思われます。
児童相談所の権限行使の当否ということですとこのような判断になるでしょうが,隣接分野として,新設された親権停止の制度ができています。
裁判所の判断についての国家賠償の判断枠組みとこれまでの判例ではまず賠償は認められなかったということから考えますと,裁判所が一度,親権停止の審判をしたとしたら,その判断そのものに対しての国家賠償ということはおよそ認められないということになるのでしょう。
裁判例情報
東京地裁平成25年8月29日判決